古代史劇とブラピとペーターゼン
ミスマッチ超大作「トロイ」の周辺

"TROY", the Mismatched Spectacle


 

 

単なる愛の逃避行が一国を滅ぼす

 

 紀元前1200年頃、ここはギリシャ。当時のギリシャはミュケナイ国の王アガメムノンことブライアン・コックスが、周囲の国を次々制圧。アガメムノン=コックスはギリシャ全土を我がモノにするのを目前にしていた。そんなアガメムノンの配下で戦いを勝利に導いてきた「伝説の戦士」が、「花嫁はギャングスター」…じゃなかった(笑)アキレスことブラッド・ピットだ。彼は百戦錬磨の強さがあり、かつ戦士たちに慕われるカリスマがあった。だが、アキレス=ブラピはアガメムノン王とは今ひとつソリが合わない。何かというと言うことを聞かないアキレス=ブラピに、アガメムノン王は常に面白くない気持ちを抱いてはいたが、彼なしには戦さに勝てないとグッと苦虫を噛みつぶす間柄だ。

 一方、このアガメムノン王の弟でスパルタ国の王でもあるメネラオスことブレンダン・グリーソンは、その頃長年の戦闘状態を終え、敵国だったトロイの王子であるヘクトルことエリック・バナ、パリスことオーランド・ブルームを自国に呼んでの祝宴の真っ最中だ。

 ところがこの祝宴の最中、パリス=ブルーム王子が席をはずす。奇妙に思ったヘクトル=バナ王子が彼の姿を追っていくと、何とメネラオス=グリーソン王の若き王妃であるヘレンことダイアン・クルーガーの寝室にシケ込むではないか。イヤ〜な予感がしてくるヘクトル=バナ王子。

 案の定、彼のイヤな予感は的中。何とパリス=ブルーム王子とヘレン=クルーガーの二人は、一目見てお互い惹かれ合う仲になっていた。そもそもヘレンとしてはメネラオス=グリーソン王など、加齢臭プンプンのオヤジでしかない。若い娘が何も知らぬままに嫁がされただけに、ここで恋の火がついたら止まらない。止まらないのはパリス=ブルーム王子とて同じ事だ。それにしても、昨日まで戦っていた相手国の王妃が相手とは…。

 翌朝、トロイの代表団は無事船に乗って出帆。洋上を順調に進み、母国トロイを目指すのみ…となったところで、突然パリス=ブルーム王子が兄のヘクトル=バナ王子におずおずと切り出す。「怒らないで味方になってくれると誓ってくれる?」

 こいつが下目使いにこの文句を言う時には、ろくな事があったためしがない。イヤな予感が再び蘇って、パリス=ブルーム王子に連れられるまま船倉へと降りていくと…そこにはスパルタ王妃のヘレン=クルーガーがいるではないか!

 さすがにヘクトル=バナ王子はバカじゃない。これが何を引き起こすか、イヤというほど分かっていた。「オマエ、両国が和平を結ぶまでに、一体どれくらい犠牲を払ったか分かってるのか?」

 だがパリス=ブルーム王子は、王妃に惚れたの一点張り。ヘクトル=バナ王子は船を戻して彼女をスパルタに帰そうとするが、パリス=ブルーム王子はそれなら僕もスパルタに行く…と譲らない。そんなこんなでバタバタしているうちに、ヘクトル=バナ王子も今さら何をやってもムダと気が付いた。

 もはや手遅れ。

 その通り。スパルタでは、王妃の逃避行にメネラオス=グリーソン王が頭から湯気を立てて怒り心頭。キレたメネラオス=グリーソン王は、兄のアガメムノン=コックス王の元へと駆けつけた。「トロイに復讐する、力を貸してくれ!」

 これに、さも弟に同情するかのように賛同したアガメムノン=コックス王だが、彼の本音はまた別にあった。元々アガメムノン=コックス王は、何だかんだと言ってトロイの国を攻める口実を探していた。トロイさえ制圧すれば、夢のギリシャ平定だ。その格好の口実をつくってくれた…とばかり、遁走したヘレン=クルーガーに感謝感激のアガメムノン=コックス王だった。

 こうなれば総力戦だ。ギリシャの全軍を挙げてトロイを責めねばならぬ!

 その頃、帰国した両王子を迎えたトロイの王室。出迎えたプリアモス王ことピーター・オトゥールは、隣りにスパルタ王妃ヘレン=クルーガーがいる事に愕然。だが、いつになく本気のパリス=ブルーム王子の表情に、今さらヘレン=クルーガーを戻す訳にもいかないと悟る。そもそも、戻せたとしても遅すぎるのだ。それでもトロイには鉄壁の城壁がある。この城塞さえあれば、どんな戦いにも耐え抜けるはず…。国王付きの神官たちは、みな調子のいい事ばかり言う。それも太陽神がついてるとか、まったく根拠のない空元気だ。戦いの才に抜きんでた王子ヘクトル=バナはそんなオベンチャラに耐えかね、そんな甘い訳にはいかないと辛口の発言。それでもプリアモス=オトゥール王は神官の言うことに一目置いていた。

 そんばヘクトル=バナ王子の予想通り、アガメムノン=コックス王はこのトロイ攻略に万全の体制で望もうとしていた。まずはギリシャ全軍の派遣はもちろんだ。さらに側近は、「戦士の中の戦士」アキレス=ブラピを起用するように助言する。これにはアキレス=ブラピをよく思わないアガメムノン=コックスは渋りに渋るが、トロイの城壁と世界一の射的隊は侮れない。ここは満を持してアキレス=ブラピの出馬を仰ぐべきと割り切った。

 かくしてアキレス=ブラピの説得には、彼が気を許す数少ない知人の一人…イタケ国のオデッセウス王ことショーン・ビーンが派遣される。アキレス=ブラピはまだ若い従兄弟パトロクロスに剣の稽古を付けていたところ。アガメムノン=コックス王の派兵と聞いて、ハナっから行く気などないアキレス=ブラピだが、親しいオデッセウス=ビーン王が説得に来たとなるとシカトも出来ない。ましてこの戦いは史上最大の戦い…そこでの誉れは未来永劫まで語り継がれるはず…と聞けば、それなりに野心もあるアキレス=ブラピとしても黙ってはいられない。彼もまた従兄弟パトロクロスを連れて、トロイ戦へと駆けつけることになった。

 だが、それを喜ばない人物が一人…それはアキレス=ブラピの母親、テティスことジュリー・クリスティーだ。彼女には未来を予見する力があり、それゆえに息子アキレス=ブラピに再考を促すのだ。この戦いに行かなければ長生きも出来、子どもや孫も出来るが、いずれその名は忘れられるだろう。この戦いに行けば、オマエの名は永久に語られる事になる。ただし、生きてこの地に帰っては来れない…。

 それでも永遠の名声は諦めがたい誘惑だったか、アキレス=ブラピは戦場へと旅だった。

 さてアガメムノン=コックス王が全ギリシャから集めた軍勢は、おびただしい数の軍船に乗ってトロイの海岸へと向かっていた。ある朝、トロイの斥候がそれを発見して鐘を鳴らす。異変に気づいたヘクトル=バナ王子が高台の自宅の窓から海を望むと、そこには水平線すべてを覆い尽くす敵軍船の姿があった。

 ついに来た!

 中でも他の軍船に先んじて海岸にたどり着いたのが、アキレス=ブラピの軍勢を乗せた船だ。同乗していた若い従兄弟パトロクロスは、初めての実戦の場にワクワク。配下の人間はアガメムノン=コックス王の指示を待ったらどうか…と聞いてくるが、アキレス=ブラピは知ったこっちゃない。王の命令など聞く耳持たぬとばかり、矢が雨あられと降り注ぐ海岸をどんどんと進軍していった。ただし従兄弟パトロクロスにはお留守番を言いつけたのは言うまでもない。いくらブーブー言おうが、ど素人にウロつかれては戦争にならないのだ。

 さてアキレス=ブラピの作戦は一見ムチャなようで、ちゃんと戦果を挙げちゃうから分からない。アキレス=ブラピ隊は海岸にあるアポロ神殿に攻め込み、アッと言う間に制圧。手下に掠奪の限りを尽くさせた。そんなアキレス=ブラピに一の子分は、おずおずと自重を促す。アポロ神はトロイの守り神…モスクを爆撃したアメリカ軍じゃあるまいし、下手な事をしない方がいいんじゃないですか?

 だが、そう言われるとさらにムチャしたくなるのがアキレス=ブラピの悪いところ。部下の言葉が終わるか終わらないかのうちに、神殿のアポロ像の首をはねてしまう。

 さて、そんなアポロ神殿にヘクトル=バナ王子の一隊が駆けつけたのは間もなくの事。慌てて神殿内に入っていく隊員たちだが、忍び込んでいたアキレス=ブラピの軍勢によって次々やられる。結局ヘクトル=バナ王子一人だけ生き残ってアキレス=ブラピと対峙。お互い初めての顔合わせに、二人は宿命的なものを感じずにはいられなかった。だがアキレス=ブラピは勝負を先に預けて、その場はヘクトル=バナ王子を黙って帰してやる。

 さてこうして海岸は制圧。アガメムノン=コックス王の圧倒的な軍勢は、砂浜にテントを張って野営を始めた。そんな中、アキレス=ブラピは部下からアポロ神殿での「略奪品」を渡される。それは神殿を守る巫女のプリセウスことローズ・バーンだ。アキレス=ブラピは彼女を一目見て、王家の出であると見て取った。それもそのはず。プリセウス=バーンはヘクトル=バナ王子、パリス=ブルーム王子の従姉妹にあたる娘だった。だからこんな状況でも誇り高く、アキレス=ブラピにまったく媚びへつらったりもしなかった。そんな鼻っ柱の強さが、かえってアキレス=ブラピの心を捕らえる。

 だが好事魔多し。あまりアキレス=ブラピがアガメムノン=コックス王をナメた態度に出たのがマズかったのか。このプリセウス=バーンをアガメムノン=コックス王にさらわれ、手も足も出なくなるアキレス=ブラピ。逆にアキレス=ブラピは、なぜ自分がこの女に惹かれるのか不思議な気持ちがしてならなかった。

 ともかくこのアガメムノン=コックス王の仕打ちに怒ったアキレス=ブラピは、翌日の戦闘への参加を拒んだ。

 さてプリアモス=オトゥール王を囲んでの会議では、相変わらず側近の神官が調子のいい事ばりブチかます。そんな神風頼みのいいかげんな言い草にヘクトル=バナ王子もいささかキレた。「敵は神殿を辱めたが、何ら天罰は下ってないじゃないか!」

 大いに紛糾する会議の果て、さすがに居たたまれなくなったパリス=ブルーム王子は自らの「自己責任」を痛感。自分がヘレン=クルーガーの夫だったメネラオス=グリーソン王とサシの果たし合いをすることで、何とか戦いを収めようと言い出す。これはハッキリ言って正論なだけに、ヘクトル=バナ王子も止めようがなかった。

 翌日はヘクトル=バナ王子率いるトロイの軍勢は、城壁の外側を固めて敵軍勢を迎え討つ体制を整えた。すると、海岸からやって来るやって来る。ゾロゾロゾロゾロと夏場のゴキブリみたいにウジャウジャ出てくるアガメムノン=コックスの軍勢。その様子を、高台からアキレス=ブラピたちは見ていた。

 最初は両者にらみ合いの真っ直中、ヘクトル=バナ王子とパリス=ブルーム王子の前に、アガメムノン=コックス王とメネラオス=グリーソン王がやって来て直談判。アガメムノン=コックス王たちは圧倒的多数をいいことに、ヘレン=クルーガーの返還、パリス=ブルーム王子の処罰、トロイの服従を一方的に「小泉自民党」方式で通告してきた。そんな条件はのめるわけもない。そこへパリス=ブルーム王子から「果たし合い」提案が出た。元々実戦経験のないひ弱なパリス=ブルーム王子。女房を取られたメネラオス=グリーソン王とすれば、この若造を自分でブチ殺したくてウズウズ。かくしてこの「果たし合い」案が受け入れられ、パリス=ブルーム王子とメネラオス=グリーソン王の一騎打ちが行われる事になった。

 だが案の定、実戦経験の乏しさが災いする。パリス=ブルーム王子は劣勢に終始して、ついには逃げの一手で兄ヘクトル=バナ王子に泣きを入れる始末。自分で言い出した「果たし合い」なのにこの情けなさ。兄ヘクトル=バナ王子が「毅然としろ!」と言っても、まるっきり自分で何とかしようとはしない。そこへメネラオス=グリーソン王が襲いかかってくるから、行きがかり上ヘクトル=バナ王子は自分が手を下さざるを得ない。彼は一突きでメネラオス=グリーソン王を仕留めてしまう。

 当然これにはアガメムノン=コックス王も激怒。たちまち巨大な軍勢が動き出した。慌てたヘクトル=バナ王子たちトロイ軍も臨戦態勢に入る。だが迎え討つ軍勢はあまりに多すぎる。どう考えても多勢に無勢だ。

 だが高台から眺めていたアキレス=ブラピは冷静に見つめていた。「近すぎる!」

 トロイ軍とアガメムノン=コックス王率いるギリシャ全軍が前線で激突。その瞬間、城壁に控えていた射手隊が一気に矢を放った。アッという間にアガメムノン=コックス王の軍勢がバタバタと倒れる。雲霞のごとく降り注ぐトロイ軍からの矢を、アガメムノン=コックス王軍はまったく防ぐ術がなかった。それにも構わず突撃指令が飛ぶが、進軍したアガメムノン=コックス王の軍勢は、次から次へとトロイ軍の矢に倒れていく。さすがにあまりの犠牲の大きさに、アガメムノン=コックス王も考え直さずにはいられなかった。

 「撤退だ!」

 こうなると弱り目に祟り目。追い打ちをかけるトロイ軍に、アガメムノン=コックス王の軍勢は一方的にやられっぱなしだ。しかも自分たちがアガメムノン=コックス王の軍勢の矢の射程距離に入ったと思いきや、サッと引き返す潔さ。さすがにヘクトル=バナ王子は軍師として天晴れ。対するアガメムノン=コックス王は圧倒的多数を持っていたのにボロボロというテイタラクだ。軍の士気も思いっきり下がる。

 こうなると何とかアキレス=ブラピを復帰させて士気を高めなければ…。だがアガメムノン=コックス王はどうもそんな気にはなれない。例の掠奪した女プリセウス=バーンも、下っ端の兵士にやってしまった。

 そんな事情で今にも兵士たちに陵辱されようとしていたプリセウス=バーンだが、危ないところをアキレス=ブラピに救われる。こうして自分のテントにプリセウス=バーンを連れ帰るアキレス=ブラピは、その夜彼女と結ばれるのだった。

 一方、アガメムノン=コックス王の軍勢の退却を見て調子に乗った神官たちは、すっかりイケイケになってプリアモス=オトゥール王にさらなる進軍を主張する。これに再びヘクトル=バナ王子は難色を示すが、どうしてもプリアモス=オトゥール王は神官の言うことを信じてしまうのだった。

 かくして翌日は一転海岸を攻撃するヘクトル=バナ王子の軍。だがアキレス=ブラピには戦いに加わる気はなかった。若い従兄弟パトロクロスはやる気のないアキレス=ブラピにまたしてもドッチラケだ。

 さて、士気が落ち込むばかりのアガメムノン=コックス王の軍勢は、もはや防戦一方。どんどん押されまくりのジリ貧状態。

 ところがそんな戦いの渦中に、甲冑に身を固めたアキレス=ブラピと彼の軍勢がやって来たから戦場は騒然だ。

 たちまちアガメムノン=コックス王軍の士気は盛り返す。もちろん戦いの中心がアキレス=ブラピとヘクトル=バナ王子の一騎打ちなのは言うまでもない。手に汗握る熱戦の末、ヘクトル=バナ王子の剣はアキレス=ブラピのノド元を捕らえた!

 やった!

 ヘクトル=バナ王子がついにアキレス=ブラピを倒したと喜んだのもつかの間。そのカブトをはずしてみると、実は彼の従兄弟パトロクロスがアキレス=ブラピのフリをしていただけではないか。その幼ささえ残す顔を見て、ヘクトル=バナ王子は愕然とせざるを得ない。無論彼とてもこんな若者を殺したくはなかった。「何て事だ…」

 すっかりシラけた戦場は、その場でお開き。もちろん運ばれて来た従兄弟パトロクロスの遺体を見て、アキレス=ブラピが逆上したのは言うまでもない。もうそうなると部下が何を言おうが、愛するプリセウス=バーンが何を言おうが聞く耳を持たない。完全に復讐の鬼と化して、打倒ヘクトル=バナ王子に燃えるアキレス=ブラピだった。

 喜んでいるのはアガメムノン=コックス王ただ一人。「あの若者のおかげで、わが軍は救われたわい…」

 かくして翌朝早く、アキレス=ブラピは一人でトロイの城壁の前にやって来た。もちろん怒り心頭で、いつになく血に飢えた表情だった。

 「王子はいるか? 王子を出せ!」

 

 

 次ページへつづく

 To Be Continued...

 


 

 

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