新作映画1000本ノック 2018年11月

Knocking on Movie Heven's Door


このページの作品
 「スカイライン/奪還」 「イコライザー2」 「スカイスクレイパー」

 

「スカイライン/奪還」

 Beyond Skyline

Date:2018 / 11 / 12

みるまえ

 「世界侵略:ロサンゼルス決戦」(2011)など宇宙人征服もの映画が氾濫していた最中に、それらの1本としてドサクサまぎれに日本公開された「スカイライン/征服」 (2010)。何と今回その続編が公開されるではないか! 実はその続編がちょっと奇妙な出来映えだ…と知人から聞いて、慌てて見逃していた前作をDVD で見た…というのがつい最近の話。こうした見た「〜征服」は、正直言ってアホな登場人物ばかり出てくるアホ映画だった(笑)。ただ、何だかうまいことやっ てソコソコ稼いだようで、だから今回続編を作ることが出来たのだろう。そして、確かに続編を作りそうなエンディングではあった。そんな訳で前作の予習も終 えて準備オッケー。果たして続編では、いかなるカタチでその「ちょっと奇妙」なことをやらかしているのか。珍品映画好きとしては、どうしても気になって仕 方がなかったため、そろそろ公開終了が近い劇場の深夜上映に、慌てて足を運んだという訳である。

ないよう

  夜の病院に、ストレッチャーに横たわった一人の女が緊急搬送される。青ざめた女は集中治療室へと運び込まれるが…。それからしばらくして、真夜中のロサン ゼルス。ピックアップトラックに乗って、一人の男が警察署の前までやってくる。その男の名はマーク(フランク・グリロ)。彼が警察署の受付にやってくる と、婦警が親しげに彼を迎える。そう、マークはここの刑事を勤めていて、訳あってしばらく休んでいたのだ。そんな彼のもとに、かつての同僚ガルシア刑事 (ジェイコブ・ヴァルガス)がやってくる。マークがここにやってきたのは、このガルシア刑事に呼ばれたからだ。実はマークの息子トレント(ジョニー・ウェ ストン)が悪さをやらかして、署に留置されていた。しかも、捕まったのは今回で3度目。「刑務所に送って構わない」と吐き捨てるように言うマークだった が、ガルシアは「今回が最後だぞ」と念を押して何とか釈放させてくれた。なぜなら、彼はトレントが荒れる理由を知っていたからだ。こうして署からトレント を連れ出してクルマに乗せたマークだが、生憎とエンジンがいうことを聞かない。クルマの中に酒ビンが転がっているのを見たトレントは、呆れた顔でクルマを 飛び出した。マークとてトレントをとやかく言えない、荒れた暮らしをしていたのだ。苛立つように地下鉄の入口を駆け下りて行くトレントだったが、そこに 立って物乞いをしていた盲目の老人サージ(アントニオ・ファーガス)に小銭を恵む優しさはまだ残っていた。そんなトレントの後を追って、一緒に深夜の地下 鉄に乗り込むマーク。彼らとて憎み合っている訳ではない。あの日、マークの妻ローズが不慮の事故で亡くなるまでは、幸せで仲のいい親子だったのだ。ところ がマークとトレントがそんな思いに耽っていたその時…いきなり地下に振動が走って電車が急停車するではないか。さらに追い打ちをかけるように振動が走り、 乗客たちが動揺する。マークは操縦室に向かうと、運転手のオードリー(ボヤナ・ノヴァコヴィッチ)が司令室と連絡を取ろうとしていた。だが司令室からは雑 音とともに、「光に気をつけろ」「光を見るな」という奇妙な指示があっただけで、連絡はプッツリと途絶えてしまう。仕方なくマークを先頭に車両から降り て、地下道を歩いて行く乗客たち。何とか最寄りの駅に着いて地上に出ようとするが、そこで一人の女の乗客が不思議な光が見える出口の方へ歩いて行ってしま う。トレントがその女を追って出口にやってくると、女は光に魅入られるようにエスカレーターで上っていくではないか。「光を見るな」という言葉を思い出し たトレントではあるが、女を止めようとしているうちに彼も光を見て呆然。一緒に上に上がって行ってしまう。そこでトレントの異変に気づいて駆けつけたマー クが何とかトレントを止めようとするが、もう止まらない。頭上には巨大な宇宙船。そこから放たれた光に人々がどんどん吸い寄せられて行く。トレントも吸い 寄せられて上に舞い上がろうとしていたが、その足をマークがガッチリ掴んだ。彼は何とか光を見ずにトレントの足を掴みながら、必死に地下鉄入口の屋根にし がみついていた。やがて光の放射が終わると、吸引されていたトレントもその力から解き放たれた。こうして危機を逃れたマークは、トレントを連れて地下へと 戻るのだった。こうして自分たちが置かれた状況を把握したマークは、乗客たちを伴って地下道を移動することにする。途中、そこに物乞いのサージや警察署か ら脱出したガルシア刑事と婦警も合流。わずかに無線でとれた連絡から、とりあえず波止場へと向かうことになるのだが…。

ここからは映画を見てから!

みたあと
  大変申し訳ないが、この時点でまだお話の3分の1にも達していない。この後、お話は一転して宇宙船内に吸い込まれた主人公たちを描くことになるが、これが 結構長い。そして、ここで今回のお話は前作と連結を果たすのである。前作の登場人物が、宇宙船内で本作の主人公たちと遭遇するのだ(ただし、前作とは役者 が変わっている)。そこからある意味でアッと驚く展開になっていくのだが、本作はそれで終わらない。その後、主人公たちは宇宙船から脱出できるのだが、そ こでもまだ物語の半分でしかない。何と映画の後半は舞台がガラリと変わり、東南アジアのラオスで展開していく。そこで映画のジャンルすら一変するような変 貌を見せるのである。

こうすれば

  正直言って、本作はかなり乱暴な作品ではある。前半と後半ではまるで別の映画みたいな印象で、106分という決して長い上映時間ではない作品なのに、まる で3本ぐらいの映画を見たような長さを感じる。それは、水と油みたいに異なる要素をブチ込んだ構成のせいもあるが、ちょっと中盤が長過ぎてダレるからでも あるだろう。特に僕はグチャグチャネチョネチョ系が弱いので、中盤の宇宙船内の場面が長かったのは生理的に少々ツラかった。閉所恐怖症的な気分になったこ ともあるが、実際ここが閉塞感が強くダレる要素が満載だったように思う。個人的には最後まで生き残る「ヒロイン」役…地下鉄運転手のオードリーがまるで役 立たずでむしろ足を引っ張っているのが気になった。演じるボヤナ・ノヴァコヴィッチも、何でわざわざセルビア出身の女優さんがこの役に起用されたのかが分 からない。お話としては、前作で「人間の脳を食っている」のかと思っていたら、どうやら人間の脳を自分たちの奴隷用サイボーグのために使っていたらしいと 分かって納得したようなしないような…。光線で吸い寄せられかけながら一度は逃れることが出来た人間の脳は、切り取られてエイリアン・サイボーグに使われ ても「人間性」を失わない…という本作のルールも何となく分かった。ただ、ちょっとSF映画としては強引なルールだよねぇ…。ハッキリ言って、本作はSF 好きを対象にした作品ではないんだろうな。

みどころ

  だが、映画の後半で舞台がラオスに移ると、お話はガラッと大きく変わる。まず個人的にはグチョグチョな宇宙船内から出られただけで、開放感があって救われ た(笑)。そして主要登場人物の入れ替えがあってラオスの地下組織の連中が主導権を握ると、それまでのSFホラー的な内容がジャンルからして一変してしま う。特にアンコールワットみたいな遺跡で宇宙人と主人公たちが戦う場面は、本作の文字通りハイライト。何と重火器などはあまり使わず、アジア系格闘技によ る肉弾戦になるからビックリ。実はこれがやりたかったんだろうねぇ。この戦う場面では「ザ・レイド」(2011)というインドネシア産のアクション映画に 出ていたイコ・ウワイスとヤヤン・ルヒアンという二人の俳優が大活躍。ただし、前者は地下組織のリーダー格として後半ずっと出てくる重要人物だからいいの だが、後者はこの終盤の戦いのためだけに出てくるような取ってつけたようなキャラクターなので、単にここで戦わせたかっただけだったと露骨に分かる。さら にそれが終わると、今度は宇宙人が乗り込んだ巨大ロボと人間脳入りエイリアン・サイボーグが乗り込んだ巨大ロボとの一騎打ちという、宇宙人版「パシフィック・リム」 (2013)みたいな趣向となる。まぁ、作り手がやりたいことを全部乗せしているんだろうが、ハッキリ言ってバランスはまったく良くない。僕はあまりアク ション映画の界隈についてはよく知らないのだが、「ザ・レイド」という作品には熱狂的に支持する好事家がいるみたいなので、そういう人々にとってはたまら ないのかもしれない。ただ、先に述べたように無条件でいい出来かというと、残念ながらちょっと悪ノリし過ぎと言うべきだろう。それでも本作の奇妙さと文句 なしのサービス精神にはついつい笑ってしまうし、それなりの楽しさを感じて僕は決してキライにはなれない。しかも一種のバカ映画、トンデモ映画でしかない かと言えば、そうとも言い切れないのが不思議なところ。前作のお話との絡ませ方の巧みさや主人公マークの親子の情の描き方など、決して悪くないし下手でも ないからだ。ただ、やりたいことをギュー詰めした結果、お話のバランスが極端に悪くなったこと、重要人物をコロコロ殺しちゃうなど扱い方が雑なこ と…などは否めないところ。それでも、人間の描き方は前作よりはかなり良くなっているのではないか。監督のリアム・オドネルは前作でも脚本を担当している ので、意外に彼の方がこのシリーズのキーパーソンなのかもしれない。

さいごのひとこと

 ハンバーグ・カレーの大盛り。

 

「イコライザー2」

 The Equalizer 2

Date:2018 / 11 / 12

みるまえ

 前作はデンゼル・ワシントンの「必殺仕事人」みたいな話で、バカバカしい話を大マジメに演じるデンゼルが面白かった。「マグニフィセント・セブン」 (2016)同様、スターとしての安定感が抜群なのである。ホームセンターであの手この手で戦うあたりのサービス精神も嬉しい。アントワン・フークアは何 を撮っても大味だが、イキの良さだけはある監督だから見ていて楽しめた。今回は、その続編である。もちろん見たい。ただ、前のあの繰り返しだとどうなんだ ろう。アレをもっとエスカレートさせるのか。そして、キャリアの最初の頃は名優ぶりを発揮していたデンゼルだが、最近はもっぱら大味娯楽作ばかり…っての も役者としてどうなんだろうか。そんなことを思いながらも、ソコソコ楽しませてくれるのだろうということは確信しながら、劇場へと向かった。

ないよう

  ここはトルコ、イスタンブールから400キロ離れた走る列車内。ユダヤ教のラビの服装をした男が、食堂車へと歩いて行く。ラビの服装をした男は何かを注文 しようとしたが、言葉が通じない。だが、その場にいる男がカウンターにいた店員に声をかけ、ラビの服装の男が望んでいたお茶を出させてやった。ラビの服装 の男は英語を話すアメリカ人…あのロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)である。マッコールは男に礼を言うと、世間話を始める。だが、にこやかに 話をしていた男の顔は、たちまち険しくなっていった。いわく、マッコールはトルコに男を探しに来ている、アメリカ人の母親から自分の娘を誘拐した男だ、そ の男には考え直す機会を与えてやるつもりだ…と。男はマッコールから離れ、食堂車で一緒にいた取り巻き3人に合図を送ると隅の席に腰掛けた。すると、取り 巻き3人がマッコール目がけて襲いかかったが…それからわずか19秒後、何が起きたかを改めてここで書くまでもないだろう。食堂車の床には息絶えた男たち が3人。マッコールはゆっくりと隅の席に座った男のもとへとやってくる。「痛みには二通りあってな、カラダの痛みと心の痛みだ。今、ここでどちらかを選ん でもらおう」…。その後まもなく、ボストンの法律事務所で母と娘の感動的な再会の場面があった。だが、彼女たちはトルコで何があったのかを知る由もな い…。何も語らず「事を済ませた」マッコールもまた、静かに元々の暮らしに戻っていた。今、彼はボストンでタクシー運転手として生活をしている。今日のお 客様は、いつも彼を指名してくれる上客のご老人サム(オーソン・ビーン)。普段は老人施設に暮らすサムは、書物の1ページを複写するためにコピー・セン ターへと向かう。その書物にはある絵画の画像が掲載されているのだが、それが戦争中に生き別れとなった妹の手がかりになると信じているのだ。だが、相変わ らず仕事をしたくない役人どもは、サムの思いを聞いてくれず落胆させることばかり。そんなサムの嘆きを、マッコールは静かに聞いてあげるのだった…。舞台 変わって、ここはベルギー。贅沢な家に暮らすカルバートという男(アントワーヌ・ラルティーグ)が、家に侵入してきた男たちによって妻と共に殺害される。 男たちはただカルバートを殺すだけでなく、妻を殺して自殺したと偽装までする手の込みようだった…。一方、マッコールは平凡なタクシー運転手として暮らし ていたが、なぜか犯罪は彼を放っておいてくれない。ある夜、高級ホテルで客待ちをしていたマッコールの元へ、若いビジネスマンがフラフラになった女を連れ てくる。無造作にカネを渡して、彼女を家まで送ってくれと言う訳だ。頼むだけ頼むとサッサとその場から去ったリーマンだったが、グッタリして泣きじゃくる 様子、衣服の乱れを見てとったマッコールは、即座にただならぬ気配を察知。彼女を病院に送り届けると、ホテルに舞い戻る。部屋では、ヤクをキメてご機嫌な ボンボンのビジネスマンたちがお楽しみ。クレジットカードが期限切れだと部屋に乗り込んだマッコールは、ビジネスマンたちにキッパリ宣言した。「いつもは 選ばせてやるところだが、今回はナシだ」…。それから19秒後、ホテルの部屋にケガ人がゴロゴロ転がったのは言うまでもない。そんなマッコールが自分が住 むアパートへと戻ると、アラブ系のオバサンが庭でささやかに育てていた野菜がひっくり返され、壁には小汚いチンピラの落書きが描かれていた。マッコールは 黙ってその目障りな落書きを消し始めるが、そこに通りかかったのが自称「芸術家」の若者マイルズ(アシュトン・サンダース)。彼はマッコールが頼まれもし ないのに落書きを消しているのに興味を持ち、なぜかマッコールと話をし始める。マッコールは彼に絵の才能がありながらロクに学校に通わず、悪い仲間とツル んでいることを知り、アパートの壁のペンキ塗りをバイトしないかと持ちかけるのだった。そんなある夜、アパートのマッコールの部屋に何者かが侵入。家に 戻ってきたマッコールはにわかに警戒するが、すぐにその正体に気づいて相好を崩す。侵入したのは、彼の元上司で友人であるCIA職員のスーザン(メリッ サ・レオ)。スーザンはマッコールの暮らしを心配して、こうして時々様子を見にやってくるのだ。この日はマッコールの亡き妻の誕生日で、彼と夕食を共にす るために訪問した訳だ。スーザンはマッコールにCIAに戻らないかと尋ねるが、マッコールはこれをやんわりと拒絶する。その代わり、近々ベルギー出張の スーザンにひとつの「頼み事」をするのだった。その「頼み事」とは、例の老人サムが語っていた絵画に関する調査だった。スーザンはその「頼み事」を片付け ると共に、ベルギー出張の本来の目的であるカルバート夫妻殺害について調査を進める。同僚のデイブ(ペドロ・パスカル)とともに現場を訪れたスーザンは、 どうもこの事件には裏があるらしいと気づく。そんな話をデイブと語りながらホテルの自室に戻ったスーザンだったが、そこに忍び込んだ男たちがいきなり彼女 に襲いかかって来るではないか…!

みたあと
  何だか長々とストーリー紹介をしながら、お話の本題になかなか入っていかない…と思われた方も多いかもしれない。まったくそのご指摘の通り。本作「2」の 特徴はそれである。前作で人物紹介は終わっているので、前作の132分よりは短い121分と多少コンパクトにはなっているものの、それにしてもあまり短く はなっていない。その理由は太い幹のようなメインのストーリーに至るまでに、細かな挿話がいくつも挟まっているからだ。それらはよく見ると本筋と不可分に 絡まってはいるのだが、直接関わってくるのはそれほど多くない。ともかく本作の構成は、ロシアの幼い娼婦を救出してロシアン・マフィアを撲滅する…という 前作ほどはストレートではないのだ。

こうすれば

  開巻まもなく、いきなり舞台はトルコの列車内である。これは完全に本編とは別で、いわばボンド・シリーズのオープニングの見せ場や寅さんシリーズの夢の場 面みたいに「あの男が帰ってきましたよ」という「お約束」の場面。これをやるってことは、今後「イコライザー」はかなりシリーズを重ねていくつもりなんだ ろうか。そして、それからボストンに舞台が移っていよいよ本題に入るかと思いきや…またもや話はベルギーへ…。要はワールドワイドにスケールアップといき たいのだろうが、続編につきものの「増量」がお話を面白くするかと言えば難しいところ。そもそも「ご町内の悪」を退治する「イコライザー」だったはずなの で、世界を股にかけた話になっちゃったら違うんじゃないのか…とイヤな予感が漂う。ただ、これも少々コケ脅し感のある趣向だったようで、実際にはワールド ワイドな演出もここまで。後はもっぱらアメリカ国内に舞台はとどまるから、ちょっと安心である。しかし、国際規模のスケール拡大はそのあたりで止まってい るものの、マッコールの活躍ぶりは膨らむ一方。それも、小さなモノから大きなモノまで…というヤンマー・ディーゼルのCMソングも真っ青なマメさ加減なの だ。それらを精力的にこなしていくマッコールのスタミナがスゴくて、その戦闘能力よりもむしろそっちのマメさ加減の方にずっと恐れ入ってしまう。その一方 で本題はなかなか進まないので、ちょっともどかしくもある訳だ。さらに、戦うたびに「決まり事」をこなしていく可笑しさ。前作では1回しか出てこなかった 例の「19秒」を、今回はかなり頻繁に見せていく。おまけに、悪党相手に「まず、オマエに選ばせてやる」的な「名ゼリフ」を吐くのもやたら多い。こういう のって、例えばヤマ場になると「ひと〜つ、人の生き血をすする…」みたいなセリフを毎回言うテレビ時代劇みたいな感じで、何だかますます「イコライザー」 の「必殺仕事人」化が進んできた感じ。マーク・ウォールバーグ主演の「ザ・シューター/極大射程」(2006) あたりから顕著だった、アントワン・フークア監督の「必殺シリーズ」傾向がますます先鋭化してきたようである。これってどうなんだろうねぇ。人ごとなが ら、マンネリ化が進むんじゃないだろうかと心配になる。そのくせ、前作にあったようなとてつもないバカバカしさ加減…例えば、堂々と歩いてくるマッコール の背後でタンカー大爆発…みたいなマンガみたいな描き方…は今回影を潜めてしまったような気がする。そのため、思わずゲラゲラ笑っちゃうようなスッコ〜ン と抜けた爽快感は、今回ちょっと減退しちゃったかもしれない。職業がホームセンターの店員からタクシー運転手になったこともあり、戦い方の面白さ・ユニー クさが少々乏しくなった観があるのも残念なところだ。

みどころ

  ただし、減退しちゃったところばかりじゃないから本作の評価は難しい。特に興味深いのは、クライマックスである終盤の台風真っ只中での戦い。無人になった 自分の故郷の町を舞台にして、多勢に対しての神出鬼没な戦いぶりは…まるでマッコールがゴーストと化したかのような雰囲気。凄まじい嵐はマッコールの怒り の激しさを表現して映画的にもドラマチックな効果を上げているが、それより何より殺しっぷりのいつも以上の残酷さも加えて、まるでホラー映画みたいな様相 を呈しているのだ。そもそもが…正義を行ってはいるものの、マッコールはまるで一種のサイコパスのような男なのである。そういう意味で、本作はクリント・ イーストウッドの初期の監督主演作「荒野のストレンジャー」(1973)に似たようなムードさえ感じさせる。完全な復讐戦だからそれももっともで、なるほ どこれでは前作のような「思わずゲラゲラ笑っちゃうようなスッコ〜ンと抜けた爽快感」を入れる余地はなかったかもしれない。また、今回マッコールは殺しや 暴力による制裁だけでなく、純粋な善行だけの行為も数多く行っている。前述したようにそのマメっぷりは、今は亡きクリストファー・リーブが主演した「スーパーマン」 第1作(1978)で、コソ泥を捕まえたり事故に遭った大統領専用機を救出したりする傍ら迷いネコを助けたりする…という振り幅の広い活躍ぶりを見せてい たことを連想させる。絶対的な「善」であるという意味で、マッコールはもはやスーパーマンとか天使みたいな領域にいっちゃっている感じなのだ。そのあた り、古き良きアメリカ映画が持っていた理想主義の香りがほんのわずかではあるが嗅ぎ取れて、僕としてはキライになれない。その大きな要因は、やはりデンゼ ル・ワシントンの持つスターとしての圧倒的な安定感によるものなのだろう。大味な映画のくせに、妙に細かいところに伏線が張ってあるあたりも気に入った。

さいごのひとこと

 クズなリーマンどもをぶちのめしたのは爽快。

 

「スカイスクレイパー」

 Skyscraper

Date:2018 / 11 / 05

みるまえ

 この作品のことは、かなり前に劇場で予告編を見て知った。またまたザ・ロックことドウェイン・ジョンソンの主演作である。前々からドウェイン・ジョンソンは好きだったが、特に今年は八面六臂の大活躍。今年は「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」(2017)、「ランペイジ/巨獣大乱闘」 (2018)、そして本作…と作品が目白押し状態。どれも大ヒットを記録して、しかも面白い。そんな訳で、予告編で本作を知った時も大いに期待したのは言 うまでもない。その予告も、一見して内容が分かるものだ。超高層ビルに火災が起きて、何と隣のビルのクレーンからそのビルに飛び移ろうとするザ・ロック… もう、これだけで一発了解である。高層ビルには悪党が暗躍しているようで、これらの要素だけで本作の狙いが「タワーリング・インフェルノ」(1974)&「ダイ・ハード」 (1988)VS ザ・ロック・・・であることが分かる。しかも、今回の彼は片足義足という設定である。まぁ、これは分かる。どんな悪党どもや地震、猛獣、怪獣たちと戦って も連戦連勝のザ・ロックだ。高層ビルの火災とそこにやってくる悪党ぐらいじゃ楽勝過ぎる。片足もぎ取ったくらいでちょうど釣り合う…という発想なのだろ う。非常に分かりやすい。むろん僕もそんな作戦に賛成である。そんな訳で、そもそも「タワーリング・インフェルノ」も「ダイ・ハード」もドウェイン・ジョ ンソンも大好きな僕としては、どこをどう見たって大好物になりそうな本作。当然、僕も楽しみに待っていたのだが、そんな僕にも一抹の不安が…。それは「ラ ンペイジ/巨獣大乱闘」を見た時に気づいたのだが、映画を見ていてやたら「既視感」を感じてしまったのだ。つまり、楽しいんだけれどジワジワとマンネリも 感じてしまったのである。何しろ今年3本目である。しかも、どれもかなりの大作だ。そして、「気は優しくて力持ち」なザ・ロックのキャラクターは楽しくて 好きなのだが、こうもどれもこれも「金太郎飴」だとさすがに消耗してくるのも仕方ないんじゃないだろうか。大体が、ザ・ロックが戦う相手として、高層ビル に大火災に悪党も付けて、さらに義足のハンデを付けなきゃならない時点ですでにいろいろと飽和状態になっているのが伺える。楽しくなるに決まっている本作 ではあるが、果たしてそんな僕の抱いた危惧を払拭できるのだろうか。

ないよう

  雪の夜、ここはミネソタ州のある山荘である。男が家に住む母子を人質に立てこもっているとの知らせに、FBIの特殊救出部隊が急行する。男は人質たちのか つて夫で父であり、別れたことによる逆ギレの犯行だった。そのためすでに極度の興奮状態にあり、先に現場に到着した警官は射殺されていた。救出部隊の隊長 ウィル(ドウェイン・ジョンソン)は残された時間は少ないと判断し、すぐに家の中に突入。中にいた母子を救出したが、問題の男は幼い息子を抱え込んで台所 に待ち構えているではないか。ウィルは男を刺激しないように説得を始め、それが功を奏したかと思い始めた時…男はその手に爆弾の起爆装置を持っていた!  気づいた時には大爆発。傷だらけ血まみれのウィルが病院に担ぎ込まれたのは、それから間もなくのことである。意識朦朧となったウィルに、女医のサラ(ネー ブ・キャンベル)が冷静に話しかける。「大丈夫よ、大丈夫だから」…。それから10年。明るい部屋の中で、スーツを着込んでいるウィルの姿があった。キ チッとスーツで正装するのは、今日が大切な仕事の打ち合わせの日だから。だが、そんなウィルには左足がなかった。例の爆発で瀕死の重傷を負ったウィルは、 その際に左足を失っていたのだ。今では義足を装着しているウィルだが、それで暮らしに不自由を感じることはなかった。それどころか、ウィルはあの女医サラ と結婚してジョージア(マッケンナ・ロバーツ)とヘンリー(ノア・コットレル)という二人の子供にも恵まれた。彼は今はFBIをリタイアして、自ら小さな 警備会社を経営していた。そのウィルの警備会社が、ここ香港に建てられた地上240階の超高層ビル「ザ・パール」のセキュリティ・チェックを任されたの だ。ウィルとサラの一家が今いる場所は、その「ザ・パール」の住居エリア。このビルはビジネス・テナント・エリアに緑溢れる公園エリアもその内部に擁し、 上部が高級マンションとなっている住居エリアとなっていた。さらにビルの側面に巨大なファンが取り付けられ、その風力発電によってビル内のすべての電力を まかなっていた。ウィルが身支度を終えたところに、「ザ・パール」の保安責任者のひとりベン(パブロ・シュレイバー)がエレベーターでやってくる。肩を抱 き合い喜び合うウィルとベンとは、FBI時代の上司・部下の仲。あの夜の爆発の際にも、二人は一緒だった。目に見える傷は顔の一部に負った火傷程度だった が、心の傷が深く家族を手放す羽目になってしまった。そんなベンだったが、かつて同じ釜の飯を食ったウィルのためにこの「ザ・パール」での仕事を世話して くれた。大いに恩に着るウィルは、ベンに連れられて最上階へ。サラと二人の子はパンダを見に動物園へと出かけて行った。さて、最上階では警備主任のア ジャーニ(エイドリアン・ホルムズ)とピアース(ノア・テイラー)を従えた中国人実業家のジャオ(チン・ハン)がウィルを出迎える。彼はこのビルの保安シ ステム全般をチェックした結果、ジャオにシステムが完璧であると太鼓判を押した。ジャオはそんなウィルにこのビルのすべてのシステムにアクセスできるタブ レットを渡すとともに、彼をとっておきの場所に招待した。それは「ザ・パール」の名前の元となっている、ビル先端に据え付けられた球体の中。そこでウィル は、この球体に仕掛けられた驚きのメカニズムを目の当たりにするのだった。すっかりボスのジャオに気に入られたウィルを、ベンは満面の笑みで祝福する。だ が、その一方でベンがこっそりどこかに連絡を入れていることを、ウィルはまったく気づいていなかった…。さて、そんな「ザ・パール」の地下では、ビルの職 員が壁に突然ヒビが入ったことに気づいて唖然とする。やがてその壁にいきなり大穴が開き、覗き込んだ職員は中から出てきた男に殺されてしまった。それから すぐに、作業員の姿をした男たちがゾロゾロと穴から地下室へと侵入。さて、この男たちの正体はいかに。一方、ベンの誘いで港のクルーズに出かけたウィル は、そこで謎の男にタブレットを入れたカバンを奪われてしまう。そして「ザ・パール」の住居エリアには、サラと子供たちが予定より早く戻ってきていた。そ こにやってきたのは、例の作業員を装った男たち。そのリーダー格の男コレス・ボサ(ローランド・ムーラー)は、サラと子供たちの姿を見てギョッとした。ま だオープン前の「ザ・パール」住居エリアに、すでに人がいるとは思っていなかったからだ。だが、そこに人がいたとしても、彼らにとってはそれまでのこと。 自分の「仕事」のために、そそくさとその場を立ち去った。ボサたちが移った先は、サラたちのいた場所から何階か下のフロア。そこに何やら粉末を撒いた彼ら は、床に無造作に火を放つ。すると、さすが保安システム万全の「ザ・パール」だけに、たちまちスプリンクラーが作動。だが、それが彼らの狙いだった。降り 注ぐ水がたちまち火をかき消すと思いきや、逆に床一面に炎が立ち上るではないか。ボサたちが撒いた粉末は、水に反応して発火する薬品だったのだ…。その 頃、例の泥棒騒ぎの後でベンのアパートにやってきたウィルは、そこから携帯でサラに電話。そのウィルとサラの会話を聞いたベンは、サラがすでに「ザ・パー ル」に戻ってきていることを知って驚く。しかもウィルがカバンごとタブレットを盗まれたかと思ったら、実はいつの間にかカバンから取り出していた…と知っ て二度ビックリ。だが、次に驚くのはウィルの番だった。かつての部下であり友人として信頼でつながっていたと思っていたベンが、ウィルにいきなり襲いか かってくるではないか。船でウィルのカバンが盗まれたのは、このベンの仕業だった。突然、信頼していたベンに裏切られて狼狽するウィルだったが、とてつも ない陰謀が動き出していると知れば呆然としている訳にいかない。タブレットを巡ってもみ合っているうちに、ウィルを撃ち殺そうとしたベンは逆に銃で命を失 うことになる。ところがそこにベンが呼んだ賊が駆けつけて、ウィルは慌てて窓から脱出する羽目になる。そこに、銃声を聞いてやってきた警察も絡んでてんや わんや。そのドサクサに紛れて、ウィルは賊に例のタブレットを奪われてしまう。おまけに自らも警察に一味と疑われて、パトカーを奪って逃げ出す始末。だ が、そんな逃走中のウィルの目に写ったものは…サラたちがいるはずの「ザ・パール」が、途中階から火を噴いている様子だった…。

みたあと
 … というわけで、ビルに火が出たところでストーリー紹介を終わらせていただいた。この後、ドウェイン・ジョンソン無双の快進撃が繰り広げられるのは、みなさ ん予想される通り。片足がハンデどころか、それが武器になっているところさえある無敵っぷりで、今回もまた大勝利である。正直、この映画に「レビュー」な んてするのもナンセンスな気がするが、うちは一応映画サイトなのでそうもいかない。だから、ちょっとばっかり聞いた風なことを書いてみることにする。

こうすれば

 本作は予想通り「タワーリング・インフェルノ」&「ダイ・ハード」VSザ・ロック…で、その一言で話は終わってしまう。ただし「タワーリング・インフェ ルノ」や「ダイ・ハード」の脚本やら構成の緻密さを本作に期待するのは野暮というもの。類似作品ということでいうと、香港にはパン・ブラザースが撮った「インフェルノ/大火災脱出」 (2013)があるが、これにすら質的には負けていると言わざるを得ない。何しろこっちは何かというとドウェイン・ジョンソンだから切り抜けられちゃう、 ドウェイン・ジョンソンだから助かっちゃう…の連続。普通の人間なら何十回も死んでいる設定でヌケヌケと生き延びちゃうから、「緻密さ」なんて求めるのも バカらしい映画になっちゃっているのだ。本来ならドウェイン・ジョンソンだから「これでいいのだ」…みたいなバカボンのパパみたいな話で終わってしまうは ずなのだが、問題なのは本作の外枠を「タワーリング・インフェルノ」&「ダイ・ハード」という緻密さの権化みたいな作品から借りちゃっているところ。すで に比較対象になる作品があって、それがハンパじゃない達成感の作品だから、残念ながらそれらよりはどうしても「劣る」という印象になってしまうのだ。ハー ドル高過ぎ。そのあたりが「ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル」や「ランペイジ/巨獣大乱闘」あたりとは訳が違うところである。そして残念ついで に言えば、冒頭にも述べたようにドウェイン・ジョンソンの鮮度が落ちているのも興をそいでいる理由のひとつ。結局、どれを見ても「気は優しくて力持ち」の ドウェイン・ジョンソンが「金太郎飴」みたいに出てくるので、さすがにこの頻度で作品がやってくると飽きがくるのも早い。基本的にどれも同じ映画に見えて きて、単に「ザ・ロック、ゲームの世界で大冒険の巻」、「ザ・ロック、巨大怪獣と対決の巻」、「ザ・ロック、高層ビル大火災に挑戦の巻」…と続きモノを見 せられているかのようである。それが何ヶ月も離れずに見せられるのだから、食傷気味にもなる。いずれもB級感あるスケールと出来映えの作品群ならまだいい が、カネだけかかった大味な大作ぞろいと来るから、余計に「見飽きた」感を感じてしまうのかもしれない。早速、「ランペイジ/巨獣大乱闘」の時に感じてい た懸念が現実のものとなってきているのである。そんな訳で言いたいことはいろいろあるが、ザ・ロックに対する文句はそれくらいにすると…本作は中国資本に 買い取られたレジェンダリー・ピクチャーズの製作で、それゆえに香港を舞台にしたのか…と何となく仕掛けが分かる。だが、巨匠チャン・イーモウのハリウッ ド売り出しに一役買った「グレートウォール」(2016)やあまり知られていなかった中国女優をキャストに加えた「キングコング/髑髏島の巨神」 (2017)あたりは彼らのやりたいことが露骨に分かるものの、本作については中国人たちがやりたがった動機が「???」となってしまう。というのは、本 作に出てくる主要な中国人キャラクターに香港や中国本土の有名俳優などでなく、いずれもアメリカでテレビや映画の端役などで出ていた中国系俳優を使ってい るのだ。これって中国にとってどんなメリットがあるんだろう? 香港ロケでカネでも落ちるのかと思ってみたが、どうやらほとんどがハリウッドのスタジオ撮 影みたいだし…。正直言って今後のレジェンダリー作品で中国人役者が不自然なゴリ押しでやたらと出てきたり、プロパガンダみたいなことをベタでやられたら イヤだなと思っていたので、むしろこの程度の「中国推し」なら僕としては構わない。政治的な意味はどうでもよくて、ただハリウッド映画で変なゴリ押しをや られたらシラけると思っていただけだからだ。だが、レジェンダリーが本作をやる意図が「???」なのはちょっと気になった。確かにこれはナゾである。脱税 で当局に拉致された、話題の中国人女優ファン・ビンビンでも使おうとしてアテがはずれたんだろうか(笑)。

みどころ

 そんな訳で、本作は比較対象になる作品があまりに偉大な娯楽映画の傑作なので、どうしても見劣りしてしまう気の毒な作品なのだ。だが、同じ比較対象をよそから持ってくるとすれば、韓国の「ザ・タワー/超高層ビル大火災」 (2012)のようなジメついた映画などよりはずっと良く出来た作品である。さすがに安いCGにはなっていないし、何よりカラッとさわやかなところがい い。また、僕はたまたま本作を大きな仕事を達成した息抜きに見に行ったが、そんな感じに理屈抜きで何にも考えずにボケーッと見るには楽しい作品である。実 際、本来はそんな映画なのだ。だから、ここで云々したのはいささか意地悪な意見でもある。ともかくドウェイン・ジョンソンはそろそろ作品選びが難しくなっ た頃で、何をやっても痛快で面白い…とはいかなくなってきたと思うべきである。今後はまず作品のスケールよりも、脚本に込められたアイディアを重視して出 演してもらいたいと思うのだが、いかがだろうか?

さいごのひとこと

 このままだと俳優としての評価も炎上しそう。

 


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