「ミッション:インポッシブル
  /ゴースト・プロトコル」

  Mission: Impossible - Ghost Protocol

 (2011/12/26)


何もここまで叩かなくても

 それにしたって、どうしてこうもムチャクチャに叩かれるのだろうか…と正直ネット上を見ると辟易させられる昨今。

 ここを読んでいただいている方には「またこのネタかよ」と言われてしまうかもしれないが、見ていてあまりに目に余るからちょっと言いたくもなる。

 AKB48の「センター」前田敦子のことである。

 前にジョン・カーペンターのザ・ウォード/監禁病棟(2011)の感想文でも語ったが、僕はかつてずっと通っていたマッサージ屋のお兄ちゃんから、AKB48の話を散々吹き込まれていた。このお兄ちゃんがある日突然「ファンです」とカミングアウトしたからなのだが、マッサージされている間はずっとAKB話。これでは詳しくならないはずがない。「総選挙」とやらの上位7位だか8位だかぐらいまでのメンバーの顔と名前ぐらいなら、ちゃんと分かるようになったからスゴイものだ。実際の話、ここ最近はアイドルはおろか若いタレントや俳優、芸人の類の顔と名前も覚えられず、結構恥ずかしい思いもしていたのだ。これは僕にとって驚異的なことだと言える。

 結局このお兄ちゃんはマッサージ屋を辞めてしまったので、それ以来、AKBに関する彼からの情報提供はプッツリ。しかしそれでも、AKBに関する僕のアンテナだけは残されていた。それで、イヤでもいろいろな話が目に付いてしまうようになっていたのだ。

 それにしても、ムチャクチャな言われようだ。先ほど書いた前田敦子のことである。

 顔がヘンだ、実力がない、人気の実体がない、やる気がない、性格が悪い…ネット上をみる限りでは、まるで集中砲火のように彼女目がけて批判が飛んでくる。批判というよりケナし、いや悪口雑言や罵倒というべきだろう。酔っ払いの暴言レベルの言葉が、連日溢れんばかりに浴びせられるのである。これは尋常ではない。

 前田敦子の場合、彼女自身のことを言われている部分もあるんだろうが、AKB48全体に対して言われていることを彼女が代表して受けている部分もある。

 まぁ、誰が何と言っても日本で最も目立つ存在ではある。目立つ者、人気者にはケナしもつきもの。何か言われるのは当たり前だろう。おまけにAKB自体が、一人で何十枚も何百枚もCD大人買いしちゃうような、一種突出したファンに支えられている面がある。おまけに「握手会」という、独特なシステムでファン層をつなぎ止めてきた。これなんて、正直言って僕あたりにはソフトな「キャバクラ」みたいなイメージが拭い去れない。ズバリ言ってしまえば、「あこぎな商売」なんである。

 ただ、それを分かった上でお金を出すファンたちなのだから、ハタがとやかく言うことではないのも確かだ。僕のようにファンでもない人間が、ゴチャゴチャ言うことでもないだろう。そもそも、それは秋元某という人が矢面に立たなきゃならない問題で、あの女の子たちが口汚く罵られなければならないわけではあるまい。

 ましてその中のたった一人が、批判すべてを引き受けなきゃならないはずはない

 そうなっている理由は、ご存知のように彼女が「センター」だからだろう。例の「総選挙」の得票数第1位ということもあるが、そうでなくても彼女が「センター」の場合が多いらしい。その「センター」の正当性すら批判のネタにされるらしいので何をか言わんやだが…ともかくは彼女がAKBの「顔」であることが、彼女に批判が集中する最大の理由である。何しろ「身内」であるAKBファンからも叩かれているらしいから、四面楚歌と言うべきだろう。

 僕は彼女のファンでもないし、何しろ動いたりしゃべったりしてるAKBを見たこともあまりない。AKBのメンバーの中を見渡しても、彼女がお気に入りタイプってわけでもない。だから擁護しなくちゃならないわけでもないが、これはちょっとばっかりフェアじゃないんじゃないか?…と思う。

 昨今どうも世の中では、誰かをスケープゴートにしてブッ叩き、血祭りにして溜飲を下げる由々しき風潮がある。そういやここ何年かでも、某若手女優だとか、某相撲取りだとか、某オリンピック選手だとかがボコボコにされた。それはまったく不健全でイヤ〜な時代の空気と言えるだろう。僕はとても容認できない。

 しかし正直なところ、そこに名を挙げた某女優とか某相撲取りとかいった人たちは、確かに叩かれてもおかしくない言動をしちゃっているのも事実だ。だから叩いていいというつもりはないが、それなりの理由はあるのである。

 しかしこちらの前田敦子には、ここまで叩かれなくてはならない理由がない

 映画の舞台挨拶で「別に」とかフテ腐れたのだろうか、誰かを殴ったのだろうか、カネでも盗んだのか、それとも東京電力で社長でもやっていたのか。そもそも前田を叩いている連中は、前田に何かひどいことでもされたのか(笑)。そうとでも考えないと、あれほどムキになって叩いている理由が分からない。

 集団ヒステリーの時代なんだろうか。

 歌が下手だの実力がないだのと言っても、日本のアイドルに実力があったためしはねえよ(笑)。40年前から歴代のアイドルを見てきたから、これは事実だ。昔のアイドルはちゃんとしていたなんて、イマドキのガキどもにどや顔で言われたくない。まったく、叩ければウソでも平気で言うのだろうか。こういう風潮が本当に恐いのだ。アイドルのことだからまだいいが、これがもっと重要なことなら国がおかしくなる。いや、もうおかしくなっているのだろうか。

 そもそも、オレはイジメって心の底から大キライなんだよね。イジメてる奴を映画の「ソウ」に出てくるよりもっと残酷な方法でなぶり殺しにしてやりたいくらいキライ。

 何だかんだ言ってもまだ19歳ぐらいの女の子に、悪口雑言並べて恥ずかしくはないのか。

 逆に言うと、これだけの逆風をこの若さでたった一人で受けとめている、この子の精神力には驚かされる限りだ。芸能人になるような女の子だから図太いんだろうが、それでもここまでの激しいバッシングはあまりないだろう。まったく想像も出来ない、前人未踏の立場だからだ。

 それと比べれば昨今の政治家など、大臣も首相もすぐにこらえきれずにコロコロ辞める。中には辞めてもらった方がいいような人もいたからガンバりゃいいとは言えないが、それでもこいつらみんな、この女の子一人に完璧に負けてて情けないとは思わないのか。だらしねえな、どいつもこいつも。

 ある意味でAKBの「センター」って、日本の首相よりも重責ってことなんだろうか。それっていくら何でもマズイんじゃないか(笑)?

 

見る前の予想

 一時期はあれだけ何をやってもモテはやされたのに、「落ち目」になると人間は弱いもの。

 あのトム・クルーズでさえ、そういう人の世の流れには逆らえないものか。新しい嫁さんにベタ惚れなのを気持ち悪いほどアピールしたのが悪かったのか、ヘンテコ宗教にハマってることを公言したのが悪かったのか。ともかくちょうど俳優としても曲がり角に差し掛かっていたのも災いして、一気に微妙な立場に追い込まれた。

 だから「ミッション:インポッシブル」シリーズの3作目M:I:III(2006)は、期待されていたほどの興行成績を上げなかったとも聞く。それでもそんじょそこらの作品ならば「大ヒット」のレベルなんだろうが、トム・クルーズ、そしてこのシリーズとなると「ソコソコ」では許されないのだろう。

 次の大いなる陰謀(2007)は彼のワンマン映画というわけではないが、ロバート・レッドフォード、メリル・ストリープと共演した豪華版だというのに気の抜けたビールのような残念さ。次いでのワルキューレ(2008)は作品的には悪くなかったが、興行的にスッキリした成功作かというと怪しいところだろう。かろうじてオチャラケのカメオ出演を果たしたトロピック・サンダー/史上最低の作戦(2008)と、自らをパロディ化したかのような役どころのナイト&デイ(2010)で長期低落傾向を何とかくい止めたものの、薄氷を踏む思いだったことは間違いあるまい。

 そんな状況でトム・クルーズが、またしても当たり役イーサン・ハントを演じるとは。

 もう作らないのではないかと思われていた「ミッション:インポッシブル」シリーズだが、意外にも4作目が登場。M:I-2(2000)だか「M:I:III」だかとタイトル表記もコロコロ変わって面倒くさいシリーズだが、今回は数字が入らず「ゴースト・プロトコル」という副題が入るスタイルだ。これはもっとシリーズを作っていくという意思表示か?

 それにしたって今さらイーサン・ハント…と思いっきり腰が退けていた僕だが、本作の監督の名を聞いて驚いた。

 ブラッド・バード!

 何と傑作アニメアイアン・ジャイアント(1999)を作り、その後はピクサーに引き抜かれてMr. インクレディブル(2004)、レミーのおいしいレストラン(2007)を作った男だ。初の実写映画の監督となるわけだが、これは面白くならないはずがない。僕にとって「ゴースト・プロトコル」は、気乗りのしない作品から一気に期待作へと躍り出た。

 そう思い直してみると、トム・クルーズが世界最高のビル「ブルジュ・ハリファ」をよじ登るというバカ丸出しのビジュアルも素晴らしいではないか(笑)。これは見るしかないだろう。

 

あらすじ

 チェコのプラハ。スパイのトレバー・ハナウェイ(ジョシュ・ホロウェイ)が、訳アリのカバンを持って逃げている。何とか追っ手を振りきって逃げ切ったつもりが、正面から歩いてきた女にアッという間に射殺! せっかく運んできたカバンも持ち逃げされてしまう…。

 話変わってロシアのモスクワ。刑務所の中で独房の扉が突然開いて、囚人がおっかなびっくり廊下に出てくる。それを見た看守が慌てて出てくるが、出てきたとたん退路を閉じられてしまい、囚人たちにボコボコにされるというアリサマ。たちまち刑務所内は大パニックだ。

 それもこれも、某所から刑務所のコンピュータをハッキングしているベンジー・ダン(サイモン・ペッグ)の仕業。そして同時に、刑務所の地下には女スパイのジェーン・カーター(ポーラ・パットン)が潜んで何やら仕掛けていた。

 そんな刑務所には…何とあのイーサン・ハント(トム・クルーズ)が囚人として囚われていた。

 ハントは異変に気づくと、すぐにそれがIMFの仲間の仕業だと察知。刑務所で世話になった囚人仲間の情報屋ボグダン(ミラジ・グルビク)を連れて、まんまと刑務所から脱出した。

 さて、途中でボグダンと別れた後、ベンジーとジェーンはハントにここまでの事の次第を説明する。

 核戦争を画策する「コバルト」という危険人物がロシアの核兵器の発射コードを奪った。例のプラハでの一件は、それを奪い返すためのIMFのミッションだったのだ。ところが後少しのところでトレバーはサビーヌ・モロー(レア・セドゥー)という女の殺し屋に殺され、ブツも奪われてしまった。このブツ…発射コードが「コバルト」の手に渡れば、世界で全面核戦争を起こすことも可能だ…。

 それにしても、この「コバルト」とはいかなる人物なのか?

 ここでIMFからの連絡を受け取ったハントは、「コバルト」に関する記録がモスクワにあることを知る。それはクレムリン内部の公文書保管庫の中だ。こうして彼らは事もあろうに、不敵にもクレムリンに潜入することになった

 ロシア軍将校に化けたハントとベンジーが、クレムリン内部に入り込む。ハイテク小道具の力を借りて警備の目を欺いた彼らだが、公文書保管庫にはすでに「コバルト」の資料はなかった。

 しかもいきなり彼らの通信回線の中に、知らない誰かの無線が飛び込んで来るではないか。

 「チームリーダー、こちら任務完了!」

 まるでハントに連絡しているようだが、どこの誰かは分からない。おまけに何のプロテクトもかけていないので、通信はクレムリンの警備にも傍受されてしまった。たちまち厳戒態勢になるクレムリン。

 ハントはベンジーと別行動でそれぞれ脱出を図るが、クレムリンから出たとたんに…。

 ドッカ〜ンと大爆発!

 何と何者かがクレムリンに爆弾を仕掛けたのだ。その爆発に巻き込まれたハントは、気を失ったまま病院へと運ばれる。

 気づいた時には、手錠でつながれているハント。そんな彼を疑わしい目で見ているのは、ロシアの秘密捜査官アナトリー・シドロフ(ウラジミール・マシコフ)だ。ハントは完全にクレムリン爆破犯として疑われていた。しかし、ほんの少しの隙をついて病院を脱出。ハントはIMFに連絡をつけて救援を頼んだ。

 夜のモスクワ、ハントは一台の黒塗りのクルマに拾われる。乗っていたのはIMFの上司「トム・ウィルキンソン)と分析官のウィリアム・ブラント(ジェレミー・レナー)だ。

 上司いわく、例のクレムリン爆破をロシアはアメリカの仕業だと決めつけ、米ロ関係は一触即発状態になった。そこで米大統領はIMFを活動停止にして、「ゴースト・プロトコル」…すべてをなかったことにした。このままではハントはテロリスト扱いで、汚名をそそぐ手だてはない。ハントが何の支援もなしに自ら事件を解決する以外には…。

 ところがそんな時、一発の銃弾が上司の頭部を貫く。次いで銃弾が雨あられに降り注ぎ、クルマは川の中に転落。待ち伏せしていたロシアの秘密組織が、ハントの乗り込んだクルマを一斉に銃撃したのだ。

 川底に潜ったハントは、巻き込まれてしまったブラントを連れてその場を脱出。今や完全に孤立無援状態になってしまった。

 しかし後ろ盾はないと言えども、IMFが持ち込んださまざまな小道具や秘密兵器はある。駅にやって来たハントとブラントは、彼らの隠れ家兼装備の置き場所になっている貨車へと乗り込んだ。そこでハントとブラントを待ち受けていたのは、ベンジーとジェーンの二人だ。

 ここで彼らは、新しい情報を入手する。例の「コバルト」という人物が、急進的なスウェーデン人の科学者カート・ヘンドリクス(ミカエル・ニクヴィスト)だということを知る。彼は人類が核戦争で「淘汰」されるのが自然な流れだと思いこみ、勝手に核戦争を起こそうと企んでいたのだ。

 そのためには、例の女殺し屋サビーヌ・モローが手に入れた核兵器発射コードが必要だ。さらにヘンドリクスの部下ウィストロム(サムリ・エデルマン)とサビーヌ・モローが、アラブ首長国連邦のドバイに建つブルジュ・ハリファで落ち合うという情報も飛び込んで来た。

 そこでハントたち一行は先回りして、ブルジュ・ハリファで彼らを待ち受けることになったわけだが…。

 

見た後での感想

 いや〜、驚いた。凄まじい。

 映画としての派手さ、見せ場のすごさでいえば、間違いなくシリーズ最強ではないか。見ていて疲れてしまうほど。とにかく押して押して押しまくる見せ場の連打。先にも挙げたブルジュ・ハリファを登る場面じゃないが、アッパレなほどバカバカしい趣向の場面が次々出てくる。

 それも、単に大味な見せ場が展開するだけではない。そのブルジュ・ハリファをトム・クルーズがよじ登る場面でもそうだ。見る前は「単にスタント使わずにホンモノの高層ビルで撮影したって言われてもなぁ」…と、やたらと「ホンモノ」を前面に出した宣伝に辟易していたし、実際には画面で見ても面白くないんじゃないかとシラケてもいた。ところが実物を見てみると、途中で吸着手袋が壊れたり、戻る時にロープの長さが足りなくなったり…と細かい芸をあちこちに散りばめる。しかも、直後には砂嵐の中の激しい追っかけが用意されているといった具合。

 今回、ブラッド・バードが監督すると聞いてまず予想したのは、主人公をめぐるドラマ部分にかなり重心が置かれたものになるのではないかということだった。しかし出来上がってきたのは、重量級の大アクション映画…というか壮大なバカ映画。見せ場に全力投球。これはちょっと予想していなかった。

 そういや「Mr. インクレディブル」や「レミーのおいしいレストラン」でも、激しいアクションや追っかけ場面が入っていたっけ。どうやら今回の作品では、むしろこうしたアクション場面にアニメーション監督としてのブラッド・バードの腕が活かされているようなのだ。

 しかも先にも述べたように、見せ場が単調にならないように細かい工夫がなされている。クライマックスの立体駐車場での上ったり降りたりのアクションなども、アイディアが面白い。

 そして小道具の活かし方もいい。これについては、クルーズがブルジュ・ハリファ壁面をよじ登るために使ったゴーグルを例にとれば分かりやすいだろう。クルーズはビル壁面から戻ると、ゴーグルをつけたまま敵側の人物に会いそうになり、とりあえず慌ててポケットに隠す。その後で身体検査をされることでゴーグルは再び強調され、逃げ出した敵側人物を砂あらしの真っ直中で追って追って追いつめる際に、このゴーグルが改めて活用されるのである。出てきたものを徹底的に活かしきるあたりが素晴らしい。

 ところが何度も繰り返すようで申し訳ないが、僕にとってはブラッド・バードはあくまで「アイアン・ジャイアント」の監督という位置づけだったから、やっぱりこの出来栄えはかなり意外だった。おそらくかつて「アイアン・ジャイアント」をご覧になった方なら、誰しも同じ感想を抱くのではないか。

 ロボットが出てくる子供だましのSFアニメと思って見たら、思わぬ展開に涙腺を刺激されて号泣。ピクサーの作品などにも優れたモノは多いが、近年のアニメの中でも傑出した作品として、「アイアン・ジャイアント」はその名を真っ先に挙げたくなる作品なのだ。

 だからこそ僕は先にも述べたように、当然ドラマ部分がメインでアクションは「従」の部分だろうと思っていた。

 ところが…正直言ってドラマは空っぽに等しい

 むしろ面白いアクション映画を作るために、ドラマは極力なくしたと言うべきだろう。舞台がプラハ〜モスクワ〜ドバイ〜ムンバイと激しく移り変わるのも、どちらかと言うとストーリーの必然性というより例えばクレムリンを爆破したいとかブルジュ・ハリファをよじ登りたいといった、アクション上の設定が優先されてのこと。それ以外は、正直言って世界のどこに舞台設定されても問題ないようなお話なのだ。

 いやはや恐るべき内容の空っぽさだ。これはケナシではなくホメ言葉で言っている。ここまで空っぽだと潔いと言ってもいい。

 もうひとつ面白いのは…本来はオリジナルのテレビ「スパイ大作戦」では小道具とメンバーの機転で問題なく作戦を進めるのが醍醐味だったはずなのに、今回の作品ではとにかくハントたちはミスばかり犯す。その尻拭いを自分でしなくてはならなくなり、ハントが体を張って穴埋めするというパターンが繰り返されるのだ。何だかヤケに頭が悪くて、もっぱら筋肉でカバーのスパイなのである(笑)。そのへんのバカっぽさについて…実は僕はダメだと思っていなくて、結構気に入っている。

 バカバカしいといえば…ブルジュ・ハリファから逃げ出した敵側の人物を追って、クルーズが必死に追いかける場面。真っ正面から青筋立てて全力疾走するクルーズを全身ショットで撮って、その背後にはそびえ立つブルジュ・ハリファ、さらに背景には迫り来る砂あらしという構図。まるでマンガである。クルーズはいつも真剣そのものだが、置かれたシチュエーションがおかしいのだ。思わず笑わずにはいられない。

 そんなユーモラスで笑っちゃう要素満載なのは、やっぱりブラッド・バードのホーム・グラウンドであるアニメーションからヒントを得たものではないだろうか。まるで実写作品をアニメ化しているようだ。

 そもそも「ナイト&デイ」あたりから顕在化していたように、今さらトム・クルーズが完全無欠のスパイだなんて冗談にしか思えない。「ナイト&デイ」がそのあたりを逆手にとってうまく活かしたように、今回の元祖「ミッション:インポッシブル」もトム・クルーズに出てきたそんな冗談めいたテイストを最大限に引き出した。ここでは彼はいつもトホホな目に遭わされ、やらなくてもよかった肉体酷使をさせられる。終始アニメのバカバカしさみたいな方向に引っぱれていく。全体的にギャグのような雰囲気が充満しているのである。

 その他、ハート・ロッカー(2008)で頭角を現し始めたジェレミー・レマーはじめ、国際色豊かな豪華配役陣もなかなか楽しい。インドの大金持ち役で、スラムドッグ・ミリオネア(2008)に出ていた「インドのみのもんた(笑)」アニル・カプールが登場したのには笑った。

 ともかく今回の作品は、バカバカしいまでに壮大なアクションをひたすら派手に作り上げることが出来た点だけでも成功と言えるだろう。近年のトム・クルーズ作品の中でも、スコ〜ンと頭ひとつ飛び抜けた感じがあるのだ。トム・クルーズ、見事にスターダムへ生還と言っていい。

 あれだけ世間からブッ叩かれてもコキ下ろされても、やっぱり「センター」はこの人!…とでも言うべきだろうか、久々にトム・クルーズが破格のスーパースターらしさを見せた作品に仕上がっているのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからは映画を見てから!

 

 

 

 

 

 

 

 

少々残念な脚本上のズサンさ

 というわけでドラマが思いっきり欠落しているこの作品。僕は今回はあえて「それでもいい」と思った。バカバカしさも「よい点」と思って楽しんで見た。

 しかし、残念な点がないわけではない。

 実は今回の作品、ストーリーにかなり激しい穴が目立つ。あまりと言えばあまりにズサンな点が、脚本上にかなり目に付くのだ。

 不思議なことにアクション周りでは先に挙げたようにゴーグルひとつをあれだけ丹念に活かしきって使うデリカシーがあるのに、ストーリー展開では「何も考えてないのか?」と思いたくなるような大穴が開いているのである。

 細かいところで言えば、「コバルト」の正体を知るためにわざわざクレムリンまで忍び込んだのに空振りで、その後、なぜかいとも簡単に「コバルト」の情報が入ってくる…といった点がそうだ。ノコノコとクレムリンまで出向いたせいでテロリスト呼ばわりされるハメになったのに、アレは完全に無駄骨だったということになってしまう。そんな簡単に分かるのなら、最初からそうすりゃよかったじゃん(笑)。

 終盤のクライマックスでも、核兵器の発射ボタンが押される前に核発射用のケースを奪わねばならない…と慌てていたのに、もう発射に間に合わない…と分かったとたん「爆弾の信管を無効にすればいい!」とアッサリ目標を変更。だったら最初からそれを目指せばよかったじゃん。それまで観客に「もうダメだ」と思わせてたのは、一体何だったんだよ(笑)。

 …てなわけで、脚本全体が結構いいかげん。だがもっともいけないのは、ラストに出てくるハントのエピソードだ。

 まず、このエピソード自体が見せ場の連打で作られた「贅肉なし」の構成の中で唯一の「贅肉」になっている。せっかく全編ドラマなし、中味カラッポを貫いているのだ。いっそのことこんなエピローグを入れないで、ストンと終わらせた方がよかったと思う。

 そして何より、この設定だとハントが観客だけでなく仲間もダマしていたことになってしまうのがマズイ。ある人物などはこの件が人生のトラウマとなっていた設定だし、ある人物に対してはハント自身が「愛していた人物を失うツラさは分かる」などと言ってエラソーに慰めているのだ。これが全部覆ってしまうではないか。

 最後に「いやぁ、アレはウソだったんだよ、アッハッハ」と笑顔で言われても、「はい、そうですか」とはならないだろう。こんな事になるのなら、どうせ大したドラマなどないのだから、こんな設定は最初から入れなきゃよかったのだ。

 やはり「アイアン・ジャイアント」のブラッド・バードとしては、どこかにドラマらしきものを入れたかったのだろうか。もしそうだとしても、それは完全に裏目に出たと思う。大バカ丸出し映画でいいではないか。何でそれに最後まで徹しなかったのか。

 映画全体では圧倒的に派手なアクションが目立っているので大したキズにはなっていないが、それでもやらないで済むならやらない方がよかった。

 蛇足とは、まさにこのことだろう。

 

 

 

 

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