第26回:気さくなホラー・ヒロイン、ジェイミー・リー・カーティス

Jamie Lee Curtis, the Lovable Horror Heroine

(2003/09/08)


親が俳優といういわゆる二世スターはハリウッドでも大活躍。ジェフ・ブリッジス、マイケル・ダグラス、メラニー・グリフィス…などなど枚挙にいとまがない。でも、そういう意味ではこの人ほど恵まれた環境に生まれた人もないのでは? 父トニー・カーティス、母ジャネット・リーとの間に生まれた娘=ジェイミー・リー・カーティス。その売り出しがホラー映画「ハロウィン」(1978)からだったというのは、やはりお母さんジャネット・リーの「サイコ」のイメージがあるんだろうね。でも、すぐに彼女のイメージはホラーでくくれないくらい大きくなっていった。中でもコメディには独特のおかしな味わいで達者なところを見せていたんだね。最近はちょっとおとなしくなって、これといった作品が来なくなったのが残念。今回はそんな彼女のコメディ・センスあふれる二本をラインナップ!

 

「大逆転」 Trading Places (1983)

ジェイミー・リー・カーティスっていうと、その出世作は「ハロウィン」ってことになるんだろう。これはジョン・カーペンターの出世作にもなるんだけど。実は彼女のフィルモグラフィーを見てみると、この「ハロウィン」はデビュー作でもあるらしいんだよね。

ついでカーペンターの好評第二弾「ザ・フォッグ」(1979)にも起用。これは母親ジャネット・リーとの共演という話題のオマケつきだ。さらには「プロムナイト」(1980)、「テラー・トレイン」(1980)…と続いて、リー・カーティスはすっかりホラーの女王ってな称号をいただいちゃうことになった。ある意味、デビュー作からスターとして注目されたわけだから幸先のいいスタートと言えなくもないが、その活躍の場がホラー限定ってのは彼女としてはあまり有り難くもなかったのだろう。そもそもが低予算映画、ゲテモノ映画の代名詞であるホラー映画だ。この分野でのし上がっても限界がある。あるいはこのままでは先細ってしまう…とこの時点で大いに焦り始めたであろうことは想像に難くない。

何とか方向転換を…と思いながらもそれがままならなかったことは、「ハロウィン」続編の「ブギーマン」(1981)出演を引き受けてしまったことからも明らかだろう。そんな彼女が見事なイメチェンを遂げて、その後の幅広い活躍を決定づけた作品が、ジョン・ランディス監督のコメディ「大逆転」だ。

この映画、「48時間」で華々しくスクリーン・デビューしたエディ・マーフィーが、今度はダン・エイクロイドと組んでの第二作として知られているよね。大富豪のひひジジイ二人アール・ベラミーとドン・アメチーが、気まぐれから賭けをする。それは、人間を決定するのは本人の資質か環境か…ってなことがテーマだ。このジジイ二人組はよからぬ事を画策したあげく、金持ち坊ちゃんエイクロイドと浮浪者黒人青年マーフィーの地位を逆転させ、その様子を見て楽しむ。金持ちの座に座らせられたマーフィーは、本来持っていた商才を発揮。一方、すべてを奪われてドン底に落ちたエイクロイドは、気持ちもすさんで泥棒にまで成り下がる。…そんなエイクロイドがひょんなことから知り合ったのが、街の娼婦ジェイミー・リー・カーティスだ。

最初は金で雇われてエイクロイドの没落に手を貸すことになるが、トコトン落ち込むエイクロイドを見るに見かねて面倒をみるハメになる。そんなどこか気のいい気取りのない女って役どころが、ホラー映画の時から見せていた彼女本来の個性…気性のサッパリさ加減とピッタリとマッチ。娼婦という役柄からパッと脱いで胸をさらす場面もあるが、ここで彼女が披露した巨乳にはみんなビックリしたんじゃないかな?

お話はその後、エイクロイドはジジイ二人組の企みに気づき、自分も最後にポイ捨てされると悟り始めたマーフィーと組んで反撃を開始することになる。本来は映画を見て楽しんでほしいから詳しくは語らないが、ここから彼らが変装したりダマしたりの「スパイ大作戦」もどきの痛快な展開となってくるわけ。そして、当然のごとくリー・カーティスもエイクロイドに手を貸して大活躍するんだよね。

で、ここでリー・カーティスが化けるのが、スウェーデンから来た旅行者。それもまるで「アルプスの少女ハイジ」みたいなコスチュームに身を包んで、どこがスウェーデンなんだか分からないけど「アメリカ人から見た北方ヨーロッパ人」…のパロディみたいな調子で出てくるんだよね。髪型もそれっぽく、金髪でかわいらしく結んじゃったりしてる。「フロム・スウィ〜ドゥン」…なんて舌っ足らずな発音でブリブリな話っぷりも笑わせる。それまでの「いかにも」ケバい娼婦っぽさが際だっているだけに、ここでのリー・カーティスのブリブリなロリっぽい芝居が楽しいんだよ。何しろそんな中でも一番素晴らしいのは、ここで見せる彼女の楽しげな表情だ。こんなバカな芝居も嬉々としてやってくれる彼女には、僕もすっかり嬉しくなったね。

 これ以降、ジェイミー・リー・カーティスはホラーから完全脱皮。さまざまな作品にいい味出していくことになるんだよね。それもこれも、彼女がこの作品で持てる魅力を初めてフルに発揮したから。キャラのサッパリ感、そしてバカもやれるコメディ・センス、さらには意外なまでのナイス・バディ…と、これ以降の彼女の出演作は、この「大逆転」で見せた魅力をどこかで反映したものになっている。その中でも注目すべきは、彼女の持つ「人の良さ」だよね。

思えばスターになった今でも、自分を売り出してくれた「ハロウィン」シリーズ最新作「ハロウィン・レザレクション」(2002)にまで顔を出す付き合いの良さ。このへんを見ると、ジェイミー・リー・カーティスのスター・イメージとしての「人の良さ」って、実は彼女の「素」なんじゃないかと思えてくるんだよね。

 

 

「トゥルーライズ」 True Lies (1994)

ハリウッドの新しいSFアクションの旗手として大いに売り出したジェームズ・キャメロンが、「ターミネーター」(1984)、「ターミネーター2」(1991)で起用したアーノルド・シュワルツェネッガーとまたまたコンビを組んだ作品

「タイタニック」以前のキャメロンと言えば、SFハード・アクションとかスペクタクルの人って感じだったよね。で、登場人物の言動はいつもいたってシリアス。ところが今回キャメロンが挑んだのはコメディなんだよ。この映画の派手派手な設定、シュワルツェネッガー主演作という器、大作イメージでそのへんがぼやけてしまいがちだが、この映画はまず徹底的にバカバカしいコメディとしてつくられているんだよね。

それは映画冒頭のシュワルツェネッガーの登場シーンからして言える。水から上がってウェット・スーツを脱いだら下にタキシードをバリッと決めてるなんて、007シリーズのパロディ以外の何者でもない。だからここに出てくるアラブ・ゲリラだって決してリアリスティックな存在じゃない。ミサイルに引っかかって「止めて助けて」とジタバタするさまなんて、ほとんどマンガだ。そのあたり当時「ツインズ」(1988)、「キンダガートン・コップ」(1990)とコメディに急傾斜していったシュワルツェネッガーの意向とも合致して、今回は大がかりなコメディをやろうって事になったんだろうね。

で、この「トゥルーライズ」、どんなコメディと言うと何と夫婦コメディなのだ。

考えてみると、深海アクション「アビス」(1989)で複雑な夫婦の機微を描いていたキャメロン。こうした「夫婦善哉」的世界を語るのにこの当時ご執心だったのだろうか。またまた…そして今度はコメディとして、「夫婦にまつわるアレコレ」を改めて描きたかったようだ。何と元ネタはフランス映画ってとこも異色だよね。

ここでのシュワルツェネッガーは泣く子も黙るスゴ腕スパイだが、家ではそんな身分は隠して昼行灯を装っている。そんな冴えないオヤジぶりに加え、スパイ稼業の悲しさで家を空けることも多いシュワルツェネッガーは、すっかり自宅での存在感がなくなっていたわけ。子供は言うことをきかずグレる寸前。女房はつまらん亭主に愛想尽かして浮気願望がムクムクとカマ首をもたげる。そんなシュワの女房役が今回のリー・カーティスの役どころだ。

そんな彼女はまずは平凡でマジメな主婦として登場。何となく野暮くさい服装に黒ブチのメガネという扮装からして笑わせる。それがビル・パクストン扮するイカサマ男に、いとも簡単にコロリとダマされるのがまたオカシイ。自称スパイ…実は真っ赤な嘘のパクストンの「危険な魅力」に惑わされたリー・カーティス。彼女があわや不倫へ…という時になって、亭主シュワがそれに気づく。かくしてシュワは自らが所属するスパイ組織まで総動員して、職権を濫用しての女房奪還大作戦を展開するんだね。

シュワが仕掛けた罠は、リー・カーティスを本当のスパイ戦に巻き込まれたと錯覚させること。そこで彼女に秘密のミッションを授ける。その内容は、ゴージャスなドレスを身につけ、ホテルのナゾの人物が泊まる部屋に潜入、この人物に色仕掛けで迫る…といったもの。もちろん部屋で待っているのは、暗闇に姿を隠したシュワ自身だ。そうとは知らないリー・カーティスは、ハラハラドキドキ悲壮な決意を胸にホテルの部屋を訪れるわけ。ここが抱腹絶倒なんだよね。

彼女は無線で指示を受け、ドレスも脱ぎ捨て下着姿になって、このナゾの人物を誘惑せんとする。その必死さ加減がまた笑えるんだよ。おまけにセクシーに踊ってみせろってな指示に困り果てた彼女が、何だかへっぴり腰で見せる妙ちきりんな踊りのおかしいの何のって…この映画、見どころ笑いどころはいろいろあるが、一番のオススメは何と言ってもこの場面だね。もちろん「大逆転」で初めて披露し、「パーフェクト」(1985)のエアロビ・インストラクター役で十二分に発揮された彼女のナイス・バディーは、ここでも実に見事。だけど、ここでのリー・カーティスはあくまでアチャラカ演技に徹しているのがエライ。普通、いやしくもスターと言われる人がこれほどアホな姿をさらさないよ。それが、いかにも腰が退けててかえってカッコ悪い踊りを披露して、何とも絶妙。彼女の思い切りのよさと潔さが、ここまでのおかしさを生んでいることは間違いない。もう捨て身のバカ演技としか言いようがないね。

この他にもやはり上記「大逆転」や、ジョン・クリースと組んだ「ワンダとダイヤと優しい奴ら」(1988)、「危険な動物たち」(1996)などで見せたコメディ・センスが全編に炸裂。さらに婦警役の「ブルー・スチール」(1990)で見せたアクション女優ぶりも、さらにパワーアップして見せてくれる。シュワを向こうに回してのヘリからの宙づりシーンなんか、なかなかなんだよね。

だけどともかくは最高なのが、例のセクシー・ダンス場面。それも、人が良くって気だてのサッパリしたジェイミー・リー・カーティスだからこそ…って思えてくるんだよね。

 

 

 

 

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