新作映画1000本ノック 2009年10月

Knocking on Movie Heven's Door


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「サブウェイ123/激突」

 

「サブウェイ123/激突」

 The Taking of Pelham 123

Date:2009 / 10 / 19

みるまえ

 ちょうど僕が映画に興味を持ち始めた時期の映画が、最近続々とリメイクされている。この映画もそんな一本。当時は別に目立ったヒット作でもなかったけれど、一部でちょっと評価されていた作品だ。その名も「サブウェイ・パニック」(1974)。当時のパニック映画ブームのせいでこんなタイトルにはなっていたが、実はウォルター・マッソー主演の渋い犯罪サスペンス映画だった。僕は公開当時は見ていないが、確か荻昌弘解説のtbs「月曜ロードショー」で見た記憶がある。しかし、「ポセイドン」(2006)がリメイクってなら分からないでもないが、まさかあのくらいの小さい作品でリメイクとは…。もっとも「60セカンズ」(2000)なんてあたりまでリメイクされているんだから、ひょっとしたら面白い映画がゴロゴロしている1970年代のアメリカ映画は、リメイク・ネタの宝庫なのかも。それはともかく、今回のこのリメイクで最も注目なのは、何よりちょい地味なウォルター・マッソー主演にロバート・ショウ共演というオリジナル版に対して、何とデンゼル・ワシントンとジョン・トこの男ラボルタの強力タッグを持ってきたところ。監督がデンゼルと相性のいいトニー・スコットというのも嬉しい。「トップガン」(1986)の頃は空疎なスタイリッシュ・アクション映画を撮る男…とバカにしていたが、あの快作「スパイ・ゲーム」(2001)からすっかり見直してしまった。だから今回のリメイク、実はちょっと楽しみにしていたのだ。

ないよう

 大都会ニューヨークの地下を、今日も地下鉄が縦横無尽に走っている。その緻密なダイヤを管理しているのは、運行司令室のコントロール・パネル前に座る一人の男ガーバー(デンゼル・ワシントン)。この男、本来はこんな所でマイクにへばりついて、列車の実際の運行に携わっているような人物ではない。実は「ある事情」によって降格処分を受け、今も事と次第によってはどうなるか分からない、不安定な立場に置かれているのだ。それでもクサらず黙々と仕事を続けるガーバーは、下積み時代からのキャリアのおかげで運行管理の手際は名人芸。やはり根っから血に濃い「鉄分」の流れる男なのだ。さて、そんなある昼の出来事。とある駅で毛糸の帽子にサングラスの大柄な男が運転手に拳銃を突きつけ、一味と一緒に地下鉄車両に乗り込んだ。この「ぺラム発1時23分」の列車は、例の大柄な男の指示で駅と駅の間で緊急停止。さらに先頭車両だけを切り離して、引き込み線内で孤立した状態を作り出した。車内では一味の男たちが銃を持ち出して乗客たちを威圧し、たちまち起こる大パニック。当然、この異常な動きは運行司令室のコントロール・パネルによってガーバーも察知していた。「ペラム123、なぜ停車した? 応答せよ?」…運転手に対して投げかけたガーバーの問いは、予想外の答えとして返ってきた。答えの主は例の大柄の男、自称ライダー(ジョン・トラボルタ)。この男は何とも奇妙な人をナメきったような人物で、しかもキレやすいというタチの悪い男。しかしながら、なぜかガーバーに親近感を抱いたようだ。ライダーは今後の交渉役になぜかライダーを指名。「市長に1時間以内に1000万ドルを用意させろ。遅れたら1分ごとに1人ずつ殺すからな!」と言い放つ。そんな折りもおり、警察から人質救出班のカモネッティ警部補(ジョン・タトゥーロ)が到着。上司(マイケル・リスポリ)が「ある事情」で目の敵にしていたこともあり、協力を申し出ていたガーバーは無理矢理帰宅を命じられてしまう。しかし、そんな「こちらの事情」なんぞライダーは構っちゃいない。マイクの向こう側にガーバーがいないと知るや、いきなり逆上。運転手を射殺した。これに肝を冷やしたカモネッティ警部補らは社屋から出る寸前のガーバーを呼び止め、慌てて運行司令室に連れ戻した。しかしこの事が災いして、ガーバーは痛くない腹…いや、痛い腹かもしれないが…を探られるハメになる。さてはライダーとガーバーはグルではないかと、カモネッティ警部補のさりげない尋問。実はガーバーは日本の車両製造会社のワイロを受け取った疑いで、あわや解雇一歩手前の降格処分を受けていたのだ。上司がそのあたりの事情をカモネッティ警部補に吹き込んだために、ガーバーは疑いの対象となってしまったというわけ。そんな事情は、列車内からネットで情報を入手したライダーも気づいていた。「不本意で不合理な処遇」を受けた男として、この男はガーバーに不思議な共感を抱いているようなのだ。そしてタチが悪いことに、マイクを通してガーバーにこう言い放った。「どうした、オマエ本当はどうだったんだ? ワイロを受け取ったのか? 白状しないと人質を殺すぞ!」

!!!映画を見てから読んで!!!

みたあと

 オリジナルはウォルター・マッソーとまだメジャー化する前のロバート・ショーらという地味めなキャスト。今回は中心にデンゼルとトラボルタという2大スターを据えて、周囲にジョン・タトゥーロやジョン・ガンドルフィーニという味のある個性派を配置する豪華キャスト。それだけ見ても分かる通り、実は今回は派手なアクションやサスペンスで見せるというより、この充実した役者たちの演技合戦で見せるという作戦。これって「トップガン」のトニー・スコット作品としては珍しいように見えるが、彼って「クリムゾン・タイド」(1995)や「スパイ・ゲーム」などでも分かるとおり、実は役者たちの激突で映画を盛り上げる名手でもある。途中で一応「お約束」として派手なカーアクションなど出てくることは出てくるが、それはあくまで刺身のツマ。つまり芝居を楽しむ映画というわけだ。

みどころ

 もちろん主役のデンゼルは善玉だから好感持てるのは当たり前だが、今回注目すべきは市井のオッサン役というところ。しかもついつい目がくらんで、「子供の教育費に」と目先のワイロをつかんでしまうほどの「普通」さ加減。ヒーロー然としていないところが、またまた好感度大なのだ。そしてこの「好感度大」というのは主役のデンゼルだけにとどまらない。何と悪役として登場したトラボルタも、かなり凶暴でキレやすいキャラクターながら、何となく愛嬌があって「イイ奴」に思えてくるから不思議。そんなトラボルタがデンゼルに共感してくるという、何とも不思議な展開になってくるところが面白いのだ。しかも、「イイ奴」はそれだけじゃない。途中で介入してきてデンゼルをはずそうとする警察の人質救出班から来たジョン・タトゥーロも、高飛車にしゃしゃり出て犠牲者を増やすばかりか、デンゼルを疑って追求するような奴かと思いきや、デンゼルに理解を寄せて協力する「イイ奴」。後半、デンゼルとヘリに同乗するくだりでは、ニューヨークの街を見下ろしながら「守りがいがあるよ」とつぶやくという、何とも好感度アップの場面まである。また、ニューヨーク市長役のジェームズ・ガンドルフィーニは…こいつこそ俗物のイヤな奴と思っていたら、これまたラストにはデンゼルに「誰にでも過ちはある」とか何とか言って去っていくいいオッサン! 何とこの映画、これほどの重大事件が起きて大アクション、大サスペンスが起きているのに、出てくる奴出てくる奴イヤな奴がまったくいないという前代未聞の作品なのである。強いて言うなら、イヤな奴はデンゼルの上司だけか(笑)。ともかく、この手のジャンル映画でこんな作品見たことない。そういう意味で、「L.A.コンフィデンシャル」(1997)で名を挙げ、怪作かつ快作「ロック・ユー!」(2001)を放ったブライアン・ヘルゲランド脚本は異色の面白さ。そして後味の良さも近年の出色。こんなアメリカ映画を見たかった!

こうすれば

 ただし、「お約束」部分のカーアクションが、例によって例のごとく、チャカチャカとコマ落としにしたりスピードを上げたり落としたりの「スタイリッシュ」映像なのが今ひとつ。どうして正攻法でガッチリ撮れないのかねえ。あと、人質の乗客が持っていたパソコンがサスペンスの道具にも、事件解決の役にも立たなかったのにはガッカリ。絶対後でアレが活かされると思ったのに。そこだけが残念。

さいごのひとこと

 今の日本企業にワイロを出す余裕なんてないよ。

 

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