「コンスタンティン」

  Constantine

 (2005/05/02)


見る前の予想

 キアヌ・リーブスが何やら悪魔払いをやらかす映画らしい。

 「コンスタンティン」の予告編を最初に見て得た印象は、そんなとこだ。だが悪魔払いと言ってもキアヌは神父みたいな存在ではない。ネクタイを締めてハードボイルド・ヒーローっぽい。おまけにショットガンみたいなものを持ち出してくる。ならばアクション映画的な雰囲気なのか?

 おまけにビルの中がメチャクチャになって、レイチェル・ワイズが何者かに引っ張られていくCGバリバリのアクション場面もある。早い話が、マトリックス(1999)のオカルト版というのが簡単な印象だろうか。主演がキアヌというのも、俄然そんな印象を強くさせる。だが、それはちょいと安易な企画だよなぁ。

 気になるのはそれだけではない。予告編が終わる寸前に、「DCコミックス」のクレジットがチラリと出てくるのだ。ということは、これってマンガが元ネタか?

 もうこの時点で…申し訳ないがこの映画をシリアスに見る気はなくなった。マンガだから云々…と差別する気はないものの、あまりシリアスに見たらバカを見る。何しろ僕は「マトリックス」に勝手に人類破滅テーマのハードコアSFを期待して、思いっ切り期待がハズレて失望しちゃったんだから。最初からあの映画を、引力や常識や現実やらの制約を取り払ってポップに味付けた破天荒アクション映画だと分かっていたら、僕はあんなに抵抗感を感じはしなかっただろう。

 だから僕は、この映画をハナっから「バカ映画」として見ることに決めた。「バカ映画」と言って悪ければ、さほどシリアスには受け止めないというところか。内容なんか何もなくてカッコいい絵が撮れてるだけでも、この映画としては目的が果たせてるのかもしれない。何しろ主演が何を考えてるのか分からない「大根」キアヌだ。わざわざこいつを使うからには、深い考えなどないように見せたいと思っているのだろう。

 オッケー。ゲームのルールは分かった。中味空っぽでいくなら、それでも僕は結構だ。

 

あらすじ

 「運命の槍」…それを持つ者は世界を征する事が出来ると言われている聖なる品。だが第二次大戦後、その行方は誰も知らない…。

 ここはメキシコのドヤ街。いかにも貧しげな二人の男が、何やら廃品を漁り回っている。うまくイイ廃品を手に入れれば、それを売り飛ばしておまんまにありつけるかもしれない。ところがそのうちの一人が、何やら地面を踏み抜いてしまった。

 どうも地面の下には空洞があるようで、男はそこにフタをした木製の扉を踏み抜いてしまったようだ。ポッカリ空いた穴に恐る恐る手を突っ込んでみると、そこには何かがしまってあるではないか。こんな所に隠してある事自体ただものではあるまい。

 それは…何とナチスの旗に包まれた、かなり年代物の槍の穂先だった!

 それを手に取った男は、何やら人が変わったように呆然として歩き出した。まるで夢遊病者のようにスタスタと歩き出して…横から突っ込んで来たクルマにぶつかった!

 ところが…クルマは大破したが男は無事だ。しかも男はヒラリと身を翻すと、サッサとその場から走り去ってしまった。果たして男の行き先は…?

 ここはロサンゼルス…「天使の街」。裏町の安アパートに一台のタクシーがやって来る。運転席にいるのは、気のいいアンチャンのシア・ラブーフ。クルマに乗っているのは、黒スーツに黒タイの男コンスタンティンことキアヌ・リーブスだ。キアヌ=コンスタンティンは早速アパートに乗り込むと、中で待ち構えていた中年神父プルイット・テイラー・ビンスと二言三言会話を交わす。「たぶん、アレだ。間違いない」

 アレ…それは「悪魔憑き」だ。

 問題の部屋に入ると、「悪魔が取り憑いた」とおぼしき女の子がベッドに両手両足を縛り付けられている。キアヌ=コンスタンティンは物凄い形相で唸る女の子にまったく動じず、いきなり啖呵を切って宣戦布告だ。

 「オレはコンスタンティン…ジョン・コンスタンティンだ。クソったれめ!」

 そしていくつか持っている「護符」のメダルのうち最適なモノを選び出し、いきなり女の子の額に押し当てる。

 ジュ〜〜〜〜〜ッ!

 ギャァァァ〜〜〜ッ!

 苦しみもがく女の子。「護符」メダルを当てた額からは湯気が立ち上る。これが早速功を奏したか、女の子はパタッと大人しくなった。やれやれ…とキアヌ=コンスタンティンが様子を伺うと…。

 いきなり女の子の胸元からエイリアンのような顔が突き出すではないか。間一髪で交わしたキアヌ=コンスタンティンは、こいつが「毎度お馴染み」の連中とはひと味違う事に気づく。

 「デカい鏡を持ってこい! 今すぐにだ!」

 全身を写せるほど大きい鏡が運ばれるや、何人かの男にそれを持ち上げさせ、女の子の横たわるベッドの上にかざす。キアヌ=コンスタンティンは男たちに目をつぶっているよう命じたが、中の一人がついついうっすら目を開いてしまい、恐ろしい悪魔の形相を見てビビって逃げ出してしまう。これで形勢が危うくなったものの何とか建て直し、キアヌは「悪魔払い」の技を続行。悪魔は女の子の身体から飛び出して、鏡の中へと入っていった。

 今がチャンス! キアヌは暴れる悪魔を封じ込めた鏡を、部屋の窓から下へと叩き落とした。

 ガッシャ〜〜〜ン!

 鏡は悪魔を抱え込んだまま、地面に叩き付けられ粉々に砕け散った。こうして無事に「悪魔払い」は完了したのだが…。

 キアヌ=コンスタンティンはテイラー・ビンス神父に声をかける。「これで済んだとは思えない。奴らの動きに気を止めていてくれ。何か分かったら連絡頼む」

 いつもと違うただならぬ気配に、何やら不吉な予感を感じるキアヌ=コンスタンティンだった。

 そんなキアヌ=コンスタンティンは、いわば「悪魔ハンター」とでも言うべきだろうか。数少ない仲間の力を借りて、こうした悪魔を地獄へと送り返すのが仕事だ。ヘビー・スモーカーでとりつくシマもない態度の男。助手を自認するタクシー運転手の若者シラ・ラブーフは、いつかは自分も「悪魔退治」の仕事を…と願っているが、キアヌ=コンスタンティンは彼を手足のように使いながらも、「仲間」扱いはまったくしない。何かを命じはするが会話はしない。そんなキアヌ=コンスタンティンの態度にも、ラブーフは忍耐強く付き合っているのだった。

 もう一人の仲間は、「調達屋」マックス・ベイカー。この男は普段は寂れたボウリング場の二階に暮らしていて、火焔放射器のような武器「ドラゴンの息」やら、悪名高いアミティブルから持ってきた虫が入っている小箱やら、ヨルダン川から汲んだ聖水の入った小瓶やら…キアヌ=コンスタンティンの仕事に必要なアイテムを、どこからともかく調達してくる不思議な男。キアヌ=コンスタンティンにとっての彼は、ジェームズ・ボンドにとっての「Q」みたいなものだと言えばお分かりいただけるだろうか。

 いやいや…もう一人「仲間」ではないが「知り合い」はいた。その人物は、ダウンタウンにある「ミッドナイト」なるナイトクラブにいた。自称「助手」ラブーフは何とかここに潜り込もうとするが、キアヌが許してくれない。良くてせいぜいこう言うくらい。

 「入れたら入れ」

 常に図体のデカイ番人がいて、暗号のような絵を読み解かねば入れてくれない。今日だってキアヌ=コンスタンティンは一発オッケーだったが、ラブーフはあえなく門前払いだ。

 それと言うのもこのナイトクラブ、もちろんただのクラブではない。その狭苦しい店内にひしめく客たちは、いわゆる「人間」ではないのだ。彼らは「ハーフブリード」という「半ば天使」あるいは「半ば悪魔」のような存在。神も悪魔も、その使いである天使も地獄の兵士たちも…実は人間界には直接干渉してはならない。彼らはこの「ハーフブリード」を使って、何らかのカタチで人間に働きかけている。そんな「ハーフブリード」たちが、人間界には人知れずゴマンといるのだ。ここナイトクラブ「ミッドナイト」は、そんな善悪両方の「ハーフブリード」の社交場。この店を経営するミッドナイトことジャイモン・ハンスゥは、神からも悪魔からも中立である事を宣言している人物だ。

 そんなハンスゥの部屋に、キアヌ=コンスタンティンはいきなり乗り込んでいく。例によってハンスゥはいつもの「中立論」をまくし立てるが、キアヌ=コンスタンティンにはチャンチャラおかしい。

 「何が中立だ。そんなものとっくにバランスが崩れてるぜ」

 キアヌ=コンスタンティンは、もちろん悪魔がこの人間界に直接介入を始めたのを感じていたのだ。だがハンスゥは、相変わらず「絶対中立」のバランスを主張する。「悪魔が人間界に入り込むなんてあり得ない!」

 ついでにキアヌ=コンスタンティンに嘲笑を浴びせるのは悪魔側の「ハーフブリード」の一人、仕立ての良さそうなスーツに身を包んだギャビン・ロズデイルだ。「何でももうすぐオダブツらしいな。焦っても間に合わないぜ」

 これにはキアヌ=コンスタンティンもブチギレ。ロズデイルと揉み合いになって、ハンスゥに店を追い出されるハメになる。どうも悪魔側の不穏な動きに、誰も耳を貸してくれそうもない。

 一方その頃ある教会では、懺悔室に入って告白を行う女が一人。「お許しください。今日もまた私は一人殺してしまいました…」

 ただしこの女レイチェル・ワイズは、別に殺人鬼などではない。女刑事として、今日も犯罪者を射殺してしまったのだ。だが彼女には、それが深い悩みだ。なぜなら彼女には、銃を使わねばならない局面に立った時、どの瞬間にどう撃てばいいのか…それを確実に察して確実に実行に移せる能力があったからだ。そうして常に知らず知らずのうちに手を下していた。この特殊能力は一体何なのだ?

 そしてレイチェル・ワイズは、真夜中に高層ビルディングの屋上にいた。何かに導かれるように、彼女はここまでやって来た。壁面に巨大な十字架が取り付けられたこの建物は、実は病院だ。彼女は屋上からジャンプして、遙か下のガラス天井を突き破り、その下にあったプールへと着水した。もちろんこの高さでは、とても命がない。

 そんなイメージを悪夢として見ていたレイチェル・ワイズは、ハッと驚いて飛び起きる。だが、それは悪夢ではなく現実だった。

 墜落死したのは、レイチェル・ワイズの双子の妹だった。見た目は彼女とソックリの妹は、この病院に入院していたのだ。現場に連れて行かれたワイズは、変わり果てた妹の姿に思わず絶句する。以前より精神を病んでいた妹。それゆえ世をはかなんで自殺した…と片づけられたのだが、ワイズはどうしても納得できない。

 あの信心深い妹が、自殺などするはずがない…。

 その頃キアヌ=コンスタンティンにも、逆らいがたい現実が襲いかかりつつあった。未成年の頃からのヘビー・スモーカーぶりが災いして、いまや彼の肺はタールだらけ。肺ガンも末期と診断され、あと1年の命を覚悟せねばならなかった。これがキアヌ=コンスタンティンを大いに苦しめているのだが、その訳は後ほど改めて…。ともかくキアヌ=コンスタンティンが病院から立ち去ろうとしたその時、妹の自殺現場を見に来たワイズとエレベーターでバッタリだ。だがエレベーターに先に乗っていたキアヌ=コンスタンティンは、ワイズを乗せてやろうともせずボタンを押した。

 「知るか!」

 一時が万事…事ほどさようにテメエ勝手で冷たいのが、このキアヌ=コンスタンティンという男だ。それは決して「助手」ラブーフに対してだけではなかった。たまたまバッタリ顔を合わせただけのワイズだが、このキアヌ=コンスタンティンの仕打ちはバッチリ脳裏に焼き付いた。性格が「最悪の男」として…。

 さらにいろいろ気になってきたキアヌ=コンスタンティンは、教会へと足を運ぶ。ところがそこでまたあのレイチェル・ワイズとハチ合わせ。相変わらず譲ろうとしないキアヌ=コンスタンティンの身勝手に呆れる彼女だが、幸いな事に二人の相談相手は違っていた。

 キアヌ=コンスタンティンが会いに来たのは、大天使ガブリエルことティルダ・スウィントン。スウィントン=ガブリエルに「悪魔の暗躍」について訴えるが、ここでも相手にされないキアヌ=コンスタンティン。それより何より、スウィントン=ガブリエルはキアヌ=コンスタンティンに何とも冷たい態度なのだ。それと言うのもキアヌ=コンスタンティンがいつまで経っても利己主義で冷たい男だから。彼がどれだけ悪魔を地獄に追い払っても、神は彼を認めてくれない。どうもキアヌ=コンスタンティンには何やら過去に罪があって、このままでは地獄行き決定のようなのだ。そして彼の肺ガン死はもはや目前。何とか神に認めて欲しいと懇願しているのに、単なる「点数稼ぎ」と見なされ相手にされない。そんなキアヌ=コンスタンティンを冷たくせせら笑うスウィントン=ガブリエルなのだった。

 一方、ワイズの方も首尾は芳しくない。世話になっている神父に妹の事を頼み込んでも、自殺者は弔えないと剣もホロロ。生前は敬虔な信者だったのに…と必死に懇願しても、神父の返事は変わらない。このままでは妹の地獄行きは決定だ。

 そんな頃、キアヌ=コンスタンティンに悪魔の様子を見張るように言われていたテイラー・ビンス神父は、毎日の新聞記事を貪り読みながら、そこに「悪魔の気配」がないかを感じ取ろうとしていた。すると…。

 何者かに呼びかけるような、悪魔の声が!

 それは、偶然にもレイチェル・ワイズの双子の妹が自殺した記事だった。

 同じ頃、ワイズは病院のモニター・カメラが捕らえていた、妹の自殺の瞬間映像をチェックしていた。ところが妹は自殺直前にカメラを直視すると…「コンスタンティン」…と一言つぶやいてから飛び降りるではないか。コンスタンティンとは一体誰か…?

 こうしてレイチェル・ワイズ刑事は、問題のキアヌ=コンスタンティンの元へとやって来た。もちろん彼を「悪魔払い師」と知っての事だ。何しろ警察関係者の間では、彼のいかがわしい悪名は轟いていた。だが、今夜はそんな事を構っている余裕はない。何とか妹を救うために、この男の力を借りねばならないかもしれないのだ。

 すでに二度顔を合わせて、二度ともいい印象を持っていなかったワイズ。それでも何とか自分を抑えながら、キアヌ=コンスタンティンに妹の事を説明する。

 だが、キアヌ=コンスタンティンの態度は相変わらずつれなかった。

 自殺した人間は地獄送りだ。どうする事も出来ない。地獄で永遠に苦しめられる運命だ…。あまりと言えばあまりにデリカシーのない言葉。さすがにワイズはキレて、部屋を乱暴に出ていく。

 だがその直後、何やら物騒な連中が窓の外をザワザワと通過していく気配…。キアヌ=コンスタンティンの予感がまた騒ぐ。ひょっとして、悪魔の暗躍にはあの女も関係しているのか?

 慌てて夜の往来へと飛び出すキアヌ=コンスタンティン。勢いよく歩いていくワイズはすぐに捕まえられたものの、彼女の機嫌は決定的に損なわれていた。そもそも迷信やらオカルトなど信じちゃいないと口走る彼女。そんなワイズを何とか立ち止まらせるキアヌ=コンスタンティンだったが…。

 気づいてみると、往来には人通りがまったくない。

 そして遠くから次々と街灯が消えていく。アッという間に真っ暗だ。さすがにワイズもこれは穏やかならぬ事態だと気づく。そんなワイズを制止するキアヌ=コンスタンティン。あたりは真っ暗で何も見えなくなったが、何者かがうごめいているのは感じられる。

 そこに「ドラゴンの息」をブッ放す!

 早速例の新兵器で猛火を噴射すると、目の前には何やら魑魅魍魎たちが忙しげにうごめいているではないか。「ドラゴンの息」はそれらをアッという間に焼き尽くすと、化け物たちは消え街灯は灯りを取り戻した。 

 さすがに驚きの色を隠しきれないワイズ。確かに何かがいた。そして何かが起きようとしている。キアヌ=コンスタンティンはワイズの自宅へ行って、いよいよ真相に迫ろうとするのだが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからは映画を見てから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

見た後での感想

 売る側としては、「マトリックス」のオカルト版が狙いなのはミエミエ(笑)。

 スタイリッシュなアクションやら派手なCG表現がふんだんに盛り込まれているのも同じなら、善と悪との対決…みたいな大げさかつ単純なテーマも「マトリックス」での人間対機械の戦いを思わせる。

 ただ元々は確かにアメコミのようで、だから本来「マトリックス」パクりを狙ったわけではあるまい。結局一見壮大な対決テーマにふんだんにCGを持ち込んでスタイリッシュ映像を乱発。おまけに主演はキアヌってところで「マトリックス」化してしまったんだろうね。少なくとも映画の作り手は「その気」だ。

 でも、その売り方って損なんじゃないだろうか

 監督のフランシス・ローレンスって人はMTV畑の人らしく、カッコ良くこの映画を撮ってはいる。それは決して悪い事ではない。この映画は別にスゴくオリジナリティーがある映画ではないし、実際のところ中味もそれほど派手ではない。カッコいい映像はいくらかあるが、全体としては「マトリックス」なんかよりずっと小ぢんまりした映画だ

 そして、それは元々のコンセプトからそうみたいだから、このローレンスなる監督のせいにしては気の毒だ。むしろこの人としてはベストを尽くしたと言えるのではないか。多くを期待しなければ…これはこれなりに退屈しないで面白く見れるのだ。

 大天使ガブリエルやら悪魔ルシファーやらの扱いに、どこかユーモアが感じられるのもいい。ちゃんとティルダ・スウィントンやらピーター・ストーメアやら、曲者の演技者を持ってきているのが楽しいではないか。特にスウィントンは先日猟人日記(2003)で見たばかりだけに、その様変わりぶりには嬉しくなった。ちなみに彼女の次作はあの「ナルニア国ものがたり/ライオンと魔女」の「白い魔女」役だと言う。あまりにハマっているので僕は狂喜乱舞だね。

 閑話休題。おそらく聖書やらキリスト教の事情に詳しければ、もっとそのへんのギャグやらパロディぶりが分かって楽しめるのだろう。でも、分からないからって楽しめない程スゴイ事を言ってる訳でもない。最後のショットでキアヌ・リーブスが見せる「オチ」のギャグも含めて、この映画はマジメに受け取ったらたぶん間違いだ。やっぱり元が元だけに、「マンガ」なんだよね。

 しかもこのお話、主人公のキアヌが虚無的で利己的に振る舞ってワルぶっているから一見そうは見えないものの…実はかなり「健全」なお話だ。

 ネタは地獄だの魑魅魍魎だのと脅かしてはいるが、あくまでポップな味付けでカッコよく仕上げているから大して怖くはない。俗悪にもなってないから口当たりはイイし、実際言ってることは真っ当もいいとこ。要は“神様は心からの「自己犠牲」や「献身」は必ずお認めになる”…ってなテーマを、真っ正面から言っているお話だからね。まるでディズニーみたいに「健全」で「品行方正」な…やっぱり「マンガ」だと考えた方がいいのかも。

 だから決してしかめツラで見るべき映画ではない。シリアスに考えると、許せるものも許せなくなる。どちらかと言えば、他愛のないコメディぐらいに考えていた方がいい映画かもしれないよ。ハッキリ言ってバカ映画だからね、これは(笑)。ちなみに…この「バカ映画」ってのはホメ言葉だ。

 

見た後の付け足し

 僕がこの映画で最も興味を惹かれたのは、ここで描かれる「地獄」の描写だ。

 実際のロサンゼルスの風景が地獄として出てくるというのは、まさに卓抜したセンスだ。ただし地獄らしく高熱にすべてが焼かれ焦がされ、常に熱風が吹きすさぶというリアルで説得力のある「地獄描写」。この核戦争で破滅したロサンゼルスみたいな「地獄」というイメージが、まことに秀逸だ。天国も地獄も今ここにある…人間が住んでいる現実世界の一種の「パラレル・ワールド」や「異次元世界」のように存在している…という設定は、今まで天国地獄絡みで描かれた物語の中でもひときわ際だったモノを感じる。これはすごく面白いイメージだ。オカルトチックなこの物語が、あとちょっとでSFになってしまうかもしれない設定なんだからね。

 しかし…ならば「マトリックス」パクりに見えちゃうのは、なおさらこの映画にとってマズかったのではないか?

 この映画の最大のオリジナリティーであるこの「あの世」解釈まで、作品全体が「マトリックス」めいているおかげでパクりに見えてしまう。まるで「マトリックス」中の「仮装現実世界」とか「現実の破滅した地球」とかに似たりよったりのモノに見えてしまうのだ。本当はまったく違うモノだし、解釈としてはかなり独創的で面白い。なのに、これではもったいないではないか

 なぜ「マトリックス」っぽく、スタイリッシュ映像やらキアヌやらを持ち出したのかねぇ?

 念のために言っておけば、ここでのキアヌ・リーブスが悪い訳ではない。彼はこの手の役にハマっていて、気持ちよさそうに演じてはいる。かなりセコくて世知辛いアンチ・ヒーローを、バカバカしく演じていて笑える。だが彼が出る事で、イメージ的に「マトリックス」のバッタもんくさく見えてくるのは免れない。彼自身にとっても、あまり得策ではなかったのではないだろうか?

 そもそも魑魅魍魎やら化け物を退治するって絵柄は、「ブレイド」(1998)やらバイオハザード(2001)やらアンダーワールド(2003)やらで、ここんとこクサるほど見ている。いいかげん手垢が付きまくったイメージなんだよね。押し寄せる気色の悪い生き物にショットガンで攻撃をかける場面なんて、僕らはここ1〜2年どれくらい見ただろうか? 見ている一般映画ファンにとっては、それがゾンビであろうと悪魔であろうと、怨霊であろうと吸血鬼であろうと同じ事だ。ハッキリ言ってもう食傷気味と言っても過言ではない。この映画だって、それを「まんま」やってるだけにしか見えないのだ

 おまけに、そこにキアヌごと「マトリックス」を乗っけているイメージ。

 そもそもこの世ならざる化け物たちと戦う、「007」タイプのスーパー・エージェントって発想たるや…そのまんまヴァン・ヘルシング(2004)のコンセプトになってしまうではないか。あそこでも、「007」もどきの秘密兵器を次々披露していた。まるっきりこっちも同じだ。

 つまり、この映画ってどれもこれも「どこかで見た」覚えのあるモノばっかりでつくられちゃってるんだよね。しかも唯一の大いに興味をそそるべき「あの世」設定すら、わざわざ「マトリックス」もどきのように見せちゃっている。全体的に「マトリックス」風に売っちゃってるから、わざわざ凡庸にしているようにも思えるんだよね。それでいて「マトリックス」ほどの派手さはない。

 だってコレって本来はキワモノの悪趣味映画か、あるいは逆にまったくバカバカしいあの世コメディではないか(笑)。もっとコテコテにエグくたって良かったはずだ。あるいはもっともっとナンセンスな笑いに傾斜しても良かった。それをご丁寧にキアヌと「マトリックス」の包装紙で包んでしまったために、出てくるアイテムはみんなありふれて見えてしまう。妙にスカしてカッコつけて脱臭するから、中途半端な印象を与えてしまった。

 ここはいっそ、中川信夫の新東宝映画地獄(1960)みたいに天知茂でも連れてくるべきではなかったか(笑)?

 まぁ、これは完全に冗談だが…どこかハジけさせた方が良かったと思えるんだよね。既存のええカッコなイメージに頼らず、悪趣味でもバカでもお笑いでもいけるとこまで行けば良かった。そうしたら、それはそれでまた別の展開があったようにも思えるのだ。

 目くじら立てて見なけりゃそれなりに見れる。退屈もしないし笑える所だってある。キアヌだって実は悪くなんかないのだ。だが彼が出てきてこの絵づくりと処理の仕方では、どうしたってあちこちに「マトリックス」がチラつく。売る方もそんな色気が出てきて、変に「マトリックス」ぶるからおかしくなるのだ。そして鮮度のない「ありきたり」感ばかり増してくる

 それならいっそこの映画、最初からA級大作ぶらずに安っぽくつくる手もあったんじゃないか? スカしたフリを見せずにズバリと新東宝かコメディみたいにやってれば、意外でヤケクソな面白さが出たかもしれないんだけどね。

 

 

 

 

 

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