また、去年と同じことを繰り返して書かなければならない。新作の本のために時間を割かねばならず、後半はほとんど映画が見れていない。当然、更新もサボりにサボって しまった。


2016年は昨年と同様、新作本の制作に追われた。今回はかなり取材もしなければならなかったので、7月あたりからガクンと映画を見る機会が減っ た。それでも何とか9月は持ち直したものの、10月からは再びダウン。結果として年間合計47本と、何と50本すら割ることになってしまった。また、この 年は世間でいわれる話題作、大ヒット作、評判作…と自分の中での映画の評価が完全に剥離してしまった年でもある。年の後半でガクンと見る数が減ったという のは、単に忙しかっただけではない。映画館に招かれていないという感じが強かったからだ。これでベストテンなどおこがましいとは思ったものの、こういう中 での選び方というものもある…と割り切って選んだ次第。これはあくまで参考データ…と割り切って決めた。世間的にはまったく評価されていない10本…かも しれない。



 

第1位「アスファルト」Asphalte (Macadam Stories)(フ ランス)

サミュエル・ベンシェトリ監督作品

世の中では評価されたのか話題になったのかは知らないが、この年で文句なしに気に入った作品といえばこれだ。イザベル・ユペール以下、結構豪華でか つ国際色豊かなオールスター映画なのだが、作品の佇まいは極めてシンプルで地味。スットボけた笑いが全編に漂うオフビートな作品といえば近年全世界的に広 がっているアキ・カウリスマキ的なアプローチの作品と思えるが、本作はそんなチマッとしたものではなくて広がりとスケール感がある作品となっている。にも 関わらず、登場人物がみな「分をわきまえて」いるあたりが素晴らしい。

 

第2位「白鯨との闘い」In the Heart of the Sea(アメ リカ)

ロン・ハワード監督作品

いつからかロン・ハワードはぐっと骨太な映画作家に変貌していたのか。前作「ラッシュ/プライドと友情」(2013)と同様にクリス・ヘムズワース などという「らしくない」主役を起用して、またまた男臭い映画を作り上げた。とはいえ、そこはロン・ハワードだから、「男臭さ」が必ずしも「汗臭さ」にな らない清涼感がある。「少年ジャンプ」みたいな男の子の爽やかさが漂う幕切れなのだ。そして、途中で先がまったく見えない予測不能な作品でもある。ビート ルズのドキュメンタリー映画も手がけたロン・ハワード、次は絶対にレノン=マッカートニーを描いて欲しい。

 

第3位「追憶の森」The Sea of Trees(アメリカ)

ガス・ヴァン・サント監督作品

富士の樹海を舞台にマシュー・マコノヒーを起用した映画…となれば見たくて見たくてたまらなくなるが、そこに渡辺謙が共演となると腰が退けてくる。 おまけに監督は「鬼門」のガス・ヴァン・サント。果たしてどうなるかと思っていたが、これは思わぬ快作だった。決して「完成度の高い作品」などとはいうま い。穴はいくらでも見つけられる。しかし、好感の持てる作品なのである。しかも本作を見て、僕はガス・ヴァン・サント作品を見直そうかという気持ちにさえ なっている。誰が何と言おうと、僕はこの作品が好きだ。

 

第4位「ドラゴン・ブレイド」天将雄師 (Dragon Blade)(中国、 香港)

ダニエル・リー監督作品

ジャッキー・チェンも近年は映画づくりのスタンスを変えつつあるが、本作はスペクタクル史劇。それもハリウッドから著名なスターを連れて来ての製作であ る。世間では一部本作を中国のプロパガンダ映画であると批判する向きもある。正直言って、確かにそう見ればシラケる一面もあると思える出来映えだ。しかし 逆に言うと、プロパガンダ映画はこれくらいうまく作って観客を楽しませないと成功したとは言えない。そういう意味でも、本作は素晴らしい出来だと認めるべ きだ。理屈抜きで面白いし、後味もいいのである。これもまた、ジャッキーによる「少年ジャンプ」映画だ。

 

第5位「モンスターズ/新種襲来」Monsters : Dark Continent(イ ギリス)

トム・グリーン監督作品

この作品を選んだことについては、「えっ?」と思われる向きも少なくないと思う。前作「モンスターズ/地球外生命体」を好きだった人でも、この続篇 をホメている人は少ないかもしれない。だが、僕は本作はかなりの傑作なんじゃないかと思う。これでもかなり控えめに推したつもりだ。本作はハッキリ言って 怪獣映画ではない。「ジャーヘッド」、「ハート・ロッカー」、「ゼロ・ダーク・サーティ」、「アメリカン・スナイパー」…などといったいわゆる「中東戦争 映画」の決定版といっても過言ではない。そのくらい僕は気に入っている。

 

第6位「マジカル・ガール」Magical Girlスペイン

カルロス・ベルムト監督作品

「クール・ジャパン」的な要素を盛り込んだ、日本トンデモ映画なのか…と思いきや、意外や意外。本作もお話がどう転がっていくのか分からない、予測 不能な作品である。これもオフビートなユーモアを狙っているのかと思いきや、予想外にシビア。ヒロインの少女にも手加減しない、登場人物を誰一人として甘 やかさない語り口が気に入った。この監督、これがデビュー作とのことだが、自作がとても楽しみだ。

 

第7位「孤独のススメ」Matterhorn(オランダ)

ディーデリク・エビンゲ監督作品

予測不能といえば、本作もかなりの予測不能ぶり。これもまたまたアキ・カウリスマキ的なアプローチの作品と思って途中までそういう目で見ていたのだ が、だんだんそんな予想を逸脱していく展開になってビックリ。ラストでど〜んとスケール感のある幕切れになることに唖然呆然。これは本当にビックリした。 惜しむらくは一か所致命的なミスがあるのだが、それは無視しても構わないほど。この人も新作が楽しみだ。

 

第8位「ダーク・プレイス」Dark Places(アメリカ)

ジル・パケ=ブランネール監督作品

あの「サラの鍵」の監督、ヨーロッパの女性監督にしてはスケールが大きくてハッタリも十分だな…と思っていたら、早速ハリウッドに招かれて撮った一作。社 会派的視点も見せながらもキッチリとエンターテインメントを作っていて、しかも品がいい。そして、「犯罪被害者の焼け太り」なんて、今まで誰も取り上げた ことがないのではないか。主人公の成長物語として本作を作っているジル・パケ=ブランネールは、さすが「ハリウッド映画」を撮るということを分かっている のだ。

 

第9位「ブリッジ・オブ・スパイ」Bridge of Spies(アメリカ)

スティーブン・スピルバーグ監督作品

スピルバーグのシリアス映画も、近年はすっかり危なげなくなってきた。中でも本作は、「風格」みたいなものまで感じさせる仕上がり。かつてのカメラ や編集の妙味で見せようという作風は影を潜め、役者の芝居をメインに置いた「地に足の着いた」出来映えなのである。しかし、そこにスリルとサスペンスを忍 び込ませる手腕は確かにスピルバーグ一流のもの。何よりも「父親」というテーマを打ち出しているあたりが、スピルバーグの作家としての刻印なのである。

 

第10位「スポットライト/世紀のスクープ」Spotlight(アメリカ)

トム・マッカーシー監督作品

アカデミー作品賞受賞作ながら、何とも地味な印象の作品。だが、その地味さ控えめさこそが本作の優れた点である。硬派のジャーナリズムを描く作品だからこ そ、この作風は好感が持てる。主人公たちの感情すら水面下に隠れていて、僕らに安易に見せてはくれない。センセーショナリズムや高揚感とも無縁だが、だか らこそ伝わってくるものがある。残念ながら、過去の遺物感がハンパなかった「ニュースの真相」にはこれが欠けていたのだ。現代のように声高でけたたましい 主張ばかりが目立つ時代だからこそ、慎重な態度が必要とされるのである。

 

 

 

 

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