「クライモリ」

  Wrong Turn

 (2004/10/18)


  

見る前の予想

 「クライモリ」である(笑)。

 この人をナメきったインチキくさいタイトル。やっぱり東宝東和だ(笑)。最近は元気もなくなってすっかりおとなしくなったが、かつてはアメリカかイタリアあたりの二束三文のホラー映画を買いあさり、あの手この手で「上げ底」映画にして売り出した。聞いたことのない音響効果「サーカム・サウンド」で売った「エクソシスト」のバッタもんイタリア映画「デアボリカ」(1973)とか、何の意味もない映像システム「ビジュラマ」を前面に立てた「ファンタズム」(1979)とか…東和のホラー映画と来ればこんなイカサマ映画ばっかり(「サーカム・サウンド」は一応普通の4チャンネル・ステレオだったらしいが)。題名がカタカナで書いてあったからと言って、原題が本当にそれである保証はない。原題風に書いてある英語タイトルさえ、デッチ上げって事が珍しくなかった。今考えれば笑っちゃう事だけどね。

 ただ、最近になって当時の宣伝マンたちが「武勇伝」を自慢げに披露しているけど、アンタらそりゃ違うだろう…って思うよ。ダマされた観客が好意的に面白がって言ってくれる事はあっても、ダマした方が得意になって開き直るってのはおかしいんじゃないか。少しは申し訳なく思うのがスジってもんだろう。分ってものをわきまえろよ分ってものを。ヤボは承知の上であえて言わせてもらうけど、そこらへんは勘違いしないで欲しい。あんまり客をナメるなよ。

 ただ、やっぱり当時の事を考えるとどうしても笑ってしまう。実はそのイカサマってやつも、どれも観客から見てミエミエなものだったからね。観客も半分は察していながらダマされていたフシもあるのだ。そう考えれば、まぁ罪もない映画たちではあった。

 そんな東宝東和から、久々にやって来たホラー映画「クライモリ」。出てる連中の名も知らない、つくったスタッフの名も聞いた事がない。チラシには「スティーブン・キング」だの「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」だのって書いてあるけど、よくよく読んでみるとスティーブン・キングはこの映画を2002年から2003年の年間ベストワン・ムービーに選んだだけ、「ブレア〜」はこの映画と同じ映画会社から資本を得ているだけ(サミット・エンターテインメント)…というお粗末さ。スタッフでも何でもない。

 唯一のビッグネームはスタン・ウィンストン…有名な特殊メイク・アーティストの彼が、何と今回はどうした事かプロデュースに回っている。これが興味と言えば興味か。

 ともかく若い連中が森に迷い込んで怖い目に遭う…ってお話らしい。何だかそれってありがちだけど、だからこそワクワクもしてくるよね。

 劇場は東京でもたったの一館。それも今まで速攻でビデオ・リリースされるような映画ばかり公開して来たところだ。しかも雨漏りしている(笑)! ならば、映画に対するこちらの心構えも十分ではないか。

 どんな映画が出てきても大丈夫。相手にとって不足はないぜ(笑)。

 

あらすじ

 ここはウエスト・ヴァージニアの緑深い未開の原生林。その中にあるちょっとした岩場で、フリークライミングしている男女がいた。男の方はスイスイと岸壁を上って一息入れるが、女の方はなかなか上れない。「上に上げて」と男に叫んでも、崖の上からは何の反応もない。ところが…。

 いきなり崖から男が顔を出す。だが様子がどうもおかしい。何と男から血がしたたって来るではないか。異変に気づいた女は慌てるが、今度は女のロープが力一杯引っ張られる。崖の上に何者かがいるのだ。

 慌てた女はロープを切るが、バランスを崩して崖下に転落。それでも何とか這って逃げようとするが、クルマまでもう少しのところで何者かに捕らえられる。

 引きずられて行く女…果たして彼女の運命は…?

 ウエスト・ヴァージニアに広がる原生林では、昔から数多くの人々が行方不明になっていた。満足な地図さえないと言われる広大な森ゆえに、それも無理のないところかもしれない。そんな森林地帯を横断するハイウェイを、今日も一台のクルマが猛スピードで走っている。

 それは医者のクリス(デズモンド・ハリントン)が運転するクルマだった。クリスは急ぎの用事があった。だから出来るだけ早く目的地に着きたいと焦っていたのだ。ところが行く手は突然交通止め。何でも化学物質を乗せたトラックが横転して、その処理に時間がかかると言う。これにはクリスもマイッタ。とても待っていられない。

 予定より遅くなる…と携帯で電話を入れても、電波が弱くてすぐに切れてしまった。困ったクリスが見つけたのは、汚い廃屋のようなガソリンスタンドだ。そこに垢まみれで歯もなくなった無教養そうな汚いオヤジが、じっと暇そうに一人で座っている。

 公衆電話を借りて連絡しようにも電話は壊れていた。他に電話はないのか…と汚いオヤジに聞いても、「どこにもない」の一点張り。どうにもならない。ふとその場に貼ってある地図を見ると、何やら近道らしき道があるらしい。

 「ベア・マウンテン街道」…それは舗装されてない道だとオヤジは言う。だが一刻を争うクリスはその道に賭けてみることにした。クリスはオヤジに声をかけて、その場を後にする。「お世話さま!」

 「ケッ、テメエの心配でもしな!」

 汚いオヤジのそんな捨てぜりふは、一体何を意味しているのか…?

 やがてクリスは森の中の脇道、「ベア・マウンテン街道」へと入っていく。ところがこの細道…何とも殺風景で怪しげな道だ。おまけにCDプレーヤーまで故障してしまう。音楽なしにこの不気味な道は走れない…と、クリスは運転しながらガチャガチャいじっているうちに…。

 バ〜〜〜〜〜ン!

 道の真ん中に停まっていたワゴン車に思い切り激突!。クリスのクルマはその場でエンコした。な、な、な、なんだこのクルマは…?

 すると、このワゴン車に乗っていた連中が飛び出してきた。それは合計5人の男女たち…ジェシー(エリザ・デュシェック)、カーリー(エマニュエル・シューキー)、スコット(ジェレミー・シスト)、エバン(ケビン・ゼガーズ)、フランシーヌ(リンディ・ブース)…だった。彼らはキャンプに出かけたつもりが道に迷い、ここでタイヤがパンクして立ち往生していたのだ。そこに偶然、クリスのクルマが通りかかったというわけ。

 奇妙な事に、タイヤのパンクはどうも故意に起こされたもののようだ。道の真ん中に短く切られた有刺鉄線が置かれていたのだ。ともかくどこかで連絡を取らねばなるまい。かくして一同はエバンとフランシーヌの二人を留守番に、道の奥深くへと歩いていく。

 婚約中のスコットとカーリーがイチャつきまくるのを横目に、クリスとジェシーはどんどん歩いていく。すると、途中で焚き火の跡に遭遇。確かにここには誰かいるらしい…。

 一方留守番組のエバンとフランシーヌは、みんながいないのをいい事にエッチに励む。さらにフランシーヌは勝手にクリスのクルマに乗り込んで、CDを物色したりやりたい放題。ところが突然エバンの姿が見えなくなった。どうしたのか…さすがに様子がおかしいと周囲を見回すフランシーヌ。道からちょっとはずれた森の中に、エバンの履いていた靴が落ちているではないか。

 さらに地面にはちぎれた…「耳」が!

 悲鳴を上げるフランシーヌが後ろから現れた何者かに襲われたのは、それからまもなくの事だった。

 その頃、道を進んでいった4人は、行く手にオンボロの家を見つける。

 いかにもヤバそうな雰囲気。いくら呼んでも答えが返って来ない。スコットとジェシーはイヤな予感を感じて、この家から引き返そうと言い出す。「何だかこういう映画って見た事ないか?」

 だがクリスはどうしても連絡を取りたがっていたし、カーリーもトイレに入りたいと言い出す。かくして彼らは、よせばいいのに家の中へと入っていく事になった。

 家の中は廃屋同然の汚さだが、それでも人が住んでいる気配があった。奇妙なのは、クルマのキーやらサングラスやらが、店を開けそうなほど山のように置いてあること。さらに冷蔵庫には肉片が瓶詰めにされて保存されているし、バスタブには…。

 何と、人間の手首が浮いている!

 「早く逃げましょ!」

 だが彼らは気づくのが遅すぎた。かなり年代物のトラックが、この家めざして走ってくるではないか。真っ正面から逃げる訳はいかないし、裏口もない。さぁ、どうする?

 やがて家の中に、3人の人物が入ってくる。…いや、果たしてこれを「人物」と言っていいのかどうか。顔は変形し手の指も欠けている。まるでこの世のものとは思えない形相…。まさに「異形の者」としか言いようのない3人の人物が、何やら荷物を持って戻ってきた。

 さて、家に閉じこめられた4人はどこにいるかと言えば…クリスとジェシー何とベッドの下に隠れ、スコットとカーリーは隣の部屋に籠もっていた。そんな彼らは、すぐに自分たちが陥ったヤバい状況に気づく。

 3人の「異形」たちが運んできたモノ…それはフランシーヌの血まみれの死体ではないか!

 しかも連中はノコギリを持ち出し、嬉々として死体の手足を切り落とし始めたではないか。ベッドの下のジェシーはもう悲鳴を上げそうになる寸前。それでもとにかくグッと堪える事およそ30分…か1時間か、ともかく「異形」たちは腹いっぱいになってグースカ居眠りを始めた。

 この時を逃がすものか…とベッド下から這い出したクリスは、ジェシーやスコット、カーリーともども「異形」たちの家から逃げ出す。ところがクリスが立ち去るちょうどその時、横になっていた「異形」の一人と目が合ったではないか。ヤツは目を覚ましていた!

 逃げろ逃げろ逃げろッ!

 慌てて崖をよじ登り逃げ出す4人。3人の「異形」たちは家を飛び出すと、オンボロトラックに乗りこんで走っていく。高台からさらに空き地へとやって来た4人は、そこでとんでもない光景に出っくわして唖然とした。

 そこはクルマの墓場だ。

 乗用車、ワゴン車…さまざまな自動車が捨ててある空き地。それらのクルマがあの「異形」たちの犠牲者が乗っていたものである事は、もはや疑いもないだろう。これだけのクルマが捨ててあるということは、これは1年や2年の間のことではあるまい。こんな残虐行為が、今まで誰にも知られずに続いていたのだ。

 ところがそんな「クルマの墓場」に、あの「異形」たちのトラックがやって来る。

 このままではやられるだけだ。そして、無事にこの森から逃げきるには、どうしたって「足」が必要だ。ならば「異形」たちのトラックを奪うより他あるまい。クリスはここで勇気を奮って提案した。「オレがオトリになるからトラックを奪え!」

 そしてクリスは、いきなり奇声を発すると物陰から飛び出した。「この化け物が! ここまで来てみろ!」

 ところが「異形」たちが放った弾丸が、クリスの足を打ち抜いてしまう。辛くも森に逃げ込んだクリスだが、このままでは「異形」たちにやられてしまう。

 マズイと察したスコットは、今度は自分がオトリになった。「この南部の田舎野郎! こっちだこっちだ!」

 こうしてスコットが「異形」たちを引きつけているうちに、ジェシーとカーリーはクリスを助けてトラックへと駆け寄る。ドアを開けたらいきなりエバンの死体が飛び出すというビックリもあったが、ともかく3人はトラックを乗っ取ってその場を逃げ出した。あとはオトリになったスコットを乗せて、この森を抜けるだけ…。

 ところがスコットは、婚約者のカーリーが見ている前で「異形」に殺された

 かくなる上は仕方がない。残った3人はトラックで逃げられるだけ逃げた。ところがかなり走ったところで道は行き止まり。しかもタイヤがぬかるみに取られて動きがとれない。仕方なく3人はトラックを捨てて歩き出す。陽も暮れて来たのに、森からはまだ抜け出せない。暗澹とした気分に襲われていく3人ではあった。

 ところが…そんな3人の目の前に、森からそそり立った監視塔が!

 ハシゴを上って見晴台にやって来る一同。そこから眺めても、周囲は見渡す限りの森だ。しかもどんどん夕闇が迫ってくる。医療セットを発見してクリスの足の手当が出来ただけでも良かった…と思いきや、何ともっと大きい収穫があったではないか。

 通信機だ!

 「緊急事態、緊急事態。助けてください!」

 何度も何度も連絡を入れるが、まるでなしのつぶて。返事は返ってこない。しかも下を見てみたら、タイマツを持った「異形」たちが塔をめざしてやって来るではないか。何と言うことだ…。

 それでも鳴りを潜めてじっとしていると、「異形」たちは塔をやり過ごして行ってくれるみたいだ。「助かった…」ホッとしたのもつかの間、こんな時に限って通信機がいきなり耳障りな音を立てるではないか

 「何を言ってるのかよく聞こえない。そちらは現在どこにいる?」

 どうも助けが来てくれそうなのは嬉しいが、何より眼下の「異形」たちに居所がバレたのがマズイ。入口は塞いだから入ってこれないものの、「異形」たちは塔に火をつけてしまった。下からは炎が迫ってくる。どうすればいい?

 スコットが殺されてから愚痴しか出ないカーリーは、この場でも思いっ切りネガティブな発想を前面に出した。覚悟して監視塔の窓から飛び降りようというのだ。だが今回ばかりはクリスもこれに賛成した。「その通りだ、それしかない!」

 監視塔から飛び降りて、何とか周囲の高い木の枝にしがみつく。それで何とか助かるかもしれない。早速クリス、カーリー、ジェシーは飛び降りて、手近の枝振りのいい木に何とかしがみついた。「飛び降りるところを見つからなかった?」

 いや、そんなにヤツらは甘くない。早速「異形」たちは、3人が飛び移った木をよじ登り始めた。このままでは捕まる。3人は木から木へ、枝から枝へと飛び移り、何とかその場を逃げ出そうとする。

 だが今度は、逃げ損なって出足が遅れたカーリーが犠牲になった。振り下ろされたオノが、彼女の頭を胴体から切り離してしまう。いよいよ生き残ったのは、クリスとジェシーの二人だけ…。

 そんな折りもおり、クリスは木の枝で何かをやらかそうと企んだ。そう、クリスもジェシーももうこんな状態には我慢出来ない。いつまでもやられっぱなしでいられるか…。

 こうなりゃこっちが反撃に出るしかない!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後は映画を見てから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見た後での感想

 それにしても、アメリカの田舎ってホントに怖いところみたいだよね。僕は映画で、何度そんなアメリカの田舎の怖さを見たか分からない。

 「テキサス・チェーンソー」(2003)としてリメイクされたトビー・フーパーの「悪魔のいけにえ」(1974)とか、同じトビー・フーパーの「悪魔の沼」(1976)とか、スピルバーグの激突!(1972)とか、ピーター・フォンダとウォーレン・オーツ主演の「悪魔の追跡」(1975)とか…ってあたりの怖い田舎映画の系譜については、先日アップしたハイウェイマン(2003)の感想文をご覧いたたきたい。

 実はアメリカの田舎…と言っても、抜きんでて怖くて異常なところとして扱われているのが「南部」の田舎なんだよね(笑)。何しろだだっ広い荒野とか砂漠っていうんじゃなくて、鬱蒼と森が茂っていたり水浸しの湿地帯があったり、何ともイヤ〜な雰囲気が漂っているのが「南部」。KKKとかの本拠地でもあるし、他にも悪魔信仰とか邪教集団がいそう。前述した「アメリカの田舎」映画も、おそらくは「南部」モノが圧倒的に多いんじゃないか。怖い映画ではないがリチャード・ギアとキム・ベイシンガー主演の「ノー・マーシイ/非情の愛」(1986)では、南部にフランス語しか話せない住民が存在する事が描かれていた。これって元々南部がフランスの植民地だったかららしいんだけど、僕ら日本人にはまるっきり想像を絶する場所ではあるよね。

 劇中、「異形」たちの住処にたまたま辿り着いてしまった主人公たちは、この家に入るべきか否かで迷う。その時、彼らの一人が語るセリフが秀逸だ。「なぁ、『脱出』って映画見た事ないか?

 日本版字幕ではこの映画題名は「サランドラ」と訳されていたが、「サランドラ」(1977)は東和がかつて公開したバッタもんホラー映画(笑)。アメリカでこの映画の題名出したって誰も知らないだろうし、そもそも英語の現題名そのものが全然「サランドラ」なんてもんじゃない。だから、一体何人のヤツがこれに気づくか知らないけど…これって字幕でちょっと遊んだ「楽屋落ち」の趣向なんだよね。

 実際のところこのセリフでは、映画のタイトルを「Deliverance」と発音している。すなわちバート・レイノルズ主演、ジョン・ブアマン監督の「脱出」(1972)のことだ。

 この「脱出」、南部ジョージア州の田舎の川下りに出かけた都会もんたちが、ちょっとした事で地元住人の怒りを買ってしまい、地獄の恐ろしさを経験することになる怖〜い映画。「エクスカリバー」(1981)のブアマンならではのコッテリ感覚で、イヤ〜な気分を満喫できる究極の「南部ど田舎」映画だ。

 また「南部ど田舎映画」と言えば、日本ではテレビ放映だけで劇場公開はされなかった作品だが、ウォルター・ヒルの「ブラボー小隊/恐怖の脱出」(1981)という気色悪い映画もあった。これは「州兵」としての訓練を受けていた連中が甘っチョロい気分で南部の湖沼地方に迷い込む話。例によって彼らはやっぱり地元の連中の怒りを買い、どんどん危機的状況に追いつめられていく。

 そういや、そもそも冒頭に引き合いに出した「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(1999)の舞台であるメリーランド州だって、地図で見たらもうちょっとで南部スレスレって位置ではあるまいか。魔女が住んでいてもおかしくない土地柄だ。それからミッキー・ローク主演でアラン・パーカー監督の「エンゼル・ハート」(1987)も、舞台は確かニュー・オルリーンズではなかったっけ? そうそう、もう一つ挙げればロジャー・コーマン製作のゲテモノ怪獣映画吸血怪獣ヒルゴンの猛襲(1959)も南部の湖沼地帯だ。

 悪魔が跋扈するところ、沼地の怪物が暗躍するところ…とくれば、そりゃもちろん間違いなく「南部」に決まってる(笑)! KKKもいれば英語が通じない奴もいる。でっかい扇風機みたいなプロペラの付いたボートが沼を走っていたり、歯が一本もない汚ったねえ服装のオヤジが銃持ってウロついていたりする…。こんな感じで「南部」っていう場所は、何がいるか分からないところ、文明やら時代の流れから取り残されたところ…ってイメージがあるんだよね。

 今回の映画だって、イントロダクションの挿話に続いて出てきたオープニング・クレジットのタイトルバック映像を見ていると、いきなり「近親婚で奇形児」とか「精神が粗暴で異常」みたいなヤバい新聞記事が出てきたりする。そういう事がありそうで、そんな連中がいそうな場所と思われているみたいなんだよね。

 でも、これってさすがに「南部」の人たちは怒るんじゃないだろうか? まずマトモな人間のいるとこじゃないみたいだもんね。正直言ってこの僕だって、地球広しと言えどもアメリカ南部にだけは死んでも行きたくない(笑)。申し訳ないんだけどそんな映画ばっかりだからね、「南部」って言うと(笑)。

 マトモな映画と言えば最近じゃ、ジョン・キューザックら豪華キャストのジョン・グリシャム法廷劇ニューオーリンズ・トライアル(2003)もあるけど、あれも出てくる奴出てくる奴みんな腹にイチモツの映画だったからね。やっぱりここの連中はどこか怖い気がしちゃう(笑)。

 さて冗談はさておき、肝心の映画はどうか…というと、実はこの手のジャンル映画のお手本というか、「典型中の典型」みたいな「絵に描いたようなお約束」映画だった。

 都会からいかにも軽そうな連中がウロウロとど田舎に迷い込む。そこで得体の知れない連中にいたぶり尽くされるという趣向だ。

 こいつらが揃いも揃って「殺されるために生まれてきた」ような連中揃い。まずは殺される順にフザケたヤツというのもお約束で、冒頭のフリークライミングの二人を除いたら、最初に殺されるカップルなんてまさにその典型。頭もケツも軽そうで、人けがなくなるとすぐにセックスしたがる盛りのついた脳タリン。ヘソ出して肩出していかにもパッパラパーな女が、人のクルマに勝手に乗り込んでCDをポイポイと投げ捨てるあたりなんざ、「こいつ殺されるしかねえな」と思わずにいられない。

 どう考えても頭の血の巡りが悪そうな連中というのもお約束で、「異形」たちの家を一目見たらヤバイと気づきそうなものなのに、こいつらは電話を借りるだのトイレを借りるだのと上がり込む。上がり込む事の是非も問題なら、この家に電話がありそうなものかトイレがあっても使えそうなものか、ちょっと考えれば分かりそうなものだろう。そこをまたヤバくなるまでグズグズしていて墓穴を掘ってしまう。ホントにお約束のキャラクター、お約束の脚本だ。

 だから、実はこいつらがやられても…全然怖くない(笑)

 映画の中盤でずっとグチと弱音を吐き続けて足手まといにしかなってない女あたりになると、見ているこっちもイライラしてくるからね。オノでザックリ殺された瞬間に思わず胸がスッキリするほど。「よくやった、それでいいんだ!」と思わず膝を打ち、スクリーンに声をかけたくなること請け合い(笑)。

 役者的にもどいつもこいつも「一山いくら」な連中ばかり。最後まで生き残るデズモンド・ハリントンという男もいつ悪役に転ぶか分からないご面相だし、エリザ・デュシックって女も垂れ目が何となく情けない。やられちゃっても可哀相とかもったいないとか、まったく思えないような連中だから笑ってしまう。

 それなのに…他の連中ならば殺されて家に連れて来られるのに、なぜかこの最後に残った女だけは生きたまま連れてこられる。このへんのご都合主義もたまらない(笑)。では服でもひんむかれて犯されるかと思えば、殺人鬼たちはそうする気配もない。結構こいつらってツラの割には慎み深いではないか(笑)。

 ハッキリ言ってユルユルな映画だし定石そのものなんだが、ちゃんとあの手この手いろいろやってはくれるので退屈はしない。この映画ってそんな映画だ。何故にスティーブン・キングが年間ベストに選んだか理解に苦しむけどね(笑)。

 監督のロブ・シュミットって人も脚本のアラン・B・マッケルロイって人も、あいにくと僕はよく知らない。で、特殊メイクの世界では第一人者のはずのスタン・ウィンストンが、一体何でこの映画なんかプロデュースしたのかが分からない(笑)。そんなにノリノリになる企画にも思えないけどね。っていうか、この映画と同じストーリーの映画って、きっと何百本もあるんじゃないか(笑)。

 ただ救いというかいいところというか、この映画って見ていて気持ちが荒んでくるようなショボさやらチープさはなぜか感じない。

 そして奇妙な事に、どこか「品の良さ」みたいなものを感じる

 「近親婚の結果生まれた異常な奇形人間」たちが、「アメリカ南部の得体の知れない森」で、迷い込んできた「頭の悪い尻軽男女」たちを次々と「残酷な方法でブチ殺す」…なんて物語に「品の良さ」もないものだが(笑)、本当の事だから仕方がない。だから何となく見ていて悪い気はしないんだね。

 あ、そうそう。これって「南部」の話って事になってるけど、実はカナダのオンタリオ州で撮影されているらしい。元々がカナダ資本とドイツ資本の入った映画らしいんだが…。

 それってちょっと南部に対してヒドくはないかい(笑)。

 

見た後の付け足し

 というわけで、あまり怖さも感じられないこの映画。実は正直な話、僕はキリキリと神経が痛めつけられるような恐怖映画や、ギトギトで生理的に痛めつけられる残虐映画はどうしても苦手だ。そんな僕には、この映画ってちょうどよいユルさ加減、ヌルさ加減でもあった。そこに例の「品の良さ」も手伝って…。

 安心して見ていられる…ホラー映画としてこの言葉はホメてる事になってないだろうが(笑)、本当に安心して見ていられる映画なんだよね。

 それでいて、舞台は何が起きるか分からない「南部ど田舎」。得体の知れない深い森の中。いかにもな連中が、いかにもな事件に遭遇する。恐ろしい敵も、問答無用に殺しちゃっても後腐れなさそうな連中だ(笑)。

 何一つビックリする事も起きないし、ユニークな要素もない。だが必要なモノはすべて欠かさずに入ってる映画。退屈もしないし、何だかのんびり楽しく見ていられる(笑)。何となく作り手の真面目さ律儀さは伝わってくるよね。お客さん思いな気持ちが伝わってはくる。

 ならば、娯楽映画としてはそれで十分だ。僕はこの映画、あまり悪く言いたくないな。

 

 

 

 

 

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