「サンダーバード」

 Thunderbirds

 (2004/08/30)


  

今回のマクラ

 僕らの年代の男だったら、絶対に子どもの頃に「サンダーバード」のプラモをつくった記憶があるはずだ。

 実は「サンダーバード」って、実際のテレビ番組をよく見てた…ってガキはそんなに多くないんじゃないか。見た事は見たけれど、毎週欠かさず見たってヤツは少ないと思うよ。

 ただチラッとでも見た子どもの数となると、他の子供番組とは比較にならない。それって「サンダーバード」という番組が、最初はNHKから放送されていたからだろう。NHKの電波が入らない場所は、この日本にはない。どこか民放のテレビ局でやっていたのなら、見れない地方が出てもおかしくはない。だけど「サンダーバード」は当初NHKで放送したから、全国津々浦々で見れたはずだ。おまけにあの天下のNHKが子供向け…それも舶来の特撮テレビ・シリーズを放送するなんて、それまで絶対になかったことだ。だから鮮烈な印象があったと思うんだよね。

 ただ、その後の再放送はすべて民放で行われた。だから「サンダーバード」を知ってはいるけれど、実物の番組は見ていない…という人が多いのかもしれない)。

 そして、特撮プラス・マリオネット…というユニークなスタイル。特撮番組を見る楽しみの一つに、宇宙船やら戦車やら破壊される建物やらのミニチュアを見る喜びがあるが、「サンダーバード」の場合は普通のドラマ部分に関してもミニチュア。これが見る喜びを二重にも三重にもしていたような気がする。

 しかも素晴らしいのが、サンダーバードに出てくるメカの数々!

 それらが出撃する時の、ディティールの細やかさと来たら…後年、日本の円谷プロが「ウルトラセブン」や「マイティジャック」を製作する時に、絶対に参考にしていたはずなのがこのメカの発進シーンだ。毎回同じなのに、それでもシビレた。というより、それこそが見たかった

 そんな中で僕が大好きだったのが、サンダーバード2号。2号は緑色のずんぐりむっくりした飛行艇だが、このカタチはどてっ腹に格納庫を持っているがゆえ。そこにはジェットモグラとか水中仕様のブルドーザーみたいなサンダーバード4号が収納されている。これらが2号の格納庫から出てくるところが、また何ともカッコいいのだ。

 あとは正直言って、僕は眼中になかった(笑)。1号も3号もただのロケットみたいだったし、5号は単なる宇宙ステーションだったしね。だからプラモを買うとなったら絶対に2号だった。

 当時「サンダーバード」商品を一手に引き受けていたのが、確か「今井科学」とかいうメーカーだ。おそらく「サンダーバード」制作元の「21世紀プロダクション」と独占契約でも交わしていたんだろう。すべてのメカが「今井」から出ていた。

 たしかどのメカも大・中・小のさまざまなサイズがあったと思うが、僕が親にねだった2号の特大プラモは、当時で1500円前後したシロモノだった。あの頃じゃ抜きんでて豪華だったんだよね。もちろん後にも先にもその一回だけ(笑)。

 だけどお金持ちの家の子どもは、もっと上を行っていた。そういう子どもが買ってもらったのは、サンダーバードの秘密基地がある島のジオラマ。これは当時いくらしたのか、さすがに僕も覚えていない。でも、安くても1万ぐらいはしたんじゃないだろうか。だってそこにちゃんと1号とか2号とかのミニチュアも付いていたんだからね。

 僕はそういうお金持ちの子の家に遊びに行くと、何とも羨ましい気分になったものだ。だけど、ワガママな子どもの目からしたって、明らかにそれは高過ぎだった。だからこの島のジオラマにも、「プラモみたいに作る楽しみがない」とか何とか屁理屈つけていたように記憶している。我ながらイヤミなガキだったね(笑)。

 そういや当時「サンダーバード」は映画版も公開されたと思う。一作目の劇場版「サンダーバード」については、映画は見ていないけど劇中に登場するゼロエックス号が気に入ってプラモを作った(笑)。二作目「サンダーバード6号」も見に行かなかったが、これは事前に見に行った友だちが「6号ってただの古くさいヒコーキだぞ」と教えてくれたから行く気がなかった。

 つまり、すべては「メカ」中心

 だから誰もドラマは覚えていないし、ヘタしたらプラモは作ったけど番組は見ていなかったなんてヤツまでいるテイタラク。僕ら男の子にとっての「サンダーバード」は、ハッキリ言って「メカ」がすべてだったわけ。

 その後「21世紀プロ」の他の作品が続々日本上陸したのは、すべて「サンダーバード」の好評に応えてのことだろう。ひょっとしたらその前からやっていたのかもしれないが、「サンダーバード」以後に脚光を浴びたに違いない。「海底大戦争スティングレイ」「キャプテン・スカーレット」「ジョー90」…不思議なことにどれもこれも毎週欠かさず見ていた記憶はないのだが(笑)、やっていれば見ていた記憶はあるんだよね。

 ただそれらのプラモを作ったかと言えば、あまり作った覚えがない。確か「スティングレイ」はつくったと思うけど、マブチ・モーターで水中を進むはずが風呂の湯船で沈没。それでも大して惜しいとは思わなかった。結局他の「21世紀プロ」作品は、メカのデザインがピンと来なかった。「サンダーバード」のイカしたメカほど、僕ら男の子の心を燃え立たせてくれなかったんだよね。

 「21世紀プロ」の作品はその後マリオネットを卒業して、「謎の円盤UFO」などの実写モノへと移っていった。それらはなかなか悪くない出来だったと思うけど、もうユニークな存在ではなくなっていた。それってただの特撮ドラマだからね。こちらもそろそろ子ども時代が終わろうとしていた時だったから、「21世紀プロ」との付き合いもそのあたりまで…という事になったわけだ。

 でもあの「サンダーバード」メカの魅力は、たぶんみんな忘れてないと思うよ。

 

見る前の予想

 「サンダーバード」が映画になった!

 …で、終わらせてもいいんじゃないかと思ったくらい、問答無用な企画だよね。この映画の企画書を映画会社に提出するのは、すごく簡単だったんじゃないかと思うよ。

 まずは映画界では旧作リメイク、コミックの映画化などを経て、昔のテレビ・シリーズの映画化に躍起だ。そこへきて元々の「サンダーバード」には、今も根強い人気がある。で、オリジナル・テレビ・シリーズをリアルタイムで見ていた子どもたちがいまや中年・中堅世代。だから二世代で見に行く可能性が濃厚だ。しかも特撮場面はイマドキのテクノロジーでリニューアル出来るから、再映像化の必然性がある。しかもしかも1960年代のイギリス制作のテレビシリーズだから、どこかにいまやブーム再燃の1960年代スウィンギング・ロンドンのイケてる雰囲気を漂わせる事も出来る。しかもしかもしかもマーチャンダイズの展開ももちろん期待できる。…う〜ん、ひとツブで二度も三度もオイシイ企画だ!

 こりゃ大ヒット間違いなしだろうな…と思ったし、自分もどっちかと言えばリアルタイム世代。そういやプラモをつくった記憶もある。そりゃちょっと見てみたいな…と思ったものだ。

 ところが公開直前になっても、映画のムードが盛り上がらない。なぜなんだ。「キング・アーサー」と同じく、イマイチ顔ぶれが地味なのか。キャストの筆頭がビル・パクストンだもんなぁ。

 案の定、フタを開けたらやっぱり元気がないみたい。何でもアメリカでは惨敗だと言う。何で? どうして?

 だって…当たる要素ばかり満載してるみたいな映画じゃないか。

 

あらすじ

 イギリスの名門校に学ぶアラン・トレーシー(ブラディ・コルベット)は、今日も今日とて口をポカンと開けたバカづらで授業中も上の空。その頭の中は、国際救助隊=サンダーバードのことで一杯だ。なぜなら彼はそのサンダーバードの家族の一員だから。だがまだ年端もいかない彼は出番がない。それで兄貴たちの大冒険を指をくわえて見ているだけだった。

 今日も今日とて、サンダーバードはロシアの油田火災で大活躍。そこで働く労働者たちを助けて颯爽と去っていく。もちろん、その正体は秘密だ。

 メガネをかけたチビ助のご学友ファーマット(ソレン・フルトン)は、父親がサンダーバード・スタッフの一員で事情を知っている。そこでアランの気持ちを察して慰めてくれるけど、彼はガキ扱いがどうにも我慢ならない

 そんな彼の元にイケてるけど何となくセンスがズレてる、ピンク一色の美女ペネロープ(ソフィア・マイルズ)が迎えに来る。喜び勇んで彼女のクルマに乗り込むアランとファーマット。運転手パーカー(ロン・クック)がハンドルを握る「オースティン・パワーズ」みたいなクルマは、途中からジェット噴射で空を飛ぶスグレものだ。

 さてサンダーバードの1号と2号は、ロシア油田から助け出した労働者たちをサンフランシスコの病院に収容する。ところがその労働者たちの中に不審人物が約一名。そいつはサンダーバード1号の機体に、汚ったねえ粘液をベットリくっつけた。げっ、これってまさか…(笑)。

 さてサンダーバードの1号・2号、そしてペネロープのクルマはそれぞれ秘密基地トレーシー・アイランドへご帰還。地図にも載っていない南海の孤島にあるサンダーバードの基地は、トレーシー一家はじめとするサンダーバード・ファミリーの我が家でもある。

 久々の再会でハシャぐアランと、出迎える一家の長にして兄弟の父親、さらにサンダーバードの創始者ジェフ・トレーシー(ビル・パクストン)。ファーマットも父親でサンダーバードのエンジニアのブレインズ(アンソニー・エドワーズ)と久々の再会。家事一切を任されているインド人夫婦も暖かく迎えてくれた。

 もちろんスコット、ジョン、ゴードン、バージルの兄貴たち(その他大勢)もアランを歓迎。ただしあくまでガキ扱い。それが何とも不満なアランは、フテったあげくファーマットを連れて一家団欒を離れてしまう。これには「困ったもんだ」とジェフ以下サンダーバード正式メンバーもお手上げだ。

 まだまだガキのくせにサンダーバードになりたくて仕方がないアランは、ファーマットを連れて勝手にサンダーバード1号に乗り込みコクピットで遊んでいた。ところが突然装置が作動して父親ジェフに知られるところになり、大目玉を食らったのは言うまでもない。実はこの時サンダーバード1号に例のネバネバ粘液がついている事に気づいていたアランだが、怒られた拍子にそれを父親に告げるのをコロリと忘れてしまう。偉そうな口叩いても、結局使えないガキのアランだった。

 さて案の定、その粘液は敵の仕業。粘液が電波を発信して、サンダーバード基地の場所を知らせる役割を果たしていたのだ。トレーシー・アイランドの近海には敵の潜水艦が接近。そこに乗っていたのは、自称「悪玉」ことフッド(ベン・キングズレー)。この男はメガネの出っ歯女トランサムと大男のマリオンを従えて、トレーシー・アイランドの奪取を目論んでいたのだ。

 さて親父に怒られてガックリのアランだが、一つだけ嬉しい事があった。例のインド人夫婦の娘ティンティン(ヴァネッサ・アン・ハジェンス)がすっかり発育した姿で現れたからだ。幼なじみのアランは、そんなティンティンに動揺を隠しきれない。出るところが出てきたティンティンのボディは、ハシが転がってもいきり立つ年頃のアランには目の毒。ティンティンにアランの●ン●ンは、サンダーバードのメカも真っ青な程パワー全開だ。いつもポカ〜ンと開けてる口からヨダレもたれる。そんなうろたえぶりをチビのファーマットにまでバカにされるアランの情けなさではあった。

 そんな頃、フッドは潜水艦からミサイルを発射。トレーシー・アイランドを奪取するには、中にいるサンダーバードたちを追い出すのが一番。彼らを追い出すのは簡単。彼らが自分から出ていく理由をつくってやればいい。その理由とは…何かの大事故か災害だ!

 潜水艦から発射されたミサイルは成層圏を突破、何と地球の周りを回っている宇宙ステーション・サンダーバード5号へと一直線。

 ミサイルが命中!

 5号で待機していたジョンは突然の攻撃に驚き、トレーシー・アイランドに救助信号を送った。

 さぁ、トレーシー・アイランドはハチの巣をつついたような大騒動。とりあえずジェフ以下サンダーバード全員で5号救出に向かう事になった。彼らはサンダーバード3号に乗り込み、宇宙空間の5号めざして発進した!

 ところがその隙に、あのフッドたちがトレーシー・アイランドに上陸。サンダーバードの不在中に基地を占拠してしまうではないか。しかもフッドは物凄い眼力で人やモノを動かしてしまうサイキック・パワーの持ち主。ブレインズが頑強に拒んでもムダだった。結局サンダーバードはすべてのコントロールをフッドに掌握され、5号救出のためにドッキングした3号もその場に足止め。地球には帰還できない状態となってしまう。5号内部の酸素には限りがあり、軌道を乱されたため地球の大気圏内へと接近しつつあった。

 このままではサンダーバードは全滅だ!

 そんな悪玉=フッドの正体とは…実は彼は、例のインド人の兄。弟と共にある事故現場に居合わせ、弟はサンダーバードに救われたが、自分は見捨てられてしまった。たまたま奇跡的に生き延びた彼は、サンダーバードを逆恨みして復讐のチャンスを狙っていたのだ。

 もうサンダーバードは反撃できないのか?

 いや…まだかろうじて希望は残っていた。

 フッドたちに制圧されたトレーシー・アイランドではあるが、そこにこの難を逃れた人物が三人。チビのファーマット、発育途上のティンティン…そしてトレーシー兄弟の残る一人、思いっきり頭の悪そうなアランが反撃の狼煙を上げようとしていた!

 

見た後での感想

 映画が始まったとたん、あの懐かしいテーマ曲がニュー・アレンジで登場。オープニングにアニメによってサンダーバードの活躍を見せるタイトル・デザインが出てくるのはそれなりに楽しいが、これはどう考えてもシリアスにつくってる映画じゃないな…と、どんなニブい奴でもここで何となく察しがつく。そう、これは動くマンガだ。ハッキリ言ってこの時点で、この映画って大人向けじゃないって事が分かるのだ。

 案の定、映画は兄弟の末っ子アランを主役に進行する。そして…アレレ?…テレビ・シリーズでは親父は本部にで〜んと座っていて、「太陽にほえろ!」の石原裕次郎みたいに指令を出すだけじゃなかったっけ? なぜか兄弟と一緒に活躍しているではないか。そう、この映画はテレビ・シリーズより前の時点の設定、末っ子アランが正式隊員に認められるまで…を描いたエピソードなのだ。そしてアランとお友だちのファーマット、ティンティンの三人組が全編を通して活躍する。

 だが結果的にこの三人組の話が中心となったために、映画全体が俄然お子さまモードに傾斜。正直言って大人が見るにはちょっとツラいかな…という雰囲気になってしまった。誰かがスパイキッズみたい…と言っていたが、まさしくあのノリだ。

 おまけに主役であるアラン役ブラディ・コルベットという男の子が、ハッキリ言ってバカづら。目と目の間が離れていてどこ見てるのか分からないし、いつも口をポカ〜ンと開けててピリッとしない。これじゃ親父にもサンダーバードにはまだ早いと言われるよ…と、見ているこっちまでイライラする。

 そして…それでは他のサンダーバードの正隊員たちはどうかと言えば、末の弟とどっこいどっこいのパッとしない連中。おまけに台詞もロクにないような一山いくら状態の扱いだからねぇ。あれじゃエキストラみたいだよ。

 正直言って、僕は映画版「サンダーバード」がここまでお子さま向きとは思ってなかった。で、結局最初から映画に乗り損なったし、そのままズルズルといってしまった。だから、そもそも見るにあたっての姿勢からして間違っていたんだよね。どうかみなさんがこの映画をご覧になる際には、夏休み子ども映画のノリでスクリーンに向かっていただきたい。僕は完全にハズしてしまった。

 それでも僕が何とか見ていられたのは、何と言ってもサンダーバードのメカが見事だからだ。基本的に過去のテレビ・シリーズに忠実なデザインのメカの数々が、CG技術のおかげで圧倒的なリアリズムで登場する。これにはちょっと興奮したよ。昔のチャチいミニチュアが、こうまで見事に巨大化したのには嬉しくなった。ハッキリ言ってこの映画はここが見どころだ。だからホントはチビッ子三人組の大活躍より、こっちを見せて欲しかったんだけどね。案外メカの出番は少なくてアッサリ気味。違うんだよなぁ、力の入れどころが。

 そして映画を何とか支えている要素の二つ目は、あのベン・キングズレーの大熱演。何が悲しくて出たのか知らないが…おそらくギャラのためとは思うが(笑)…どう考えてもシリアスな持ち味のベン・キングズレーが、おそらくそのキャリアで初めての…そして最高にアホな役を力演。本人もどうしていいのか困っちゃってるんだろうな…と思わせるものの、それでもメゲずに頑張ってる様子が嬉しい。

 さらに映画全編を通じて予想外に楽しかったのが、ペネロープの出番。一貫して上品な英国流エレガンスをバカていねいに押し通すペネロープ役のソフィア・マイルズは、ちゃんとこの役と設定が理解出来ているようだ。彼女が活躍する場面は、バカバカしくても安心して見ていられるんだよね。ここはハッキリと1960年代ロンドン・ルックのパロディで徹底的にやってやろうと、作り手もコンセプトが絞り切れているんだろう。何だか他の場面と違って迷いがないんだよね。つまりは「オースティン・パワーズ」あたりを狙っているのは明らかだ。脚本に「オースティン・パワーズ」シリーズの脚本を手がけたマイケル・マッカラーズが加わっている理由は、おそらくこのへんだろう。

 こうして見ると、この映画で見れる部分は3つのポイント…テレビ製作時の1960年代と現代との距離感がちゃんと掴めている部分と、大人の鑑賞に耐える役者がちゃんと芝居している部分、さらには「サンダーバード」本来の魅力であるメカ中心の部分…に限られる事が分かる。そうなると、改めてこの映画のアキレス健を感じてしまうんだよねぇ。末っ子アランを中心にしたチビッ子三人組の活躍を中心に置いたこの映画の設定自体に、いささか無理があったんじゃないかと思わざるを得ない。

 例えばテレビシリーズは子供向け特撮人形劇ではあったが、ことさらに物語設定で子どもにオベンチャラ使ったりコビを売る事はなかったはずだ。ならば今回の映画化でも、そのまま予算を拡大して技術を進化させて、シリアスにつくる事は出来たはず。

 では、なぜそれが出来なかったのか?

 

見た後の付け足し

 冒頭に書いたように、この映画のアメリカでの成績はすこぶる悪いようだ。これは僕などには意外だったが、どうもアメリカでは元々「サンダーバード」の知名度はゼロに近いと言う。

 えっ、それってホント?

 それでよくこんな大作映画になったな…と思ったが、ブリジット・ジョーンズの日記」「ラブ・アクチュアリーなど、アメリカ・マーケットにも通用するイギリス製娯楽映画を連発してきたワーキング・タイトルの制作だから出来た事なのだろう。逆にワーキング・タイトルは今までのノウハウを活かし、何とか自分たちのこの映画で、イギリス製ブランド「サンダーバード」のアメリカ進出を成功させようと目論んだのではないか。それが自分たちなら出来る…と思った。

 この映画を監督したジョナサン・フレイクスは、あの「スター・トレック」シリーズの映画版も監督している人物だと言う。やはりテレビ・シリーズ上がりのこの「サンダーバード」も盛り上げてくれるのでは…という意図が見え隠れする。しかもアメリカ人監督なら、アメリカ人受けする撮り方が出来ると思ったに違いない。

 そうなると、まずはテレビシリーズを知らないアメリカ人たちに、「サンダーバード」そのものを知らせなければならない。だからお話の設定も「テレビ以前」のものになった。さらにイギリスや日本と違って「サンダーバード」の存在感が確立していないから、まずは「子供向け」ですよ…と宣言するところから始めなくてはならない。そうなると、当然ガキが中心の話にせざるを得ないだろう。さまざまなメカにも馴染みがないから、“あのミニチュアがこんなにリッパに”…と惚れ惚れ見せる意味もない。そんなこんなですべてが裏目裏目に出てしまったんだと思うんだよね

 実は劇中にワンカット、とても不思議なショットが混じっている。それはサンダーバード1号の出動場面だと思うが、レバーを引く手を捕らえたショットに吊り糸が写っているんだよね

 これには少々説明を要するが、元々「サンダーバード」が操り人形を使った人形劇だということはみなさんご存じだろう。ところが手のアップだけは人形では無理な動きがあるのか、時々ホンモノの人間の手を使って撮ったりしているんだよ(笑)。だからこのショットは、それをオチョクって…というかオマージュとして、わざと人間の手に吊り糸を見せているんだろう。

 だけど…たぶんこのへんが、作り手の混乱していた部分ではないか。

 1960年代イギリスで作られたテレビシリーズを、現代アメリカで受けるようにする。それも「明らかに子ども向け」の人形劇を、幅広い観客層に受け入れられる実写SFX大作として創り上げる。イギリスを初めとするコアなファンも満足させてオマージュを捧げながら、全然愛着も何もないアメリカ人に見せる映画に作り直す。しかし“あの”「サンダーバード」の映画版なら大人向けに豪華大作としてつくれるだろうが、何だか分からないアメリカ人にとってはこの設定って子ども向けにしか見えない。アメリカ人にとって“初物”の「サンダーバード」は、どうしたって「子ども向け」として見せるしか手がないのだ…。

 こうして見ると、どう考えても矛盾している。元々が過度にアメリカ市場を意識した作戦に、いささか無理があったんじゃないだろうか? この映画のところどころに吹いているすきま風みたいな寒さは、このへんの迷いと混乱が招いたもののように思えるんだよね。大体が監督のフレイクス自身が「サンダーバード」を見たことなかった…って、何でそんなヤツを監督に起用したんだ(涙)。

 ただねぇ…では、アメリカ向けという手かせ足かせを取り除いたらうまくいったのだろうか?

 確かにペネロープの活躍場面あたりは、この映画でもそれなりに笑える楽しい部分だ。だけど見ているうちに、何か似ている別の映画を連想したんだよね

 それは「アベンジャーズ」(1998)だ。

 実はあれも1960年代イギリスの人気テレビ・シリーズ「おしゃれ(秘)探偵」を、現代の娯楽映画として焼き直したもの。ただし、あちらはアメリカでも知名度があった。だからそのまんま疑いもなく大作映画として仕上げた。主演もレイフ・ファインズ、ユマ・サーマン、ショーン・コネリーと申し分なし。

 ところが…何ともユルい映画だったんだよねぇ

 その原因が何だったのか検証してみる余裕はないが、「サンダーバード」を仮に1960年代イギリス・テイストを現代に焼き直すというコンセプトに絞ってつくっていたとしても、同じユルい展開になった可能性は否定できない。ひょっとしたら「サンダーバード」映画化がうまくいかなかったのには、もっと別の原因が内包されているのかもしれないよね。

 まぁ、それでも…やっぱりあのアランのガキを中心に据えたのが、最大の敗因だったのかねぇ。

 劇中ではそれなりの試練と反省を経て成長を遂げ、最後には正隊員に任命される彼だが、観客にとってはあのバカづらは治ってないからねぇ(笑)。何でこんなガキをチヤホヤするんだ…と文句言いたくもなるよ。

 大体僕は昔からガキや若造を甘やかす話が好きじゃないから、このガキを増長させるな…とスクリーンに叫びたくなったよ。世界中の災害の被害者たちだって、童貞坊やに助けられたくはないだろう(笑)。

 いやいや、そんな話はどうでもいい。おそらくあのイケてるデザインの「サンダーバード」メカをたっぷり画面に出してくれれば言う事ナシだったんだ。ドラマなんてどうでもいい。なめるように食い入るように、あの素晴らしいメカを惚れ惚れするくらい延々見せてくれれば良かったのだ。それ以外、みんなが「サンダーバード」に期待するものなんて何もないだろう?

 もっとも、これが最初から「子供向け」という気構えで見ていたら、こんなに寒々とした気持ちにならなかったかも。先に述べたようにメカの描き方は堂々たるものだし、ベン・キングズレーも手抜きナシだし。だから再度繰り返すけど…これは「お子さま向け映画」だと思って、子どもを連れてきたつもりで劇場に足を運んでいただきたい。

 昔は「お子さま」だったイイ歳こいた大人たちは…劇場ロビーで売ってる「サンダーバード」グッズを買うしかないね(笑)。

 

 

 

 

 

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