独立したためにヒマになるかと思いきや、逆に忙しくて映画を見るヒマがなくなる始末。そこで、出来る限り本当に見たい映画を見るようにしたために、話題の「アナと雪の女王」も、オスカー作品賞「それでも夜は明ける」も見ないという結果になった。


フリーになって雑用ばかり増えた上に、母親の入院など多忙な一年だったため、着実に増えてきた映画の鑑賞本数はまたしても減って合計77本。8月は たった1本しか見れなかった。しかも、そこには東京国際映画祭での2本と、カナザワ映画祭で見た旧作1本(フリードキンの「恐怖の報酬」)を含んでいる。 しかし見ることの出来た作品は、かなりの粒ぞろいだった。巷ではアメリカ映画を軽視してやたらに邦画を持ち上げる風潮が高まっているが、僕のベストテンは 相変わらずアメリカ映画偏重である(笑)。



 

第1位「ホドロフスキーのDUNE」Jodorowsky's Dune(ア メリカ)

フランク・パヴィッチ監督作品

製作されなかった映画の記録…とくれば映画ファンとしては興味津々。実際にこの題材にこの監督…という意外性、多士済々のスタッフ・キャストの名前 が出てくるあたりなど、そういうお楽しみが満載ではある。しかし本作の面白さは、そんな映画ファン的な興味にはとどまらない。何より画面に登場して語りに 語る、ホドロフスキーという人の持つ人間力に圧倒される。とにかく見ていて引き込まれるエネルギーと魅力のある人物なのだ。そして「失敗、それが何だ?」 と言い切るこの人の言葉に、背中を力強く後押しされる人は少なくないのではないか。かくいう僕も、大いに勇気づけられた一人である。

 

第2位「西遊記/はじまりのはじまり」西遊 降魔篇 (Journey to the West - Conquering the Demons)(中国)

チャウ・シンチー監督作品

CGを多用したスペクタクル性と中学生のバカ騒ぎみたいなバカバカしさ…は、近年のこの人の映画に共通するところ(おそらくは前々からそうだったの だろうが)。そういう意味では「西遊記」は絶好の題材だったはず。さぞやこの人なりのユニークな語り口で、壮大にバカバカしい映画になるはず…と予想して いたら、果たしてその通りではあったのだが…。驚くほどにシビアである意味残酷な内容になっていたことに驚愕。しかも、それをウルトラC級のアクロバ ティックな語り口で、仏教的な達観した結論に持ち込んでいたことに二度ビックリ。一見、「西遊記」映画としては邪道に見えて、実は本道、王道であったこと に感心してしまった。

 

第3位「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」Captain America - The Winter Soldier(アメリカ)

アンソニー&ジョー・ルッソ監督作品

前作は下手をすると「国旗がそのまま歩いている」みたいなキャラになりかねないところを巧妙にすり替えて、見事に今に再生産させた作品になってい た。それでも、時代設定が現代となった本作はさすがにキツいだろうと思っていたら、またまたこちらの予想を良い意味で裏切る出来映え。このキャラだからこ その、国家への疑念…という方向に話を向けたのには驚いた。映画全体としても、1970年代のハリウッド政治映画の臭いが濃厚で、あの時代の作品が好き だった僕は狂喜乱舞。レッドフォードの起用もズバリと当たった。

 

第4位「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」Guardians of the Galaxy(アメリカ)

ジェームズ・ガン監督作品

またしてもマーベルのコミック映画。題材はどう見ても「スター・ウォーズ」以来ハリウッドに氾濫するスペース・オペラ映画の典型。どうしたって凡庸 な内容になってしまうところを、全編に流れる1970〜80年代ポップスで一気に刷新してしまっているアイディアが素晴らしい。しかもこれらの懐メロが流 れるのには、ちゃんとした理由があるのだ。毎回マーベルのコミック映画には驚かされてしまっている僕だが、この作品には本当に驚いた。特に終盤に流れる 「エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ」は号泣モノ。

 

第5位「MUD/マッド」Mud(アメリカ)

ジェフ・ニコルズ監督作品

オスカー受賞で快進撃のマシュー・マコノヒーが、それに先立って主演した作品。南部の河川地域を舞台にしたお尋ね者の男と訳アリ女のお話を、子供の 視点で描く。実は地味〜な小品だと思って見ていた僕だが、見る前の予想を次々打ち破る意外な展開にビックリ。しかもキャストも異常に充実していて、決して 「小品」などとは言えない作品なのだ。僕は河川や湖沼などを舞台にした映画には弱いのだが、そんなことを抜きにしても本作には心惹かれた。終盤などほとん ど西部劇みたいな展開になって大コーフン。これは本当に拾い物だった。

 

第6位「オール・イズ・ロスト/最後の手紙」All Is Lostアメリカ

J・C・チャンダー監督作品

「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」でアッと驚く一面を見せたロバート・レッドフォードだが、実はその「覚醒」はこの作品から始まっ ていた。ヨット一人旅の途中で予期せぬ遭難をすることになる男のお話。この男はなかなかに心もカラダも頭脳も優れた人物で、次々訪れる危機を何とか乗り越 えていく。しかし事態はそんな優秀な男でも手に余るまでに悪化していって…。見ているうちに、優れすぎていてそこがイヤミで傲慢になっていた主人公が、 レッドフォードその人に見えてくるのがミソ。レッドフォード近年の低迷ぶりを打開する一作となっている。ほとんどセリフがないアクションのみで語る映画と しても秀逸。

 

第7位「ゴーン・ガール」Gone Girl(アメリカ)

デビッド・フィンチャー監督作品

かつてのやり過ぎで過剰でケレン味たっぷりな作風から、かなり横綱相撲をとるようになってきたデビッド・フィンチャーだが、その内容の過激さは変わらな い。妻の失踪事件がたちまち夫による殺害疑惑へと変わっていく展開から、アッと驚く後半へと持ち込むフィンチャーの力業の演出。夫役に胡散臭さムンムンの ベン・アフレックを起用したのもズバリ正解。ゾッとしながらも笑っちゃうお話として見ていて大いに楽しまされながら、僕は今までの人生で出会って来た「世 間に野放しになっている」異常な人々のことを考えずにはいられなかった。

 

第8位「ネブラスカ/ふたつの心をつなぐ旅」Nebraska(アメリカ)

アレクサンダー・ペイン監督作品

最初は、懐かしいブルース・ダーン主演ということで大いに注目した作品。半ばボケ始めてすら いるようなくたびれきった父親を連れて、ちょっと優しくて頼りない次男が遥か離れたネブラスカまで珍道中を繰り広げるお話。お話自体はさすがのアレクサン ダー・ペインらしく、いつもながらの危なげない語り口。しかしそんなことより見ていて身につまされたのは、年老いた親との付き合い方のアレコレだった…。

 

第9位「ダラス・バイヤーズクラブ」Dallas Buyers Club(アメリカ)

ジャン=マルク・ヴァレ監督作品

第5位の「MUD/マッド」にも主演したマシュー・マコノヒーの、オスカー主演賞受賞作。しかし、かつてエイズ啓発の広告などを作った経験のある僕 にとっては、当時のことを思い出させてもらってまことに感慨深い作品。さらにはカウボーイハットを終始手放さない主人公が繰り広げる大活躍が、そっくりそ のまま今は懐かしい西部劇のスタイルになっているあたりも嬉しかった。この作品は、断じて「難病もの」映画などではないのだ。

 

第10位「ワレサ/連帯の男」Walesa - Czlowiek z nadziei (Walesa - Man of Hope)(ポーランド)

アンジェイ・ワイダ監督作品

ポーランド映画界の巨匠として君臨しながら、さすがに近年は衰えを感じさせる作品が続いていたワ イダだったが、あの連帯のリーダーの伝記映画を作ってついに本領発揮。それも「政治映画」としてではなく、まるで木下恵介作品のような堂々たる「大衆映 画」として面白い。元々、ワイダの映画は単純に面白い映画だったのだということを再認識させる一作。

 

 

 

 

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