新作映画1000本ノック 2014年6月

Knocking on Movie Heven's Door


こ のページの作品
「ザ・スパイ/シークレット・ライズ」 「アメイジング・スパイダーマン2」 「8月の家族たち」 「リベンジ・マッチ」

 

「ザ・スパイ/シークレット・ライズ」

 The Spy - Undercover Operation

Date:2014 / 06/ 30

みるまえ

 残念ながら、最近は見る映画見る映画ガッカリのケースが多い韓国映画。それでも何だか分からないイケメン韓流スターではなくて見知った顔が出てくると聞けば、劇場に足を運びたくなる。この映画の場合は、ソル・ギョング主演という要素が大きかった。「ペパーミント・キャンディー」(2000)、「オアシス」(2002)、「シルミド」(2003)…と変幻自在の演技力。あの当時はフランスのジェラール・ドパルデューと並んで、世界最高の映画俳優の一人だと思っていた。そんな彼の大活躍も、「力道山」(2004) で入魂の演技を見せてからパッタリ。日本で作品が公開されなくなったのか、公開されても細々で僕が気づいていなかったのか。そもそも韓国映画を取り巻く環 境が激変しちゃって、それまで活躍していた人たちから全然知らない整形顔のスターばかりに変わっていったこともあって、僕自身が韓国映画から退いちゃった ところもあった。去年ようやく、パニック・スペクタクル映画「ザ・タワー/超高層ビル大火災」 (2012)で久々に再会を果たしたような案配だ。そんなソル・ギョングの主演作と来れば、どうしても見ないわけにいかない。しかし、あのソル・ギョング がスパイ…ってのはどうなんだろう。本来は愚直な演技派のイメージが強くて、娯楽映画の「スター」的な役割は似合ってなかったはず。それでも近作の「ザ・ タワー/超高層ビル大火災」では「タワーリング・インフェルノ」(1974)のスティーブ・マックイーンにあたる消防士の役を演じたりしているから、本国では娯楽アクション映画のヒーロー役もイケると思われているのか。チラシとかを見るとかなりなアクション大作に見える。でも、「ベルリンファイル」 (2013)みたいなシリアス路線というよりは、007みたいな派手ハデ路線に見えるのだ。そういう映画とソル・ギョングってどうなんだ? しかも相手役 がムン・ソリ! 「ペパーミント・キャンディー」、「オアシス」の名コンビが再び…ではないか。しかしムン・ソリって、いわゆるグラマー・スターや美人ス ターって訳じゃない。ソル・ギョング同様、演技力で見せるスターだったはず。娘役やってた頃から、どっちかといえば地味なオバチャン顔。しかも今じゃ結構 トシもいっちゃってるから、あの容貌からすると、日本の「あき竹城」みたいな感じ(笑)になっちゃってるんじゃないか? そんなムン・ソリとスパイ・アク ション大作って、ソル・ギョング以上に似合わない気がする。どういうキャスティングなんだ、これは? それに正直言って…ホントに007スタイルの映画な のか?…といわれると、実はぶっちゃけちょっと疑問も残るのだ。そんな悶々とした思いを抱きながらも、ソル・ギョング、ムン・ソリとの再会を楽しみに劇場 へ向かった。実際に見たのはかなり前のことになるので、すでに公開はとっくの昔に終わっていることをご容赦いただきたい。

ないよう

 ここはソマリア。大密林の中を蛇行する大河に、一台のモーターボートが突っ走っている。実はつい最近、ある船舶が海賊に襲われ、韓国人をはじめ とする人質を取られたのだった。このモーターボートには、身代金を持参した交渉人が乗っている。その男の名はキム・チョルス(ソル・ギョング)。実は彼の 正体は、韓国が誇る敏腕スパイ。単身、海賊のアジトに乗り込んだと見せて、周囲には相棒のジン(コ・チャンソク)はじめ仲間たちがちゃんと包囲していた。 海賊たちの本拠に乗り込み、周囲を観察するチョルス。ところが海賊たちとの交渉を始めようという最中、チョルスの携帯が突然鳴り出すから驚いた。携帯に出 てみると、その電話はチョルスの妻ヨンヒ(ムン・ソリ)からのものではないか。実はヨンヒは夫の正体を知らず、単なる出張の多いサラリーマンだと思ってい た。そしてヨンヒの前では、チョルスはただの恐妻家に過ぎない。そんなこんなの電話が終わると、チョルスはまたまたスーパー・スパイに早変わり。その脳裏 には、彼が常に座右の銘にしている「スパイ3か条」が浮かぶ。いわく、1・相手の目から視線を放さない、2・感情を表さない、そして3・相手がわかってく れなければ実力行使…。一触即発の緊張が崩れて銃撃戦が展開されても、まったく冷静さを失わずに事態を解決した。だがそんな一方で、不審な出来事も起きて いた。中国の天津空港から飛び立った飛行機が撃墜されたが、そこには韓国へ亡命しようとしていた北朝鮮の高官が乗っていたのだ…。そんな事とはまったく関 係なく、チョルスの郷里では彼の母(キム・ジヨン) の古希祝いが催されていた。しかし待てど暮らせどチョルスは来ない。チョルスの母は苛立ちついでにヨンヒにチクチク八つ当たりだ。当然のことながら宴も終 盤にやっと姿を現したチョルスは、妻ヨンヒから何だかんだと責められてしまう。特に厳しく突っ込まれたのは、いまだ子どもが出来ないことで母からイビられ たこと。そんなこんなで、チョルスは不妊検査で産婦人科に行かされるハメになる。ところが産婦人科でアレコレ無茶を言われている最中、チョルスのもとに同 僚のイ・ミラン(ラ・ミラン)が新たな指令を持ってやって来る。そんなこんなで、チョルスはドサクサ紛れに「出張」と称して産婦人科を脱出。逃げられたヨ ンヒはまたまた苛立つことになる。さて、チョルスたちの本部は、零細企業を装った小さなボロ事務所。そこで社長という名目のボス、ヨム・インギ(チョン・ インギ)から今回のミッションを説明される。何と天津で殺された北の高官には、核物理学者の娘ペク・ソリ(ハン・イェリ)がいた。そのペク・ソリが韓国へ の亡命を求めて来たのだ。そしてそんな彼女の動向を察知して、アメリカのCIAや中国、日本など、各国のスパイたちも動き出した。早速、チョルスたちは仕 事でタイに派遣されたペク・ソリと接触し、彼女を亡命させるべく出動する。一方、不甲斐ない夫チョルスに怒り心頭のヨンヒは、CAの仕事を利用して職権乱 用。憂さ晴らしで大いに羽根を伸ばそうと、フライト・スケジュールをタイ行きに変更する。すると、機内でサービス中にすこぶるつきのイケメン男ライアン (ダニエル・ヘニー)と親しくなるではないか…。
ここからは映画を見てから!

みたあと

 まず、ハッキリ言ってこの映画の日本でのチラシやポスターの類は、ほぼ詐欺に近いと言わざるを得な いだろう。カッチョイイ007スタイルの娯楽大作を思わせるビジュアルは、やはりマユツバだった。確かにお金のかかった大作のスパイ映画だが、シリアスで も娯楽アクションでもなくコメディ、それも夫婦コメディとなっているのだ。スパイ映画で夫婦コメディと来れば、誰しも脳裏に浮かぶのがアーノルド・シュワ ルツェネッガー主演のジェームズ・キャメロン監督作「トゥルーライズ」(1994)。本作はまさに、その「トゥルーライズ」の「韓国版」という趣の映画だったのだ。

こうすれば

  実際のところ、「トゥルーライズ」の「韓国版」…というと、ほとんど説明が終わってしまう(笑)。違っているのは、「トゥルーライズ」のシュワとジェイ ミー・リー・カーティス夫妻には子どもがいるが、ソル・ギョングとムン・ソリ夫妻には子どもがいないこと、さらにジェイミーがよろめく相手はバッタもんス パイだったが、ムン・ソリのお相手はガチのスパイだったこと…ぐらいだろうか。主人公スパイの相棒に相当する役者が「トゥルーライズ」と同じくコメディア ンらしいところや、後半のアクション場面でムン・ソリがジェイミ・リーみたいにヘリコプターからぶら下がって「危機一髪!」みたいなところまでパクり。正 直言ってこれはいくら何でもいただけない。これではただの劣化コピーなのである。そもそもコメディをやらせたらどこか泥臭い韓国は、ハリウッドの敵ではな い。しかも「トゥルーライズ」自体が元々はフランス映画のリメイクだからねぇ。前々からパクりなんぞザラにあった韓国映画。しかし、かつての韓国映画には パクりならパクりなりのバイタリティみたいなモノがあった。本作にはそうした「プラス・アルファ」が見いだせないのである。そして最も良くない点が、主人 公のスーパー・スパイが嫁さんの「よろめき」でスッカリ冷静さを失ってしまうところ。スーパー・スパイも夫婦問題で悩む…というのがこのネタの面白い点な のだが、同時にスーパー・スパイならばスーパー・スパイらしい問題解決をしなくてはいけないだろう。それなのに本作の主人公は、嫁さんのことで仕事がいい 加減になってしまうから面白さがふくらんでこない。冷静であるべき主人公のこっけいなドタバタで笑いをとろうとしている時点で、何とも発想が幼稚だ。だか ら映画全体も、稚拙で泥臭いのである。こんな映画にソル・ギョングとムン・ソリなんてもったいない。イ・スンジュン監督はこれが第1作ということだが、そ れなりの大型予算を任され一流俳優を配しながらも、単なるパクりで垢抜けないコメディ映画しか作れなかったというのは情けない。昨今の韓国娯楽映画の衰退 ぶりを感じさせる1本だった。

さいごのひとこ と

 豚に真珠なキャスティング。

 
 

「アメイジング・スパイダーマン2」

 The Amazing Spider-Man 2

Date:2014 / 06/ 30

みるまえ

 正直言って、マーベルがサム・ライミの「スパイダーマン」 (2002)三部作をチャラにして新たに仕切り直しした「スパイダーマン」映画を作ると聞いた時、「よせばいいのに」という気分にしかならなかったことは 白状しなくてはならないだろう。サム・ライミ版はもうアレで終わっちゃった感じだったので、もっと稼ぎたいマーベルとしては「再起動」させることにしたん だろうが、また同じような話を見せられるのか…と正直ウンザリ。それがちょっと気になってきたのは、主役に「大いなる陰謀」(2007)や「ソーシャル・ネットワーク」(2010)で注目され始めた若手有望株アンドリュー・ガーフィールドを起用すると知ってからだ。しかも監督が「(500)日のサマー」 (2009)のマーク・ウェブと聞いて、ますますこの新作が気になった。こうして出来上がった「アメイジング・スパイダーマン」(2012)は、予想通り 「青春映画」的な瑞々しさを持っていた。この時には、さすがに「やられた」と思ったよ。そんな新しい「スパイダーマン」の、好評につき第2弾。しかし僕は 何となくイヤな予感がして、公開されてからもなかなか劇場に行かなかった。それがいよいよ終了間際になってきたので、慌ててスクリーンと向かい合う気に なったというわけだ。感想文アップがそれからまたグッと遅れてしまったのは、ただただ僕の怠慢によるもの。お許しいただきたい。

ないよう

 それは今から10年以上前のこと、巨大企業オスコープ社で働く研究者リチャード・パーカー(キャンベル・スコット)が、秘かにビデオ・メッセー ジを録画している。どうやら彼は何やらヤバい研究に手を染めたらしく、これから身を潜めるつもりらしい。実際にリチャードは慌ただしくメッセージ録画を終 えると、幼い息子ピーターを兄夫婦に預けて妻メアリー(エンベス・デイヴィッツ)とともに姿を消した。こうして、自家用ジェットに乗っていずこかに逃走を 図ろうとするリチャードとメアリー。リチャードがノートパソコンでデータをどこかに転送しようとしたちょうどその時、コックピットから副操縦士が出てく る。ところがリチャードは、この副操縦士の手が血で汚れているのを見逃さなかった。案の定、いきなり牙をむく副操縦士。彼はすでにコックピットで機長を殺 害しており、飛行機の運航は極めて不安定な状態になってしまう。そんな揺れ動く機内で、副操縦士と戦うリチャードとメアリー。しかしメアリーは、副操縦士 の銃弾を受けて瀕死の状態。リチャードがパソコンからデータ転送中であると見てとった副操縦士は、そうはさせじとリチャードに襲いかかる。何度もデータ転 送を失敗するが、副操縦士と戦いながら何度も転送を試みるリチャード。覚悟を決めたリチャードは何とか副操縦士を倒してデータを転送。操縦不能となった自 家用ジェットと運命をともにするのだった…。それから幾年月。成長したピーター(アンドリュー・ガーフィールド)は街の平和を守るべく、今日も悪漢たちと 戦っている。この日はアレクセイ・シツェビッチ(ポール・ジアマッティ)が手下たちとオズコープ社に乗り込み、放射性物質を盗み出したのだ。アレクセイた ちはトラックに放射性物質を積み込み、ニューヨークの街を爆走中。もちろんスパイダーマンがこれを黙って見逃すわけがない。例によって糸を飛ばし、ビルか らビルへと飛び移って、逃走中のアレクセイたちを追いかける。ところがその時、ピーターたちの高校の卒業式も同時に始まっていた。恋人グウェン(エマ・ス トーン)は卒業生総代としてスピーチをすることになっていたし、親代わりのメイ伯母さん(サリー・フィールド)も会場に姿を見せていた。しかしピーター は、ちょうど追跡真っ最中。しかも追跡の最中に、亡くなったグウェンの父ステイシー警部の幻影を見るというオマケつきだ。ピーターはステイシー警部が最後 に遺した「グウェンには近づかない」という約束を破って、彼女とつき合っているということに後ろめたさを感じていたのだ。それでも悪党は待ってくれない。 ピーターは追跡しながらも、たまたま路上に居合わせ、危うくこの騒動の最中に巻き込まれそうになったオズコープ社の技術者マックス(ジェイミー・フォック ス)を未然に助けたりする。時の人「スパイダーマン」に親しく話しかけられたマックスは、それだけで有頂天。「スパイダーマン」に深く心酔することにな る。そんなこんなで何とかアレクセイを捕らえて放射性物質の流出を未然に防いだピーターだが、生憎と卒業式には遅刻して自分の出番にギリギリ間に合う。も ちろんグウェンもホッと一息。しかしグウェンは何かとピーターを家族に引き合わせようとするが、ピーターはアレコレ口実を見つけてははぐらかす。例のステ イシー警部との約束が引っかかっているからだ。一方、難病にかかっていたオズコープ社の経営者ノーマン・オズボーン(クリス・クーパー)が危篤状態とな り、海外で寄宿舎生活をさせられてきた息子ハリー(デイン・デハーン)が急遽戻ってくる。ノーマンは息絶える間際、ハリーに一族のおぞましい運命を告げ た。代々オズボーン家の人間は、ある程度の年齢になると同じ難病に苦しめられることになるというのだ。そんなハリーはピーターの幼なじみだったため、彼の 帰国を知ったピーターがわざわざ会いにやってくる。最初はぎこちなかった二人だが、打ち解けるのはあっという間のことだった。そんな頃、自分の誕生日を祝 うため帰宅しようとしていたオズコープ社のマックスは、上司に無理矢理残業を言い渡される。水槽の電気ウナギを使った実験室で、電気関係の不具合があると いうのだ。しかし、マックスは研究室の高い足場の悪い場所で修理をしているうちに感電。そのまま電気ウナギの水槽に落ちて、激しい電流を浴びてしまうの だった…。

みたあと

 先にも述べたように、前作の「アメイジング・スパイダーマン」は「(500)日のサマー」 のマーク・ウェブの監督だけあって、「青春映画」としてもなかなかイイ味出していた。マーク・ウェブは今回も再登板しているので、当然期待できるはず。そ して今回は悪役エレクトロに、大物ジェイミー・フォックスが登場と来る。アメコミ映画で悪役に大物スター起用はお約束だが、本来ならますます期待はふくら むばかりのはず。ところが何となく僕の気持ちはすぐれなかった。この手の映画の2作目は、ことさら「悲劇」的な状況を作り出すのが定石。そして、こと「ス パイダーマン」に関しては、それが過剰な方向になりやすい。元々が悲しい要素満載なのが「スパイダーマン」だから、うまく処理しないと「悲劇」の大安売り になりかねない予感がしたのだ。残念ながら、その予感は的中してしまった。

ここからは映画を見てから!

こうすれば
 や はり予想通り、お話は悲劇的展開へ。恋人グウェンへのピーターの煮え切らない態度が災いして彼女が海外留学することになることから始まって、幼なじみハ リーの逆恨みなどなど…とピーターを巡る苦しい状況がつるべ打ち。見ている側としてはどんどんイヤ〜な気分になってくる。そこへ来て…今回の敵エレクトロ もどちらかというと「ツイてない」男で気の毒な面もあるから、悪を倒すカタルシスもない。元々が「スパイダーマン」って、ピーターとハリーとの相克があっ たり、悪の怪人が「偶然でおかしくなっちゃう」気の毒な奴ばかりだったりしていて、どこかそういうウツな要素を抱えてはいた。その点でいえば、サム・ライ ミ版だって同じはずだ。しかし今回はそれに加えて、ピーターとグウェンの関係を中心にこれ見よがしにユウウツな要素を並べていく。それがあまりにエゲツな いので、どうしても鼻につかざるを得ない。要するに「悲劇」のための「悲劇」みたいになって、とにかく主人公をネチネチといたぶる根性悪そうな「橋田壽賀 子ドラマ」のように見えるのだ。これではドラマ的な必然性ではなく、単なる登場人物イジメでしかない。特にグウェンの扱いなど、ただ無理矢理悲劇的状況を 作りたいだけみたいにしか見えない。これは果たしてどうなんだろう。お話が何から何まで「オズコープ社」から一歩も出て行かないあたりも、「話を無理矢理 こさえてる」感を強くしている。正直言って、僕はもう「スパイダーマン」の話はお腹一杯な気分になってしまった。リメイクもシリーズ化も、もう結構という 感じなのだ。見た後の気分もサイアクだし、このままなら「3」は見たくないな。

さいごのひとこ と

 このクモの糸、ネチネチしすぎ。

 
 

「8月の家族たち」

 August : Osage County

Date:2014 / 06/ 16

みるまえ

 アメリカ映画って時々、目玉が飛び出るほど派手なオールスター・キャストを組みながら、えらく地味〜な田舎の話を映画化したりする。大体そうい うのって大当たりした舞台劇の映画化だったりするのだが…。以前に見た「マグノリアの花たち」(1989)なんてのも、サリー・フィールド、ドリー・パー トン、シャーリー・マクレーン、ダリル・ハンナ、ジュリア・ロバーツ、サム・シェパード…なんて無闇やたらなオールスター・キャスティングだったっけ。今 回の作品もその系統の映画で、当代きっての演技派大女優メリル・ストリープを筆頭に、ジュリア・ロバーツ、ユアン・マクレガー、アビゲイル・ブレスリン、 ジュリエット・ルイス、ベネディクト・カンバーバッチ、クリス・クーパー、サム・シェパード…と、まさに豪華絢爛な顔ぶれ。おやおや、偶然にもジュリア・ ロバーツとサム・シェパードは、先に挙げた「マグノリアの花たち」にも出ているメンツではないか。まぁ、つまりは「そんな感じ」の映画…ってことじゃない だろうか。今年のオスカーの主演女優賞にストリープ、助演女優賞にロバーツがノミネートされ、どちらも取れなかった…ってのも、いかにも「らしい」感じ (笑)。実は見る前から、正直そんなに素晴らしい訳でも面白いわけでもないような気がしている。それでも、これだけ豪華なキャストの顔合わせは、映画ファ ンだったらちょっと見てみたい気もするのだ。仮に水と油でも、それはそれで見応えがあるというもの(笑)。公開からかなり経ったある日、劇場へと駆けつけ た次第。

ないよう

 「人生はとても長い」と、T・S・エリオットは言った…。ここはオクラホマ州オーセージ郡、ひどく暑い夏のことである。年老いた詩人のベバ リー・ウェストン(サム・シェパード)は、新たに住み込みの家政婦として雇おうとしているジョナ(ミスティ・アッパム)というネイティブ・アメリカンの女 を面接しているところ。そこにやって来たのは、彼の妻バイオレット(メリル・ストリープ)だ。バイオレットは口腔ガンに冒されていて、放射線治療の影響で 髪が薄くなっている。しかも抗ガン剤で薬漬けになっているせいか、何となく意識も朦朧となっているように見える。しかし、彼女の辛辣な態度は元来のもの だ。この時も早速、ジョナに対してズケズケとネイティブ・アメリカンに絡めた皮肉を少々。そんなバイオレットに、ベバリーは諦めのような表情を見せる。や がてバイオレットは部屋に戻り、ベバリーはジョナに一冊の本を渡して、家を離れた…。そのまま、ベバリーは蒸発してしまった。その報を聞いてまずやって来 たのは、どこか地味で気弱な次女のアイビー(ジュリアンヌ・ニコルソン)。そのアイビーが、コロラド州に住む長女のバーバラ(ジュリア・ロバーツ)と三女 のカレンに連絡。バーバラは別居中だった夫ビル(ユアン・マクレガー)と娘のジーン(アビゲイル・ブレスリン)を伴って実家に戻ることにする。さらに家に は、バイオレットの太めの妹マティ・フェイ(マーゴ・マーティンデイル)とその夫チャールズ(クリス・クーパー)もやって来る。毒舌ばかりのバイオレット と比べて妹のマティ・フェイはずっと陽気な女だが、言動が無神経なのは変わらない。その頃、クルマで実家に向かっているバーバラとビルは車内でも言い争い が絶えず、同乗の娘ジーンはウンザリ顔だ。やがて実家に到着すると、バーバラは真っ先にバイオレットのもとへ。バーバラは父母の大のお気に入りだったから だが、いざ二人が顔を合わせるとイヤミの応酬になってしまうのだった。ところが数日後、そんな人々のもとに悪い知らせが届く。ビバリーが湖で溺死体となっ て発見されたのだ。保安官が知らせにやって来た時、悪い予感を察知したバイオレットは現実逃避して、レコードをかけて踊りまくっていた。その後、長女バー バラ一家三人が遺体確認のために湖に出向き、事態は決定的なものとなる。こうしてやって来た葬儀の日。バーバラたちのクルマに母バイオレットも乗せて葬儀 に向かう途中、真っ赤なスポーツカーがこれみよがしに追い越していく。フロリダにいた三女カレン(ジュリエット・ルイス)が、ようやくやって来たのだっ た。婚約者スティーブ(ダーモット・マローニー)運転の赤いフェラーリに乗っての登場。いかにも男ぐせが悪そうなカレンだが、その婚約者であるスティーブ も彼女にお似合いのチャラい男だ。葬儀後、カレンはバーバラのクルマに乗るが、周りの空気にお構いなくスティーブのことや結婚についてウキウキ話す。婚約 者スティーブはというと、ビルのいない隙に14歳のジーンにマリファナを誘うテイタラクだ。一方、チャールズはバス停に息子リトル・チャールズ(ベネディ クト・カンバーバッチ)を迎えに行く。気は優しいのだがどこかトロくて不器用なリトル・チャールズは、寝坊して葬儀に間に合わなかったのだ。母マティ・ フェイは、そんなリトル・チャールズをバカにしてケナしてばかり。しかし父チャールズにとっては、今でも可愛い息子なのだった。そしてリトル・チャールズ が家に到着すると、早速やって来たのが次女アイビー。実はリトル・チャールズとアイビーは、いとこ同士でありながら秘かに愛し合っているのだった。しかし それを知られたら、口うるさいお互いの母親たちから何を言われるか分からない。そのため、愛し合っていることを内緒にしなくてはならない二人だった。こう して家族が一同に会しての昼食会が始まるが、冒頭にお祈りを頼まれたチャールズは、こういう場に慣れてないのでしろどもどろ。それに始まって食事中の会話 は、どんどんギスギスした雰囲気になっていく。中でもバイオレットの毒舌は、クスリの副作用のせいかひどさを増すばかり。たまりかねたバーバラは堪忍袋の 緒が切れて、クスリを取り上げようとバイオレットに掴みかかってしまった。もうこうなると、何とか平静を取り繕っていた食卓の雰囲気もメチャクチャ。何と も先が思いやられる状況になっていった…。

みたあと

 つい先日見た「ネブラスカ/ふたつの心をつなぐ旅」 (2013)でも、アメリカの田舎の親戚づきあいの鬱陶しさみたいなものがチラリと出てきたが、本作も相当なもの。とにかくこの家族の「センター」に仁王 立ちするメリル・ストリープのキャラクターをはじめとして、どいつもこいつも勝手なことを言っている。「アメリカの田舎ってどこもこんなにイヤな感じなの か」と思ったりもしたが、考えてみると我々だって親戚同士で集まると楽しくないことの方が多い。だから「そんなもんかなぁ」…と思って見ていたが、そのう ちお話は「そんなもん」じゃ収まらないところまで進んでいく。そんなこの映画…見る前は分からなかったのだが、これっていわゆる「三姉妹もの」ではない か。チェーホフの「三人姉妹」もそうだし、ウディ・アレンの「ハンナとその姉妹」(1986)もそう。中でも印象深いのは、アメリカ南部ミシシッピーを舞 台にしたブルース・ベレスフォード監督の「ロンリー・ハート」(1986)だろうか。ダイアン・キートン、ジェシカ・ラング、シシー・スペイセクが三姉妹 役で主演する非常に印象深い作品だった。残念ながら本作「8月の家族たち」は成功作にはなっていないが、メリル・ストリープの母親を中心にしたいわゆる 「家族もの」であると同時に、ジュリア・ロバーツを中心にした「三姉妹もの」でもあるのだ。

ここからは映画を見てから!

こうすれば
 見 ていて鬱陶しいことこの上ない本作の家族の面々だが、その「鬱陶しさ」を助長したのは、ヤケクソみたいに豪華なオールスター・キャストかもしれない。こん なにケバケバと「スター」「名優」ばかり並べられると胸焼けしてゲップが出そう。そんな「スター」「名優」たちが誰も彼もやたらクセの強い役を配され、競 うように大熱演をやらかしているのだから「鬱陶しさ」もひとしおだ。中でもジュリア・ロバーツは文字通り「青筋立てて」の大熱演で、鼻につくなんてもん じゃない。見ていてゲンナリしてしまった。彼女に限らず、ごくわずかを除いてイヤな奴しか出てこない。好きになれる奴がほとんどいない。これでは見ていて 楽しめるわけがないのだ。そしてお話としても、最後にちゃぶ台をひっくり返したまま…みたいな放り出したような結末で終わる。そんなこんなで見ていて非常 にゲンナリさせられる映画だが、こうなった理由のひとつには、この映画が一種の「カリカチュアライズされたコメディ」なのか、あくまで「fリアルでシリア スなドラマ」なのか、作り手の中でも位置づけがキッチリなされていなかったこともあるかもしれない。あるいは、作り手の中ではそれがブレずにあったのかも しれないが、「豪華キャスト」全員に同じように共有されなかった可能性がある。そうしたお話のスタイルがキッチリ設定されないまま…あるいは共有されない まま進んでしまったため、「みんながてんで勝手にわめきまくる」印象を与えてしまった観は間違いなくある。見ている側も「ここは笑いどころなの?」などと 戸惑ってしまうのだ。実際、ちょっとブラック・コメディにしちゃ深刻な設定も出てくるし。監督のジョン・ウェルズはテレビ畑の人らしいが、そのへんの責任 はこの人にあるのだろう。

みどころ
  ただただ暑苦しい「豪華キャスト」の中でちょっとだけ好感を持ったのは、意外にも今をときめくベネディクト・カンバーバッチ。どうせ毎度お馴染み「エラ ソー」なキャラだろうと思っていたら、いつもとガラリと違う顔を見せてくれた。かなりコテコテに演じてはいたが、本人たまにはこういうのもやりたかったん だろう。イキイキと演じているのが印象的だった。そしてこれはまったく個人的なお話だが…劇中でストリープがクスリ漬けのせいもあっておかしな言動を連発 しているあたり、強烈な鎮痛剤を投与されている自分の母親の現状がふと思い出されて、シャレにならなかった。

さいごのひとこ と

 イヤミな家族。

 
 

「リベンジ・マッチ」

 Grudge Match

Date:2014 / 06/ 09

みるまえ

 正直、「今さら」感はハンパなかった。シルベスター・スタローンとロバート・デニーロがボクシング映画で共演。しかし、巷じゃあ誰も見たという 人がいない。ポスターからして、スタローンはともかくデニーロの似てなさ加減ったらない。ポスターの「宣伝に本腰入れてない感じ」から見たって、本編のダ メダメさが想像できそうだ。映画会社だって期待してないんじゃないの? そりゃあこれが30年前なら、こんな企画聞いたら狂喜乱舞しただろう。「ロッ キー」(1976)対「レイジング・ブル」(1980)だ。同じプロデューサー(ロバート・チャートフ、アーウィン・ウィンクラー)が作っていたんだか ら、やろうと思えばとっくにやれたはず。ただ、30年前なら実現しやしなかったとも思える。企画も枯渇しきった、現在のハリウッドだから実現したのだろ う。老いぼれた二人の元ボクサーが、何の因果か遺恨試合を行うことになる話。話としちゃあこれで終わってしまう。この企画の何が期待できないかっていう と、ボクシング映画にしては、両者とも歳をとりすぎてるってことはまずある。だが、それ以上に無理がありすぎる企画ではないか。そもそもバカ力映画専門の スタローンと演技派デニーロじゃあ「水と油」感がスゴイ。二人は過去に「コップランド」(1997)で共演しているが、あの時はアンサンブル・キャストの 中に入っての共演だし、スタローンはほとんど「借りてきたネコ」状態だった。そして近年になって盛んにデニーロが繰り返してる「大物との共演作」が、すべ て成功しているわけでもない。エディ・マーフィーと共演の「ショウタイム」(2002)、アル・パチーノと共演の「ボーダー」(2008)など、無惨な出来栄えの作品がゴロゴロ並んでしまう。さらに一線を退いて久しい元ボクサーが、高齢をおしてリングに復帰…という設定は、スタローン自身がついこの前「ロッキー・ザ・ファイナル」(2006) でやったばかりで鮮度ゼロ。こんな企画をよく通したなと、むしろ呆れちゃうくらいだった。そうは言っても1970年代あたりから映画を見始めたこちとらと しては、気になることは気になる。どうせつまらないだろうと高をくくりながら、上映終了間際の映画館に滑り込んだ。

ないよう

 1980年代、ボクシング界を震撼させた「ある名勝負」があった。ともに無敗の帝王だったヘンリー・“レーザー”・シャープ(シルベスター・ス タローン)とビリー・“ザ・キッド”・マクドネンの直接対決だ。この勝負はキッドの勝ち。しかし、次の試合で再びレーザーと戦ったキッドは、マットに沈め られることになる。そしてレーザーは電撃的な引退宣言。こうしてこの二人の「黄金カード」は、二度と見ることができなくなった…。テレビの回顧番組が、こ の懐かしい試合の様子を久々に伝える。あれから30年。レーザーは造船所で働く地味〜な生活。朝、出勤すると同僚たちがテレビを見てアレコレと聞いてくる が、笑って適当にはぐらかすだけだ。一方、キッドは稼いだカネで自分のクラブを経営。ショータイムに顔を出しては、相変わらずレーザーをオチョクるギャグ で客のウケをとる。どうもキッドは、あの「結末」に不満があるらしい。そんなある日、レーザーの家にペラペラとまくしたてる、やかましい黒人青年がやって くる。この男ダンテ・スレイト・ジュニア(ケビン・ハート)は、何とかつてレーザーたちの試合の興業を受け持ったプロモーター息子だった。そしてダンテ は、レーザーにビデオゲームでボクサー役のモデルをやってくれと頼みに来たのだ。テレビで放映された往年のレーザー対キッドの試合が大好評だったため、そ れをテレビゲーム化しようというわけだ。しかし引退して久しいレーザーは、まったくやる気なし。ましてキッドが相手と聞いたら、ますます固辞するばかり だ。おまけにダンテの父親は、あの最後の試合での稼ぎを騙し取った相手だ。まったく話にならない。こうしてダンテを家から叩き出したレーザーだが、ふと考 えてみると家はボロボロ、先立つモノはない。かくしてボヤきながらクルマに乗り込んだダンテのもとに行って、ギャラを吊り上げた上で承諾を告げるのだっ た。一方、ビデオゲームとはいえ一応ボクシングを見せるのだから…と、今は老人ホームに隠居中のかつてのトレーナー、ルイス・“ライトニング”・コンロン (アラン・アーキン)の協力を求めに行くレーザー。レーザーはいまだに義理堅く、ライトニングの面倒を見ているのだった。さて、ゲーム「収録」当日にスタ ジオ入りするレーザー。彼の動きを「モーション・キャプチャー」で画面に取り込むため、緑色の全身タイツに身を包んだ状態。それでなくても気分は最悪。し かもそこに、ナメた態度のキッドが入ってくるではないか。実はダンテはレーザーとキッドの関係が最悪なことを知って、スタジオ入りの時間をズラしていた。 それなのにキッドは早々とやって来て、レーザーにケンカをふっかけてきたのだ。早速、売り言葉に買い言葉。そのうち手が出るのは避けられない事態だった。 大暴れする二人は、スタジオを破壊しまくる。周囲のスタッフは止めるどころか、スマホで動画を撮るのに夢中だ。結局、二人は警察のご厄介になってしまう。 ところが、これが思わぬ反響を呼ぶ。二人が暴れる動画がネットにアップされ、大反響を呼んでしまったのだ。これに手応えを感じたダンテは、警察署に行って 二人を釈放する際に、本格的な「試合」をオファー。しかしレーザーは即座に断って、その場を立ち去ってしまう。唖然とするダンテだが、そんな彼にキッドが 今までの成り行きを語り始めた。実は遊び人のキッドは、かつてレーザーの恋人を寝取って妊娠させてしまった。それが、すべての因縁の原因だった…。しかし レーザーも、その前言を撤回せざるを得なくなる。景気が冷え込むなか、造船所から解雇を言い渡されてしまったのだ。かくして、不本意ながらレーザーも同 意。華々しく試合の記者会見が行われることになる。しかし会見場に記者はパラパラ。それはそうだ、どう見たってキワモノ試合でしかない。そこを無理矢理、 空元気で「遺恨試合」と盛り上げるダンテだったが、どうも先行きは不安ばかりだ。そんな会見終了後のレーザーに、一人の女が近づいてくる。何とその女こ そ、レーザーの元恋人のサリー・ローズ(キム・ベイシンガー)ではないか…。

みたあと

 前述した通り、期待値最低レベルで見に行った本作。結論から先に申し上げると…面白い!  まずは老いた元ボクサーのカムバックという不自然かつムチャな設定を、「ロッキー・ザ・ファイナル」に次いで繰り返すのがヤバイと思っていたが、シリアス タッチでなく完全なコメディ映画として作ったのが良かった。そのおかげで全体的にパロディっぽい雰囲気になったので、不自然さがかなり中和され救われたか たちになっているのだ。これは意外だった。

ここからは映画を見てから!

みどころ
 デ ニーロは放っておくと陰性の方に傾いていくキャラクターだし、スタローンもシリアス映画だと「ランボー」シリーズを見れば分かるように深刻になりがち。だ からシリアスムードを最初から一掃したのは「二人の共演」という点でも正解だった。さらに演技にはいささか難があるスタローンを「愚直な男」、演技派のデ ニーロを「調子のイイ男」と設定することで、二人の「水と油」感を中和。それぞれの持つスターとしてのキャラクターをそのまま役のキャラクターに溶かし込 んで、違和感が出てくることを回避した。これはなかなか発想できることではない。このキャラクター設定と作品の方向性がキッチリ定まっているから、映画が しっかりしてくる。終盤のボクシング試合の「助け」「助けられ」の出来すぎ感も、これがしっかりしているから許せる。アメリカ映画本来の「イイ味」と感じ られるのだ。おまけにスタローンとデニーロの両方ともがキッチリ身体を作り込んでるから、思わぬ「本気の迫力」も出た。監督のピーター・シーガルも、脚本 のティム・ケルハーとロドニー・ロスマンも、どんなヤツかは知らないがこんなヤバイ企画で実にイイ仕事ぶり。脇もアラン・アーキン、キム・ベイシンガーと 充実して、思わぬ拾いモノだった。ラストにおまけで流れるローリング・ストーンズの新曲も含めて、見てトクした気分だ。

さいごのひとこ と

 ただしリベンジ・マッチ2はカンベンして欲しい。

 

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