年々仕事にとられる時間が多くなるばかり。仕事の量が増えただけでなく、効率が著しく落ちてきたのだ。そのため、映画を見る時間が減っていくだけでなく、見る意欲も減ってきたような1年だった。その理由は、この年の年末に衝撃的なカタチで判明することになる。


この年の映画本数は、東京国際映画祭で見たキン・フーの「忠烈図」も入れて58本。ついに60本すら割ってしまったわけだ。ますます映画ファンとい うには厳しい状況となっているが、それでもかなり見る価値のある作品を見いだせただけよかった。ここに挙げた10本の作品は、どれをとっても間違いのない オススメ作品。これを読んでいるみなさんがまだ未見なら、ぜひDVDででもご覧いただきたい作品ばかりだ。

 

 

第1位「(500)日のサマー」(500) Days of Summer(アメリカ)

マーク・ウェブ監督作品

ハッキリ言ってこれは2010年のダントツのベストワンというだけでなく、ここ数年の映画の中でもすぐれた1本と言えるかもしれない。ある男の苦い 恋愛の顛末を描いて、言ってみれば21世紀版「アニー・ホール」とでも言うべき作品になっているのだが、その成熟度は格段にこちらの方が上。男の側からの 自己憐憫にも自己正統化にもならず、かといって作り手が火の見櫓の上に乗っかって見下すカタチにもならず、主人公に適度に暖かい視点を持って接しているそ の「距離感」が素晴らしい。何より恋愛に「運命」などない…というメッセージを、否定的ではなく肯定的に打ち出す発想の転換が素晴らしい。長く語り継がれ るべき映画。

 

第2位「スプリング・フィーバー」春風沈酔的晩上 (Spring Fever)(中国、フランス)

ロウ・イエ監督作品

「天安門、恋人たち」に次ぐ、ロイ・イエの素晴らしい進化。手持ちデジタルビデオ・カメラ撮影という条件を逆手にとって、不安定に揺れ動き危うげに 移ろう、自分でもどうなっているのか分からずどうにも出来ない感情という厄介なモノの正体に迫ろうとした作品。ある意味でこの年の僕の気持ちは、先に挙げ た「(500)日のサマー」とこの作品でほとんど語り尽くせるかもしれない。そして劇中で引用される「好きで浮世を漂うにあらず」という言葉は、今年を代 表するワン・フレーズと言っても過言ではないだろう。

 

第3位「義兄弟」Secret Reunion(韓国)

チャン・フン監督作品

今や出る映画出る映画ハズシなし…という感じで、韓国映画のエースの風格さえ漂うソン・ガンホがまたまたやった。南北分断を題材に制作されたサスペ ンス・アクション映画と聞けば、誰の頭にも浮かんでくる悲劇的なイメージを逆手にとってのウルトラC的力業のハッピーエンド。冒頭のカーチェース場面をは じめ、アクション演出もキッチリ見せる堂々たる娯楽映画ぶりが見事だ。

 

第4位「エリックを探して」Looking for Eric(イギリス、フランス、イタリア、ベルギー、スペイン)

ケン・ローチ監督作品

問題作ばかり発表する「社会派」の名匠として有名なケン・ローチは、確かに昔からそんな作風ではあったが、それでもかつては今ほど敷居が高い映画作 家ではなかったはずだ。そう思っていたところにこの作品が登場してきたので、僕はすっかり嬉しくなってしまった。早い話がかつて僕がイチオシしていたシン ガポール映画「フォーエバー・フィーバー」と同じ発想の作品。そんなハッピーエンドのファンタジーなのに、見事にケン・ローチの作品になっているから素晴 らしい。もっと上位に持っていきたいところだが、大晦日に見たということもあって割り引いての4位となった。

 

第5位「マイレージ、マイライフ」Up in the Air(アメリカ)

ジェイソン・ライトマン監督作品

それにしても、アメリカでも「地に足が着いていない」という表現を、同じような「Up in the Air」という言葉で表すのだろうか。煩わしいこと面倒なことから逃れるということは、結果的にすべての人間関係を人生から閉め出すことになる。この映画 の主人公はそんな男だが、それはそっくりそのまま僕自身の人生に重なってしまう。だから映画の終盤での展開に、僕はすっかり衝撃を受けてしまったのだ。映 画としても、終盤に出てくるジョージ・クルーニーの長時間アップはまさに至芸。

 

第6位「第9地区」District 9(アメリカ、ニュージーランド)

ニール・ブロムカンプ監督作品

「あの」南アを舞台に、難民宇宙人と地球人とのトラブルに巻き込まれ、数奇な運命を辿る男を描く物語。そうくれば、どうせ地球人対宇宙人の対立を描 いて人種対立などの不毛さを訴えるブラックユーモア的作品になっているだろうと察しがつく。確かにそれはそうなのだが、映画は終盤…卑怯で弱い主人公が立 ち上がる「男気」アクションへと変貌。見ている者の血圧を一気に上げていく。着想の良さやセンスよりも「熱さ」を買っての高順位だと思っていただきたい。

 

第7位「イエロー・ハンカチーフ」The Yellow Handkerchief(アメリカ)

ウダヤン・プラサッド監督作品

あの山田洋次のあまりに有名な代表作を、ハリウッドがリメイク…そう聞いたら期待より不安の方が大きくなるのが人情というものだろう。しかしこの作 品は、ある意味でオリジナルを超えた作品になったのではないだろうか。圧倒的な感動作というより、ヒッソリとした佇まいの愛すべき作品。しかしその押しつ けがましくない態度が、ラストの「善意の勝利」というテーマにリアリティを与えている。元々アメリカのネタなわけだし、ロードムービーはアメリカの十八 番ってこともあるだろうが、僕はどちらかと言えばこちらのリメイク版の方が好きかもしれない。

 

第8位「バッド・ルーテナント」Bad Lieutenant - Port of Call New Orleans(アメリカ)

ヴェルナー・ヘルツォーク監督作品

あの鬼才ヘルツォークが、アメリカ映画を撮るなんて想像できただろうか? しかもリメイク作品を手掛けるとは全く考えられない。こうやって無事完成 したこと自体が奇跡だと思うが、出来たら出来たで彼らしい作品にはなっていないのではないか?…という懸念が胸をよぎる。しかし、それはまったくの取り越 し苦労だった。怪しげな爛熟ニューオルリンズを舞台にしたのが大正解。「イエロー・ハンカチーフ」と並んでハリケーン・カトリーナを扱った素晴らしい作品 に仕上がった。ヘルツォーク復活の要因は、今は亡きクラウス・キンスキーとある意味で匹敵する怪優ぶりを見せ付ける、ニコラス・ケイジを手に入れることが できたからだろう。

 

第9位「月に囚われた男」Moon(アメリカ)

ダンカン・ジョーンズ監督作品

ほとんど狭いセットだけの撮影、ミニチュアを使ったアナログ特撮、サム・ロックウェル出ずっぱりの「一人芝居」…と小品そのものの作品だが、低予算 映画はアイディア勝負を地でいった佳作となった。近年でも出色のSF映画。何とデビッド・ボウイーの息子というダンカン・ジョーンズ監督は、大変な才能の 持ち主かもしれない。これでラストさえ腰砕けにならなかったら、大傑作になった可能性アリ。

 

第10位「ナイト&デイ」Knight & Day(アメリカ)

ジェームズ・マンゴールド監督作品

イマドキ何が悲しくてトム・クルーズとキャメロン・ディアズ共演で、スパイ物語のロマンティック・コメディをつくらなくちゃならなかったのか。どう 見ても旬をハズした残念な映画になっているかと思いきや…これが意外や意外、なかなかに楽しい作品になっているから映画というものは分からない。クルーズ もディアズも少々峠を越えちゃっているから、人生の分岐点に立つこの作品の主人公が似合うのだ。この映画はハリウッド娯楽映画のパロディ的お笑いを狙って いると同時に、そんな人生の哀歓をチラつかせている。2大スターにこんなことを言っては申しわけないが、期待しないで見たら拾いモノの作品だった。

 

 

 

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