独立2年目はますます忙しくなり、映画を見る暇も語る暇も減少。自由になる時間が逆にどんどん減ってしまったのだ。映画サイトの管理人がこう言っちゃオシマイだが、正直言って「映画どころじゃなかった」一年だった。


2015年は10年来の念願の企画実現に全力を傾注していたので、正直言って映画どころじゃなかった一年だった。その結果はハッキリ出てしまってい て、この年に見た映画の総数は、またまた70本台割れの合計65本。東京国際映画祭もサボったし、旧作上映にも行かなかったので、純粋に新作だけ見てこの 数字である。ただし、作品そのものは粒ぞろいだった気がする。自分としてはメチャクチャにハマった作品などはなかったが、気になる作品にはかなりブチ当 たった一年。これでもっと本数をこなしていたら、このベストテンもどうなっていたかは分からない。



 

第1位「ハッピーボイス・キラー」The Voices(ア メリカ)

マルジャン・サトラピ監督作品

一見すると連続殺人鬼というホラーな題材をネタに、ポップでユーモラスな作品を作った…という風に見えるこの作品、しかしよくよく見るとなかなか手 強く、他に類似の作品をまったく見つけることが出来ないユニークな映画なのだ。終盤のミュージカル・アトラクションも素晴らしい。ライアン・レイノルズと いう役者に注目するキッカケになった。連続猟奇殺人者の側に立ってその心情を描くという、ほとんど軽業にも近い芸当を見せてくれるのは、イラン出身の女性 監督マルジャン・サトラピ。マンガ家でそれまでほぼアニメ映画を作ってきた…というそのバックグラウンドも異色過ぎて、何でハリウッド映画を撮ることに なったのか不明。

 

第2位「薄氷の殺人」白日焔火 (Black Coal, Thin Ice)(中国)

ディアオ・イーナン監督作品

猟奇的な連続殺人を題材にした、フレッシュでユニークな作品。ここのところ沈滞感漂う中国映画に、久々にスゴい大物新人が登場した予感。お話が冒頭 部分から本題に突入する、1999年から2004年に時間が飛ぶ場面の素晴らしさも忘れ難い。これがあまりに素晴らしかったから、ロウ・イエが「火曜サス ペンス劇場」ばりの面白さで撮った「二重生活」がベストテンから脱落してしまった。この作品の監督ってどんな奴かと思ったら、あの傑作「スパイシー・ラブ スープ」で脚本を手がけていた人物ではないか。これからどれだけ傑作を放ってくれるのか、大いに注目したい。

 

第3位「マッドマックス/怒りのデス・ロード」Mad Max - Fury Road(オーストラリア)

ジョージ・ミラー監督作品

30年ぶりのシリーズ最新作、それまでの主役メル・ギブソンが交替しての作品…と聞けば、どう考えたって作品的に「劣化」していることは免れないと 思う。おまけに近未来の殺伐とした荒野での死闘…という設定からして、イマドキまったく新味のないもの。そもそも「マッドマックス2」から一歩も進歩がな い。何一つとしてサプライズも傑出した点もないように思えたところに、元々僕に「マッドマックス」に対する思い入れもない…と来て、完全に冷ややかな態度 で見に行った本作。これがなぜこれほどに素晴らしいのか、スゴいのか…僕にはまったく説明が出来ない。とにかく、他の映画とは明らかに「格」が違うのであ る。とてもじゃないが「付け足し」に作られたシリーズの久々の第4作…という構えには思えない。見る側にもエネルギーの大量消費を強いる、破格の映画では ある。

 

第4位「私の少女」A Girl at My Door(韓国)

チョン・ジュリ監督作品

この年は「ジョン・ウィック」が「キアヌ・リーブス完全復活」を売りにして大いに話題になったが、「完全復活」ならばこの作品でのペ・ドゥナについて言う べきだろう。近年は低迷していた彼女だが、こんな小品でピリリと辛いところを見せてくれた。女性監督にありがちな「女性のデリケートな感性…」なんてヤワ な映画じゃなくて、キッチリとジャンル映画…それもファム・ファタールものを堂々と創り上げているのに感心。しかも全体を通して見ると、明らかに「西部 劇」の影響も伺える。予想外の「面白い映画」だっただけに、見て得した気分になった。

 

第5位「オン・ザ・ハイウェイ/その夜、86分」Locke(イギリス、アメリカ)

スティーブン・ナイト監督作品

前述の「マッドマックス/怒りのデス・ロード」で二代目マックス襲名したトム・ハーディは、この年が「当たり年」。日本では「マッドマックス」を含 む3本が連続公開された。そのどれもこれもが面白かったが、特に僕が気に入ったのは本作。お話はほとんどクルマの中で進行し、登場するのはトム・ハーディ ただ一人。携帯電話という文明の利器を使った「密室劇」「会話劇」「一人芝居」という特殊な映画だが、見ていて目が離せなくなる。それより何より注目した いのは、プロとしての誇りを持つ主人公が襲いかかる難問と罵倒の嵐をものともせず、携帯電話の回線一本を頼りに難物の大仕事を何とかねじ伏せていく様子。 これはイーストウッドの「アメリカン・スナイパー」をしのぐ「仕事映画」なのだ。

 

第6位「わたしに会うまでの1600キロ」Wildア メリカ

ジャン=マルク・ヴァレ監督作品

贔屓目にも「上品で知的な女性」とは思えないヒロインが、「自分探しの旅」に出るという時点で普通はついて行けない。案の定、全編読みの甘さが目に つくし、終始イラッと来る態度を見せ続ける。本来ならとてもじゃないが共感に値しない女なのだが、そこを力づくで見せてしまうジャン=マルク・ヴァレの力 量に驚かされる。そうなると、逆にろくでもないヒロインだからこそリアリティも出て来るし、キレイごとにはならない。この逆転の発想には脱帽だ。サイモン &ガーファンクル「コンドルは飛んで行く」の使い方も素晴らしい。これのあおりで、似たような題材の「奇跡の2000マイル」がベストテンから脱落してし まった。

 

第7位「涙するまで、生きる」Loin des hommes (Far from Men)(フランス)

ダヴィド・オールホッフェン監督作品

最近はアメリカ映画以外での活躍が目立つヴィゴ・モーテンセンだが、今回はフランス映画。アルジェリアの荒野で、いきなり犯罪者の護送をするハメに なる男のお話。まずはシネマスコープ・サイズの画面一杯に広がる荒野の景色に圧倒される。荒野や砂漠が大好きな僕にとってはごちそう。そしてこの映画は、 アルジェリアを舞台にしたフランス映画なのだが、明らかに「西部劇」を意識しているのだ! 「私の少女」に続いて「西部劇」と言ってしまったが、本当なん だから仕方がない。決してマイナーなアートシアター系映画ではないのだ。

 

第8位「天使が消えた街」The Face of an Angel(イギリス、イタリア、スペイン)

マイケル・ウィンターボトム監督作品

ダニエル・ブリュールが映画監督に扮して、実際の殺人事件に取材した映画を作ろうとして迷宮に陥ってしまう姿を描く。実はこれ、ウィンターボトム流の「8 1/2」だからビックリ。途中でサスペンス映画やらホラー、SF的な趣向も盛り込んで、なかなか楽しい。本来、クリエイターが創造に関して作る作品は、映 画に限らず「自己満足」の傾向が強いが、本作はそうした呪縛から解き放たれている点が非凡。主人公のカッコ悪いところ、みっともないところを隠さず描いて いるから、凡人である僕らでも共感できるのだ。

 

第9位「アクトレス/女たちの舞台」Sils Maria (Clouds of Sils Maria)(フランス、ドイツ、スイス)

オリヴィエ・アサイヤス監督作品

過去の自分の出世作である舞台に、今度は脇役として出演する大女優の葛藤についてのお話。これをジュリエット・ビノシュ、クリステン・スチュワー ト、クロエ・グレース・モレッツという異色の顔合わせで描く。この顔ぶれを見れば分かる通り、ヨーロッパ映画の狭苦しさから逸脱した面白さ。無駄な抵抗で ジタバタするヒロインの姿を見るうちに、いい歳こいてきた我が身を振り返りたくなる作品。トンデモ映画「イルマ・ヴェップ」でミソつけたオリヴィエ・アサ イヤスが、こんなにうまい監督だとは知らなかった。

 

第10位「Re:LIFE/リライフ」The Rewrite(アメリカ)

マーク・ローレンス監督作品

近年マンネリの一途を辿っていたヒュー・グラントだったが、そうした「マンネリの元凶」は近年ずっとコンビを組んでいたマーク・ローレンス監督のせいだと 思っていた。ところがそのローレンスとまたまた組んだ本作は、なぜか珍しくいいのである。身につまされるような人生の痛みを感じる。それって元々脚本家上 がりだったローレンスの本音がにじみ出たからではないだろうか。グラントも「老い」が活かされていて秀逸。

 

 

 

 

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