第14回:泣くな男だシュワルツェネッガー

Arnold Schwarzenegger, Please Don't Cry

(2001/11/26)


実は何をかくそう、僕はアーノルド・シュワルツェネッガーの映画が結構好きだったんです。何かかつてのこの人って、自分をよく知ってて、その中でどうやれば映画が面白くなるのかをいつも考えている感じ。それが本来は馬鹿力役者なのに意外に分かってるという印象を与えていた一因だろうと思います。ところが最近の彼見ていると、何だか空回りしちゃってうまくいってない感じ。そこへ来て例のテロのあおりをくらって、新作「コラテラル・ダメージ」公開延期という弱り目にたたり目な状態。また最初のころを思い出して、ぜひあの往年のパワーを取り戻してほしいです。というわけで、頑張れシュワルツェネッガー!の2本立てをご覧あれ。

 

「コマンドー」 Commando (1985)

シュワと言えば私にとってはまずこの映画。某国の政権を転覆させる陰謀に元特殊部隊のエリート兵士シュワを無理やり荷担させるために、一人娘を誘拐して言うことをきかそうなんて考えたんだけど、そもそも相手が悪かった(笑)。言うことをきかすどころか怒らせてはいけない奴を怒らせて、悪党どもにはまさに悪夢以外の何物でもない一夜となる。もう、このシュワがめったやたらに強くて、強すぎて笑っちゃう。これハッキリ言ってコメディです。まず、無理やり乗せられた飛行機から脱出。空港でウロウロしてたスチュワーデスのねえちゃんレイ・ドーン・チョンを捕まえて、敵への復讐&娘の奪還に有無を言わさず協力させる。このレイ・ドーン・チョンがスッチーにしては庶民派で気取りがなくてユーモラス。でっかくてコワモテのシュワと小柄でおかしいレイ・ドーン・チョンの取り合わせが、全編のお楽しみになってくる。最初はシュワにさらわれるかたちで協力させられたレイ・ドーン・チョンなので、シュワに対してブーブー文句の言い放題。行く先々で死体がゴロゴロのシュワなのに、このレイ・ドーン・チョンだけは終始シュワに文句を言い続けているあたりが爆笑もの。そのうちだんだんシュワに協力するようになって、しまいにゃロケットランチャーをブッ放す大活躍ぶりを見せてくれるあたりがうれしい。終盤で敵の秘密基地にシュワが単身攻撃を加えるあたりも、小さな軍隊ぐらいの規模の連中相手に一人で戦って、相手全滅で自分は無傷(笑)。この無茶さかげんがたまりません。これまでの映画はいくら無敵のヒーロー描いてもここまで踏み込んだバカバカしさには到達できなかった。やはりシュワの肉体を持ってして、初めて描きえた前人未到のコンバット・アクションなのだ。とにかくあまりの途方もないバカバカしさに、日頃のストレスも何もかも木端微塵に粉砕されることはうけあい。目の前のチンケな物事にいちいち悩んでいるのがアホらしくなりますよ。女性もお子さんもお年寄りも、家族みんなで楽しめる希有なハード・アクション映画として、ご家庭に1本この作品のビデオを常備されるよう強く推薦させていただきます。

 

 

「ツインズ」 Twins (1988)

シュワの強烈なコメディ・デビューというのが触れ込みの作品。でも、上記のように元々僕はシュワをコメディ役者だと考えていたから、この作品が成功するのは疑わなかったね。「ゴーストバスターズ」のアイヴァン・ライトマン監督の目の付けどころはさすが。しかも、チビなダニー・デビートと双子という発想の無茶さかげんがまたすごい。ここでのシュワは運動能力、知性、芸術性などで優れた男性の精子をかき集めてカクテル、出来上がった人口受精の子供という設定で、デビートにはその残りカスがいってしまったというヒドイ話。だからデビートは捨てられて、シュワだけが南海の小島で純粋培養的に育てられている。人を疑うことを知らない、曲がったことをしない人間で、しかもすごい能力の持ち主。これはつまり、「スーパーマン」「スーパーマンII」であのクリストファー・リーブが演じていた、スーパーマン=クラーク・ケントのキャラクターと同じ。大昔から繰り返し語られてきた、天使についての物語のアメリカ的現代的解釈だ。だから、汚れた実社会に彼が登場すると、現代社会のいろいろなウミが浮き彫りになってくる。また、シュワがめざすのが兄探し、そして母親探しという家族の再生であるところも、意外と今の社会の中ではシリアスなテーマではないか。主人公が求めるものが終始一貫、家族と善意であるという愚直さがかえって新鮮。バカバカしくて大笑い、あげく後味の良さもスッキリの娯楽映画として保証付きの面白さではあるが、エンディングでちょっとだけホロリとさせるあたりも、そんなテーマが流れているからだろう。今の世の中、善人でいるってことはシュワルツェネッガーでなけりゃ務まらないほどタフなことだって証明だね。「いい人」って言えばバカにされがちの昨今だけど、それこそひょっとしたら真の「ラスト・アクション・ヒーロー」なのかもしれないぜ。そうそう、劇中でシュワはケリー・プレストン相手に童貞を喪失するんだけど、そのときのコトを終えた満足げな顔と言ったら! 童貞喪失であんなに幸せな気分になれてたら、俺ももう少し明るい人生だったよな(笑)。

 

 

 

 

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