第3回:ジェームズ・キャメロン赤い糸の伝説

James Cameron, the Believer of Lover's Knot

(2000/06/19)


「タイタニック」の大ヒットからはだいぶイメージが変わってきたが、かつてジェームズ・キャメロン監督と言えば男性的ハード・アクションの映画作家として知られていた。でも、この人は「タイタニック」で急に化けたわけじゃない。実は元々けっこう女々しい監督だったんじゃないの? 「トゥルーライズ」だって国際的なスパイ映画という殻をかぶった夫婦善哉物語だし、「エイリアン2」も生き残った少女の母親代わりとして、シガニー・ウィーバーがエイリアン・クイーンと組んずほぐれずの女相撲やってたし。そんな女々しいキャメロンが僕は好き。だいたい男って女より女々しいもんなんだよ(笑)。そんな極め付きの2本!

 

「ターミネーター」 The Terminator(1984)

もちろんキャメロンの出世作だしシュワの起死回生作として知られるSFアクション。だけど、これが単にSFアクションとしてだけで捕えられちゃったところから、みんなのキャメロン評価がおかしくなる発端となった。確かにコワモテのシュワは徹底的に強くて怖い。もう笑っちゃうくらいの、ほとんどナンセンス・コメディみたいな強さ(これに対して笑っちゃうほどの徹底的な悲惨さとくれば、韓国映画の女性受難モノだ)。爆発炎上に巻き込まれて今度こそおだぶつだろうと思いきや、何だか金物のガイコツみたいになって追っかけてくるからかえって怖い。しかしねぇ、このお話は基本的に赤い糸のお話なんですよ。もう少女フレンドとかマーガレットとかの世界。僕も実は昔、ちょっとこの世界にはハマりました(笑)。面白いんだよ少女マンガって。男のほうより人物の描きこみとかドラマの骨格がハッキリしてるから、うまい人のマンガはうまさが際立つ。だって、未来から自分たちのリーダーの母親をまもるために派遣されたマイケル・ビーンは、彼女の写真を後生大事に持っているうちに惚れちゃうんだよ。その女はリンダ・ハミルトンで、はっきり言って可愛くない女だからみんな気付かないけど、この時空を超えた想いってテーマそのものが堂々たる恋愛映画の証し。この二人が結ばれて、やがて生まれるのが人類の救世主たるリーダーってことになるのだから、まさに縁は異なもの味なもの。赤い糸でしょう? 宿命の二人なわけですよ。これで恋愛映画と言わずば何をか言わんやって感じ。ちなみにラスト、暗雲垂れ込める彼方に車を走らせる不吉なエンディングの雰囲気って、日本の映画版「リング」のエンディングがうまくパクってると思うんだけど。

 

「アビス」 The Abyss (1989)

大セットをつくって撮影した深海もの。謎の生命体とか、頭がパーになってファシスト化するマイケル・ビーンとか見どころはいろいろあるんだけど、やっぱり何が一番力入ってるかと言えば、深海の調査隊リーダーのエド・ハリスと、海底基地を設計したメアリー・エリザベス・マストラントニオの、元夫婦というか壊れかけ夫婦の掛け合いのくだり。最初はイライラ、トゲトゲ、ギスギスしているんだけど、だんだん危機の渦中に巻き込まれるにつれて、愛情が蘇ってくる。でも、どうもエド・ハリスのほうが彼女を忘れられないみたいだけどね。「ターミネーター」をプロデュースしたゲイル・アン・ハードってのが当時のキャメロン夫人で、この「アビス」も彼女のプロデュース。ここでいう夫婦の危機は、キャメロンと彼女との間の関係をかなりリアルになぞって描いたものだったんではないかな。そんな二人の新作づくりを通して、キャメロンは必死に関係修復を狙っていたんだと思う。どうしてそう思うって? 俺も8ミリ映画撮ってたとき、似たようなことやってましたから(笑)。でも映画と現実は違ってた。エド・ハリスはマストラントニオの心を取り戻せたけれど、キャメロンはゲイル・アン・ハードの心を取り戻すことはできなかった。その後キャメロンは女性監督でアクション得意なキャサリン・ビグローとか例のリンダ・ハミルトンとか、コワモテの女ばっかり嫁さんにもらうけど、ことごとく結婚は失敗。映画のヒロインもケイト・ウィンスレットに代表されるキツそうな女がズラリと並ぶ。その「タイタニック」のメイキングみたいなテレビ特番を見たら、ゲイル・アン・ハードが昔の戦友を称えるみたいにキャメロンのことを褒めてた。いい女だねぇ。キャメロン失敗したなぁ。話変わるけど、劇中ではキレたマイケル・ビーンが、乗ってる潜行艇ごとどんどん深海に沈んでいっちゃって死ぬんだけど、このシーンが傑作! 沈んでいって小さくなっていく潜行艇の窓にタスケテーみたいな表情のマイケル・ビーンがいつまでもいつまでも小さく写ってるんですよ。「あ〜〜〜〜〜〜」みたいに言っちゃって(笑)。で、最後その潜行艇がグシャッとかイヤな音たててつぶれちゃうの。で、ポコポコとあぶくがセコく上がる(笑)。そのショボさがたまんないの(笑)。見てるほうも、それまでのマイケル・ビーンがホントにイヤな奴だから「ざま見ろ!」ってスッとする。これ見ると、キャメロンって本気で軍国主義者がキライなんだってわかるね。

 

 

 

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