新作映画1000本ノック 2018年2月

Knocking on Movie Heven's Door


このページの作品
 「サリュート7」 「目撃者/闇の中の瞳」 「ガーディアンズ」

 

「サリュート7」

  (Salyut 7)

Date:2018 / 02 / 26

みるまえ

  東京の映画ファンなら皆さんご承知かとは思うが、渋谷の映画館で毎年、未公開映画を連続上映してくれる催しがある。正直言って本来なら日本に紹介されない か、されても即ビデオ、DVD、ブルーレイ化決定の作品ばかり。玉石混淆というより石ばかり(笑)なことも多いのだが、それでも珍品好きの僕は毎年期待し ていた。見る映画としては珍しい国の映画か、大好きなSF映画に限る。そんな僕の触覚に引っかかって来たのが「サリュート7」。旧ソ連の宇宙ステーション で起きた事故を描いた作品。実話だそうである。となると、ロン・ハワードの「アポロ13」(1995)か、最近ロシアで作られた宇宙開発の実話モノ「ガガーリン/世界を変えた108分」(2013)みたいな作品だろうか。そんなことを考えているうち、何回もない上映がいよいよ終了。僕は慌てて最終上映のレイトショーに駆けつけたという訳である。

ないよう

 1985 年、ソ連の宇宙ステーション「サリュート7号」では、男女ふたりの宇宙飛行士が船外作業中。破損した部品の修理のため、男性宇宙飛行士ウラジミール(ウラ ジミール・ヴドヴィチェンコフ)が金属板を溶接。女性宇宙飛行士のスヴェタがその金属板を押さえていた。こんな作業はお茶の子で、ふたりは少々ヒワイな冗 談を言いながら作業をサクッと終了。そろそろ酸素も少なくなって来たので船内に戻ろうとしたその時、スヴェタは宇宙服のグローブを見て真っ青になった。何 と指の部分に先ほどの金属板のバリが刺さっているではないか。案の定そこから空気漏れが始まり、宇宙服の気圧は徐々に落ちていく。こうなると、先ほどの余 裕もどこへやらだ。だが、ベテランの宇宙飛行士であるウラジミールはこんな時でも沈着冷静。スヴェタをさりげなく落ち着かせ、励ましながら出入口へと誘導 する。こうして何とか出入口に到達したちょうどその時…何かに気づいたウラジミールが振り返ってみると、そこにはまばゆく光り輝くモノが現れるではない か…。それからしばらくして、ここは地上のソ連宇宙基地。先ほどのウラジミールが、管制センター責任者ヴァレリー・ペトロヴィッチ(アレクサンドル・サモ イレンコ)の尋問を受けている。ウラジミールが聞かれているのは、彼が船外で見た「まばゆく光り輝くモノ」のこと。彼はこの時に茫然自失となり、危うく彼 自身とスヴェタの命を危険にさらすところだった。だが、ウラジミールはこんな尋問を受けること自体が不本意だった。彼は憮然としながらヴァレリーに答え る。「率直に言えばいいのか、光り輝く天使の姿を見たと!」…。ベテラン宇宙飛行士だったウラジミールが、長過ぎる宇宙滞留期間のために休養を申し渡され たのは、それから間もなくのことだった。実際、宇宙にいたのが長過ぎて、むしろ地球での日々が慣れない。妻ニーナ(マリア・ミロノヴァ)は気遣ってくれる が、ウラジミールにとっては失意の時でしかなかった。そんなある日、宇宙飛行士たちが退去して誰もいない「サリュート7号」に、ある異変が起きていた。突 然の流星雨に見舞われ、船体の一部が破損。地上からのコントロール不能に陥ったのである。問題は、これによって「サリュート7号」の地上への落下が懸念さ れてきたこと。船体の大きさから、地上到達までに完全焼失は無理だ。どこに落ちるかも分からないため、未曾有の被害が発生する恐れも出て来た。このニュー スに全世界が騒然。ソ連国内でも「サリュート7号」対策に追われることになり、政府の要人が管理センターを訪れて協議が行われることになった。最大の問題 は、このタイミングでアメリカのスペースシャトルが打ち上げられること。それも、わずか22日後である。そのスペースシャトルには、過去の米ソミッション で「サリュート7号」に乗り込んだ経験のある宇宙飛行士も乗り込むという。明らかに「サリュート7号」レスキューが目的だ。だが、それはソ連最高機密の技 術が漏洩することも意味していた。何としてもスペースシャトルによる「サリュート7号」レスキューは阻止しなくてはならない。ここで政府要人としては、 「サリュート7号」撃墜の方針を打ち出した。これに、管制センター責任者ヴァレリーは猛烈に反対。今までの宇宙開発技術が無に帰してしまうと、激しく抗議 した。だが、政府の方針は絶対である。さもなくば、スペースシャトル到達前に「サリュート7号」のコントロールを回復させるしかない。そこに選択の余地は なかった。そんなこととはツユ知らず、同僚のエンジニアであり長年の友人でもあるヴィクトール(パーヴェル・デレヴィヤンコ)と釣りに出かけたウラジミー ルは、突然ヴィクトールに管制センターから呼び出しがあってビックリ。ヴィクトールは今回、宇宙飛行士として志願していたのだ。そんなことは聞いていな かったウラジミールは、自分が任務からはずされたこともあって機嫌を損ねてしまう。だがヴィクトールはヴィクトールで、今までどれほど飛行士の任務を希望 しても夢は叶わず、実際に宇宙に行けるウラジミールを羨ましく思っていたのだ。感情がこじれたふたりは、気まずくその場で別れるしかなかった。このヴィク トールの緊急出動は、もちろん「サリュート7号」のための任務。ちょうど身重となっていた彼の妻(ルボフ・アクショノーヴァ)としては、心配せずにはいら れない。宇宙に行こうというのに分厚いセーターや帽子、手袋などを絶対に持って行けと言われたヴィクトールは、苦笑しつつも彼女の気持ちを有り難く受け 取った。そんなヴィクトールが選ばれた理由は、「サリュート7号」機能回復のためエンジニアとしての技術が買われたから。あとひとり、操縦を担当する飛行 士が必要だ。早速、管制センターに精鋭宇宙飛行士たちが集められ、厳しいテストが始まる。ここで最大の問題となるのは、コントロール不可で宇宙空間を回転 している「サリュート7号」とどうやってドッキングするかという難題である。早速、精鋭たちが操縦シミュレーターで挑戦するが、誰ひとりとして成功しな い。無駄とは知りつつヴァレリー自らが試みてもダメだった。ヴァレリーが困り果てたその頃、ヴィクトールはミッションの相棒としてウラジミールの名前を挙 げた。確かにベテランのウラジミールは「サリュート7号」を知り尽くした男である。かくなる上は、背に腹は代えられない。管制センターは、ウラジミールを 呼び戻した。地上勤務で安心していた妻のニーナとは揉めたが、宇宙に戻りたい彼の気持ちは止められなかった。こうしてウラジミールとヴィクトールを乗せた 宇宙船ミールは、「サリュート7号」に向けて打ち上げられたのだったが…。

みたあと

  正直に言うと…本作は「実話」と聞いていたので、せいぜい「地味で良心的な作品」どまりだろうと勝手に考えていた。冒頭にも挙げた「ガガーリン/世界を変 えた108分」レベルの作品だろうと思っていた訳だ。だが、実際に見てみたら驚いた。見たあとで調べてみたら本作はロシア本国でアイマックス3Dで公開さ れたらしいのだが、さもありなん。どう見ても、本作は「娯楽大作」仕様の作品なのだ。奇妙なことに、クリント・イーストウッドが宇宙SFに挑戦した快作「スペースカウボーイ」(2000)との共通点も多い、非常に真っ当な娯楽作品に仕上がっているのである。

ここからは映画を見てから!

みどころ

  まずは旧ソ連の「娯楽映画」というと、頑張っているんだけどイマイチ…な作品が多かった。その最大の要因は脚本で、とにかく登場人物の心情がよく分からな い。あるいは共感出来ないといったものが多かったように思われる。しかし本作には、そんな心配はご無用。まるでハリウッド映画のように、感情移入できる人 物や心情が手に取るように理解できる人物ばかり出て来る。作劇術が、格段に進歩を遂げているのである。そこへ来て、元々特撮技術や美術には優れたものがあ る。かつてのように劣悪なフィルムを使うこともないから、映像の質も高くなって来ている。そのため、それこそ欧米の娯楽映画と比べてもまったく遜色がな い。それどころか、近年の衰弱したハリウッド映画などよりずっと質の高い娯楽映画に仕上がっているのである。スペクタキュラーな見せ場も多く、ハラハラド キドキさせる。実際には「実話」といいながら本当に起きたことよりもかなり「盛っている」らしく、そうでなければこれほどドラマティックに絶体絶命なこと が起きるとも思えない。しかし、結果として映画としては面白くなっているので、僕としてはオッケーだ。ふたりの男のドラマも面白く出来ているし、どこか ユーモラス。片方の飛行士の嫁さんが心配性なために、宇宙には場違いな冬の厚着を一杯持って行かされるのだが、これが実際に役に立つという「伏線」もうま い。いちばん感心したのはドラマの解決部分で、一旦は酸素量の限界から悲壮なエンディングになりそうだったところを、何とか解決してハッピーエンディング に持ち込んでいるあたりが見事。出来過ぎ!…と思わされそうなところも、冒頭で主人公が見た「天使」によってうまく中和させていて何とも粋である。お話の 骨子は端々にイーストウッドの「スペースカウボーイ」を想起させる点が多く、おそらくヒントにしたのは間違いないだろうが、これほどしっかりとした娯楽作 品にまとめあげれば文句は言えない。監督・脚本のクリム・シベンコはこれまで犯罪映画やサスペンス映画、コメディなど何でもござれの人だったようだが、娯 楽映画の作り手として一級品。昨年見た航空パニック映画「フライト・クルー」 (2016)といい、ロシアの娯楽映画も近年はまったく侮れなくなって来た。というか、最近はハリウッドなんかより、他の国の方がハリウッド・メソッドを 忠実に守っているのではないだろうか。スペースシャトルのアメリカの宇宙飛行士たちに対して敬意を払った描き方など、大いに余裕を感じさせるのである。

さいごのひとこと

 トランプがロシア贔屓なのも分かる?

 

「目撃者/闇の中の瞳」

 目撃者之追凶 (Who Killed Cock Robin)

Date:2018 / 02 / 26

みるまえ

  本作はチラシを見た時から「見たい!」と思った。ミステリー・サスペンスらしく、交通事故から過去のナゾが暴かれていく…という話らしい。最初は中国か香 港か台湾か分からなかったが、中国語圏映画のサスペンス…というと、ちょっと良さそうな予感がある。…というのも、中国語圏映画からは何年か前にミステ リー・サスペンスが2作連続で届いたことがあるからだ。1本はロウ・イエが「火曜サスペンス劇場」的な世界に挑戦した「二重生活」(2012)、そしてもう1本はディアオ・イーナンという日本では新顔だった監督の撮った「薄氷の殺人」(2014)。 本作のチラシを見たときに、前者が「交通事故」を重要な要素として取り上げた作品だったことや、後者がオリジナリティに溢れて鮮やかな作品だったことを思 い出した。これは絶対に素晴らしい作品の予感がする。さらにこれが台湾映画だと分かると、エドワード・ヤンの傑作「恐怖分子」(1986)あたりも脳裏に 浮かんでくる。これはきっと見なきゃいけない映画に違いない。僕は居ても立ってもいられず、映画館に駆けつけた。

ないよう

  土砂降りの夜、一台のクルマが山道に停まっている。クルマの中には、ひとりの若い男が寝ていた。ところが…前方で事故が起きたような大きな音。すぐに目を 覚ました若い男…シャオチー(カイザー・チュアン)は、慌てて雨の中を飛び出して行く。すると、交通事故を起こしたらしき2台のクルマが停まっていたが、 そのうち1台が凄まじいスピードで逃げ去って行くではないか。慌ててスマホで撮影するが、果たしてうまく撮れたかどうか。クルマが逃げ去った後、シャオ チーはもう1台の大破したクルマの方に歩み寄る。こちらは1組の男女が乗っていたが、どちらもピクリとも動かない。呆然とこの状況を見つめていたシャオ チーだったが…。やがてシャオチーは自分のクルマに戻って来たが、クルマを発進させようにもエンジンがかからない。すると後ろから別のクルマがやって来た ので、シャオチーはクルマから飛び出して「止まれ!」と指示するのだった…。それから幾年月。高速を快調に飛ばす若い男は、あのシャオチーだ。彼は警察無 線でこの道路の前方で交通事故があったことを知り、慌てて現場に急行。まだ誰も来ていない事故現場で、大破したクルマに近づいて行った。すると、事故った のは若い政治家のクルマ。ハンドルを握っていたのはその政治家で、助手席には巨乳で有名なグラビアアイドル。ふたりとも事故のケガとショックで、意識を 失っていた。それを見たシャオチーは、ここぞとばかり情け容赦なくスマホで写真を連写。さらにクルマで移動しながら、スマホで職場に連絡した。シャオチー の職場は新聞社…彼はそこで記者として働いていたのだ。シャオチーの連絡先は、職場の先輩女性記者であるマギー(シュー・ウェイニン)である。彼はマギー に特ダネをつかんだと語ると、彼女を夕食に誘ってさりげなく口説く。ところがそんな時、横から飛び出して来たクルマがシャオチーのクルマを直撃するではな いか! それから数時間後、ここはシャオチーの馴染みの自動車修理工ジー(チェン・チーウェイ)の工場。先ほどぶつけられたクルマをここに持ち込んだシャ オチーに、ジーは気がかりなことを言ってくる。いわく「これは事故車だぜ』…。どうやら一度事故を起こしたクルマを補修して塗装し直し、それを新品同然と ダマして売りつけたようなのだ。これを聞いたシャオチーは、軽く衝撃を受ける。翌日、警察署に足を運んだシャオチーは、馴染みの警部に自分のクルマの車両 番号について調べて欲しいと懇願。過去の事件報道などでシャオチーとツーカーの仲となっていた警部は、早速それを部下に調べさせることにする。すでにシャ オチーは、記者としてそんな「顔」になっていた。ちょうど大先輩の編集デスクであるチウ・ジンカイ(クリストファー・リー)が、社を離れることになって大 宴会が催される。そこでもチウに「若手のホープ」と持ち上げられて、シャオチーはご機嫌だ。編集会議でもついつい強気になって、例の政治家とグラビアアイ ドルのスクープに慎重になる上司に「問題ないですよ!」とゴリ押し。おまけに先輩マギーがカレシらしき男とスマホで深刻にやり合っているのをチラ見して、 「君にはもっとふさわしい男がいるよ」などと口にする。すると、棚からボタ餅。シャオチーの部屋にマギーを「お持ち帰り」することになってしまうから世の 中分からない。だが、好事魔多し。翌朝テレビをつけて見ると、例の「スクープ」が大問題になっているではないか。実は政治家とグラビアアイドルは結婚して いて、スキャンダルでも何でもないと反撃されたのだ。これを重く見た新聞社は、シャオチーを一気に解雇。確かに鼻息荒過ぎて敵も多かったシャオチーだった が、これにはさすがに意気消沈だ。ちょうど同じ頃、警察に調べてもらっていた例の事故車の前歴が分かってきた。それを教えてもらったシャオチーはビック リ。何とこのクルマの前歴は、シャオチー自身が9年前に目撃した雨の日の事故車だった。あまりの偶然に驚くシャオチーだったが、例のクルマには生存者の女 がいて、その女が入院中の病院から失踪した…という事実に目を留める。偶然と好奇心に突き動かされたシャオチーは、ちょうど仕事がなくなって暇になったこ ともあり、マギーを伴ってこのナゾを追いかけ始めたのだったが…。

みたあと

  まずこの作品、この感想の冒頭で語っていたように見る前から素晴らしい作品である予感がしていたが、その期待に違わぬ出来映えだった。その理由はいくつか あるのだが、最大の理由は物語の展開にある。先が読めない展開…という作品は他にもいろいろあるが、本作はまさにその最たるもの。「こうなるのでは」…と いう見る者の予想や既成概念を飛び越え、アッと驚く方向に引っ張っていくあたりの力業が素晴らしいのである。その点だけでも本作は見る価値がある。

ここからは映画を見てから!

みどころ

  先にも述べたように、本作はまったく先が読めない。「こうなるんじゃないか」「この人物はこういう奴」という見る側の思いはすべてハズされると思ってい い。その最たるものがお話の途中から出て来る「義足を付けた女」で、最初は幸薄系の地味な女として登場するが、途中から彼女の置かれた立場は急転。その キャラクターも意外なモノへと変貌していく。そんな変貌が、義足女だけでなくすべての登場人物において起きていくのだから尋常ではない。見ているこちら は、その間に何度も気持ちを軌道修正しなくてはならないのだ。だから、ある意味では「スター・ウォーズ」サーガなみに狭い人間関係の話(笑)になっていく 本作の偶然性の不自然さも、展開の意外さで中和されてしまう。頭の中でこね繰り回したような話なのに、それがこぢんまり狭苦しい印象にならなかったのがう まい。それよりも運命の皮肉さ、不思議さ…へと昇華されていくのが、なかなか巧みなのである。また、本作はホラーのようなちょっとしたグロ趣味があり、そ こがお客を選んでしまうところにもなっているのだが、一方で韓国映画「チェイサー」 (2008)にも似た田舎の便所みたいなイヤ〜な感じが独特の味にもなっている。現代社会の不安や人間たちの欲望のドス黒さを強調して、それこそ感想文冒 頭でも挙げた「二重生活」や「薄氷の殺人」に通じる現代ミステリー・サスペンスとなっているのだ。役者もみな素晴らしく、唯一主役の男だけがキール・ロワ イヤルのCMやった東幹久みたい(笑)に田舎のホストか安い色悪っぽくてビミョーだったのだが、ラストに来て「なるほど!」と納得。あの、今にもウェイ ターの恰好して女に「キール・ロワイヤルですね?」と言い出しそうな胡散臭さには意味があったのだ(笑)。彼の先輩役のハーフっぽい女と例の義足女のふた りも、実に見事な人選。義足女を閉じ込めていたサイコパスの男の子が、実はアン・リーの息子と知ってビックリ。ともかくこれほど意外性に富んだ作品を作っ た、台湾の新星チェン・ウェイハオ監督には注目せざるを得ない。次回作が楽しみな人である。

さいごのひとこと

 久々に東幹久という名前を思い出した(笑)。

 

「ガーディアンズ」

  (Guardians)

Date:2018 / 02 / 12

みるまえ

 何とロシアのスーパーヒーロー映画だそうである。それも単体でなくてチームを結成して戦うというのだから、「アベンジャーズ」(2012)や「ジャスティス・リーグ」 (2017)みたいなものだろうか。こうなると、どうしたって見たくなるのが僕の悪いクセである(笑)。それに、この手の特殊効果を使った大作みたいなモ ノを作らせたら、ロシア映画は結構マジでやる。ロシアの航空パニック映画だってロシアのホラーだって大好きな僕としては、本作は見なくてはいけない映画。 そんな訳で、他の話題作も仕事も蹴散らかして映画館に見に行った訳である。

ないよう

  米ソがにらみ合う東西冷戦下の1960年代、旧ソ連ではある極秘プロジェクトが水面下で動いていた。その名も「パトリオット計画」。人為的に超人を作り出 して無敵の兵士を作るなど、どんでもない計画が動いていたのだが、それらの計画はある出来事から突然中断され、すべては闇に葬り去られてしまった。それか ら幾年月…。ソ連崩壊から早くも四半世紀以上経つロシアでは、新型兵器の開発に余念がない。この日は広大な演習場で、4脚でのし歩くハイテク・バトルマ シーンのテストが行われた。高機能のセンサーと素晴らしい破壊力を誇る武器を併せ持った、ハイテクバトルマシーンの威力は強烈。軍の責任者は十分機能につ いて満足したが、そこで異変が起きた。バトルマシーンが動作を停止せず、コントロール不能。慌ててバトルマシーンに攻撃を加えるが、圧倒的な高機能の前に 逆にやられてしまう。最後はトーチカ内で指示を出していた軍の責任者もセンサーによって感知され、バトルマシーンに殺されてしまうのだった。こうした事態 に、ロシア軍内部では緊急会議が召集される。最高責任者である将軍ニコライ・ドルゴフ(ヴィチェスラフ・ラズベガエフ)は、事件のそもそもの発端について 語り始めた。それが、例の「パトリオット計画」だった。スーパー軍隊を作ることを主眼としたこの計画には多数の科学者が動員されたが、そのうちのアウグス ト・クラトフ(スタニスラフ・シリン)が問題だった。彼の担当する分野は高評価が得られず中止となり、それを恨んだクラトフは遺伝子分野の研究を勝手に始 めた。それを追及されたクラトフは施設内で爆発事故を起こし、その影響で自らも一種の「超人」となってしまったのだ。今回の出来事もそのクラトフの仕業 で、彼は国家転覆を図ろうとしているのは間違いない。これに対抗する手段はただひとつだけ。「超人」には「超人」である。クラトフが勝手に暴走して行った 遺伝子操作実験では、何人かが改造されて「超人」化された。その「超人」たちを探してクラトフにぶつけるのだ…。将軍は部下のエレーナ・ラーリナ(ヴァレ リア・シュキランド)を指名して、彼ら「超人」の探索を命令。意気上がるエレーナは、自らのチームに各地の奇怪な情報を集めさせた。中でもエレーナの関心 を惹いたのは、アルメニアで語られている「岩男」のウワサだ…。アルメニアの岩山にある寺院に、一心に祈りを捧げている僧侶がいた。その男レア(セバス ティアン・シサク)に近づいて来たのは、あのエレーナである。レアは改造された「超人」のひとりだったのだ。だが、いわば「化け物」されたあげくに捨てら れた彼は、今になって復帰を促してきた国への怒りがこみ上げる。そんな彼の怒りは、その場に転がる無数の小石たちを空中に浮かばせるほど。レアの超能力 は、念力で岩を自在に操ることだった。だがそんな態度も、エレーナからクラトフの名前を聞いて一転。自分たちをひどい目に遭わせたクラトフを倒せるなら、 国と手を組んでもいい…と前向きになった。その後は、カザフスタンで東洋人のマフィアたちを瞬速でクルマごとメッタ切りにした半月剣二刀流のハン(サン ジャル・マディ)、山小屋にいるところを兵士たちに押し掛けられ、怒りのあまり巨大な熊人間に変身するアルスス(アントン・パンプーシュニー)、モスクワ のサーカス・ショーでプールに飛び込み、透明化して水と同化してしまうクセニア(アリーナ・ラニナ)…と次々スカウト。彼らは皆、「クラトフ」の名前を聞 いたとたんエレーナに協力を誓った。こうしてクラトフを倒すために、彼らは超人軍団「ガーディアンズ」を結成。早速、クラトフが潜んでいると見られる地方 の廃工場へとやって来る。だが、廃工場へと乗り込んだとたん、本部のエレーナとの連絡が途絶えてしまう。これにはエレーナも、イヤな予感を感じずにいられ ない。残念ながら、そんな予感は的中してしまった。その場に無数の手下たちがいたことだけならまだしも、敵のクラトフはこちらの手の内を知りすぎるほど 知っている人物だ。しかも、今やクラトフ自身がとてつもないパワーを持った「超人」となっているのだ。さすがのガーディアンズでも、マトモに戦って勝てる 相手ではなかった。ガーディアンズたちは戦う術もなく、その場に次々倒されてしまうのだったが…。

みたあと

 一見して、予想通りアメリカの娯楽映画に寄せた作り方をした作品である。実際のところは、事前に想定していた「アベンジャーズ」よりは「X-メン」 (2000)のイメージに近い感じ。彼らの出自が冷戦下ソ連の人体実験によるもの…という後ろ暗さのある設定になっている点が、まさに「X-メン」っぽい 点となっている所以だ。だから、冒頭で短いショットの積み重ねにより超人たちが生み出された事情が説明される場面は、見ていてワクワクしてしまった。大変 不謹慎ながら、「陸軍登戸研究所」 (2012)を見るようなドキドキ感があった訳だ。ナチス政権下のドイツや冷戦下のソ連なら、どんな突拍子もない科学技術が開発されても、どんな非人道的 人体実験が行われていても不思議じゃないし、むしろ行われていてほしい(笑)。そういうこちらの要望に、ストレートに応えてくれる設定である。見ているこ ちらも「ロシア版超人映画」はこうでなくっちゃ…と、思わず期待値が上がる。だが残念ながら、その後の本作の展開は見る側の期待に応えてくれているとはと ても言い難かったのである。

ここからは映画を見てから!

こうすれば

  本作を見る観客なら誰しも、これがマーベルなどのスーパーヒーロー映画の「パチもん」であるということは知っている。だから「あわよくば」それらを凌駕す る程の作品になっていればいい…とは思いながらも、いいとこ「1点でも見どころがあれば」程度に考えていた人が大半ではないかと思う。正直言って「パチも ん」が「本家」を凌駕するというのは、よっぽどのことでもない限りあり得ない。そして、残念ながら今回も「よっぽどのこと」は起きなかった。どこがどう… と指摘するのも難しい程グダグダ感があるお話なのである。そもそも上映時間が90分を切る作品で「ガーディアンズ」結成から悪党をやっつけるまでを描くの だから、かなり慌ただしい。結成と同時に敵本拠地に出撃…となる訳だが、これがほとんど無策でコテンパンにやられてしまうという情けなさだ。ただ馬鹿力だ けあって作戦も何もないという連中なのである。その後もあまり「超人」としてのアドバンテージは感じられず、強大な敵にやられっぱなし。決着をつけるの は、唐突に持ち出される「4人のパワーの結集」という作戦。そもそも、そんな能力があるとは知らなんだ。大体、4人で手を合わせてエネルギー球みたいなモ ノを作り出すポーズが、いい歳こいた大人のやるもんじゃない。そんなガキっぽいポーズを、ハリウッドの超人たちよりずっとムサ苦しいロシアのオッサンたち がやってるから笑ってしまうのだ。その他にも、「強大な敵」であるクラトフに童顔の弱ッちい顔した役者をキャスティングせいで、カラダだけ無理矢理増強し て逞しくしているのが「肉じゅばん」っぽくてドリフのコントみたい…とか、熊に変身するアルススがパワフルというより「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」 (2014)に出て来るアライグマ姿のロケットみたいに見えてしまう…とか、その熊人間アルススが巨大な機関銃をもらったり透明人間になれるクセニアがバ トルスーツを着て戦ったりと彼ら本来の能力がまったく活かされない…とか、「アレレ?」と思わされる点があまりに多い。映画のラストでは「ガーディアンズ の戦いはまだ始まったばかりだ!」とばかりに続篇を作る気マンマンなムードだったが、さすがにこれはキツいのではないだろうか。

みどころ

  という訳で、コキ下ろそうとすればいくらでもコキ下ろせる映画。実際のところ、僕にもこれが傑作であるなんてことを言うつもりは微塵もない。だが、本作の キズをあれこれあげつらって得意げにバカにするなんてのは…正直言って愚の骨頂という気がする。そもそも先にも述べたように、これがアメリカのヒーローも ののパチもんであることは、見る奴なら誰でも先刻承知。所詮パチもんなんだから、その出来映えも推して知るべしなのは言うまでもない話だ。これをカスだの クズだのと言って「辛口」批評などするなんざ、ヤボ以外の何者でもないのだ。ツッコミどころ満載なのを百も承知であえて言えば、上映時間が90分足らずの この映画に退屈する瞬間なんてない。とにかく慌ただしく話が進むので、ダレようがない。多少(どころじゃないが)無茶なお話も、疑念を挟んでいる余裕がな いのだ。バカバカしいながらもCGや特撮は頑張っている。ケモノ人間が熊に変身したり、モノを自在に操れる奴が武器に使うのが「岩」だったりと、そこかし こに無骨な「ロシア製」ならではの意匠が散りばめられているのも嬉しい。それが合理的であるとかカッコいいとかいうのはどうでもいい。ハリウッド製のマー ベルやDCのヒーローものに対して、「ロシアからの返答」として作られたことがアリアリと伺えるあたりが嬉しいのである。軍事衛星を操作するアンテナにす るために、悪漢がオスタンキノ・タワーをへし折って運んでいくあたりも笑っちゃうし楽しい。モスラやギャオスが東京タワーをねじ曲げるのと同じ発想なので ある。夢があるのだ。ダメ映画であることは分かっているのだが、僕はキライになれない。

さいごのひとこと

 出来の悪い子ほど可愛い。

 


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