ここ何年か映画を見ていて面白くてたまらない年が続き、数年前からガックリ落ちていた鑑賞映画本数がまたまた上向いて来ていたのだが、この年はまたまたプライベートで激変が起きてしまい、後半はそれどころではなくなってしまった。


環境の激変やら何やらで大忙しとなったが、そんな気持ちが揺れ動く時には映画が一番の良薬。そこでますます鑑賞数は増えて、この年は東京国際映画祭 での2本、旧作1本(アンジェイ・ワイダの「すべて売り物」)を加えて85本に達した。ところがこのサイトを更新する暇がなくなってしまい、年の後半には グダグダな状態になってしまったのは情けなかった。

 

 

第1位「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 」Life of Pie(アメリカ)

アン・リー監督作品

どう考えてもシリアスで地味なサバイバル映画になるであろう題材なのに、なぜかファンタジー風味あふれる3D作品。ところが終盤に至ってアッと驚く 展開になっていくあたり、さすがアン・リーはクセモノだ。最初はなぜこんな題材をアン・リーが手がけたのか、なぜこの作品を3Dで撮影したのか、なぜ大物 ジェラール・ドパルデューをあんなチョイ役に起用するのか…見ていてナゾばかり浮かんで来たのだが、すべて疑問は氷解。もっともアン・リーらしくないと思 われた作品は、実は何よりもアン・リーらしい作品だったのだ。

 

第2位「クラウドアトラス」Cloud Atlas(アメリカ)

ウォシャウスキー姉弟、トム・ティクバ監督作品

僕はいくつもの物語が平行して進む構成の作品が大好きだが、そういう構成の作品を成功させるのは至難の業。おまけにウォシャウスキー姉弟とトム・ ティクバの共同監督という、どう見てもうまくいきそうにない共同作業。さらにはトム・ハンクス、ハル・ベリーから韓国のペ・ドゥナに至るまでの、水と油と しか思えない危ういオールスター・キャスト。どう考えてもヤバイ条件で出来た映画が完成しただけでもビックリ。おまけに、描かれている物語のスケール感が 凄い。まるで手塚治虫の「火の鳥」を映画化したみたい。これがハリウッドの商業映画として成り立ったこと自体が、ひとつの奇跡だろう。

 

第3位「クロニクル」Chronicle(アメリカ)

ジョシュ・トランク監督作品

ひょんなことから超能力を手に入れた男の子3人の友情と、その後の顛末を描いた作品。「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(1999)以来数多く作 られた「ビデオ自分撮り」映画ジャンルの作品の中で、ついに出てきた変化球的作品にして傑作。最初は他愛なく楽しいエピソードが続くが、虐げられてきた気 の毒な主人公が浮かび上がれていくうちに、不幸にもその性格が悪い方に歪んでいくアクシデントが続いてしまう。最後の大規模なアクションは、ハリウッドら しい見せ場というより悲痛さの方が勝っている。SFというより青春映画として長く記憶に残る作品になった。

 

第4位「キャビン」The Cabin in the Woods(アメリカ)

ドリュー・ゴダード監督作品

一見よくある猟奇殺人ホラーものと見せかけて、大胆な発想の転換で見せる映画。実は映画を見る前にある程度「これは何かある」ということは分かって いたのだが、映画を見ている間にも二転三転。あまり鮮やかにやってくれるので、見ていてスッカリ嬉しくなってしまった。一番最後に大物ゲストスターが登場 してくるところまで楽しめる。やたらドンデン返しや意外性を売り物にする映画は多いが、やるならせめてこのくらいスマートにやっていただきたい。

 

第5位「ミッドナイト・ガイズ」Stand Up Guys(アメリカ)

フィッシャー・スティーブンス監督作品

アル・パチーノ、クリストファー・ウォーケン(それにアラン・アーキン)の超ベテラン高齢スターが、思い切りヤンチャしまくる1時間半。脚本が良く 出来た舞台劇みたいで絶妙。それにパチーノもウォーケンも今までのスター・イメージをどこかチラつかせながらの出演だから、映画ファンとしてはたまらな い。映画冒頭に出てくる絵に描かれていたまぶしい朝日の輝きへと昇華されるエンディングは、まさに至福のひとときだ。

 

第6位「消えたシモン・ヴェルネール」Simon Werner a disparu...(フランス)

ファブリス・ゴベール監督作品

ある高校で起こった生徒の失踪事件に端を発して、奇妙な出来事が次々起こる。最初はホラーなのか、ミステリーなのか、はたまたSFなのか…と見てい る者が翻弄される不思議な作品。最終的には想定しうる最もつまらない結論へと導かれていくが、実はそれが最も衝撃的でもあることにショックを受けた。あと はこの新鋭監督が、いつの間にかリュック・ベッソン化しないことを祈るばかり。

 

第7位「華麗なるギャツビー」The Great Gatsby(アメリカ)

バズ・ラーマン監督作品

どうしたってかつてのレッドフォード版を想起してしまう本作だが、出来上がったのはレッドフォード版を軽く凌駕する出来栄え。どんなに着飾ろうと金 ピカにしようと、どうしたってお里が知れる男ギャツビーを、イッちゃっているヤバさやアブなさまで含めてレオナルド・ディカプリオが力演。バブルなヤツを 演じさせたら彼の右に出る者はもういないほどのハマりっぷりを見せた。過去の物語にイマドキの音楽を流す「ムーラン・ルージュ」の手法も、現在の世界的な 不況と格差社会の到来を意識した本作こそピッタリ来る。バズ・ラーマン久々の快作。

 

第8位「ワールド・ウォーZ」World War Z(アメリカ)

マーク・フォースター監督作品

何度も何度も焼き直されていいかげん手垢がつきまくったゾンビ映画を、SFパニック・スペクタクル大作の器で作り直したという発想の転換が楽しい一 作。「何でこんな映画をベストテンに入れたんだ?」…と映画ファンに文句を言われそうなチョイスだし、組み体操みたいに人間ピラミッドを作っておそってく るゾンビとかそのゾンビ以上に不死身なブラピ…とか、あちこち突っ込みどころ満載の映画だが、それも含めてバカバカしい映画として楽しんでくれという姿勢 が気に入ったんだから仕方がない(笑)。スカッと楽しめる映画を作ったプロデューサーとしてのブラピのセンスが伺える作品だ。

 

第9位「デッドマン・ダウン」Dead Man Down(アメリカ)

ニールス・アルゼン・オプレブ監督作品

暗黒街を舞台にひそかに復讐の企みを実行に移していく男と、そんな男に自らの復讐を託す薄幸な女。どう考えても破滅に向かって一直線になるしかない お話を、何と力業であっけらかんとしたエンディングへ持ち込んでいくのにビックリ。スウェーデン出身ニールス・アルゼン・オプレブのハリウッド・デビュー 作は、意外にもハリウッド映画の原点「西部劇」への回帰を狙った一作だった。「地味に豪華」なキャスティングもお楽しみ。

 

第10位「鑑定士と顔のない依頼人」La migliore offerta (The Best Offer)(イタリア)

ジュゼッペ・トルナトーレ監督作品

今まで押しつけがましい自己愛だけが強くて辟易させられてきたトルナトーレ作品だったが、本作だけは初めてそれを感じさせなかった。明らかに自分を託した であろう主人公をあえて滑稽な人物と描写する勇気を持ったおかげで、本作は万人の共感を得ることができる作品へと昇華した。一見、悲惨にも見える幕切れ は、僕にとっては間違いなくハッピー・エンディングだ。

 

 

 

 

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