第11回:小粒でもピリ辛、アーマンド・アサンテ

Armand Assante, the Hard-boiled Shorty

(2001/07/23)


みなさんはこのアーマンド・アサンテなる男優の名を聞いたことがあるだろうか? ハッキリ言ってそう華のある男ではない。僕が最初に見たのはテータム・オニールとクリスティ・マクニコル主演作「リトル・ダーリング」。以来、地味ではあっても出演作はとぎれることなく、話題作や超大作のキャストにも名をつらねること数知れず。B級ではあっても主演作もあるリッパなスターなのだ。でも、何だか人気爆発しないでここまで来ちゃったんだよなぁ。今回はこの知る人ぞ知る、知られざるスター、アーマンド・アサンテの魅力を大々的にご紹介!

 

「探偵マイク・ハマー/俺が掟だ!」 I, the Jury (1982)

マイク・ハマーと聞いて「オッ?」と触手と嗅覚がピクついた方、その通りです。あのミッキー・スピレーンの書いた私立探偵シリーズの主人公、マイク・ハマーをこのアサンテが演じた一編。でも、あんな有名なキャラクターをこんな知られてない俳優がやるなんてなぁ…とおっしゃる貴兄に、まずは読んでいただきたい。

確かにアサンテにはスターとしての「格」がない。これは事実である。そして残念ながら、今後も作品にさえ恵まれればそれが彼に身についてくるとも思われない。というのは、彼は決して作品に恵まれない訳ではなかったし、また役に恵まれなかった訳でもないからだ。むしろ、彼のフィルモグラフィーには多彩な話題作も多く、それらの代表的な作品の中で、彼は実に個性にハマった役を演じてきた。

その代表例としてシドニー・ルメットが1990年に発表した傑作「Q&A」を見てみれば、僕の言いたいことが分かっていただけるだろう。ここでのアサンテはヤクザのボス役。主人公の検事ティモシー・ハットンがかつて付き合っていて別れた恋人を、今では自分の愛人にしている男だ。昔の女が今はヤクザのボスの愛人…確かにこれは主人公である検事の身としては苦々しいことだろう。だが、ここで主人公にとって最もツラいのが、このボス=アサンテが何とも品がなく、成り上がったようなゲス男であると言う点だ。どんなにコワモテを装っても権力振りかざしても、隠しきれない男として人間としてのキャパの小ささ。そんな奴の愛人になり下がった自分の昔の女。これが主人公ハットンを苦しめ続けるのだが、そんな安いボス役に何ともまぁこのアサンテがハマり過ぎるほどハマっちゃってるのである。

実際このアサンテは身長もかなり小さいらしく、体つきがずんぐりむっくりしていることもあって寸足らずって印象を与えやすい。イタリア系ならではのラテン臭もムンムンしている。それらが相まって、本人にはお気の毒ながら何とも言えない「小物イメージ」が、全身からプンプン漂ってしまうんだね。演技力もあるしボリュームもある、よく見るとそれなりにいい男なんだが、そうした持って生まれた個性が幸いしてか災いしてか重宝に使われてしまう。だから出演作は一向にとぎれないし、ビリングも結構上の方にランクされるにも関わらず、画面に出てくればいつも安いムードを発散させているんだね。

で、話をマイク・ハマーに戻そう。ハマーって確かに有名だけど、例えばフィリップ・マーロウやらリュー・アーチャーなんて私立探偵と比べると、何となく安いイメージがないかい? だから、これまで映画にならなかったんじゃないか? スターじゃ誰もやりたがらなかったんじゃないの?

そんなハマーに実はこのアサンテはうってつけ。安さプンプン漂わせて、短い体をフルに動かして、全編を動きっぱなしで頑張ってくれるんだよ。

 まずプロローグがイイ。どっかの男から女房の浮気調査を引き受けるハマーの、やる気のなさそうな顔。そして調査を続けているうちに、当のその女房を食っちまうあたりのダラシなさ好色さがイイ。ベッドで組んずほぐれつしているところに依頼主の亭主から電話がかかってきて、「今、身体を張って頑張ってます」なんてオッパイにむしゃぶりつきながらいうあたりがまたイイ。

そしてこのプロローグ(本題とはまるで関係なし)が終わるとビル・コンティのカッチョよくも派手派手なテーマ曲に乗ってタイトル・クレジットが始まるが、このオープニング画面で主人公のアサンテが次から次へとキメキメのポーズをとって見せてくれるのが絶品! 肩をすくめたり銃を構えたりニヤリと笑ったり…あの「シャフト」オープニングのサミュエル・L・ジャクソンを思わせる趣向だが、あっちはカーティス・メイフィールドの音楽のせいもあってクールにキマってるけど、こっちは音楽がやたらにチンドン屋並みに派手なせいか何とも安い。キメればキメるほど笑えてくる。初主演作ということもあってアサンテ張り切ってるんだろうなぁと思えれば思えるほど、カッコ良さより笑いが込み上げてくるのだ。男臭さハードボイルドさを見せようとすればするほど、彼って何だか余裕なさそうだしねぇ(笑)。

本題はセックス・クリニックを巡っての陰謀だが、もうその題材からして安さ爆発(笑)。この映画、リチャード・T・ヘフロン監督も張り切って大サービスで、次から次へと見せ場がスシ詰め状態でサービス精神のカタマリ。そこにアサンテが悪ぶった顔で登場。しかしもったいつけることなくあの短い身体で骨身惜しまぬ運動量を放出し、細かいアクションを次から次へとこなしていく。そんな見せ場の一山いくら状態が、また安さを呼ぶあたりが憎い(笑)。この作品、確実に入場料やビデオレンタル代の元はとれる映画だよ。

でも最大の見せ場は何と言ってもオープニングのキメポーズ集。あれ見ると、自分でもそのポーズの数々をマネしたくなるから御用心! 人に見つかったらオナニーの現場見られるより恥ずかしいからね(笑)。

 

「マンボ・キングス/わが心のマリア」 The Mambo Kings (1992)

これは「俺が掟だ!」とは一転して真面目なテーマでつくられた小品の佳作。キューバ難民の兄弟がラテン音楽を武器にアメリカでのし上がろうとするお話。この兄弟の兄がアサンテ、そして弟が何といまやハリウッドでもスターのアントニオ・バンデラスで、たぶんこれが彼のハリウッド・デビュー作のはず。

この兄弟がアメリカ渡ることになるいきさつが訳アリで、実は地元の顔役とのイザコザがあって居られなくなったわけ。しかもバンデラスは最愛の恋人マリアをこの顔役に目をつけられて奪われたという悲劇を背負ってる。マリアはバンデラスに危害が及ぶのを恐れて自ら顔役の愛人となったわけ。このトラウマが、どんなにアメリカで成功してもバンデラスの胸にのしかかっているんだよ。

そうしたストレートなドラマ性やら、作曲家としての才能の冴えみたいな部分はすべてバンデラスの担当で、われらがアサンテはアメリカに来たばかりだろうが何だろうが、本来持っている抜群の生命力と度胸と商才でガンガンのし上がっていく原動力になっていくんだね。この二人の違い(笑)。繊細さナイーブさのバンデラスに対して、押しだしの強さとずうずうしさで勝負のアサンテ! 全然マイク・ハマーとキャラ的に違いがありません(笑)。人が演奏しているクラブに乗り込んで勝手に飛び入りでプレイしまくってオイシイとこかっさらう調子良さ。弟がいろいろ行き詰まってても、ゼニだゼニだとまるで悩みなんか持ってない単純さ。カッコはいいけど安いコロンとか葉巻の香りがプ〜ンと漂うセコいプレイボーイぶり。

弟バンデラスはアメリカでやはり移民のマリューシカ・デートメルス(彼女もたぶんこれがアメリカ映画初出演。)という恋人が新たに出来ながら、ほとんど自滅というかたちでこの世を去る。そんな不憫な弟に対して、今までその心の傷の深さに気付かず何もしてやれなかったアサンテは、せめてもの罪滅ぼしに弟の曲「わが心のマリア」を絶唱するのであった。このくだりは曲も哀愁漂ってて泣けますよ。あの安いアサンテだからこそ、不器用でデリカシーなしの男の飾りけのない心意気が感じられてグッとくる。根っからラテン気質で何も深く考えてこなかった、バカな男の浪速節。

 アサンテって音楽の心得あったのかどうかは知らないが、先に挙げたクラブ飛び入り出演のくだりをはじめ、ミュージシャンとしての演奏シーンはかなり感じ出してるんで見ていて熱くなる。あの短い身体とホットな個性が生きてくる。このあたりも必見の部分だと思います。まさにナントカは小ツブでもピリリと辛い…その安さまで好ましく思えるアサンテを今後も応援したくなるのは僕一人ではないでしょう。

 

 

 

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