新作映画1000本ノック 2017年9月

Knocking on Movie Heven's Door


このページの作品
 「ハイドリヒを撃て!/『ナチの野獣』暗殺作戦」 「スターシップ9」 「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」 「ライフ」
 

「ハイドリヒを撃て!/『ナチの野獣』暗殺作戦」

 Anthropoid

Date:2017 / 09 / 25

みるまえ

  こんなことを言ったら完全に軽蔑されてしまいそうなのだが、毎年毎年驚く程コンスタントに公開される映画のジャンルが、いわゆる「ナチもの」。この言い方 自体が意識の高い人にはカチンと来ちゃいそうで怖いのだが、他に言いようがないのでこう言わせてもらう。ここ1〜2年でも「アイヒマンを追え!/ナチスが もっとも畏れた男」(2015)、「アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち」(2015)、「ヒトラーへの285枚の葉書」(2016)…なんて作品が あった。残念ながら忙しくてどれもこれも見逃してしまったが、それぞれ興味はある題材ではあった。そんなところに、今回は「ハイドリヒを撃て!/『ナチの 野獣』暗殺作戦」である。カギカッコの中にカギカッコというのは何ともイケてないタイトルだが仕方がない。どうやらナチの大物を暗殺しようとする話らしい が、お恥ずかしい話、僕はナチやヨーロッパの現代史に詳しくないので、「ハイドリヒ」なる人物がどれほどの大物かは分からない。しかも、これがどこの国の 話で暗殺が成功したのかどうかさえ知らないという無知ぶりである。そもそも、僕は歴史のお勉強や政治について考えるために映画を見ていない。単なる2時間 のお楽しみである。どうもすみません。そんな訳で、本作のお楽しみは…というと主演のキリアン・マーフィーである。その見た目から当初はちょっと中性的イ メージがあって、実際に「プルートで朝食を」(2005)みたいにその部分を生かした出演作もあったが、近年は「白鯨との闘い」(2015)みたいに涼しげな瞳が印象的な、ユニークな男っぽさで面白い味を出している。それがどうやら、ナチと戦うレジスタンスみたいな役柄をやるようだと聞けば、ちょっと見たくなるではないか。そんな訳で、僕はキリアン・マーフィー見たさに劇場へと駆けつけた次第。

ないよう

  ナチスドイツが領土拡大の野望をむき出しにしていた1938年。英仏独伊の首脳が出席したミュンヘン会談でチェコは連合国に見捨てられ、ドイツ領に編入さ れて地図上から消滅した。占領下のチェコではナチス・ナンバースリーといわれるラインハルト・ハイドリヒが統治者として君臨し、暴虐の限りを尽くしてい た。これに対してチェコ亡命政府は、ハイドリヒ暗殺の刺客を送り込んだのだった。その名も「エンスラポイド(類人猿)作戦」…。暗い森の中に、落下傘で降 り立った一人の男…ヤン(ジェイミー・ドーナン)。彼はすぐに一緒に降りてきた「もう一人」を探す。その「もう一人」ヨゼフ(キリアン・マーフィー)は降 下中に木の枝に接触したため、足を引きずって現れた。ともかくふたりは落下傘を土の中に埋めて、森の中で夜を明かすことにする。ところが翌朝、ふたりが目 覚めると、そこには犬を連れた男がひとり。サッと緊張がはしるふたりだったが、男はふたりが不用心だと指摘して、自分の家に食事に来いと招く。どうやら味 方らしいと安心したふたりは、男について家までやって来た。家には男の弟がいて、ふたりにスープを振る舞ってくれる。だが、ヨゼフは不穏な空気を察知し、 乱暴に扉を開けた。すると、先ほどの男がどこかに電話をかけているではないか。アッと言う間にヨゼフの銃が火を噴き、その場に倒れる男。男の弟はとっさに 家の外に逃げ出したが、ヤンがその後を追って銃を構えた。だが…撃てない。何度狙っても撃てない。緊張のあまり手が震えて撃てないのだ。焦り狂うヤンだっ たが、結局、弟の方には逃げられてしまう。こうなると長居は無用だ。ヨゼフとヤンは男のクルマを借りて、一路プラハへと向かう。作戦本部から指定された人 物のアパートへ行き、そこを根城にしようという訳だ。ところが問題のアパートに着いてみると、その人物はすでにそこには住んでいない。出てきた女はヨゼフ とヤンを一見して、早速その正体を見破っていた。だが女は足を負傷しているヨゼフを見て、ふたりにある獣医を訪ねるように告げる。他に手がないふたりは、 仕方なくその獣医のもとへ行くのだった。すると、獣医はこれまたふたりを見て瞬時に事情を察する。そもそも足をケガして獣医を訪ねるというのは、尋常な状 況の人物ではない。獣医はヨゼフを治療するだけでなく、一夜、彼らを匿ってくれることになった。どうもふたりが訪ねた人物は、今では連絡がつかなくなって いるらしい。そこで獣医が別の人物を紹介してくれるというわけだ。こうして翌日、別の人物が獣医のもとに訪ねて来て、ふたりはこの人物に連れられて「ある 隠れ家」へと連れて行かれる。だが、そこではふたりは徹底的に警戒され、とても歓迎されている雰囲気ではなかった。実はチェコではナチスの弾圧が日に日に 厳しさを増しており、レジスタンス組織もどんどん摘発されていた。ヨゼフとヤンが頼ろうとした人物も、すでに逮捕されたあとだったのだ。ふたりを迎えたレ ジスタンス幹部のヴァネック(マルチン・ドロチンスキ)もゼレンカ=ハイスキー(トビー・ジョーンズ)も、ピリピリせざるを得ない訳だった。おまけに…ヨ ゼフとヤンの素性は一応信用されたものの、ふたりがやって来た理由を明かしたとたん、その場の空気は一気に凍ってしまった。ふたりがやって来た目的は、 チェコで暴虐の限りを尽くすナチの大物、ラインハルト・ハイドリヒの暗殺だったのである。さすがにこれを聞いたヴァネックは、無謀すぎるとバッサリ切り捨 てる。そんなヴァネックの態度に、ヨゼフは現地のレジスタンスのやる気を疑わざるを得ない。だが、ヴァネックに言わせれば、それは事情を知らない者の言い 分だった。昨今の追及の厳しさからして、ハイドリヒの暗殺など無理難題過ぎる。おまけにうまくいったとして、その後に激しい報復が行われるに違いない。こ の地で戦い続けて来たヴァネックにとっては、これは現地の事情を知らない連中が立てた計画だとしか思えない。それでもヨゼフは「イギリスにいる亡命政府の 決定だ」と一歩も譲らない。そして困ったことに、現在その亡命政府とは連絡がとれない状況だ。確認ができない。こんな調子で、話はまったく先に進まなく なった。それでもゼレンカ=ハイスキーの方はふたりに一定の理解を示し、とりあえず協力しようと言ってくれた。そんな訳で、ふたりは現地のレジスタンスの 手引きで、モラヴェツ家という一般家庭に住まわせてもらうことになった。その家の主婦マリー・モラヴェツ(アレナ・ミフロヴァー)が、ふたりの身の回りの 世話をすることになったのだ。こうしてふたりは、何とかモラヴェツ家に落ち着くことになる。可愛らしいお手伝いマリー(シャルロット・ルボン)に目をつけ たヤンは、早速親しげに声をかけた。するとヨゼフはすかさずマリーに「もう一人、知り合いの女を連れて来れないか?」と頼み込む。男女カップルのかたちを とれば、何かと行動しやすいというのがヨゼフの考えだった。そのヨゼフのリクエストに応え、女友だちのレンカ(アンナ・ガイスレロヴァー)を連れてダンス ホールへとやって来たマリーだが、着いたとたんに待ち構えていたヨゼフに「何を考えているんだ!」と厳しい叱責を受けてしまう。あまりのキツい言い方に驚 くヤンだったが、ヨゼフの叱責には意味があった。ここぞとばかりに精一杯のオシャレをしてきたレンカだったが、そもそも男女カップルで行動するのは目立た ないためだったはず。それなのに、オシャレで目立つような「なり」で来られたのでは…。その鋭い指摘に、改めてヨゼフの「本気」と状況の厳しさを痛感させ られるヤンたちだったが…。

みたあと
 こんなことを言ったら身 もフタもないのだが、僕は世界史も現代史も詳しい訳ではない。まして、第二次大戦中のチェコの状況など分かるはずもない。だから本作の物語も、映画そのも のを見ながら「こんなことがあったんだ」と改めて知ったような訳である。だがそう言いながら、何となくどこか既視感を感じてもいた。何だろうこの変な感じ は…と思っていたら、それもそのはず。このお話、ルイス・ギルバート監督、ティモシー・ボトムズ主演の「暁の七人」(1975)と同じネタだというではな いか。昔、テレビでボケッと見ていただけだからボンヤリとしか覚えていなかったが、なるほど見た覚えがある訳である。そして、もちろん劇映画だからフィク ションが入っているのだろうが、「実話」だけに徹底的にシビアなお話なのである。

ここからは映画を見てから!

みどころ

  本作の「みどころ」かどうかは分からないが、とにかく本作の特徴としては「とにかく物事が予定したようにうまくいかない」ということだろうか。冒頭いきな り落下傘で降りてきたキリアン・マーフィ扮するヨゼフが木に足を引っかけてケガをする。助けてくれると思った村人は裏切り者。逃げた奴をヤンがビビって仕 留め損なう。何とかプラハに着いても、合流すべき人物がいなくなっている…と何一つうまくいかない。これはその後もずっと続いて、いよいよという時に仕留 めるつもりのヨゼフの自動小銃が作動しないという徹底的なダメ押し。ヨゼフは意志も強く戦いのスキルも高そうなのに対して、もう一人のヤンは最初から少々 弱っちいキャラ。銃が撃てないとか、協力者の女の子と「婚約」しちゃったりとか、チョンボするならこいつだろう…と思わせておいて、まさかのヨゼフの自動 小銃不発である。現実ってこういうモノなんだろうが、そもそもこの計画、うまくいきそうにない話なのである。しかも、計画を練っているうちに、暗殺が成功 しても生還できる見込みがないし、そもそもする気がない…おまけに暗殺が成功したら、チェコの人々にとんでもないトバッチリが来ると分かって来る。それは 登場人物たちも見ているこちらもそうだから、何とも言えない気分になってくるのだ。最初からどうにも先の展望がない計画なのである。案の定、協力者はほぼ 全滅に追い込まれるだけでなく、それ以外のチェコの人々も虐殺されるというアリサマ。それから英首相チャーチルが重い腰をようやく上げる…と言われても、 何ともやりきれない思いしかしない。僕は映画は楽しむために見ているのだが、本作はそういう意味ではまったく楽しめない。実に気勢が上がらない、気が滅入 る作品である。ただ、こういう作品はたまには見ておきたいというのも事実だ。実際、ナチスの残虐さなんかより、チェコを見捨てた連合国の酷薄さ、テメエた ちはロンドンで高みの見物しながら同国民に犠牲を払わせる「亡命政府」の調子の良さだけが印象に残った。いざとなると、味方やら同胞やら身内やら同盟とや らの方がアヤシいということは、ままあるものだ。仲間ヅラしてくる奴ほどアテにならないものである。そんなションボリしてしまう映画鑑賞ではあるが、最後 の主人公たちの壮絶な戦いぶりはそれなりに見応えがある。そしてどう見ても「男らしさ」を売りにしていないはずのキリアン・マーフィーが放つ、ユニークな 男臭さにまたまた注目してしまった。「白鯨との闘い」や「フリー・ファイヤー」(2016)あたりから、グイグイと涼しげな男臭さを打ち出して来ている。今回も、内に熱さを秘めたクールさが何ともいい感じだ。本作はキリアン・マーフィを見る映画である。

こうすれば

 相方のヤン役ジェイミー・ドーナンは、ハーレクイン・ロマンス風というかレディスコミック系の女向けエロ映画「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」 (2015)の主役と聞いたが、ハッキリ言ってどうでもいい役者だった。もうちょっとキリアン・マーフィと絡んで面白い役者だったら良かったのに…という 気はする。そのヤンと婚約するマリー役シャルロット・ルボンが「ザ・ウォーク」 (2015)に続いていい感じだったので、こちらももったいなかった。そして、このマリー役が「事実」なのか「フィクション」なのかは分からないのだが、 他の登場人物が「その後」の決着まで描かれているのに対し、途中からパタッと描かれなくなってしまうのが気にかかる。そこだけ何とも中途半端な感じがする のである。

さいごのひとこと

 現実は甘くないの典型。

 

「スターシップ9」

 Órbita 9 (Orbiter 9)

Date:2017 / 09 / 25

みるまえ

  「スターシップ9」…何ともやる気を感じさせない邦題である。いかにも凡百の宇宙SFという感じである。僕がこの作品を知ったのはちょっとした偶然で、 ネットで何か見る映画はないか…と探していてブチ当たったという訳だ。正直言って見たいのに忙しくて見れなかった話題作は、他にも山のようにある。いくら SF好きだと言っても、何が悲しくて他の錚々たる作品を押しのけて、せっかく出来た時間を使って思い切りB級のSF映画を見なきゃならないんだ。おまけ に、お話がヤバい。あらすじを読むと、他の惑星に移民すべく宇宙船にたった一人で暮らしている女の子が、船の修理にやって来たエンジニアの男と…云々とい う、何となくどこかで聞いたようなお話。というか、恒星間飛行をしてずっと宇宙船に孤独で暮らしている主人公が異性と出会って…って、ついこの前「パッセンジャー」 (2017)って映画を見たばかりじゃないかい。おまけにこれが、ホームラン級のスカだったと来る。もうダメな要素しか見当たらない。イヤな予感しかしな い。マトモに考えたら「見たら負け」の作品に決まっている。しかし…映画ってのはこれが分からないものなのだ。そして僕の興味を惹いたのが、これがスペイ ン=コロンビアの合作映画だということ。スペイン=コロンビア合作のSF映画って、それだけで僕の食指をそそる。これはありきたりの宇宙SF映画じゃない んじゃないか? 映画好きにとって、こういう動物的なカンは大事なのだ。スペイン=コロンビア合作だから、残念ながら知ってるスターも出ていなければ、 知ってる監督が撮っている訳でもない。だが、僕は元々が珍しい国の映画が好きである。そして珍しい国でSFとなったら、とても見ずにはいられない。まぁ、 ダメで元々。ダメでもSFなら楽しめるだろう。そんな訳で、僕は結構ワクワクしながら渋谷の映画館に向かったのであった…。

ないよう

  広大な宇宙空間を飛行中の宇宙船のなかで、エレナ(クララ・ラゴ)はもうずっと一人ぼっちの暮らしを続けて来た。宇宙船が目指しているのは、遥か遠くにあ る惑星セレステ。エレナ一家は環境が悪化した地球を捨てて、セレステへの移民を目指してこの宇宙船に乗り込んだのだ。だが、不幸にも宇宙船の空調システム が故障。エレナに限りある空気を残すために、両親は彼女がまだ幼い頃に宇宙船を去った。以来、エレナはこの宇宙船のコンピュータ「レベカ」の声だけを相手 に生活してきた。そして、その生活は惑星セレステに到着するおよそ20年後まで続くのだ。そんなある日、「レベカ」がこの宇宙船に修理のためのエンジニア を乗せた船が接近中であることを知らせてくる。エレナの両親が頼んでいた空調システム修理のための救援が、ようやく実現しようとしていたのだ。だが、それ を「レベカ」から聞かされるエレナは、どこか無感動のようにも思える。救援が来ることは、もう何年も前から聞かされ続けているのだ。今さらエレナに驚きは ない。それでも救援船が近づくと聞けば、胸騒ぎを隠せない。幼い頃に両親と別れてから、「他人」と顔を合わせたことがないのだ。「レベカ」が救援船のアプ ローチを告げると、エレナはこの宇宙船の乗船口にイソイソと近づく。自動扉が開いてそこに現れたのは、宇宙服に身を固めた若い男。それが修理エンジニアの アレックス(アレックス・ゴンサレス)だった。宇宙船に乗り込んだアレックスは、エレナとの挨拶もそこそこに早速作業を開始。そんなアレックスに興味しん しんなエレナだったが、アレックスとしてはサッサと作業を終わらせたいらしく、一貫して彼女に素っ気ない。それもそのはず。たった2日で終わらせないと、 また次の仕事が待っているのだ。だがどうしてもアレックスが気になるエレナは、彼を夕食に誘う。よそよそしかったアレックスも、夕食だけなら…と誘いに 乗った。だが、その後は仕事が忙しい…とメシにもつき合わないアレックス。さすがにこれはエレナも切ない。そんなこんなで、空調システムは修理完了。心な しか、船内の大気も澄んできたように感じる。だが、これで一晩明けたらアレックスはいなくなってしまう。意を決したエレナはアレックスの泊まっている部屋 に乗り込み、自分から服を脱いでその身を投げ出した…。だが、一夜明ければアレックスはその場を去らねばならない。彼が去った後、エレナはあと20年はこ の船で一人ぼっちだ。昨夜は興奮してエレナを抱きしめたアレックスだったが、今朝は感情を殺しているかのように淡々と身繕いをして乗船口にやって来た。こ うして扉が締まり、アレックスはエレナの前から去った。こうして無表情にエレナの宇宙船から離れんとするアレックスだったが…。
ここからは映画を見てから!

みたあと
 ぶっちゃけ言うと、今回も 僕のカンは正しかった。本作はただの宇宙SFではない。上記のストーリー紹介は映画の冒頭部分を書いただけのものだが、これでは本作の本筋をまったく伝え ていない。だが、本題まで語り始めてはいけない事情がある。早い話が、本作はまったく情報を遮断して見るべき映画である。すでに僕は「何か」をほのめかし ている時点でルール違反を犯しつつあるのだ。いやぁ、困った。察しのいい人ならもう気づいちゃうだろうが、本作はある意味で「キャビン」 (2011)を思わせる衝撃的な作品である。こんな映画だとは思っていなかった。そして、僕が避けようとしている「ネタバレ」(本当はこの下衆な言葉は好 きじゃないのだが、便宜上使わねばならないので使わせてもらう)部分を仮に知ってしまったとしても、むしろ本作の面白味はその先にあるところが素晴らしい のだ。

みどころ

 そんな作品なので、具体的な話が一切出来ないのは何とも辛い。それで作品紹介なんてとても出来ないのだが、それでもいくつかの点を指摘することは出来 る。まず、この映画は「パッセンジャー」なんて映画と一緒にするべき映画じゃない。出来が違う…というような話ではなく、そもそも題材がまったく違うので ある。そして、素晴らしいのは単にアッと驚くどんでん返し的な展開だけではない。イマドキはSF映画じゃなくても、どんな映画でもCG、シージー…と大騒 ぎなのだが、何と本作はたったの一か所もCGを使っていないらしい。CGを使ってないからエラいというのはちょっと違うと思うのだが、それでもいかに本作 が「アイディアの勝利」とでも言うべき作品かということはお分かりいただけるだろう。未来都市の場面は、南米コロンビアに実在する街でロケして撮影したと いうのだからビックリだ。それでスペインとコロンビアの合作…ということになったみたいなのだが、そういう発想からしてなかなか出て来ない。考えてみると 本作はかなりの低予算映画みたいなのだが、やはり映画ってのは「アタマ」の問題だと改めて思わされた。唯一、難があるとすれば、主人公の行動が無茶すぎる ことか。主人公の想定外のアクシデントが起きなかったとして、先々どうしていくつもりだったのか。いろいろと行き詰まることは目に見えていたはずで、その あたりを考えていなさそうな話の設定にちょいと無理があったように思う。ただ、それも全体の中では小さいキズで、見ていて驚きの方が多いのでさほど気には ならない。さらにエンディング…こういう展開ならお先真っ暗にした方がラクだし、未来SFとしては一応もっともらしい恰好をつけられるはずだ。ところが作 り手は、これを無理矢理に力業でハッピーエンディングに持っていったから驚く。これって、今日びの映画では本当に大変なことなのだ。途中のどんでん返しと かそんなことよりも、この結末の付け方の方に大いに感心させられた。監督・脚本のアテム・クライチェという男、これから要注意だと思う。

さいごのひとこと

 逆に「パッセンジャー」のダメさがシミジミ感じられた。

 

「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」

 The Mummy

Date:2017 / 09 / 11

みるまえ

  アメリカでマンガ原作映画が量産されているのは何とも鬱陶しいが、もっとウンザリするのが、それらが軒並み「なんちゃらユニバース」とかいう括りで数珠つ なぎになって製作されていること。その先駆のマーベルはさすがに一日の長があって、最初にそういう構想が見えてきた段階では「おお〜っ」とちょっと感心し た記憶がある。こう言ったら大袈裟だが、クシシュトフ・キェシロフスキが「デカローグ」(1988〜1989)でやったことが、派手になって娯楽映画で実 現したような感じ。だがそれも、ヒーローのオールスター戦映画「アベンジャーズ」 (2012)が出て来ちゃった時点でガッカリしてしまった。あの構想は「アベンジャーズ」がやりたくてこしらえたモノなんだろうが、一回全員集合をやった らもうあまり面白くなくなっちゃうんだよなぁ。そんなガッカリ感に追い打ちをかけるように、ワーナー・ブラザースとDCコミックスまで同じような数珠つな ぎをやり出した。しかも、うまくいってない(笑)。こっちは「ジャスティス・リーグ」とかいうらしいんだが、見るからに1本の映画を支えられそうにない雑 魚キャラが散見されてイヤな予感しかしてこない。そう思っている矢先に、今度はワーナーがレジェンダリー・ピクチャーズと組んで手がけた怪獣映画まで数珠 つなぎらしいと判明して、「キングコング/髑髏島の巨神」 (2017)の出来が良かっただけに暗澹とした気分になってきた。おまけにユニバーサル映画から…またこれである。同社が過去に製作したモンスター映画、 怪奇映画を続々とリメイクして、それらを数珠つなぎにしようというのだ。いや〜ワクワク…する訳ないだろ。フランケンだとかドラキュラとか狼男とかモンス ター映画を全部つないだって、最終的に「怪物くん」にしかならない(笑)。一体、何を考えているのだ。その名を「ダーク・ユニバース」と称するこの数珠つ なぎ、第1弾として選ばれたのが「ザ・マミー」…。どこかで聞いた覚えがあると思ったら、これって「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」(1999)の原題 名ではないか。公開当初、てっきり「インディ・ジョーンズ」モノの便乗企画と思っていた同作だったが、実はこれがボリス・カーロフ主演の「ミイラ再生」 (1932)のリメイクだったとは知らなんだ。アレはかなり大胆な改変を行っていたのだねぇ。ところが今回、それをまたまた「ダーク・ユニバース」のため に新装開店というんだから、正直言って「???」である。おまけに主演トム・クルーズ…。確かに、それぞれの要素を並べてみれば強力な布陣である。「ダー ク・ユニバース」始動にあたって、ユニバーサルの怪奇映画でも古典のひとつ「ミイラ」をリメイク、しかもそれは一度「ハムナプトラ」として大ヒットしてい る安全パイ企画だ、さらにトム・クルーズ主演という保険つき。もう、当たるしかない。…ちょっと待っていただきたい。今回、「ダーク・ユニバース」と1作 として作り直すならば、もはや「ハムナプトラ」のコンセプトはあり得ない。そして、クルーズと怪奇映画という結びつきが見えない。どう考えてもチグハグで はないか。そう思っていたら…案の定、先に公開されたアメリカから酷評の嵐というニュースが聞こえて来た。やっぱりな…と僕も納得した訳だ。ただ、あまり にクソミソに叩かれているのを見ると、生来の天の邪鬼である僕あたりはちょっとスッキリしない。「本当にそこまでダメなのか?」と疑ってかかってしまう。 しかも、あれだけセルフ・プロデュース能力に長けているクルーズが、そこまで脚本選択を誤るとも思えない。おまけに事前のイメージが悪い時点で、僕の中で のハードルはかなり下がっている。そうなると、実物を見た結果はそんなに悪くない…となるのではないか。しかも予告編を見ると、チラッとストーンズの「黒 くぬれ!」が流れるではないか。キューブリックの「フルメタル・ジャケット」(1987)のエンディングでの「黒くぬれ!」は衝撃的だったが、「ザ・マ ミー」に中近東っぽいこの曲を流すセンスはなかなか悪くない。「ホワイトハウス・ダウン」(2013)以来の、娯楽映画でのイケてるストーンズ楽曲使用になるんじゃないか。そんな淡い期待を胸に秘め、僕は久々に劇場に足を運んだ訳だ。

ないよう

  中世のイングランド。十字軍として戦って来た者たちが、自分たちの仲間のひとりの埋葬に立ち会っている。重たい石の棺のフタが閉じられようとする中で、亡 骸と共に棺の中に収められたモノとは…。さて、時は現代のロンドン。掘削用のシールド機が、とある壁面をブチ抜いて停止する。シールド機はロンドンの地下 鉄工事中で、どうやら地下に建設されていた遺跡にぶつかったようだ。作業員たちは、その地下室の古さと異様さに驚く。そこは、明らかに一種の墓所であっ た。やがて奇妙に統率された一団が地下に乗り込み、作業員たちをその場から追い出した。どんな権限を持っているのか分からないが、その場を制圧して調査を 開始する一団。その中心となるのは、いかにも教養の高そうなひとりの男(ラッセル・クロウ)だ。この男は墓所の壁面に目を留めると、悠久の時に思いを馳せ て、心の中で語り始める。何かを葬り去ろうとしても、葬りきれるものではない…。その昔、エジプトにひとりの美しく強い王女がいた。その名をアマネット (ソフィア・ブテラ)。父王ファラオから王位の継承を約束され、ひたすら武芸の腕を磨く日々。だが、妃の出産によって事態は一変。息子誕生で気が変わった ファラオは、この子に王位を譲ることにする。この王の心変わりに絶望し、怒り狂ったアマネットは、悪魔と取り引きをした。悪しき魔術を使い、死の神セトを 呼び出して自らを捧げたのだ。瞳がふたつに割れてカラダに呪文が刻印されたアマネットは、こうして強力なパワーを手に入れる。黒い石で出来た不思議な短剣 を使って、ファラオ、妃、幼子を次々と殺害。さらにその力を決定的にするため、自分が目をつけた男と淫らな行為を行いながらその男を殺す儀式を執り行って いる最中、人々に取り押さえられてしまう。アマネットは生きながらにしてミイラにされ、棺に閉じ込められたままエジプトを追放、異境の地の地下奥深くに埋 葬された。だがそれが何であれ、葬り去ろうとしても葬りきれるものではないのだ…。それはメソポタミアの地…現代のイラクである。そのイラクの砂漠の小さ な町に、馬に乗ったふたりの男がやって来る。ふたりの名は、ニック(トム・クルーズ)とクリス(ジェイク・ジョンソン)。彼らは現地に派遣されているアメ リカ軍の兵士で、任務の傍らあわよくば宝物を手に入れて稼ごうと目論んでいた。しかも、それはアテのある話だった。ニックは宝物の在り処が描かれた地図を 持っており、それを頼りにここまでやって来たのだ。だが生憎と、問題の場所は反政府ゲリラが制圧中。ヘタに顔を出せば蜂の巣にされる。スッカリその気をな くすクリスだが、元来調子のいいニックはひるまない。「冒険の心を忘れるな!」などと意気軒昂なニックに、クリスもイヤイヤつき合わされる羽目になる。だ が、案の定ゲリラに見つかり、激しい攻撃にさらされるふたり。必死に逃げ惑うが多勢に無勢。クリスはたまらず無線で軍に泣きついて空爆を頼み込むが、頼ん ですぐに来る訳もない。だがこの時は、神が味方したようだ。空からのピンポイント爆撃で、ふたりは難を逃れることになる。だがホッとしたのもつかの間、 ニックとクリスはいきなり足下の地面の陥没に巻き込まれる。何とか下に飲み込まれることからは逃れたふたりだが、地面にはポッカリと暗い穴が口を開く。そ の穴には、巨大な石像の顔がのぞいて見えるではないか。ニックは思わず満面の笑みを浮かべた。これぞ、例の宝物の在り処に違いない。やがてこの場に上官た ちがやって来て、当然のごとく「副業」に精を出すふたりはお小言を頂戴する。だが、今回はそれだけでは済まなかった。その場に女性考古学者のジェニー・ハ ルジー(アナベル・ウォーリス)も乗り込んで来たからだ。実は例の地図は、このジェニーの持ち物だった。それをニックがジェニーと一晩共にして、チャッカ リくすねて来たというのが真相だ。当然、ジェニーはいろいろな意味でニックに憤懣やるかたない様子。さすがに調子のいいニックも防戦一方だ。だが、そんな やりとりも、ジェニーが足下に開いた例の巨大な穴を見て打ち止め。ジェニーは穴から見える石像の顔を見て、それが古代エジプトのモノであると見てとった。 彼女はどうしても下に入ると言い張って聞かない。仕方なく上官は、その護衛にニックとクリスを差し出した。もちろんクリスはともかく、ニックに異存はな い。こうして穴からロープをつたって、遥か下まで降りて行く三人。奥は巨大な空洞になっていて、三人はそのただならぬ気配を感じずにはいられない。ジェ ニーに言わせると、内部の作りは明らかに墓所ではないという。これは封印された場所なのだ。奥に入ってみると、何やら液体が満々と湛えられた場所がある。 その液体とは、奇妙なことに水銀だ。ジェニーいわく、水銀とは忌まわしいモノを封じ込める力があるとのこと。では、縄によってこの水銀の中に沈められてい るモノとは、一体何なのか? そんな折りもおり、ニックとクリスの上官から無線で連絡があり、「反政府ゲリラが来るので、すぐにでも退却」との知らせ。す ると、万事調子いいニックがまたやらかした。彼は有無を言わさず、足下の縄を銃で撃って切断。すると、墓所に仕掛けられたカラクリが動き出して、水銀に沈 められていた何かがグイグイと引き揚げられるではないか。それは、どこか異様な黒い棺だった。ここまで用心され、忌み嫌われた棺の主とは、一体誰なのか?  その場にいる誰もがそんなことを思い浮かべていたその時、ニックの脳裏に強烈なイメージが飛び込む。それは古代エジプトのイメージ。そしてエキゾティッ クで美しい女が、自分を誘惑してくるイメージだ。その瞬間、ニックは何かに取り憑かれたように意識が飛んでしまう。だが、まだニックは気づいていなかっ た。そのエキゾティックな女こそ…あの忌まわしい伝説の王女、アマネットであるということを…。

みたあと
 映画の冒頭、いきなり ユニバーサルの地球マークが真っ暗な「ダーク・ユニバース」ロゴに変わる。しょっぱなからやる気マンマンなオープニングである。ユニバーサルの怪奇映画の 資産を、今風にリメイクしていく企画のスタートとしては申し分ない。何しろ主演はビッグスターのトム・クルーズなのだ。だが、僕としては映画を見始めた時 点でも、イマイチ納得できていなかった。あの「ハムナプトラ」のリメイクなら、トム・クルーズでオッケーである。だが、そもそも「ハムナプトラ」は「ミイ ラ再生」のリメイクで、それを「インディ・ジョーンズ」スタイルに焼き直して出来たもの。今回は「ダーク・ユニバース」としての新装開店だから、当然「ハ ムナプトラ」的なコンセプトではあり得ない。だとすると、クルーズでいいのかこれは? そんな感じで、見る前から何とも座りが悪い作品の予感しかない。案 の定、その「座りの悪さ」が後々まで祟ってしまったようなのだ。

ここからは映画を見てから!

こうすれば

  まず、本作のトム・クルーズは、彼のフィルモグラフィーの中で演じる機会が多かったタイプの役柄である。つまり、魅力的な男で能力もあるんだが調子良くて 世の中ナメてる奴。「従来型トム・クルーズ作品」パターンなら、そんな調子良さが災いして挫折、そこで目覚めて立ち直って真人間に成長…という「王道」 キャラという訳だ。だが、今回はその典型的クルーズ・キャラが完全にスベっている。というのは、語り口に問題があるからではないだろうか。時々ユーモアを 漂わせるどころじゃなくて、クルーズ・キャラは完全にコミカルに描かれている。それどころか、悪霊の犠牲となりクルーズの目にしか見えない存在となった相 棒の描き方も、笑いを誘う方向に持って行こうとしている。映画の舞台が中盤からロンドンに移行することも含めて、この描き方はジョン・ランディスの「狼男 アメリカン」(1981)を意識していることは間違いない。そういえば本作でトム・クルーズが全裸でイチモツを隠してオタオタする場面が出て来るが、あれ も「狼男〜」で主人公が変身後に動物園で全裸で目覚める場面をいただいているのだろう。だが、コミカルな味付けは単なるアドベンチャー映画なら簡単だが、 ホラー的題材で、なおかつ悲劇的な結末となるとなかなか難しい。「狼男〜」はジョン・ランディスの微妙なサジ加減と個性があったからうまくいったのであっ て、ヘタにやったら取り返しがつかない。案の定、今回は完全に空回りしているのである。そして物語の端々で、トム・クルーズがやらかすチョンボのせいで事 態が悪化しているというのもマズい。調子いい奴で、おまけにやらかし…では、単なるバカでしかないから共感できる訳がない。しかも、そんな彼がヒーローと して目覚める…というだけなら「従来型トム・クルーズ作品」パターンの範疇だが、本作では犠牲的な精神で悲劇的なラストを迎えねばならないというかなりの 難題である。そのキッカケとなるのが、ヒロインへの愛…ということなのだが、今回ヒロインを演じるアナベル・ウォーリスという女優がパッサパサの水気のな さそうな女というのはどういうことなのか。正直言って、近年のトム・クルーズ作品の中でも屈指の魅力のなさ。こんな女のために命を賭けるとは到底思えな い。まして、改心などする訳もない。この女優が出てきた時点で説得力ゼロである。その他にも、物語に入れる必要のないジキル博士とか、ラッセル・クロウが 太り過ぎで冗談にしか見えないとか、墜落する飛行機での大アクションが無意味とか、ロンドン市内大パニック(これもどうせ「狼男〜」を意識したんだろう が)もムダにしか見えないとか、言いたいことはいろいろある。だが、やはり最もマズかったのはトム・クルーズの主人公をふざけた描き方にしてしまったこと と安易に「狼男アメリカン」をパクろうとしたこと、これに尽きる。結果として、近年稀にみる最悪のトム・クルーズ映画となってしまった。作り手は典型的ト ム・クルーズ映画のパターンをトレースし、今風ホラーとしてセンスがいい「狼男アメリカン」にうまく目をつけたつもりだろうが、似て非なるものを作り出し てしまっている。着想に技術が伴っていない。フランケンシュタインの創造なみの誤算と悲劇なのだ。それも、うまくいったとして果たしてユニバーサル怪奇映 画と馴染んだかどうか疑問だ。この企画、誰もおかしいとは思わなかったのか。セルフ・プロデュース能力に長けているはずのクルーズが、どうしてこの穴に気 づかなかったのか。こんな調子でダーク・ユニバースはうまくいくのか…というより、そもそもダーク・ユニバースなんてやる必要があるのか。「従来型トム・ クルーズ作品」とか、マーベルのなんちゃらユニバースとか、「狼男アメリカン」とか、既存のさまざまな成功例をパッチワークみたいにハメ込もうとしたのが 失敗だったのではないか。監督のアレックス・カーツマンは「M:I:III」(2006)、「トランスフォーマー」(2007)、「スター・トレック」 (2009)などの脚本やさまざまな映画のプロデュースで知られているようだが、ビックリするほどセンスがないと思わざるを得ない。残念ながら、今回は世 間の評価が全面的に正しかった。これがトム・クルーズにとってつまずきの始まりにならないことを祈るばかりだ。ちなみにストーンズの「黒くぬれ!」は本編 ではまったく使用されていない(笑)。

さいごのひとこと

 マミ〜…と見たらお母ちゃんに泣きつきたくなる出来映え。

 

「ライフ」

 Life

Date:2017 / 09 / 11

みるまえ

 「ライフ」…というとベン・スティラーのコメディかと一瞬思ってしまうが、それは「LIFE!」(2013)。こちらはライ アン・レイノルズ、ジェイク・ギレンホール、そして「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」(2015)でいきなり注目を浴びたレベッカ・ファーガソ ンというなかなか豪華でクセのある顔ぶれで作るSFホラー。この顔ぶれで作るSFホラーと来れば、それでなくてもSF好きの僕としては見ずにはいられな い。未知の生命体を発見したら、それが宇宙ステーション内で暴れ出す…という「エイリアン」(1979)タイプの映画らしいということは、かなり早い段階 で分かっていた。一種の「密室」である宇宙ステーションでの恐怖を描けたら、かなり面白くなるかも。ただ、唯一の不安材料としては…わが日本から真田広之 が出演していること。何も真田に恨みがある訳ではない。だが真田で宇宙SFというと、「サンシャイン2057」(2007)の無 惨な出来映えが脳裏に甦ってくる。しかも「サンシャイン〜」も豪華キャストの中で真田が孤軍奮闘の観があり、何となく今回と共通する感じがする。まさかあ の映画の二の舞っていうんじゃあ…。

ないよう

 宇宙空間を孤独に飛行する小型探査機。だがそんな探査機の進行方向から、細かい流星群が降り注いでくる。案の定、そのうちのひとつは探査機に激しく衝突 してしまった…。舞台変わって、ここは地球上空に浮かぶ国際宇宙ステーション(ISS)。乗員たちは何かの準備に大わらわだが、このステーションに検疫官 のミランダ・ノース(レベッカ・ファーガソン)は、あくまで安全を第一に…とアレコレと厳しいルールについて云々しているが、他の乗員たちは構っちゃいな い。それもそのはず、このステーションでは飛来してくる小型探査機をキャッチするという重大任務を遂行することになるのだ。その探査機とは、火星で土壌サ ンプルを採取して来たもの。ひょっとすると何らかの「生命」を運んでくるかも…との期待もあるのだが、問題はこの探査機が途中で流星雨と接触してコースが ブレてしまったこと。それにより、国際宇宙ステーションの巨大なロボットアームで飛んできた探査機を捕まえることが検討された次第。パイロットのショウ (真田広之)はじめミランダ以外の乗務員が興奮して慌てまくるのも、当然と言えば当然なのだ。結局、突っ込んで来た探査機をデビッド(ジェイク・ギレン ホール)を見事キャッチ。生物学者のヒュー博士(アリヨン・バカレ)は宇宙ステーション内の研究スペースに籠って、土壌サンプルから冬眠状態の細胞を入手 する。やがて、細胞を冬眠から目覚めさせることに成功。この大発見に世界は大いに沸き立ち、発見された生命体を一般公募で「カルビン」と命名する。そんな うちにも「カルビン」はどんどん成長。ガラスケースの中の「カルビン」は知覚反応も非常に鋭敏で、敏捷に動くようになってくる。そんな「カルビン」の反応 にヒューも大喜びだ。だがあまりのヒューの入れ込みように、デビッドやエンジニアのロイ(ライアン・レイノルズ)は少々腰が退けていたのも事実。そんな各 人の思惑をよそに、「カルビン」はすくすく育っていくのだった。だが、好事魔多し。たまたまヒューが実験スペースの扉を開放したままにしてしまったため、 「カルビン」は再び冬眠状態に戻ってしまう。この事態を、ミランダは深刻に受け止めた。彼女は、気密性を重んじなければならない実験スペースでこのような 不始末が起きたことを重要視。もっと危険な事態に陥る可能性があったことから、ステーション司令官のキャット(オルガ・ディホヴィチナヤ)も他のクルーも これには同意せざるを得ない。だが、ヒューの受け止め方は少々異なっていた。彼はひたすら「カルビン」が再び眠ってしまったことにショックを受け、激しく 落ち込んでいた。そのため、何とか目覚めさせなければ…と徐々に思い詰めていく。温度を上げても目覚めない「カルビン」に業を煮やしたヒューは、少々過激 な手段を選択。電気ショックを与えて、「カルビン」を蘇生させることを試みる。ガラスケースに取り付けられた作業用手袋に手を通し、「カルビン」にショッ クを与えるヒュー。これがうまくいったか、再び活動を開始した「カルビン」。ところが喜んだのもつかの間、「カルビン」はいきなり手袋ごしにヒューの手に まとわりつくと、猛烈な力で締め付けるではないか…。

みたあと
 先にも述べたように、かなり豪華キャストである。しかも国際色豊かだ。これは安っぽい作品ではない。かなり本格的に作られた作品である。しかし、残念な がら「真田広之出演・宇宙SF映画」の法則は今回も発動してしまった。途中まではかなり手に汗を握って見ていたし、それなりにハラハラもした。だが、僕は 途中から、シラケる気持ちを隠せなくなってしまった。残念ながら、それが実際のところである。

ここからは映画を見てから!

こうすれば

 「エイリアン」タイプの映画らしい…と冒頭に書いた僕の予想は、完全に当たっていた。というか、この映画は「エイリアン」タイプにしかなり得ない。だか ら、どうしたってある種の凡庸さからは逃れられない。悲しいかな本作はそんな「典型」でしかなくて、そのパターンそのものでしかなかった。ただ、凡庸さは 多少目をつぶっても面白く見られれば問題ないが、その後がいけない。やり口がかなりあざといのである。本作はとにかくクルーがお互いを気遣い、「カルビ ン」によって犠牲になるたびに激しく悲しむ。それは寝食を共にした相手が犠牲になるのだから、悲しむのは当たり前だろう。だが、すぐにグジグジと泣きわめ いてお話を停滞させる日本映画などと比べて、本来はハリウッドを含む欧米映画はそのあたりは抑制されているはず。ところが本作は、どうもそのあたりが過剰 なのだ。結局、ひとり一人が殺されていく状況の深刻さを強調するために、より過剰に周囲の悲しみを演出しているのだろう。しかしクルーがいくら悲しんで も、見ている僕らにはその度合いが伝わらない。それもそのはず、映画ではクルーたちのそれまでの和気藹々ぶりなどがじっくり描かれている訳ではない。「親 しかったんだろうな」と断片的なやりとりなどで察するしかない。だから、いくら周囲で嘆かれても僕らにはピンと来ない。それどころか、クルーの過剰な嘆き がドラマの進行を損なっているとしか見えないのだ。しかも悲しみと憤りのあまり、劇中で一番こういう問題に冷静に対処するべきヒロインまでがブチ切れ。こ うしたクルーの冷静さを欠いた行動が事態を悪化させていくから、見ているこちらはますます共感できないという負のスパイラルに陥っていく。イライラさせら れて怖いどころではないのだ。ラストも一応どんでん返しなんだろうが、後味の悪さはどうにもならない。それも、作り手が観客に向かって「このシビアな結 末、ドヤァ!」「びっくりしたろ? 驚いたろ?」とドヤ顔したいだけ…みたいな印象しか受けない。まったく不毛な結末なのである。そもそも…最初の犠牲者 が予想外の人物である時点で作り手のドヤ顔は始まっている訳で、そこからして素直にビックリとはならず好感が持てない。スウェーデン出身のダニエル・エス ピノーサって監督、すでにデンゼル・ワシントン主演の「デンジャラス・ラン」(2012)や「チャイルド44/森に消えた子供たち」 (2015)などで日本でも知られている。後者は僕も見ていて結構気に入った記憶もあるのだが、今回はちょっといただけない。曲者揃いのキャストがもった いない結果となってしまった。

さいごのひとこと

 「真田広之出演・宇宙SF映画」のジンクスは生きていた。

 


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