新作映画1000本ノック 2009年4月

Knocking on Movie Heven's Door


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 「レイン・フォール/雨の牙」

 

「レイン・フォール/雨の牙」

 Rain Fall

Date:2009 / 04 / 27

みるまえ

 どんな経緯でそうなったのか知らないが、ゲイリー・オールドマンが日本で映画を撮っていると聞いて、僕は正直言って驚いた。しかも共演が椎名桔平と長谷川京子。この組み合わせも何となく微妙で、しかも椎名桔平が日系米国人の殺し屋と来るからますます妙な気分になる。何でこんな企画でキャスティングになったのか、何とも不思議な気持ちになったわけだ。ま、ぶっちゃけこれがハリウッド資本の映画だったら、その善し悪しはともかく、まずは渡辺謙と菊池凛子とか、あるいは役所広司と誰かとか、でなければ浅野忠信と誰かとか、そんな具合になるんじゃないだろうか。まずは椎名桔平と長谷川京子というキャスティングはちょっと考えにくいし、まして椎名桔平が日系とはいえ米国人で暗殺者って発想はとても出ない気がする。何となく、これって外国映画じゃなくて日本の映画なんじゃないか? …と思っていたら、劇場で予告編を見ると、原作はあちらのモノらしいし、監督・脚本もどうもあっちの人くさい。ま、単に「ユースケ・サンタマリア」みたいにカタカナにしているだけかもしれないが(笑)。となると、やっぱりこれはアメリカ映画ってことなんだろうか? ともかくその出来がどうにも気になったし、トンデモ映画ならトンデモ映画なりに僕は楽しめちゃうので、どうしても見たくなったわけだ。

ないよう

 日系アメリカ人のジョン・レイン(椎名桔平)は、し損じなしの暗殺者。現在も日本に潜伏しながら、次の仕事の準備中だ。だが仲介者のベニー(若松武史)の言動がイマイチ危ういのに苛立つ。何より自分が何者かに追われているのが気に入らないではないか。そんなレインの苛立ちは正しかった。彼の日本での動向を、逐一探っている集団があったのだ。CIAアジア支局の局長ホルツァー(ゲイリー・オールドマン)とその片腕の優子(清水美沙)らスタッフたちが、必死にレインの足取りを追っていた。すでにレインのターゲットは分かっていた。国土交通省の高級官僚である川村安弘(中原丈雄)が、近いうちに記者と接触して何らかの情報を提供する。その川村を殺して情報を奪取することが、レインの目的なのだ。その川村はつい最近ペースメーカーを入れたため、国交省内の金属探知器も難なく通過。まんまとコンピュータ内の情報をメモリースティックにダウンロードして、外部に持ち出すことに成功した。大勢のスタッフを総動員し、省外に出た川村を追いかける。CIAアジア支局の司令センターでは、ホルツァーが監視カメラ映像を凝視して矢継ぎ早に指示を出していた。しかし、そんな川村が地下鉄に乗り込んだ時、レインもその場にいた! レインは満員電車の中で川村ににじり寄ると、ひそかに携帯電話の電波でペースメーカーを狂わせるではないか。同じ車両に居合わせたCIAスタッフたちは慌てふためくが、衆人環視の中では身動きがとれない。そんな様子を送信されてきた携帯ムービーで見せられたホルツァーは、頭から湯気を立てて焦り狂う。「何だ、どうなってる、何とかしろ!」…地下鉄が駅に滑り込み、開いた扉から川村がホームに倒れ込むと、レインもその川村を抱きかかえるようにして服をまさぐる。そんなこんなで大混乱の中、CIAスタッフの前から素早く姿を消すレイン。CIAスタッフが川村の服を探しても、情報をダウンロードしたメモリースティックは見つからない。てっきりそれはレインが持ち去ったものと思いこんだホルツァーらだった。しかし実際の話、レインもそのメモリースティックを見つけることはできなかった。では、メモリースティックはどこにいったのか? そしてそこには何が入っているのか? ともかくメモリースティックの行方を探すレインは、川村の豪華な自宅へと足を運ぶ。自宅には川村の娘がいるはずなのだ。ところがそこに柄の悪い二人組がやって来て、レインに襲いかかってくる。それを難なく倒したレインは、たまたまシャワーを浴びていて難を逃れた川村の娘・奈緒子に、「命を狙われているぞ」と告げた。しかし、そこに新たにホルツァーの放ったCIAの刺客二人が飛び込む。激しい銃撃戦の末、二人を倒したレインだったが、同時に流れ弾で奈緒子も命を落としていた。これで万事窮すか。いや、まだもう一人…実は奈緒子には姉がいた。今ではジャズ・ピアニストとして身を立てているみどり(長谷川京子)がそれだ。早速、彼女が演奏しているライブハウスに駆けつけて、音楽記者を装って楽屋に行くレイン。彼はみどりの顔を見るや否や、「命を狙われてるから、オレと一緒に来い!」といきなり切り出す。そんなだしぬけのレインの発言に、唖然呆然のみどり。ところがそこにやって来た怪しげな男が、これまた突然刃物を持って襲いかかるではないか。二人は慌ててその場を逃れたが、賊はしつこく追いかけて来る。レインは何とかこの男を返り討ちにしたものの、今やみどりも抜き差しならない状況に追い込まれたことを気づかずにはいられない。だがその頃ホルツァーも、東京中の監視カメラを駆使して、レインとみどりの動向を察知しようと血眼になっていた。そしてベテラン刑事のタツ(柄本明)も、ここ最近高級官僚が3人も死んでいることに注目して、事件を追い始めたのだが…。

みたあと

 映画が始まってすぐ、「A MAX MANNIX FILM」と監督名が出る前に、「EXECUTIVE PRODUCERS」として、明らかに日本人とおぼしき名前がズラズラと7〜8名ぶん画面に出てくる。この「製作総指揮」名義の連中がことごとく日本人であること、そもそも仕事もロクにしてないくせに偉そうに名前と口だけ出す「EXECUTIVE PRODUCERS」なんてメタボな連中が、堂々と偉そうに真っ先に画面に出てくるセンスのなさ…からして、これはどう考えてもアメリカ映画や外国映画ではない。映画の一番最初に「EXECUTIVE PRODUCERS」の肩書きが出てくるなんて、あっちじゃジェリー・ブラッカイマー・クラスだってやるかどうか。いわゆる「制作委員会」のおエライさんたちに気を遣ってやったんだろうが、私はアホですと名乗っているようなもの。そんなみっともなくも恥ずかしいことをするのは日本映画くらいしかないだろう。ゲイリー・オールドマンは出てくるし、監督脚本も外国人だが、これはどうやら完全な日本資本の映画らしいのだ。そうだよな。キャスト表もあくまで主演は椎名桔平と長谷川京子で、ゲイリー・オールドマンが助演扱い。これが外国資本の外国映画だったら、そんなことはあるまい。役の大小に限らず、椎名桔平と長谷川京子の上にゲイリー・オールドマンが出てくるはずだ。実際、エンディング・クレジットを最後まで見ても、アメリカ映画協会のマークは出てこなかった。それらの点からして、この映画は出演者や脚本監督担当者に外国人を起用してはいるが、どこまでも純然たる日本映画ということが言えそうだ。一体どういう成立過程でこの映画が作られたかとても気になるが、なかなか珍しい一例であることは間違いない。ゲイリー・オールドマンの出演もあって、全体的にかなり外国映画テイストの作品に仕上がっているのだ。

!!!映画を見てから読んで!!!

こうすれば

 しかしその出来映えは…となると、かなり疑問が残る。東京中の監視カメラに狙われての逃亡劇…となると、例の「ボーン・スプレマシー」(2004)や「ボーン・アルティメイタム」(2007)あたりを大いに意識しているのが分かるが、なぜか見せ場に乏しい上にどこかショボいため、それらの作品と比べるとかなりスケールの面で落ちる。大したアクションがあるわけでもなく、かつその見せ場の内容も目新しさも派手さもなくパッとしないため、てんでショボいのだ。あの手この手で迫り来る危機を回避する…といかねばならないのに、迫ってくる危機そのものが乏しい。監視カメラに常に凝視されているという割には、椎名桔平と長谷川京子はかなり自由度高そうにウロチョロしている。何より問題は、絶対の殺しのプロであるはずのジョン・レインこと椎名桔平が、長谷川京子と接する時の甘ッチョロさ。もっと素っ気なくクールでビジネスライクでないと、何だか最初からヌルくて妙に親切で変ではないか。対する長谷川京子も、一体何を考えているのか分からないキャラクター。父も妹も殺されて、命を狙われて逃げ回るって感じには到底見えない。この主役二人のユルユルでヌル〜い演技が、全体の緊迫感を思い切り削いでいるのだ。おまけに空港に向かったと思わせて新幹線で逃げているはずが、すぐに東京に舞い戻ったりして訳が分からない。二人で旅館に泊まって、夜中に打ち明け話をのんびりしている場面など、まったく必要ないではないか。事件が一応収束に向かってからの、「三ヶ月後」に設定されたエピローグもやたらダラダラ長くて面白くもない。おまけに、変に気取ってオシャレにしたつもりのピンボケ画面が連発するなど、この主役二人の場面はどうにもこうにも計算違いも甚だしい。これは椎名桔平と長谷川京子の演技がヘタというより、オーストラリア出身の監督マックス・マニックスの脚本と演出プランが間違っているとしか言いようがない。それが証拠に、刑事役の柄本明なんかまどろっこしい台詞回しがどうにもおかしい。わざとヘタに演じているのかと思ったくらいだ。今回の最大の「売り」であるゲイリー・オールドマンですら、終始ギャーギャーとわめいてばかりでうるさくて仕方がない。貫禄も凄みもない「小物」感ムンムンの中年男に見えてしまう。これは何とももったいないではないか。

みどころ

 そんなわけで、相当にトホホな出来映えの今回の作品。かつて「ラストサムライ」(2003)の感想文で「トンデモ日本」を扱った映画群を紹介したが、この作品もそれらの仲間に加えてやるのが妥当だろう。日本の描き方は至極真っ当なのだが、何よりサスペンス映画として「トンデモ」なのである。逆に言うと、そんな「トンデモ映画」に目がない一部好事家のみなさんには、この上ないごちそうみたいな映画かも(笑)。いやぁ、やっぱりつまんない映画だと思うけどね(笑)。そんな中で、意外にも孤軍奮闘頑張っていたのは、CIAアジア支局のナンバー2を演じた清水美沙。全然期待していなかったのだが、これがゲイリー・オールドマンを向こうに回して英語で丁々発止やり合う役。結構やってくれるのだ。ただし終始ツリ目でおっかない顔をして登場するから、まるでルーシー・リューみたいに見えてくるのがお気の毒だが(笑)。それと、メモリースティックに納められた日本社会を震撼させる衝撃の情報ってのが、「国交省の官僚たちがいかに無駄な公共事業で私腹を肥やしているか」という証拠だというのも、見ていてしょんぼりしてしまう一因。だってそんな事、日本じゃ子供だって「当たり前のこと」として知っているではないか(笑)。今更そんなことで誰も衝撃なんか受けないよ。国交省の役人はどいつもこいつも腐っていて当たり前なのだ。

さいごのひとこと

 ゲイリー・オールドマンが本気出してたとは思えない。

 

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