「テイキング・ライブス」

  Taking Lives

 (2004/09/20)


  

見る前の予想

 アンジェリーナ・ジョリーがFBI特別捜査官を演じる…と来れば、あの期待しないで見たらすごく面白かったボーン・コレクターを思い出さずにはいられない。これは見るしかないね。

 おっと、周りのキャストがこれまた豪華きわまる。イーサン・ホーク、キーファー・サザーランドと怪しげな配役はお約束だが、もっと興味深いのはフランスからの三人の俳優たちだ。何でフランス俳優がこんなに出ているの?

 そもそも連続殺人犯の映画って、放っておいても面白く出来るものだ。残酷な話だが、その度肝を抜く殺しっぷりだけでもドキドキしてしまう。

 しかも今回は殺した奴の人生を乗っ取る男の話。そうすると、変装したりカツラつけたり入れ歯入れたり、書類の偽造とかアレコレ詐欺の手口とかも見せてくれるのだろうか。それってすごく「映画的」ではないか。こりゃ一本で二本分…いや、三本分ぐらい面白いかもしれないぞ。

 

あらすじ

 それは1983年のこと。カナダの片田舎で、一人の長髪の若者が長距離バスに乗ろうとしていた。彼はそのバス乗り場の待合室に、同年輩の短髪の若者がギターを持って座っているのをチラリと確かめる。案の定、バスの車内でこの二人の若者は知り合いになった。

 ところが、なぜかバスはど田舎の真ん中でエンコ。

 短髪の若者は短気なのか、たちまち苛立ち出す。そんな彼に長髪の若者は、近くの自動車修理工場へと案内する。そこで中古車を購入した若者二人は、彼らだけのドライブをスタートさせた。短髪の若者は、ギターで自作の曲を弾き語りしてご機嫌。

 だが、またまた立ち往生。今度はタイヤがパンクだ。

 長髪の若者はタイヤ交換が出来ないらしい。ならば仕方ない…と、短髪の若者はタイヤ交換の作業を始めた。そんな短髪の若者に、長髪の若者は突然奇妙な事を尋ねて来た。

 「なぁ、僕らって身長は同じくらいだよね?

 一体何を聞いて来たのか…と怪訝そうな短髪の若者。だが彼は、後方から別の白いクルマが全速力で迫って来ているのに気づかなかった。もちろん気づいても、それを危険と思う訳はない。白いクルマは二人の脇を通り過ぎるだけのはずだから…。

 長髪の若者がいきなり短髪の若者を蹴飛ばした!

 蹴飛ばされ身体のバランスを崩した短髪の若者を、走ってきた白いクルマは避けられない。白いクルマは短髪の若者を撥ね飛ばすと、自らもコントロールを失って横転、大破した。

 この光景を見つめていた長髪の若者は、まず大破した白いクルマの運転手が絶命した事を確認。次に路上に投げ出された、血だらけの短髪の若者に近寄っていく。短髪の若者は虫の息ではあるが、まだ何とか生き延びてはいた。そんな短髪の若者の頭部に向かって、長髪の若者は無表情に大きな岩を投げ落とす!

 やがて人けのない田舎道を、ギターを抱えながら歩く長髪の若者の姿があった。あの短髪の若者の「自作の曲」を歌いながら…。

 それから約20年の間、カナダのあちこちで孤独な男たちが殺される。だが、それらには何ら関連性がなく、誰も同一犯の仕業とは思っていなかった。そんなある日…。

 フェリー乗り場を、一人の老婦人が血相を変えて走っている。彼女はその場の警官を呼び止めると、慌てふためいて叫んだ。「お巡りさん、大変です!」

 老婦人の名はジーナ・ローランズ。彼女が警官に告げたのは、何とも奇怪な話だった。20年前に死んだはずの彼女の息子を、フェリーの中で見かけたというのだ。あの目は間違いない、息子も自分に気づいた…そう語るローランズの口調は、心底怯えきっていた。「息子はとても残忍なの。とても危険な人間よ…」

 さて、ここはそんなモントリオールの工事現場。パワーショベルで地面を掘っていたところ、出てきたのは…両手の切断された腐乱死体!

 さて事件を担当することになったモントリオール警察のチェッキー・カリョ警部、その部下のオリビエ・マルティネス、ジャン=ユーグ・アングラード両刑事は、「ある人物」の到着を待っていた。それは今回の捜査への協力を依頼した凄腕FBI特別捜査官。もっともマルティネス刑事はヨソ者に捜査協力をした事が、どうにも面白くない。しかもその人物がいつまで経っても現れないのが、さらに気にくわなさを増している。

 その頃すっかり暗くなった死体発見現場に、一人横たわる「ある人物」がいた。そこにやって来たマルティネス刑事とアングラード刑事は、地面に横たわっていた「ある人物」を見つけてビックリ。一緒にその場に駆けつけたカリョ警部から、その「人物」の正体を聞いて二度ビックリだ。

 その「ある人物」…若い女こそが、待っていたFBI特別捜査官アンジェリーナ・ジョリーだったのだ。

 あまりに奇抜なジョリー捜査官の登場の仕方に、それでなくても面白くないマルティネス刑事はさらに不信感を強める。一体こんな所で何をやってるのかと、ついついイヤミも口を突いて出る。だがジョリーには、これこそがお馴染みの捜査スタイルだった。現場にやって来て被害者の状況を身をもって体験する、犯人の思考を追体験する…それが彼女のやり方だったのだ。案の定、ジョリーはここで横たわっただけで、興味深い事実をいくつも提示した。少なくともこれは計画的な犯罪だ。

 道具を使って後ろから首を絞め、とどめに岩で顔面を殴って殺す…それが犯人のやり方。

 死体の検死を行った後で、ホテルへと引き下がったジョリー。彼女は部屋のあちこちに死体や現場の凄惨な写真をベタベタと貼りまくり、事件の世界へと自らを導いていくのだった。風呂に入るときもメシを食う時も死体の写真と一緒。それで気分が悪くなる事もない。

 やがて、驚くべき事に次の犯罪が起きる。犯行手口から見て、やったのは同一人物に間違いない。そして今度は目撃者がいた。その男イーサン・ホークは取り調べ室で、目撃当時の模様を興奮して語る。

 話を聞いたマルティネスもジョリーも一度は疑ったものの、結果的にはこの男はホシではなさそう…との感触を得た。しかもホークは犯人の顔を見ているとの事で、早速似顔絵を描いてもらう

 その効果は、意外に早く出てきた。似顔絵の人物が、アパートに部屋を借りたまま姿を消したと言うのだ。

 早速そのアパートに駆けつけるジョリー、マルティネス、アングラード。部屋の中に入ってみると、どうも様子がおかしい。部屋は閉め切りで窓も開けず真っ暗。浴槽にはなぜか脱臭剤がたくさん入っている。この部屋は一体…?

 案の定、ジョリーが天井裏に死体を発見したのは、その直後の事だった。

 一方、警察はホークにいまだ疑いを持ちつつ、目撃者として護衛もしていた。そんな中で、ホークはジョリーに個人的な好意を見せていく。そんなホークの態度に、ジョリーはとまどいを隠せない。

 やがて捜査線上に、死んだはずの息子が生きていた…という老婦人ジーナ・ローランズの話が浮かび上がってくる。早速話を聞きに行ったジョリーは、この一家の母子関係に一種奇妙なものを感じとっていた。問題の「息子」とは双子の「弟」の方で、実はそれに先だって双子の「兄」も事故で亡くなっていたのだ。で、どうも母親ローランズは「兄」の方を溺愛していたらしい。「弟」に対する語り方の冷淡さで、ジョリーはそんな母親の偏った愛情を察知した。だが結局「弟」の方も、家出してすぐに事故で亡くなった…。

 この「弟」の死に疑問を持ったジョリーは、墓を暴いて遺体を確認する。すると…骨折の有無その他から見て、この遺体は「弟」ではないという事が判明した!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後は映画を見てから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうなると、母親ローランズが危ない。警察は彼女を市内のホテルへと移送し、身柄の安全を確保した。そしてジョリーはこれを好都合…とばかり、ある夜に独断でローランズ宅に忍び込んだ。

 もちろん、彼女独自のプロファイリングのためだ。

 ローランズの自宅には、隠し扉の奥に地下室があった。そこは…どうやら子供時代の「弟」が暮らした部屋らしい。そのベッドに横たわりながら、「弟」の思考に同調しようとしたジョリーだが…。

 突然、何者かがベッドの下から飛び出した!

 突き飛ばされたジョリーが呆然とする傍らを、ナゾの人物は猛然と逃げ出す。やっぱり「弟」は生きていた。こうなると一連の事件の最重要容疑者として、この「弟」を疑わざるを得なくなる。

 案の定、どうもこの「弟」は1983年の初犯を皮切りに、次々と犯行を重ねていったようだ。しかもジョリーが調べたところでは、この男はただ人を殺すだけではない。殺した後でその人物に成りすまして暮らす。つまり「人生を文字通り乗っ取ってしまう」殺人犯なのだ。そのため一人暮らしの男ばかり狙って、殺してからは律儀に殺した男の生活習慣をなぞっていく。税金まで払う…。

 だとすると、殺人犯は今どんな男になりすましているのか?

 そんな折り、ホークの仕事場が何者かに荒らされた。さすがに怯えきるホーク。犯人は「目撃者」ホークを亡き者にしようとしているのか? そんなホークは近々商談の相手を会う約束が入っていたが、この人物が名前から言ってどうも怪しい。犯人は面会の場所に現れるのだろうか?

 そんなホークを、ジョリーはクルマで自宅に送る。もはやホークは、ジョリーにハッキリと男としての好意を見せていた。ジョリーは困惑しつつも、なぜかそんなホークを拒みきれない。

 だがそんなホークの身辺にナゾの男キーファー・サザーランドが出没していた事を、ジョリーは気づいていなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

映画を見てから読んでください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見た後での感想

 まずはお断りしておきたい。実はこの感想文は見た直後書いているにも関わらず、もう内容についてはうろ覚えなんだよね。何だか妙に曖昧だ。だからこの感想文にも、どこか曖昧なところがあることをお許し願いたい。ハッキリと間違えてはいないと思うんだけどね。でも、ボンヤリと誤魔化して書いてはいる。書き落とした事もあると思う。だから多少怪しいおかしな部分があっても大目に見て欲しい。こう言っちゃ悪いけど、この映画で正確さを問われても困っちゃうよ(笑)。おそらく僕は曖昧に誤魔化しているだけで、決してウソは書いていないと思う。だから鑑賞のジャマやネタバレや誤解のタネにはならないと思うからね。  

 …というか、ハッキリ言ってそんなのどうでもいいと思う(笑)。

 さて、そんな事を真っ先に掲げるあたりからお察しの通り、僕はこの映画をあまり高く評価してはいない。

 いやいや…単に2時間の暇つぶしとしてだけなら、この映画それなりに楽しませてはくれるんだよね。まずは豪華なキャスティング。アンジェリーナ・ジョリーを筆頭に、イーサン・ホーク、キーファー・サザーランド、そしてオリビエ・マルティネス、ジャン=ユーグ・アングラード、チェッキー・カリョという豪華なフランス勢。さらに大御所ジーナ・ローランズ。

 アンジェリーナ・ジョリーは、やっぱり前述した「ボーン・コレクター」の役柄を彷彿とさせるよね。イーサン・ホークはみんな臭いとは思うだろうけど、それでもどうかな…と考えちゃうかもしれない。何しろもっと怪しいキーファー・サザーランドがいるからね(笑)。ここでのキーファーは、もっぱら怪しげな雰囲気を発散させるだけの役どころだ。ほんのちょっとしか出てこないし、もったいないと言えばもったいない。もっともったいないのはフランスからの三人。マルティネス、アングラード、カリョの三人とも、「犯人」か「容疑者」をやらせてもいけたと思うんだけどね。僕はもっと怪しい奴をいっぱい出して、誰が真犯人だ?…とやるのかと思ってたから、意外にひねりがないのにちょっとガッカリだ。特にアングラードはアメリカ映画初出演だっただけに、もっと見せ場をつくってあげたかった。あと、ローランズは…やっぱり老けちゃったよねぇ(笑)。

 舞台がカナダ…それもフランス語圏のケベック州ということもあってフランス俳優三人が登場してきたんだけど、これがアメリカ映画として独特なムードを出していることは評価出来る。単身「異国」に来たアンジェリーナ・ジョリーの心細さが醸し出されて、なかなかいいと思うんだよね。アメリカにとっての近くの外国…カナダの「ケベック」という場所は、もっと映画の舞台として使ってもいいんじゃないかな。

 殺しがあって、ナゾがあって、多彩なスターが出てきて…さらにはちょっとしたカー・アクションまである。だから見ていて飽きさせない。最後までボケッと見ている事は出来る。かっぱえびせんとか食べながら見るにはちょうどいい。だから、つまんなくはなかったよ。

 ただし、あまり面白くもない(笑)

 まずはこれだけのメンバーだったら、もうちょっと何とかなったんじゃないかと思うんだよね。先に挙げたキーファーやらフランス三俳優もそうだけど、あまり生かされていない。いや、全然生かされていない(笑)。お話も、さほどナゾ解きになってない。サスペンスもない。

 ナゾをどこまでも引っ張るのかと思ったら、案外途中でだらしなく暴露しちゃうしね。もたせられないと思ったかどうかは知らないが(笑)。

 一番残念なのは、この映画の連続殺人犯の特徴を生かしてないこと。大体誰でもこの映画を見る前には、犯人が次々と人を殺してその被害者になりすますという、ユニークで見事な手口が見られると思うんじゃないか? そこを一番期待するんじゃないか? ところが今回、それは全くと言っていいほど出てこない。あれではただのシリアル・キラーでしかない。

 しかも…そもそもシリアル・キラー的に殺した人間ですら、ドラマ本編ではいくらもいない。一番面白そうなところは、ドラマ本編が始まる前に終わっているのだ。それが何と言っても興ざめだよね。

 D・J・カルーソーなる新顔の監督さんがいかなる人物かは知らないが、これだけの多彩なスターを使っているんだ。もうちょっとそのへんのところを、何とかする事は出来なかったのだろうか。これでは見る前の「一本で三本分の面白さ」どころではないよ。ホントにどうやったらこんなに平凡に仕上がるんだろう?

 いいとこ、これって2時間サスペンス・ドラマってところではないか。だとすると、あのアンジェリーナ・ジョリーの泊まったホテルも、何かのタイアップかもしれないぞ。「よしっ、分かった。ホシは鬼怒川観光ホテルだな!」とか、劇中で誰かがホテル名をわざとらしく連呼してたらクサい(笑)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからは絶対に映画の後で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見た後の付け足し

 しかも…あまり悪口のダメ押しはしたくないんだけど…ドラマが一旦終わった後の付け足しみたいな幕切れは…あれは何なんだろうね一体?

 事件の後で犯人は姿をくらまし、ジョリーはFBIを辞めて田舎の実家へと引っ込む。そして7ヶ月が経過した頃、彼女のお腹が大きくなって…。

 設定に無理があるし、それまでの展開と違和感ありすぎだし、ドンデン返しとも意外なエンディングとも言えないと思うんだよね。あれは見た誰もがひどいと思うのではないか?

 犯人をダマすためだとしても観客をダマすためだとしても、いくら何でも…の幕切れ。これって一旦は別のエンディングで完成したけれど、試写の結果やプロデューサーの意向で撮り直しした新しいエンディングとかじゃないだろうか? あるいは元々複数のエンディングを用意していたか。何となくそんな不自然さを感じる。便所で小便でもしながら鼻歌でひねり出したような、単なるつまらない思いつきにしか見えないよ。

 不自然さ…と言えば、この映画には原作があるらしいんだけど、そこにはアンジェリーナ・ジョリーのキャラクターは出てこないらしいんだよね。

 でも…「出てこない」って言っても、ジョリーのキャラって主人公だよね(笑)? そういう事ってアリなわけ?

 僕はこの原作を読んでないから偉そうな事は言えないが、元々この原作の作者がイギリス人って事は、これってイギリスの話だったんじゃないの?

 で、もっと気になるのがスタッフのクレジットで、脚本を書いているジョン・ボーケンキャンプに、なぜか「スクリーン・ストーリー」って肩書きが付いているんだよ。で、この「スクリーン・ストーリー」って肩書きの人がいる時には、原作ってほとんどタイトルぐらいしか使われなくってお話を全取っ替えされている事が多い。

 そう考えると、そもそもこの映画って成立の仕方からしてマズかったんじゃないの?

 面白そうな素材、面白そうな設定、面白そうなネタを使いながらもこのテイタラク。どう料理したってそれなりに面白くつくれそうな映画がこうなっちゃうってのには、やっぱりそれなりの理由があるはずだからね。

 

 

 

 

 

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