正直言って、この年の僕は映画サイトなんかやっていてはいけなかったのかもしれません。仕事はますます多忙となり、4月から11月までほとんど休日返上というアリサマ。おまけに父親の健康も芳しくなく、そんなこんなで映画鑑賞の本数は激減しました。


この年見た映画の本数は、東京国際映画祭で見た「超強台風」なんてのを加えてもやっとこ68本。前にも書いたことだが、大学以降これほど映画を見る 本数が減ったことはかつてない。そんな状態で映画を語っていいのかという疑念は、1年を通してずっと僕の胸にわだかまり続けましたが、これは一種の僕の備 忘録でもあると思い直して、ともかく何とかサイトを続けたというのが正直なところ。それでも忘れがたい何本かに出会えたのは幸運だった。ぜひとも見ておき たかった何本かを見逃してしまったのは残念至極だが、例えいつでもすべての映画を見られるわけではない。そういう意味では、今年はこれでよかったとしなけ ればなるまい。

 

 

第1位「天安門、恋人たち」頤和園 (Summer Palace)(中国、フランス)

ロウ・イエ監督作品

今年のナンバーワンを挙げようといろいろ考え、正直に言えばこの作品以外に2〜3本のタイトルが浮かんでは消えた。しかしながら…今年の僕の気分を 代表する映画として挙げるならば、やはりこの1本しか考えられない。元々ロウ・イエ監督の作品は大好きだが、この映画はいろんな意味で別格のような気がす る。あの、何をやっても夢中で熱に浮かされたような「若さ」と「バカさ」の時代。みんながみんな「青春の祭り」に参加しようと焦っていた時代。そんないつ の世でも…世界のどの国でも若者が経験する「あの時代」の実感を、リアルに感じさせて秀逸。そして、光り輝いていた「理想」と「自由」が、その後、アッと いう間に色褪せてしまうこと。にも関わらず、それをいつまでも追い求めずにいられないこと。…そんなこの映画のヒロインたちが通っていく道のりは、すべて 僕自身が経験したことだ。これは決して政治的映画などではない。

 

第2位「アフタースクール」After School(日本)

内田けんじ監督作品

前作「運命じゃない人」ですっかり驚かされた内田けんじ監督の新作は、またまた緻密な構成で組み立てられた知的な娯楽作。しかし今回は、単に「よく 出来た作品」という域を超えている。いろいろ指摘したい点はあるが、何より主人公・神野(大泉洋)のセリフ「人生つまらないのは、オマエがつまらないから だ」にトドメを刺す。前々から自分でも思っていたことをズバリと言ってもらったみたいで、このセリフには思わず膝を叩きたくなった。人生ほどサプライズに 満ちたものはないのだ。

 

第3位「ジェシー・ジェームズの暗殺」The Assassination of Jesse James by the Coward Robert Ford

(アメリカ)

アンドリュー・ドミニク監督作品

巷ではひどく評判の悪かった作品ながら、僕はこの映画を全面的に支持する。ブラッド・ピットも久しぶりに素晴らしい。目に染みるような美しいカメラ も特筆ものだ。だが、この映画の最大の美点はそこではない。ジェシー・ジェームズという虚像と実像に引き裂かれた男の悲劇を描いた映画と見るのもよし。ま た、ジェームズと暗殺者…これがおよそ暗殺者らしからぬ情けない男…との「愛憎」相半ばする間柄の緊張感を描いた映画と見るのもよし。ともかく人生の「ま まならなさ」を、デリケートなタッチで描き出したところが優れているのだ。

 

第4位「ラスト、コーション」色・戒 (Lust Caution)(中国、アメリカ)

アン・リー監督作品

一部でスキャンダラスな話題を巻き起こしたこの作品、当然、作品の主眼はトニー・レオン扮するイーと大型新人タン・ウェイ扮するヒロイン=ワン・チ アチーとの、虚実スレスレの愛であると見るべきだろう。しかし僕がこの作品に強く惹かれた点は、実はそんなところではない。ヒロインがこんな関係に陥る キッカケとなった「夏休み抗日合宿」、その傲慢さ残酷さ加減こそが最も身につまされた。僕もこのヒロインの気持ちには、身に覚えがある。「正義」「正論」 をカサにきて、誰かに犠牲を強いる連中…こういうなまじっか「錦の御旗」があるだけにタチが悪い連中に、僕も何度も何度も煮え湯を飲まされてきた。「理 想」や「お題目」などただの屁理屈に過ぎない。「一人の人間」として選択するならば、どんな事情があろうとも迷わずイーを選ぶだろう。そんな「人生の真 実」が描かれているからこそ、この作品は素晴らしい。この映画は痛ましい「初恋物語」なのである。

 

第5位「ダージリン急行」The Darjeeling Limited(アメリカ)

ウェス・アンダーソン監督作品

最初は頭でっかちでチマチマした印象しかなかったアンダーソン監督だが、作品を発表するたびにどんどん良くなる。今回は以前と比べてちょっとラフな 印象もあるが、そのラフさが見事に作品の「タフさ」につながっているから見事だ。そんな理屈はともかく、僕は冒頭のキンクスの「ディス・タイム・トゥモ ロー」が聞こえてきたとたんにノックアウトだった。これは理屈ではないな。

 

第6位「ドラゴン・キングダム」The Forbidden Kingdom (功夫之王)(アメリカ)

ロブ・ミンコフ監督作品

ジャキー・チェンとジェット・リーを初共演させた…という一言で、すべてを語りきってしまう映画のように思えるが、これがなかなかどうして奥が深 い。カンフーや剣戟映画など中国娯楽アクション映画の醍醐味を、ファンタジーのかたちで味あわせてくれる素晴らしさ。ちょうどでMGMミュージカルの粋を たっぷり楽しませてくれた「ザッツ・エンタテインメント!」のような、「芸」もここまで来れば「芸術」の域と思わせる作品なのだ。ここでのジャッキーと ジェットは、まさにアステア&ケリーなのである。だから僕にとっては、オープニング・タイトル・クレジットに出てくるショウ・ブラザース作品のポスターへ のオマージュで、すでに涙滂沱になってしまった。この映画には、確実に先人への愛がある。そこが何より気に入った。

 

第7位「エグザイル/絆」放・逐 (Exiled)(香港)

ジョニー・トー監督作品

何でもこなせる職人ながら、硬質なアクション映画では「水を得た魚」として突出した凄味を見せるジョニー・トー。今回はそこに「やりたい放題」な条 件が加わった。結果として、ジョニー・トーの好きな要素、やりたい要素だけでつくられた映画なので、「ザ・ミッション/非情の掟」などと比べられてシビア に完成度を問われるとキツイかもしれない。しかしジョニー・トーのやりたいようにつくった作品とあって、どこを切っても100パーセントのジョニー・トー が溢れている。こりゃファンにはたまらない作品ではないか。もちろん僕も、見ていて悶絶しっぱなしだ。

 

第8位「クローバーフィールド/HAKAISHA」Cloverfield(アメリカ)

マット・リーブス監督作品

この作品をベストテンに入れること自体、異論反論を呼びそうな気がする。それはこのジャンルの映画がベストテンに似つかわしくない…ということでな くて、うまく人を巻き込んでいく一種のフェイク作品として、見ている者にどこか「邪道」なモノを感じさせるからだろう。しかし僕は、かつて「ブレア・ ウィッチ・プロジェクト」が好きだった人間だ。「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」も「映画じゃない」などと揶揄されていたっけ。僕は「ブレア」のハッタ リ感が気に入っていたので、この作品も見たい見たいと思っていたし、見たら案の定堪能できた。何よりケレン味たっぷりのアン・アイディアだけで、一級の作 品に仕上げた手腕はさすがだ。

 

第9位「最高の人生の見つけ方」The Bucket List(アメリカ)

ロブ・ライナー監督作品

僕の大好きなロブ・ライナー監督の作品だが、ここ近年はどうも今ひとつな気配。今回もスター中心の大味映画だろうと侮っていたら、これにはビック リ。久々に復活の兆しを感じさせる出来栄えとなった。確かにジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマンの2大スターの至芸に助けられたきらいはあるが、 笑って笑って笑わされたあげくに、最後に人生の真実をチョコッとずつ教えてくれるという、ロブ・ライナー監督作品ならではの出来栄えとなった。個人的に 「人生の終末」について考えることが多くなったことも、この作品に惹きつけられた大きな理由だろう。

 

第10位「ハッピーフライト」Happy Flight(日本)

矢口史靖 監督作品

「スウィングガールズ」の矢口史靖監督なら、どんな題材でもきっと面白くする…そう思って見始めた僕だが、予想に違わぬ…どころか予想を超えた面白 さ。まずはいろいろ語りたいところだが、「飛行機が飛ぶ」だけのエピソードで全編押し切るのは勇気が要っただろう。多少脚本にはギャグが滑る部分もあるに はあるのだが、ともかく前人未踏の本格「航空映画」というだけで見る価値がある。昨年、僕が飛行機に関する本をつくった…という個人的な事情をさっ引いて も、これは絶対にお勧めだ。飛行機ファンなら必見のはず。

 

 

 

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