「オーシャンズ13」

  Ocean's Thirteen

 (2007/08/27)


  

見る前の予想

 実はこのオールスター映画のシリーズ第3弾、僕にとってはさほど待望の作品ってわけじゃなかった。むしろ、それよりも「ホントに出来ちゃったの?」という驚きの方が強い。まさか3作目まで出来るとは思わなかった…というのが本音か。

 僕は元々、このシリーズをそれほど好きな訳じゃなかった。ましてこの前の2作目なんて、正直に白状するとちょっといただけないと思っていたのだ。だから期待値はほとんどゼロに近かった

 ただ後述するが、今回はちょっとだけ…ひょっとしたら何かの間違いでちょっとはマシかも…と思ってはいた。だから「暑い日が続くし、お気楽に楽しもう」ぐらいのユルみきった気分でフラリと見に行ったわけだ。正直言って、こんな時にシビアな映画を見たい気にもならない。出来が良かろうが悪かろうが、「オーシャンズ」ぐらいがちょうど良さそうな気がしていたのだ。

 果たして、その結果やいかに?

 

あらすじ

 今日も今日とて、世に盗人のタネは尽きまじ。真夜中とあるビルの金庫室でさまざまな機器を駆使しつつ、何人かの男たちが「仕事」に取り組もうとしていたところと思いねえ。いよいよ金庫をこじ開けようとしたその時、覆面姿の男たちのうちの一人の携帯が、間の抜けた着信音を鳴らし始める。慌てて電話に出たその男…ラスティ(ブラッド・ピット)はその内容を知るや唐突に「オレ、行くわ」と告げて、呆気にとられた他の連中を横目にその場を立ち去る。

 彼が一路向かったのはチャーター機が待つ空港。機内にはすでにダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)が待っていた。

 「彼の具合は?」「一命は取りとめた」

 それは今しばらく前のこと。ダニーたちと「一丁カモッた」仲間たちの一人、ルーベン(エリオット・グールド)は、トラの子をはたいてベガスのホテル王ウィリー・バンク(アル・パチーノ)に投資を決めた。ただしこのバンクなる男、何かとすこぶる評判が悪い。ダニーもこいつには関わらない方がいいと忠告した。しかしバンクの「パートナーにならないか?」との言葉はルーベンには抗しがたい誘惑だったのだろう、よせばいいのになけなしのカネをはたき、アレコレ手はずを整え段取りを済ませてやって…いよいよホテル開業が迫ったある日のこと。その建設現場に呼ばれたルーベンは、バンクの「パートナー」どころかすべてを奪われるハメになった事を知る。あまりのショックにその場にへたり込んだルーベンは、そのまま心臓発作に見舞われた…というわけだった。

 そんな共に戦った「仲間」のピンチに、あの「オーシャンズ」の面々が各地から集まって来た。いつも子供扱いされているライナス(マット・デイモン)、メカに強いバシャー(ドン・チードル)、ディーラーのフランク(バーニー・マック)…などなど以下省略。むろん憎っくきバンクにリベンジ…との意見が圧倒的だったものの、まずは一旦和解のチャンスを…とリーダーのダニー直々の出馬だ。しかしバンクは「オーシャンズ」たちを思い切り見くびっており、和解も謝罪もその気配全くなし。かくなる上はリベンジより他はあるまい。めざすはバンクがルーベンから奪い取ったベガスのホテルに、史上最悪のオープニングを迎えさせること

 このホテル、すでに「プレ・オープン」として客を入れていた。カジノも開業中だ。そこでダイスからルーレットの玉から「仕込み」を行って、片っ端から胴元がボロ負けする細工を行おう。その場にいる客に大儲けさせて、バンクに大損させればいいのだ。そのため仲間のバージル(ケイシー・アフレック)がダイスを作っているメキシコの工場に潜入。特殊な物質を混入させることにする。

 ただしカジノの「ボロ負け」状態が生じた場合、異変はすぐに察知されてしまう。しかもこのホテル、天才科学者(ジュリアン・サンズ)が開発した人工知能に守られてもいた。この人工知能を強制的に終了させ、再起動するまでの数分間で事を片づけねばならない。

 さらに「大儲け」させた客をこのカジノでずっと遊ばせていたら、結局はそのカネを吐き出すハメになってしまう。そこで適当な頃合いで客をホテルから退出させるために、一芝居打つことにした。そのためのド派手な仕掛けとして、英仏トンネルを掘るために使われた巨大な掘削機を投入。バシャーがこれの操縦にあたり、ベガスの地下で大々的に駆動させることになる。

 一方、バンクは今までつくるホテルすべてで、業界最高格付けの「5つダイヤ賞」を受賞していた。そのダイヤで出来た「賞」そのものはこのホテルの最上階に安置されていたが、これまた厳重なセキュリティー・システムに守られているため奪うことは出来そうになかった。こいつを深追いしたらこちらがヤバイ。

 だが、バンクの天狗の鼻をへし折るための作戦は着々進行中。「5つダイヤ賞」の格付けをする審査員は、常にホテル側に身分を隠して潜入して厳正な格付けを行う。そこで「オーシャンズ」の一人ソール(カール・ライナー)がわざとらしく格付け審査員になりすましてホテルに投宿。これを目に留めたバンクの右腕のビジネス・ウーマン、アビゲイル(エレン・バーキン)が、必死にソールを特別扱いにするように仕向ける。その一方で、本当の格付け審査員が「最悪の待遇」を受けるべく、さまざまな細工を仕掛けることも忘れない。

 しかし意気上がる「オーシャンズ」の面々とは対照的に、寝込んだままのルーベンはまるで抜け殻。心優しいバシャーが毎日のように手紙を病床のルーベンに届けるものの、当のルーベンはまるで何もする気力がなく手紙にも手をつけない。

 さらに計画が進んでいくうちに、いくつかの誤算も生じてきた。まずはメキシコの工場に潜入していたバージル。工場の待遇のあまりの劣悪さに怒った彼は、本来の目的を忘れて一緒に働く仲間たちを焚きつけ、ストライキに突入してしまう。これに業を煮やした「オーシャンズ」は弟のターク(スコット・カーン)を追加派遣するが、これが「ミイラとりがミイラ」になってしまう始末だ。

 また例の英仏トンネル掘削装置も、途中でいきなり故障してしまう。解決策としては壊れてしまった掘削装置をもう一台投入することしかないが、さすがにそうなるとカネがかかりすぎる。すでに「オーシャンズ」はこの作戦のために予算を使い切っていた。万事窮すか。

 そんな行き詰まった局面に、あのラスティが想定外の提案を持ち出した。何と…事もあろうに「オーシャンズ」の宿敵ベネディクト(アンディ・ガルシア)の援助を仰ごうというのだ。ところが…これが意外にもうまくいったから世の中分からない。ベガスのもう一方のホテル王であるベネディクトは、バンクが目の上のタンコブでジャマで仕方なかったのだ。ただしベネディクトは、彼らに注文を付けた。

 難攻不落とされたホテル最上階の「5つダイヤ賞」を奪え…。

 

「オーシャンズ」はエンターテインメントたり得ていたか?

 キラ星のごときオールスター、監督は今や絶好調のスティーブン・ソダーバーグ。世間じゃ絶賛の嵐で大ヒットのこのシリーズ、しかし僕は必ずしも両手離しで気に入っていたかと言えば、いささか心許なかった。

 むろん駄作だともつまらないとも思っちゃいない。だが、一応これだけのメンバーを揃えてニギニギしく公開されている割には、ソコソコの面白さに留まっている気がしていたのだ。

 それというのも…一方でトラフィック(2000)みたいな硬派な映画をつくり…そもそも出身がアート味ムンムンの「セックスと嘘とビデオテープ」(1989)なのに「オーシャンズ」までつくってしまうあたりに、スティーブン・ソダーバーグって監督には何となく胡散臭さが付きまとっていた。確かにそんなあたりも、僕が「オーシャンズ」をストレートに楽しめない所以ではある。だが「それだけ」が理由かと言えば、決してそうではない。

 そもそも第一作11にしたって、僕はあんまり記憶に残っていない。観た時にはそれなりに面白く感じたような気もするが、まったく覚えていないのだ。

 ただし見に行った時のことはよく覚えている。親しい人たちと連れだって出かけたのだが、観る前はさすがに期待していたような気がする。ところが期待が大きすぎたのか、退屈はしなかったものの軽い失望感を感じたような印象は残っているのだ。

 何でそんなイマイチ感があったのか…を自分なりに考えてみると、少々思い当たる点がない訳でもない。やっぱり良くも悪くも、問題は例の「豪華キャスト」だ。

 この「11」は、御存知「オーシャンと十一人の仲間」(1960)のリメイク。そのオリジナルと比べて…と言うほど僕はシナトラ一家のファンでもないし、そもそもこの本家は中学生の頃テレビで観た程度だ。しかも、観てすごく面白かった訳でもない。それでも今回の「11」との違いは何となく感じた。

 この手の「粋」でシャレのめした「作り話を楽しむ」類の映画をこしらえるには、今回の「豪華キャスト」はいささか「若過ぎ」なのだ。イマドキのハリウッドでは珍しく大人のアブラっこさを漂わせるジョージ・クルーニーを中心に置いたのは、少しでもそんな「粋」な大人の雰囲気を出したかったからだろう。だが、それ以外はと言えば…ブラピマット・デイモン。ましてジュリア・ロバーツに「粋」が漂う訳もない。本来そういう「粋」とは相容れない連中だけに、これはかなりキツイ。ベガスで粋なコン・ゲーム…って柄じゃないのだ。

 そんな訳で僕としては「ソコソコ」だった「11」だが、世間的には大ヒット。好評に応えて続編12がつくられることになったわけだ。

 だが、こいつがいけなかった

 元々、「11」がソコソコどまりだった僕だから「12」は大して期待もしていなかった。それなのに、実際の出来は予想以上にひどかった。こりゃあ悪ノリだとしか思えなかった。

 そもそも第1作の「11」の時の「豪華キャスト」は、「ありえないほど豪華な顔合わせ」が売りだろう。それなのに、「ありえない」オールスターが何年も経たずにまた再結集しちゃマズイんじゃないか。それでなくてもゴージャスさより幼さ軽さが勝ってしまいがちな「豪華キャスト」に、さらにありがたみがなくなってしまう。しかも「豪華キャスト」それぞれが個別に他の作品でもやたらツルんでいるのも、そんな「ありがたみのなさ」の一因だ。

 しかもソダーバーグは、全編手持ちカメラによる流し撮りドキュメント風演出を試みた。これがさらに悪ノリ感を増強。自称「豪華キャスト」の同窓会ホームビデオというか、内輪ウケ楽屋オチのテイストでつくってしまったのだ。

 これを言ってはオシマイだが、やってるのが本当のシナトラ一家ならまだ良かったかもしれない。だがテメエでテメエのことを「豪華」で「シャレ」てて「粋」だと思ってる連中が内輪だけで楽しんでいる図なんて、単なる勘違いのおめでたさしか感じられない。なおさら「豪華キャスト」の幼稚さが際だってしまった。大体エンターテインメント映画がお客をもてなさずに、テメエたち自身をもてなしていてどうする

 おまけにジュリア・ロバーツが「大スター」ジュリア・ロバーツのそっくりさんに扮する…なんて、テレビのバラエティ並みのレベルの低さ。やってるのが元々泥臭さが身上のロバーツだけに、ハッキリ言って笑えない。さすがにこれには僕も呆れかえってしまった。

 ところが、これがまた当たってしまったから世の中は分からない。止せばいいのに「13」までつくることになっちゃった訳だ。これはさすがに期待値も最低に下がってしまうだろう。

 だが僕にはなぜか、今回はちょっとはマシなんじゃないかと思えたのだ。だから観たいという気にもなった。その理由はたったひとつ。

 今回加わった大物、アル・パチーノだ。

 

見た後での感想

 結論から言うと、僕は今回大いに楽しんだ

 むろん期待値が最低ラインにまで下がっていたから、後は上がるしかなかった…ということもある。あまりに暑いのでアレコレ考えたくなかった…ということもある(笑)。だが、この作品は結構楽しめるんじゃないだろうか。少なくとも「11」「12」よりは大分上のような気がする

 出てる連中もやってることも大して変わっていないというのに、何故に「13」のみをイイと言うのか? そう問われるとハタと言葉に窮してしまうのだが、これが正直な感想だから仕方がない。今までは何とも釈然としない気分で映画館を後にしていたのに、今回は非常に痛快な気分を味わったのだ。

 そうそう。陽性でスポーティな犯罪映画やコン・ゲーム映画は、この「痛快さ」がなければ面白くない。

 考えてみると今までこのシリーズは、そのあたりを目指していながらイマイチ「痛快さ」に欠けていたような気がする。見終わった後のスカッとした「やったぜ!」という気分が乏しかった気がするのだ。そういうお話につくっていて、出ている連中もそういう芝居をしていたはずなのに、結果は「痛快」ではない。まぁ、映画は出ている連中が「痛快だ」という顔をしていれば「痛快」になるほど単純なモノではない。肝心要のそこんとこが出来ていなかったのだろう。では、今までと今回ではどこが違うのか

 理由はいくつかある。

 まずは主役陣の年齢が上がって来たことがあるだろう。正直言ってガキの馴れ合いに見えていた「オーシャンズ」…特にブラピだが、ようやく年齢やスターとしてのステータスがこの役に似合って来たのかもしれない。ガキ扱いされていたマット・デイモンですら、それなりの格に見えて来た。

 そして仇役のボリュームが増したこと。正直言ってアンディ・ガルシアやらその他大勢では、あまりに悪役として軽量すぎる。おまけに「オーシャンズ」は束になってかかってきてるのだから、ハッキリ言って大勢で無勢な側をやっつけてるみたいだ。これでは確かに爽快感など出まい。今回は仇役にアル・パチーノという重量級の役者を持ってきたことで、ようやく「オーシャンズ」と釣り合いがとれた。いや、「ゴッドファーザー」三部作(1972〜1990)や「スカーフェイス」(1983)などの彼を考えると、「オーシャンズ」全員でかかっても危なそうだ。パチーノの起用は、映画の豪華さを増してもいる。

 さらにはお話の基本が「仕返し」というストレートなモノであること。主人公たちの行動のモチベーションがスッキリしたし、「オーシャンズ」が見事に作戦を進めれば進めるほど、相手を叩けば叩くほど、観ている側は痛快な気分になる。これは映画を面白くする基本だろう。

 また登場人物を使い捨てにせず、ていねいに扱っていることも見逃せない。その最も分かりやすい例が、劇中で散々な目に遭うホテルの格付け審査員だろう。この男を痛めつけるのは行きがかり上致し方ないことなのだが、よくよく考えれば彼は何も悪いことをしていない。だからそのままで放置すれば、今ひとつ楽しさが膨らまずイヤ〜な後味が残ってしまうところだ。しかし映画は、最後にちゃんと彼に罪滅ぼしをするところで終わっている。だから爽快で楽しい後味が残る。今回はいつも仇役のアンディ・ガルシアの扱いもシャレていて、観ている観客を楽しませてくれる。その顛末も…ガルシアの言いなりになるわけでなく、かといって彼を痛めつける訳でもなく、サラリとシャレた解決方法に持っていっている。こういう点をキチンと片づけていないと、娯楽映画の本当の楽しさは出てこないのだ。

 そんなこんなで…今回の最大の美点はどこだと言えば、おそらく脚本ということになるだろう。そしてそれを書いたのは、何と快作ラウンダーズ(1998)のブライアン・コッペルマンデビッド・レビーンのコンビだというから驚いた。やっぱりこの二人は才人なのだろう。例えばホテル最上階のダイヤの安易な奪い方やら、地底の巨大な掘削機はどうしたんだろう…とか、作劇上の穴はいくつも見つけることができるのだが、登場人物のさばき方には大いに感心した。今回の成功は、間違いなくこの二人のおかげだ。

 

見た後の付け足し

 最後に、あえて「13」が面白くなった理由をもう一つだけ挙げれば…どこか野暮くさいジュリア・ロバーツが出ていないから…と言ったら、いささか語弊があるだろうか(笑)。

 

 

 

 

 

 

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