毎年毎年同じことを書かねばならない。映画を見る本数は多少持ち直して来たものの、それも年の前半だけ。夏を境に見る本数も感想文の更新も激減し てしまった。

3年連続で本の執筆に時間を取られたため、まったく同じパターンの更新ペースとなった。それでも見た映画の総数は59本なので、昨年よりはマシか。 前半にかなり稼げたのが大きい。夏以降は例によって映画も見れないし、感想文も書けないという状況である。12月に閉店間際のナントカみたいに更新ラッ シュをして辻褄を合わせる結果となった。ちなみに、昨年見た映画59本のうち、1本はホセ・ルイス・ゲリン作品の連続上映「ミューズとゲリン」で見た「影 の列車」、もう1本は「第4回広島イラン愛と平和の映画祭イン東京」で見たイラン映画「ボディーガード」で、残り56本がロードショー公開の新作である。



 

第1位「キングス・オブ・サマー」Asphalte (Macadam Stories)(ア メリカ)

ジョーダン・ボート=ロバーツ監督作品

このベストテン3位「キングコング」のヒットで、この監督のデビュー作が緊急日本公開。見たら、こちらも素晴らしかった…というより、こちらの方が スゴかった! フレッシュさもさることながら、若い連中を甘やかさず年寄りのノスタルジーに溺れることなく、凡百の青春映画にない魅力がある。「キングコ ング」にも通じる冒険の楽しさもあり、いろんな切り口で楽しめる。「キーパーソン」である女の子を安易に悪者にしなかっただけでも、ジョーダン・ボート= ロバーツ監督は大人である。何より、イントロ場面のプリミティブなパワーとインパクトだけでも見ものかも。

 

第2位「オン・ザ・ミルキー・ロード」On the Milky Road(セ ルビア、イギリス、アメリカ)

エミール・クストリッツァ監督作品

ボスニアの紛争をずっと反映した作品を作り続けるようになったクストリッツァだが、酷な言い方をすると近年はそれが少々形骸化して来たところもあっ たように思う。毎回毎回同じような映画を作っているような錯覚さえ覚え、あの楽しいブンチャカ・リズムの音楽すらワンパターンに聞こえて来た。今回も最初 はそう思えていたのだが、実はちょっと違っていた。自ら主役を演じ、外国の大スターであるモニカ・ベルッチを迎えただけでも、いつもと覚悟が違っていた。 何より圧巻のラスト・カットには絶句してしまう。「これ」こそが映画なのである。

 

第3位「キングコング/髑髏島の巨神」Kong: Skull Island(ア メリカ)

ジョーダン・ボート=ロバーツ監督作品

「キングス・オブ・サマー」を大絶賛してしまったが、当然のことながら見たのはこちらが先。この作品を見た時には、トンデモない金鉱脈を見つけてし まった気分になった。簡単に言うとキングコング・ミーツ・ベトナム戦争…の映画なのだが、この発想がなかなか出そうで出ない。そして、これが意外にベトナ ム戦争の本質を突いているようなのが二度ビックリ。単なる冒険活劇だった作品が、それを軽々と飛び越えてしまうのがスゴいのだ。もちろん「単なる冒険活 劇」として見ても純度100パーセントの面白さ。「怪獣島」モノの楽しさに満ち溢れているのである。ジョーダン・ボート=ロバーツ監督の次回作が待ち遠し いばかりだ。

 

第4位「人生タクシー」Taxi(イラン)

ジャファル・パナヒ監督作品

イラン政府から睨まれて映画が作れなくなったジャファル・パナヒが、「映画じゃなけりゃいいんだ ろ」ということで作り始めた「これは映画ではない」シリーズ第2弾。今回は車載カメラでとらえた映像ということでの作品作り。間違いなく「ブレア・ウィッ チ・プロジェクト」以降ホラー映画に氾濫した「ファウンド・フッテージ」ものの作品をヒントにして作られたに違いない。この人の貪欲さには頭が下がる。作 品自体も本当に面白い。「映画」とは何か?…というテーマに毎回果敢に挑戦しているかのようだ。ただ、この人と当局との駆け引きは、弾圧している者とされ ている者との関係と捉えるとちょっと違うような気もしている。ひょっとしたら日本の我々には分からない、あちらの人しか分からない何か特殊なモノがあるの かもしれない。

 

第5位「残像」Powidoki (Afterimage)(ポーランド)

アンジェイ・ワイダ監督作品

ポーランドきっての巨匠の遺作。それだけでも敷居が高くなりそうなところに、スターリン時代に迫害されて死んだ芸術家の話と来るから、神棚にまつり 上げられそう。だが、本作は決してそんな映画ではない。仔細に点検していくと、ワイダはそんなことを意図して作っていない。むしろ、自分をまつり上げるの はやめろと言っている。そのヒントは大ヒット作「大理石の男」にある。本作にはちゃんとそこにつながる手がかりが埋め込まれているのだ。明らかに「自分は 日和っていた」と遺作で告白しているワイダ。「抵抗の人ワイダ」として無闇やたらに讃えるのではなく、むしろ自分が日和っていたことを告白するその「勇 気」こそを賞賛したい。

 

第6位「ムーンライト」Moonlightアメリカ

バリー・ジェンキンズ監督作品

「ラ・ラ・ランド」絡みのアカデミー授賞式でのドサクサに紛れての受賞で、良かったんだか悪かったんだか分からない賞賛のされ方。僕も「どうせ黒人 映画だからホメられたんだろう」ぐらいにしか思っていなかったのは事実。しかしながら、実際に接した実物はそんな作品ではなかった。圧倒的な実感に満ち た、極めたデリケートな作品だったから驚いた。海の底に足が立つか立たないかのところで、子供が波に身を任せる「あの感じ」…。イジメッ子に向けて叩き付 けた椅子が、爽快にブッ壊れる「あの感じ」…。そんな瞬間瞬間の鮮烈さだけでも、本作には見る価値があると思う。

 

第7位「ダンケルク」Dunkirk(アメリカ)

クリストファー・ノーラン監督作品

正直言って、本作をアイマックス・フォーマット以外で見た場合にどう見えるのか分からないので、作品としての評価は何とも言えないところ。だが個人 的には、希有な映像体験をさせてもらった気がする。巨大スクリーンを戦闘機コックピットの「狭さ」を表現するために使う卓抜した発想、時間の観念を自在に (ある意味、自分勝手に)操ることやマクロな視点から戦争を映像化することによって、「プライベート・ライアン」以降残酷ショーとしてエスカレートする一 方だった戦争映画の「リアリティ」にくさびを打ったこと…など、本作を評価したい点は多い。だが最大に感心したのは、終盤に観客の意識を高揚させようとし ているかのように見せかけながら、最後のほんの数秒間にチラ見せした少年兵のシラケ顔だった。

 

第8位「スターシップ9」Órbita 9 (Orbiter 9)(スペイ ン、コロンビア)

アテム・クライチェ監督作品

この年にはいろいろ「拾いモノ」があったけれど、その中でも最大の「拾いモノ」はこれかもしれな い。誰しもが宇宙SFだと思ってしまうこの作品、僕は当初、移民のために長期間の宇宙飛行をする宇宙船での出来事を描いた映画だと思っていたので、クリ ス・プラットとジェニファー・ローレンスが主演した「パッセンジャー」見たいな作品だろうとイヤ〜な予感がしていたのだが、さにあらず。まったく予想を覆 す展開に唖然呆然としてしまった。脚本には多少難のある部分もあるものの、この種のお話ならば「ありがち」な非情のエンディングにもならず、力業でハッ ピーエンディングにしてしまうあたりも驚いた。アテム・クライチェ監督の次回作が大いに楽しみだ。

 

第9位「王様のためのホログラム」A Hologram for the King(ア メリカ)

トム・ティクヴァ監督作品

まったく期待していなかったトム・ハンクス主演作だが、これは嬉しい驚き。冒頭数分間のラップのミュージック・ビデオ風演出で、主人公の置かれた抜 き差しならない状況をアッと言う間に説明。そこから、彼が中東の国で孤軍奮闘する愉快な物語が展開する。これがある意味では「ローカル・ヒーロー」の別 バージョンみたいでいい感じなのだ。トム・ハンクスも近年の「名優然」として深刻な顔をしている彼ではなく、かつてコメディ作品の中で困った顔をして翻弄 されていた彼を彷彿とさせる。「スプラッシュ」「マネー・ピット」などの彼が好きだった人ならオススメだ。

 

第10位「人生はシネマティック!」Their Finest(イギリス)

ロネ・シェルフィグ監督作品

戦時中、イギリスでダンケルクに関する戦意高揚映画を作ろうとする人々のお話。それだけでも映画 好きとしてはワクワクするところだが、本作にはちょっとした仕掛けがある。素人シナリオライターとなったヒロインを巡る三角関係が仕組まれていて、見てい るとちょっとイヤな展開だな…と心配になってくるのだが、終盤にはそれを無茶な方法でひっくり返し、アッと驚く「映画讃歌」のハッピーエンドに持って行 く。かなり強引な展開なのだが、ロネ・シェルフィグ監督の演出力にはちょっと驚いた。

 

 

 

 

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