年々増える一方だった見た映画の本数が、いきなり大きく後退した年でした。仕事の関連で八月以前と八月以降では、見ることが出来た映画の数が激減。何でもかんでも見るという事はなくなり、かなり選んで見るようになったのは致し方ないところでしょう。


2005年に僕が観た映画は、6本の旧作上映、3本の映画祭特別上映を除くと全部で113本。ただし七月いっぱいまでの合計本数は88本だから、もしこのままのペースでいったら昨年をも超える勢いだった。逆に八月以降はかなりのペースダウンということになる。

この年のベストテンの傾向はというと、3本の香港作品を中心にした中国語圏映画の復活。逆に巷の「韓流ブーム」に背を向けるかのように韓国映画が激 減する事になった。ランクインしなかったもののジョニー・トー監督の「PTU」「ブレイキング・ニュース」も含めて、長らく退潮傾向にあった香港映画に今 までにない活気を感じた一年だった。

 

 

第1位「香港国際警察」新警察故事 (New Police Story)(香港)

ベニー・チャン監督作品

正直に言って僕はそれほど熱心な香港映画ファンでもなければ、ジャッキー・チェンにさほどの思い入れがある人間でもない。にも関わらずこの映画には 無条件に熱くなった。活劇としてもさることながら、全編に漲る熱い気迫には恐れ入るばかり。最近こんなにホットな映画を見た事があるだろうか。いざとなっ た時の底力といい、ジャッキー・チェンがいかに偉大な映画人かという事を思い知らされた。しかもそんな「精神主義」だけで見せる訳でない、映画本来の魅力 としての面白さ。この作品は昨年の映画界の「事件」だろう。

 

第2位「アルフィー」Alfie(アメリカ)

チャールズ・シャイア監督作品

ずっと嫁さん(ナンシー・マイヤーズ)の後塵を拝していた男が、ついにやってくれた! 天下の二枚目俳優ジュード・ロウがその真価を発揮した作品で もある。ここまで邪気のない二枚目ぶりだと男もひがめない。何とも愛嬌タップリで、ショボくれていく後半まで愛すべき彼なのだ。そして「人生の夏休み」が いつまでも続く…と思っていた男が、イヤでも目を覚まさなければならなくなる物語には、思わず身につまされてしまった。「オレ、これから変われるんだろう か?」とうたわれる、ミック・ジャガーによる狂言回しの歌も泣ける。

 

第3位「頭文字<イニシャル>D/THE MOVIE」頭文字 D (Initial D)(香港)

アンドリュー・ラウ&アラン・マック監督作品

「インファナル・アフェア」チームが放つ「想定外」の快作。マンガが原作で、香港映画人が日本のお話をつくる…と来て、到底出来映えは期待できない とタカを括っていたらこの鮮やかさ。カー・アクションの見事さもさることながら、青春映画としての手応えもなかなか。キャスティングも彼らが「広東語を しゃべる」という事以外は完璧(笑)。しかも、見ているうちに言葉なんてどうでも良くなる素晴らしさ。僕の中の既成概念が完全に覆った。

 

第4位「レイクサイド・マーダーケース」The Lakeside Murder Case(日本)

青山真治 監督作品

年頃の子供を持つ人でも、もう子供を育て終わってしまった人でも、まだ子供を持ったことのない人や子供を持つ気がない人でも…誰もが「人ごと」とは 言ってられなくなるサスペンス・ドラマ。「お受験」なんて一見ありがちなネタを扱っても、見ている者になかなか結論を出させてくれず登場人物と一緒に思考 を堂々巡りさせられてしまう「悪夢のスパイラル構造」。それでいてキッチリとエンターテインメント映画になっているから驚いた。これ、ホントに青山真治の 映画なの?

 

第5位「ワンナイト・イン・モンコック」旺角黒夜 (One Nite in Mongkok)(香港)

イー・トンシン監督作品

この年はジョニー・トーの犯罪アクション映画が2本も登場する豊作ぶりだったが、同傾向の作品としてこの「モンコック」を見てしまったので、これに すべてを代表させることにした。ジョニー・トー・ファンには申し訳ない。この作品はクールなサスペンス・アクションとしても楽しめるが、何より主人公二人 のいとおしさにやられてしまったのだ。この映画が限られた形でしか後悔されなかったのは極めて残念。

 

第6位「大統領の理髪師」The President's Barber(韓国)

イム・チャンサン監督作品

「政治」と「庶民」との関係を描いて、凡庸なモノにしようと思えばどこまでも凡庸に出来るこの題材を、かくも新鮮で衝撃的…そして親しみやすく描く とは、まさに驚異的。政治をファンタジーにくるんで描こうという発想は「ブリキの太鼓」からのイタダキにしても、出来上がりは格段の違いを見せつけた。独 裁者までも一面では品格ある人物であるとキッチリ描き込んで、ともかくメッチャクチャに成熟した大人の眼差しなのである。

 

第7位「パープル・バタフライ」紫蝴蝶 (Purple Butterfly)(中国、フランス)

ロウ・イエ監督作品

「戦争」というものの本質に斬り込んで、これまたどんなに凡庸に描こうと思えば描けたものを、ここまでユニークな視点で描ききるとは。動機が理想で あれ正義であれ…ともかく戦争に手を汚した人間は、すべて思考が硬直した「時に宙づりにされた魑魅魍魎」になってしまうのだ…という発言は今だから貴重。 これを日中戦争を舞台にして、中国側から発言する勇気には驚いた。しかもそんなシャチこばった「メッセージ性」の希薄なこと。この作品はまず奇妙で魅惑的 で面白い映画であるのが素晴らしいのだ。ともかく見ていて、その映画的な魅力に酔わされる。

 

第8位「チャーリーとチョコレート工場」Charlie and the Chocolate Factory(アメリカ)

ティム・バートン監督作品 

「大人になって」からというものイマイチ感が強かったティム・バートンの久々の傑作。しかも「子供」バートンに戻った訳ではない、あくまで「大人」 バートンの新たな出発を思わせるから見事なのだ。しかも堂々たるエンターテイメント性。ジョニー・デップのコテコテ芝居だけでも見とれるに十分。

 

第9位「運命じゃない人」A Stranger of Mine(日本)

内田けんじ 監督作品

まるっきり期待できなさそうな「自主制作マイナー映画」まるだしのスタイルの作品から、こんなハジけた映画が登場するとはビックリ。「時間軸いじく り」映画としてかなりの傑作。しかも単に「面白い映画」でしかなくて、余計な作者の思い入れなんか微塵もない。それをここまで全うしているのがスゴイ。イ マドキこんな贅沢な事はないよ。

 

第10位「スター・ウォーズ/エピソード3:シスの復讐」Star Wars - Episode III : Revenge of the Sith(アメリカ)

ジョージ・ルーカス監督作品

「スター・ウォーズ」サーガの新三部作は、これまでの二作は「どうなっちゃってんの?」と思わされるものばかりだったが、今回はついにやってくれ た。どうしようもない力で、アナキンも観客も一気にクライマックスまで連れて行かれていってしまう。このストーリーラインの力強さが、ずっと欲しいと思っ ていたのだ。すべてが終わってからの、「エピソード4」=第一作へとつながる映像の数々には、さすがに涙腺が潤んだ。

 

 

 

以下に挙げる作品群は、ベストテンからハミ出してしまったもの。題名だけでも列挙しておきたい。

次点「天上草原」天上草原 (Heavenly Grassland) (中国)

サイフ(塞夫)&マイリース(麦麗絲)監督作品

次点「サイドウェイ」Sideways(アメリカ)

アレクサンダー・ペイン監督作品

次点「ビューティフル・デイズ」Ada apa dengan Cinta ? (What's Up with Love ?)(インドネシア)

ルディ・スジャルウォ監督作品

次点「亀は意外と速く泳ぐ」Kame wa igai to hayaku oyogu(日本)

三木聡 監督作品

 

 

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