昨年に引き続いて、今年もまた映画が面白くて仕方なかった一年だった。実は今年はいつになく仕事が忙しく、例年だったら多少余裕があるはずの春先や冬まで働かされたサンザンな年だったが、それでも何とか時間をやりくりして映画を見続けることができた。


この年に見た映画は昨年よりもまた増えて、東京国際映画祭で見た3本やホン・サンス連続上映会の4本も加えたら合計81本に達した。このぶんだと頑 張れば来年あたり100本台に復帰できるかもしれないが、まぁ無理はするまい。あくまで映画は僕のお楽しみだ。無理して苦しんでまで見たいとは思っていな い。だから見た映画も、あくまで自分が本当に見たい映画優先。名作傑作よりも好み最優先だ。

 

 

第1位「戦火の馬」War Horse(アメリカ)

スティーブン・スピルバーグ監督作品

僕は自他ともに認めるスピルバーグ・シンパとして、一番最初に見た「激突!」以来ずっと支持してきたし、作品も見てきた。世間でどんなに駄作扱いさ れているものでもそれなりに評価もしてきたが、さすがに昨年末見た3DのCGアニメ「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」だけはダメだった。こういう映 画を作るようになったら、もうスピルバーグもダメかもしれないと思ったものだ。ところがそういうファンの気持ちを察したかどうか知らないが、スピルバーグ はキッチリと決めてきたのだ。「これぞ映画」「これぞスピルバーグ」としか言いようがない。スピルバーグが自らの原点に立ち戻っての作品だと、強く支持し たい。

 

第2位「センター・オブ・ジ・アース2/神秘の島」Journey 2 the Mysterious Islande(アメリカ)

ブラッド・ペイトン監督作品

前作「センター・オブ・ジ・アース」も大好きだったが、これはもっと好き。抜群の3D効果、巨大トカゲと巨大ミツバチに手乗りのゾウ、ザ・ロック様 ことドウェイン・ジョンソン、マイケル・ケイン、潜水艦ノーチラス号、巨大な電気ウナギ、火山の大噴火、アトランティスの遺跡、ドウェイン・ジョンソンが ウクレレ抱えて歌う「この素晴らしき世界」…これだけあって、他に何を映画に求めればいいのだ。この映画を見ている間こそ、まさに至福の時だった。

 

第3位「アルゴ」Argo(アメリカ)

ベン・アフレック監督作品

開巻まもなくスクリーンに映し出される、かつてのワーナー・マークがすべて。単に過去のイラク米大使館人質事件の秘話の映画化にとどまらず、 1970年代アメリカ映画と映画作りそのものへの讃歌となっているところが完全に僕のツボ。ウソからマコトを作りだし、事実を超えた真実をもつくり出すと いう物語は、そっくりそのまま「映画」というものが持つ性質そのもの。そこに目を付けたベン・アフレックの発想は非凡だ。

 

第4位「宇宙人ポール」Paul(アメリカ、イギリス)

グレッグ・モットーラ監督作品

オタク心をくすぐるコメディであり、セス・ローゲンの声が絶妙なおかしさとなっている宇宙人のキャラもステキだが、単なるパロディとか悪ふざけを超 えた内容になっているのは、作り手の思惑を超えた偶然なのだろうか。ともかくエレクトリック・ライト・オーケストラの「オール・オーバー・ザ・ワールド」 が流れるエンディングの幸福感ったらない。

 

第5位「リンカーン弁護士」The Lincoln Lawyer(アメリカ)

ブラッド・ファーマン監督作品

スケールの大きな二枚目役者として売り出していながら、なかなか決定打が出ないで惜しいポジションに甘んじていたマシュー・マコノヒーが、ようやく 掴んだ金鉱脈。法解釈スレスレのところをうまく利用して、裏稼業の連中を助けるヤクザな弁護士。頭と度胸で世間を渡るその言動はなかなか痛快だが、彼には 彼なりの独自の倫理観がある。こんな食えない男を見事に演じてみせたマコノヒーは、「動く標的」でハードボイルドな私立探偵を演じたポール・ニューマンの 二代目を襲名できそうだ。

 

第6位「ヤング≒アダルト」Young Adult(アメリカ)

ジェイソン・ライトマン監督作品

いつまで経っても大人になれず、世の中を自分中心に渡れると思っている勘違い女を演じて、シャーリーズ・セロンが何ともイタイ好演。しかしもっとも イタイのは、そんな彼女がすでに「賞味期限切れ」に限りなく接近していること。いやいや…それよりもっとイタイのは、そのことを彼女自身もどこかで薄々感 づいていながら、見て見ぬ振りをしていることだろう。これは正直言って、僕も人ごととは思えない。「マイレージ・マイライフ」に続いて、「大人になりきれ ない」大人を描いてジェイソン・ライトマンは秀逸。

 

第7位「崖っぷちの男」Man on a Ledger(アメリカ)

アンガー・レス監督作品

「アバター」「タイタンの戦い」と大いに売れているニュー・スターのサム・ワーシントンだが、実は一番感心した出演作はこれ。脱獄した男がニュー ヨークのホテルの最上階にやって来て、窓の外に出て警察と交渉を開始。一体この男の狙いは何なのか? ところがそれと並行して、男の無実の罪を晴らすため の作戦が進んでいた。あの手この手の工夫が盛り込まれ、見ていて飽きない映画。大味なCG大作やシリーズ作品、リメイクなどが氾濫する今のハリウッドで、 抜群のオリジナリティーを持ったこの作品が生まれた意義は大きい。

 

第8位「桃<タオ>さんのしあわせ」桃姐 (A Simple Life)(香港)

アン・ホイ監督作品

映画プロデューサーである主人公が長年身の回りを見てくれた家政婦の桃(タオ)さんの衰えと直面し、その最後までを看取る物語。父が亡くなり母が年 老いた僕にとってシャレにならない内容だが、決してキレイごとでなくリアリティのある扱いに感心した。誰しも自分の生活がある以上、理想通りにはいかない のだ。さらに一方でアン・ホイにとっても縁が深い「香港映画界」の、この何十年間の変遷ぶりがチラリと窺われるのもミソ。ある意味では、僕にとって「アル ゴ」と同じ楽しさがあった。

 

第9位「ウェイバック/脱出6500km」The Way Back(アメリカ、アラブ首長国連邦、ポーランド)

ピーター・ウィアー監督作品

スターリン時代に捕らえられた主人公が、シベリアの収容所から仲間たちと脱獄。そのままどんどん南下して、砂漠を超え雪山を超えて、さらにはインド まで到達するというウソのような実話の映画化。最後のほうでは何のために逃げるのか…ということよりも、逃げること自体が目的化しているよう。まるでこの 後の第10位で取り上げる「星の旅人たち」に出てくる「巡礼」のようにも見える。コリン・ファレル、エド・ハリスなど芸達者も揃えて見応えありで、久々の ピーター・ウィアーはさすがの力量を見せた。

 

第10位「星の旅人たち」The Way(アメリカ)

エミリオ・エステベス監督作品

父親マーティン・シーンを主演に迎えての、「巡礼」を描いた映画。才気走ったうまさなどは元々持ち合わせていないエミリオ・エステベスだが、全編に 渡って彼ならではの「誠意」「誠実さ」がにじみ出る。それゆえに見ている僕らも、主人公たちと旅をしているような気分になる。そもそも映画って「旅」をす るような体験だと僕は思っているから、この作品にはかなり魅了された。立派な作品でも優れた作品でもないかもしれないが、個人的にすごく好きな作品だ。

 

 

さらに今年は、本当に見ていてオモシロイ作品が多かった。とても10本に収まらなかったので、以下にベスト20まで紹介したい。ある意味でそれぞれベスト10とも共通する魅力を持っている作品群だ。

 

 

第11位「007/スカイフォール」Skyfall(アメリカ、イギリス)

サム・メンデス監督作品

人間くさいボンドの総集編。僕の中では「桃<タオ>さんのしあわせ」とつながっているかも。

 

第12位「おとなのけんか」Carnage(フランス、ドイツ、ポーランド)

ロマン・ポランスキー監督作品

うますぎる。芸達者たちの使い方・さばき方も見事。あまりにうますぎるが故のこの順位。

 

第13位「ルルドの泉で」Lourdes(オーストリア、フランス、ドイツ)

ジェシカ・ハウスナー監督作品

これも「星の旅人たち」と共通する「巡礼」映画か。人生とは不条理なモノと受け入れるべし。

 

第14位「アーティスト」The Artist(フランス)

ミシェル・アザナヴィシウス監督作品

圧巻のタップダンス。サイレント映画と見せかけた、何とも巧みなサウンド重視の映画。

 

第15位「アポロ18」Apollo 18(アメリカ)

ゴンザロ・ロペス=ギャレゴ監督作品

アポロ計画秘話といういかがわしさに惹かれる。僕はこういう映画に弱いのだ。

 

第16位 「鍵泥棒のメソッド」Key of Life(日本)

内田けんじ監督作品

この監督の話術はもはや名人芸だが、今回は特に時制をいじくるギミックに頼ってないのがエライ。

 

第17位 「菖蒲」Tatarak (Sweet Rush)(ポーランド)

アンジェイ・ワイダ監督作品

「人が死ぬ」という厳粛な事実を何とか観客にも共有させるための、巨匠ワイダの大胆な企み。

 

第18位 「ライク・サムワン・イン・ラブ」Like Someone in Love(日本、フランス)

アッバス・キアロスタミ監督作品

人ってどうしてもテメエの都合のいいようにしか物事見ていない…という真理が、ズバリと描かれる。

 

第19位 「最終目的地」The City of Your Final Destination(アメリカ)

ジェームズ・アイヴォリー監督作品

いつになくユルい展開で見せるアイヴォリー作品だが、見終わった後の幸福感は忘れがたい。

 

第20位 「最強のふたり」Intouchables (Untouchable)(フランス)

エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ監督作品

アース・ウィンド&ファイアの曲の魅力をうまく活用した、センスの良さに尽きる。

 

 

 

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