第8回:昔むかし戦場で…ハリソン・フォード

Harrison Ford,...Once Upon a Time in the Battlefield

(2001/02/05)


ハリソン・フォードと言えば、近年のハリウッドで最も安定感のあるスター。何といったって「スター・ウォーズ」シリーズ、「インディ・ジョーンズ」シリーズが決定打だし、途中「ブレードランナー」とか「刑事ジョン・ブック/目撃者」とかの秀作も多い。だが、そんな彼が「スター・ウォーズ」大成功で売り出し中に、ドサクサにまぎれてB級テイスト濃厚な戦争映画に連続出演していたことを記憶する人は少ない。まだ安定したスター・イメージが固まっていなかった時期だからこその珍しいキャスティングだが、だからこそ彼のもう一つの顔がうかがえるし、実はこの2本とも揃って隠れた佳作ぞろいなのだ。  

 

 

「ナバロンの嵐」 Force 10 from Navarone (1978)

アリステア・マクリーン原作の戦争冒険アクション「ナバロンの要塞」(1960)の続編。と言っても、この作品制作の時点で18年経っているから、オリジナル作品と同じキャストは当然組めない。そこで前作と共通のキャラクター2人はグレゴリー・ペックがロバート・ショーに、デビッド・ニーブンがエドワード・フォックスに変わった。イントロには前作「ナバロンの要塞」のクライマックス要塞爆破シーンが挿入され、その任務を終えたショー&フォックスの2人がアメリカ特殊部隊フォース10に合流して、今度はネレトバ峡谷でドイツ軍の猛攻にさらされているユーゴ・パルチザンを救う秘密任務に就くことになる。このフォース10のリーダーがわれらがハリソン・フォードで、「ナバロンの要塞」任務で株を上げ余裕しゃくしゃくでフォース10と合流してくるこの2人が、何とも目の上のタンコブでいちいち気に入らない。それをショー&フォックスがまあまあ若いの…てな感じで軽くいなすから、なおさらフォードの頭に血が上るという役どころ。つまり、まだまだアンチャン扱いなんですよ。バラエティに富んだクセ者役者ぞろいのこの作品ではあるが、オールスターキャストというにはチト弱い。キャストの序列ではフォードは何とロバート・ショーに次いで2番目だが、まだまだ「スター・ウォーズ」で人気沸騰の…との触れ込み付きだったわけ。さてこの作戦は秘密任務だからして、現地に乗り込むための飛行機も基地から強奪するというムチャなやり方。そこにたまたま訳ありで逮捕されてた黒人兵士=「ロッキー」のアポロことカール・ウェザースが居合わせ、フォース10のことを脱走兵と間違えることから作戦に同行することになる。このあたり、やさぐれ札つきワル兵士が活躍する一連の戦争冒険アクションの風味も盛り込んだ欲張り構成。ところが現地上空でドイツ軍の攻撃を受けてとんでもない場所にパラシュート降下しなくてはならなくなる。ここでフォース10は、隊員の多くを失うはめになるのだが…。パルチザンと見せかけてドイツ軍側に着いたゲリラ軍だったり、パルチザンの中にもドイツ側の裏切り者がいたりといろいろあって、最終的にドイツ軍の戦車部隊がネレトバ川を越えて渡ってこられないように橋を落とすことになるのだが、とても爆薬ではビクともしない。そこで…てなお話がハラハラドキドキというより何となくゆったりのんびりと展開。主役2人ショー&フォックスが英国風のユーモアを漂わせて余裕で演じているので、何となくトボケた味わいが漂うのがおかしいんだよね。映画は当時のユーゴ大統領チトーの号令一下、軍まで総動員でかなり大スケールのA級大作としてつくられているのに、何だか印象はBっぽい(笑)。それは、このオヤジギャグみたいなユルい笑いが全編を包んでいるからだろうか。こんな余裕の態度で大事な任務をやっているから、フォードは最初オッサン2人にカリカリ、だけどだんだん打ち解けて…というところが見どころ。役者はあとフランコ・ネロのパルチザンとか、なぜか「007/私を愛したスパイ」から束で持ってきた、ボンドガールのバーバラ・バック(現リンゴ・スター夫人)と大男「ジョーズ」ことリチャード・キール。そういやこの2人、イタリア製のB級SF映画(題名ど忘れ)でも共演してたっけ。監督も実は007シリーズゆかりのガイ・ハミルトンだが、残念ながら彼が監督してた「ゴールドフィンガー」「ダイアモンドは永遠に」「死ぬのは奴らだ」「黄金銃を持つ男」は、シリーズ中最もキレの悪い部類に入っちゃう。この作品の何ともユルんだ雰囲気はそのせいか。でも、トボケた笑いが楽しくて、ラストなんてショボくて思わずクスクスものですぞ。

 

「ハノーバー・ストリート/哀愁の街かど」 Hanover Street (1979)

上記「ナバロンの嵐」のすぐ後に主演したフォードの戦争メロドラマ。まだイメージが固まっていなかったから、彼も周囲のスタッフもいろいろな作品、さまざまな役柄を試行錯誤していた段階だったんだね。お話は第二次大戦下のロンドンに駐留する米軍兵士ハリソン・フォードが、銃後の看護婦として働く人妻=当時売りだしの英国お色気美人女優レスリー・アン・ダウンと知り合い、いけない関係になっていくというメロドラマ仕立てのもの。この当時だってすでに、こんなクラシックな設定のお話は珍しくなってたよね。このアン・ダウンの夫というのがかなり歳の離れた書斎の人という感じのインテリ=クリストファー・プラマーで、優しいけどチト物足りない若妻の心のスキマにフォードが入り込むというわけ。そんな妻の心移りをプラマーも気付いていて、何とよせばいいのに軍に協力して男らしいところを見せれば妻の愛が帰ってくると思い詰める。このインテリのくせに男純情直情思考型のプラマーの言動が実はお話のミソ。プラマーはドイツ語知識を生かしたナチへの特殊潜入任務に志願。それに同行するのが、あぁ運命の何たる偶然、妻の不倫相手フォードというわけ。作戦途中でそれに気付いて良心の呵責に悩むフォードというのも見どころになってくるわけなんだよ。で、問題のナチへの潜入作戦だけど、どう考えても切ないメロドラマとして企画されたこの映画、この2人の潜入作戦のくだりはハッキリ言って付け足しなはずだよね。ところがこの作品の監督は、ちょっと歯応えのあるアクション映画で知られたピーター・ハイアムズ。ハイアムズと言えば奇想天外なヤラセ火星探検陰謀映画「カプリコン1」が代表作だね。あの作品の売りはユニークな着想とともに、ステディカムを駆使した大迫力のカーチェイス・シーンだった。そのせいか、この「ハノーバー・ストリート」もおまけなはずのナチ潜入シーンのサスペンスが凄いし、ナチの本拠からバイクで命からがら脱出するくだりも、ハイアムズお得意のステディカム使いまくりで凄まじい猛烈アクションが展開してしまう。これハッキリ言って作品のバランス崩してます。だけどあまりに迫力でイキのいいアクションだから僕は許しちゃう。そしていよいよ万事窮すとなった時、フォードが妻の不倫相手とは知らないプラマーは、自分はもうダメだから「妻に愛してると伝えて」と彼に伝言を頼むんだよ。それを聞いたフォード、一緒に戦火を潜り抜けて相手にも情が湧いたか、「そんなこと自分で言え!」とプラマーをどやす。く〜っ、ここが何とも泣けるんだよねぇ。女ウケする古典的メロドラマをつくるつもりが、何と猛烈コンバット・アクションと男泣き心意気映画つくってしまったハイアムズ。これじゃあ女は見ない(笑)。だからオモシロイ。作品としても何だかいびつだが、面白いからそれでいいのだ。戦争映画ファンは必見だよ。それと、プラマーはもちろんだけど、変装でナチの軍服を着たフォードは意外によく似合ってる。実は「ナバロンの嵐」でも彼はやっぱりナチ軍服を着ていて、これまた似合ってるんだよね。「ホワット・ライズ・ビニース」でちょっと新境地を開拓しようと試みたハリソン・フォード、本気で新生面発揮しようとしてるんだったら、意外とそれはこのナチあたりにありと僕は見ているんだが、いかがなものだろうか?

 

 

 

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