「ハイウェイマン」

  Highwaymen

 (2004/09/20)


  

見る前の予想

 「ヒッチャー」(1986)のロバート・ハーモン監督の新作だと聞いただけで、正直言って興奮しちゃうんだよね。何しろ「ヒッチャー」は、シャープで辛口なサスペンス映画の小品だったからね。大して期待しないで見に行って、その凄さに驚いた。その記憶がまだ鮮烈だから、“あの「ヒッチャー」の”…と聞くと、ドキドキしてしまう。まして「ヒッチャー」と同じ、誰もいない田舎のハイウェイとクルマ…のサスペンス映画と来ればなおさら。これは見ずにはいられないだろう。

 

あらすじ

 それはあるありふれた朝のこと。のどかな片田舎のモーテルから、赤い服を着た一人の女が出てくる。やがてモーテルのベランダに、一人の男の姿が現れた。彼こそが赤い服の女の夫…ジム・カヴィーゼルだ。幸せに包まれ、露天の果物などを買うカヴィーゼルの妻。それが急転直下…悲劇のどん底に落ちるのは、アッという間の事だった。

 ばく進してくるクルマが、突如反対車線へと突っ込んでくる。そのままクルマはカヴィーゼルの妻目がけてまっしぐら。それをベランダから見ていたカヴィーゼルは、慌てて妻の元へと駆け寄ったがすでに遅し。

 バ〜〜〜〜ン!

 カヴィーゼルの妻はクルマに吹っ飛ばされた。のどかな田園風景の中、彼女が買っていた果物が空中に飛散する…。

 それから5年後。

 人けのない田舎のハイウェイを、爆音を立てて走る赤い改造車。運転しているのは無精ヒゲを生やしてはいるが、あのジム・カヴィーゼルだ。だがその眼差しはうつろ。ただただ赤いクルマを乗り回す。

 だが…突如カヴィーゼルは何かを見つけたのか、クルマを止めて脇道へと入っていった。

 そこには廃墟と化した納屋があった。一見何の変哲もない、うらぶれた納屋にしか見えなかったが…カヴィーゼルはそこにこぼれたオイルなどから、何やら探していたモノを探り当てたようだ。そして納屋の中の干し草の山をかき回すと、中から一本の義手を見つけだした。

 カヴィーゼルはその義手を持ち出すと、自分のクルマのトランクの中にまるで獲物のように突っ込んだ。見るとトランクの中は、同じような義手でいっぱいではないか!

 「獲物」を確保すると、カヴィーゼルはまたもや赤いクルマを走らせた。また目指す「獲物」を求めて…。

 さてその頃、ここは街の公会堂。今夜もここでコーラス隊の練習が行われている。コーラス隊メンバーの女性ローナ・ミトラは、練習の帰りに同じメンバーの男ゴードン・カリーに声をかけられる。クルマで家まで送ってやろうという話だが、ミトラは礼を言いながらも友人にクルマを頼んでいるので丁重に断る。もちろん男の送りオオカミは基本だ。

 さてミトラは女友達アンドレア・ロスのクルマで送ってもらう事になったが、彼女の運転に妙に怯えてる。まるでクルマそのものが苦手なようだ。

 そんなロスとミトラを乗せたクルマを、後ろからグリーンのヴィンテージ・カーが追ってくる。いかにもアメ車という感じで、ボディーは無意味にデカく燃費も悪そう。最初はピッタリくっついて気持ち悪かったが、やがて追い越していったので二人も安心した。

 やがて二人を乗せたクルマが長いトンネルへと入る。ところが…。

 いきなり道路の真ん中に車椅子が!

 二人のクルマと共にトンネルに入ったトラックは、これに慌ててハンドルを取られる。しかも前方からは馬が走ってくるではないか。トラックがますますコントロールを失って暴走すると、前方には馬を運んできた厩舎のクルマが横転していた。

 そこにトラックが突っ込む!

 たちまちトンネル内は大惨事だ。危うく難を逃れたロスとミトラは、この惨状に唖然。とりあえずミトラをクルマから下ろして、ロスが急を知らせに外へ行こうとする。

 ところがそこに、あのグリーンのヴィンテージ・カーが通りかかるではないか!

 慌ててクルマから降り、ヴィンテージ・カーに助けを求めるロス。ところがヴィンテージ・カーは速度を緩めず、そのままロスを跳ねとばした!

 ロスをボンネットに乗せたまま暴走し、やっとミトラの目の前で止まるヴィンテージ・カー。路上に投げ出された血だらけのロスを、思わず助けようとミトラが駆け寄る。

 すると…。

 ミトラが身動きするたび、ヴィンテージ・カーも微動する。どうやらヴィンテージ・カーは彼女を「獲物」と見なしたようだ。何とか路上に横たわるロスを安全な場所に運ぼうとするミトラだが、ヴィンテージ・カーに脅されて思うに任せない。やがて怯えるミトラの鼻先まで近づくヴィンテージ・カー。

 すると…いきなりヴィンテージ・カーのドアが開いた。

 ヴィンテージ・カーのドライバーは何を思ったかポラロイド・カメラを取り出し、ミトラの恐怖におののく顔を撮影するではないか!

 それに満足したのか、ヴィンテージ・カーはドアを閉めてその場を立ち去った…。

 さて、赤い改造車で街を行くカヴィーゼルは、警察無線を傍受してトンネル事故を知る。すると、それでなくても嗅覚が鋭いカヴィーゼル。すぐにこの事故が「あいつ」の仕業だと察知し、素早く現場へ駆けつける。

 現場はまさに修羅場と言っていい状況だった。パトカーや救急車が駆けつけて騒然とするトンネル内に、またまた一人の男がやって来る。それは交通事故となると現場へ駆けつけて事情を調べる事故捜査官、フランキー・フェイソンだ。フェイソンはなぜか現場で何やら捜し物をしている男を注意するが、それが実はあのカヴィーゼルだとは知る由もない。そんなフェイソンは、天井近くにミトラが怯えきって隠れているのを発見する。この意外な展開には、カヴィーゼルもさすがに驚いた。

 さて一連の警察の取り調べを終えたミトラは、今度は事故捜査官フェイソンの事務所を訪れる。実はミトラが訴えたヴィンテージ・カーの犯行という話は、警察では一抹の疑いを持って受け止められていたのだ。それはいくら何でも被害妄想なのではないか?

 というのもミトラは、実は今回初めて交通事故に遭遇した訳ではない。幼い頃に交通事故で家族全員を亡くし、孤児となった身だった。だからこそ、トラウマから誇大妄想に取り憑かれたと思われたのだが…。

 しかし事故捜査官フェイソンは、現場のタイヤ痕からミトラの供述が正しい事を喝破した。そうなると、ヴィンテージ・カーはいかなる理由からこのような犯行に及んだのか…が問題なのだが…。

 交通事故被害者が集まってのセラピーに参加するミトラ。だが単にお互いの傷をナメ合いながら、「私たちは一人じゃない」などとお題目を並べるばかり。そんな空しさにミトラが耐えきれなくなった時、一人の男が見切りをつけたように席を立った。それはあのジム・カヴィーゼルだった。

 カヴィーゼルの退席と共にその場を離れたミトラ。そんな彼女にカヴィーゼルはすかさず声をかける。「あれは事故じゃない!」

 グリーンのヴィンテージ・カー…カヴィーゼルは確かに何かを知っている。ミトラの脳裏にはカヴィーゼルの言葉が鋭く焼き付いた。

 さてその夜、またしても公会堂でのコーラス隊の練習帰り。今回は例のゴードン・カリーのクルマに乗せてもらうミトラ。それを見ていたカヴィーゼルも、ゆっくりクルマを発進させる。ところがこの場にはもう一人見張っている者がいた。それは事故調査官のフェイソンだ。彼は今回の事故がどうにも気になって、ミトラの周辺を調べていたのだ。その目の前に現れたカヴィーゼル。これは絶対に何かいわくがある…と確信したフェイソンは、いきなりカヴィーゼルを呼び止めようとする。

 「おい、待て。話を聞きたい!

 だがカヴィーゼルがここで止まる訳がない。おまけにドライビング・テクニックも格段に違う。マシンもダンチだ。アッという間にカヴィーゼルを見失うフェイソンであった。

 さて、帰り道を急ぐカリーとミトラ。その後ろから一気に追い上げて来るのは…。

 あのグリーンのヴィンテージ・カーだ!

 追いつこうとするのかと思いきや、いきなり追突するヴィンテージ・カー。あまりの勢いに、カリーとミトラを乗せたクルマはその場に横転してしまう。

 気絶したミトラが意識を取り戻した時、クルマは完全に逆さにひっくり返っていた。何とかシートベルトをはずしたミトラだが、カリーは血まみれで虫の息。しかもシートベルトがはずれない。

 ところがひっくり返ったクルマのすぐ横を、あのヴィンテージ・カーがゆっくり走り出すではないか。しかもどこからともなくジャラジャラとチェーンを引きずる音。やがてひっくり返ったクルマも、ガクンと滑り出す。何と例のヴィンテージ・カーのドライバーは、ミトラが気を失っている隙にひっくり返ったクルマにチェーンをつなげ、自分のヴィンテージ・カーで引っ張り始めているのだ。逆さになった天井で路面を火花を散らしてこすりながら、ひっくり返ったクルマはミトラと瀕死のカリーを乗せて滑り出す。これにはさすがにミトラも悲鳴を上げた。途中でシートベルトがはずれたカリーは、そのまま路上へと投げ出されてしまう。だがミトラにはどうする事も出来ない。

 そこへ…カヴィーゼルの赤い改造車がやって来る!

 すぐに事情を見てとったカヴィーゼルは、何とか引きずられた横転車の横へと接近する。そして改造車のドアを開けて、ミトラが乗り移れるように平行して走った。これに気づいたヴィンテージ・カーは、クルマを左右に揺すってジャマをする。この際に改造車のドアがちぎれて飛んだが、間一髪でミトラはカヴィーゼルのクルマに乗り移る事が出来た。彼女を逃したヴィンテージ・カーは、苛立ちをぶつけるように横転車を投げ出すと、そのままハイウェイの彼方へと走り去って行く。

 だが、すぐにカヴィーゼルのクルマのCB無線に、あのヴィンテージ・カーのドライバー…コルム・フィオーレから連絡が入る。

 「明日またこの場所に、その女を連れてこい

 一度目をつけた獲物は逃さない。それがあのヴィンテージ・カーのドライバーのモットーだったのだ。「明日この場でもう一度」と聞いて冗談じゃないと文句を言うミトラだが、カヴィーゼルの顔は本気だ。彼は自分の隠れ家である廃車工場跡へと、ミトラを問答無用に連れて行ってしまう。

 一方、事故調査官のフェイソンは、現場に落ちていたドアからカヴィーゼルの身元を洗い出す。また、今回の一連の事件では、今はめっきり使われなくなったCB無線が利用されている事も突き止める。こうしてフェイソンは、徐々に捜査の網を縮めていくのだった。

 さてカヴィーゼルの隠れ家で、すべての真相を聞くミトラ。カヴィーゼルは目の前で妻を殺され、そのまま復讐鬼と化してクルマで敵フィオーレを追いかけた。ハイウェイで展開するデッドヒートの果て、カヴィーゼルのクルマはフィオーレのクルマに突っ込んだ。これでフィオーレは全治18ヶ月。両手両足と片目を失うに至った。しかしカヴィーゼルは3年の懲役。しかもフィオーレは事故を妻の不注意のせいとして罪を逃れ、多額の保険金をせしめたではないか。

 さらにフィオーレから勝ち誇るように郵便物が届く。それはこの男がかつて犯してきた交通犯罪の新聞記事だった。この男、今までに何人もの女を路上でひき殺していながら、まったく罪に問われずに逃れていたのだ。かくしてカヴィーゼルは復讐の鬼となり、フィオーレの足取りを追っていたのだが…。

 それにしても「自分がオトリになるとは」…と二の足を踏んでいたミトラ。だがカヴィーゼルが眠っているうちに、またしてもCB無線の連絡が入ってくるではないか。「あの女を殺させろ。オマエがいようといまいと、オレは必ずあの女を殺すからな

 これにはさすがのミトラもキレた。かくして二人は共闘を組んで、路上の敵=ヴィンテージ・カーのフィオーレと戦う事を誓うのだったが…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後は映画を見てから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見た後での感想

 やっぱりこの映画について語る前には、ロバート・ハーモン監督の旧作「ヒッチャー」について語らねばならないだろう。ど田舎のどこまでも続くような人けのないハイウェイを舞台に、逃げても逃げても追いかけてくる奇怪な男の恐怖を描くこの作品。当時青春スターとして売り出し中だったC・トーマス・ハウエルや、まだクセモノとして注目される前のジェニファー・ジェーソン・リーが主演した作品だが、何よりナゾの男を演じたルトガー・ハウアーの気色悪さが忘れられない。ハウアー主演作でも異色の一本として、今でも鮮烈な印象があるね。

 そもそもアメリカのど田舎のハイウェイって、ホントに周囲に何もなかったり人っ子ひとりいなかったりで、何が起きてもおかしくないみたいだ。トビー・フーパーの「悪魔のいけにえ」(1974)やそのリメイク「テキサス・チェーンソー」(2003)じゃないけど、映画で見る限りじゃ何が起きてもおかしくない雰囲気があるのだ。やはりトビー・フーパーの映画で、通りがかりの人間を裏庭の沼で飼っているワニのエサにする「悪魔の沼」(1976)だとか…何よりおっかないベイツ・モーテルの出てくるサイコ(1960)だとかが、そんな得体の知れなさを具体的に見せてくれている。だから僕は子供の頃から、アメリカの田舎って怖いから行きたくないなぁ…と思っていたものだ(笑)。絶対アメリカの田舎には、KKKの頭巾かぶった奴とか電ノコ持った奴とか悪魔の黒ミサ儀式をやっている奴とか、訳の分からない連中がいると思っていた。

 ところで今まで挙げて来たのは、すべて沿道にある家とかモーテルとかがヤバイって話だったよね。そこに画期的なアイディアを持ち込んだのが、スティーブン・スピルバーグの出世作激突!(1972)だ。ハイウェイを走るクルマそのものが怪物化する。ドライバーの顔も見せずに描いているのがまた怖い。一番最初に見た時から、あの怖さは本物だった。

 で、「ヒッチャー」はこの「激突!」系列の作品だと言える。どこまでもどこまでも、どうしたって追いかけてくるってあたりが同じだ。もっともこっちはホントに「怪物」みたいな超自然的な敵だけどね。

 あとは僕は見ていないんだけど、ピーター・フォンダやウォーレン・オーツ主演の「悪魔の追跡」(1975)ってのがあったっけ。これはキャンピング・カーで遊びに行った二組の夫婦が、たまたま田舎の悪魔の儀式を見ちゃって追いかけ回される話だ。これは沿道の怖さと路上の怖さの二本立てという欲張った構成。これまた僕は未見だが、ポール・ウォーカー、リーリー・ソビエスキーらが主演する「ロードキラー」(2001)って映画も「ヒッチャー」の系列らしい。これはちょっと機会があったら見てみたいね。つまりはアメリカの田舎の道路って怖いってお話(笑)。

 というわけで、「ヒッチャー」はハッキリ言って低予算なのがアリアリだったけど、アイディア次第では面白い映画などいくらでもつくれる…というお手本みたいな映画だった。スピルバーグの「激突!」だって元々はテレビ映画なんだから予算だって低かったはず。そういう意味では、贅肉がダブついて身動きがとれなくなっているような、昨今のアメリカ娯楽映画の極北にあるような映画だったわけ。

 で、今回の「ハイウェイマン」だけど…これまたその「ヒッチャー」の精神が今に蘇ったような作品だった。

 だって出てくる人物は、ほとんど主要人物4人だけと言っていい。そしてドラマの中心は、カヴィーゼルが運転する赤い改造車と、フィオーレが運転するグリーンのヴィンテージ・カーぐらい。実は冒頭近くのトンネル内大事故はかなりの規模で撮影されているはずだが、なぜかそんな「大作感」がないのがこの映画の身上。ここでの「大作感がない」という言葉は必ずしもケナしではないよ。そういう贅肉感がないということだ。言い直せば「無駄」がないということ。

 何しろいろいろな枝葉のエピソードもなく、いきなり単刀直入に核心に入っていく。そのあたりが…確かに「スケール感がない」と言えばそう言える。正直言って少々ショボくもある。大した話じゃないって言えば、まったくその通りだ。

 だけど無駄を徹底的にそぎ落としたようなこの映画の佇まいは、何となく好感持てるんだよね。それに、アクション映画が常に「大した話」である必要もなかろう。僕はやっぱり面白かったと思うよ。確実にたっぷり楽しんだ。

 ジム・カヴィーゼルがこのヒーローを演じるのは意外と言えば意外。だが、はぐれオオカミみたいになっているこの男も、カヴィーゼルが演じればちゃんと善良に見える。考えてみれば両手足がなくなって義手義足になっている男を、寄ってたかってボコボコにしちゃう話(笑)でもあるんだからね。このカヴィーゼルの善良さは必要だっただろう。「パッション」でキリストを演じていたあたりが効いているよ。

 

見た後の付け足し

 この映画、何と上映時間が1時間半を切っている。これは昨今の娯楽映画にしてはすごい事だよ。そしてノーCG、ノーSFXを貫いてもいる。まるでタイ映画マッハ!みたいな話だが、たまにはアメリカ映画にもこういう映画があっていい。そんな贅肉のなさ無駄のなさが、妙に新鮮に感じられたもんね。だから感想文も無駄なくこれでおしまい(笑)。

 

 

 

 

 

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