「永遠の片想い」

  Lovers Concerto

 (2004/08/16)


  

見る前の予想

 この映画は、もうコレしかないでしょう。

 猟奇的な彼女の情けないけどイイ奴の役、チャ・テヒョンがまたしてもラブ・ストーリーを演じる。それも男一人、女二人の甘酸っぱいトライアングル・ラブ。胸をキュンとさせたあげく、ハンカチ三枚ぶん泣かせる恋愛映画の王道だ。

 もう説明は要らないよね。僕はハッキリ言って、それだけでこの映画が見たくなった。

 

あらすじ

 チャ・テヒョンは、タクシーの運チャンをしながら大学の学費を稼ぐ苦学生。無精ヒゲを生やして暮らしに追われている彼だが、時折可愛い妹ムン・グニョンがやって来ては、むさ苦しい男所帯を片づけてくれたりする。

 そんな彼の元に、田舎の子どもたちを撮ったモノクロ写真が送られてくるようになったのは、いつの頃からだろう。差出人の名前はない。だがそこには、いつもちょっとしたメッセージが書かれていた。男の子に女の子がキスする写真だったら、「わたしもキスしたい」…みたいに。

 そう言えば、チャ・テヒョンもかつては写真に凝っていた頃があった。そしてこの差出人のない手紙は、彼にその頃の事を思い出させるのだった。

 それは今から5年前…。

 写真を趣味にしていたチャ・テヒョンは、今日も先輩の喫茶店の手伝いをしながらカメラの手入れに熱中。そんな彼の目は、ある一人の娘の顔に釘付けになる

 それは喫茶店の植木鉢の花の香りを嗅ごうとする、清楚な雰囲気の長い髪の少女。思わずカメラを構えてシャッターを押そうとしたその時、別の娘がカメラの前を横切ってしまう。「あっ、ごめんなさい!」

 カメラの前を横切った活発そうな彼女は、花の香りを嗅ごうとした少女の友だちらしかった。チャ・テヒョンは一瞬のうちに恋に落ちていたが、実はカメラの前を横切った彼女も彼に惹かれていた事には、さすがに気づいていなかった。

 やがて二人は店から出ていったが、このチャンスを逃すまじと追いかけるチャ・テヒョン。やがて二人は別の喫茶店に入り直した。チャ・テヒョンはなけなしの勇気を振り絞って喫茶店に入っていくと、二人の前に姿を見せた。もちろんあの髪の長い娘に想いを告げるために。

 「あ、あなたに一目惚れしてしまったんです!」

 その言葉を聞くや、髪の短い方のカメラの前を横切った娘の表情は曇ったが、そんな事にはチャ・テヒョンは気づかない。構わず髪の長い娘の返事を待つチャ・テヒョンに、彼女は静かに答えた。

 「申し訳ないんですけど、迷惑なんです…」

 「迷惑」(笑)…お友達でいましょうとか言い方はいろいろあるだろうが、ここまでズバリと言われれば気持ちいいかも。アッサリ振られてガッカリ帰っていくチャ・テヒョン。だが諦めきれない彼は、何を思ったか途中通りかかった時計屋の前で立ち止まる。そしてまたしてもあの二人の前に、時計をかざして舞い戻ってきた。「時計の針を一時間戻しますから、あの言葉はなかった事にしてください!」

 彼は二人に、友だちとして会おうと提案するのだった。

 このユーモラスで捨て身のアプローチが良かったのか、二人は笑いながらチャ・テヒョンに気を許した。髪の長い清楚な彼女はソン・イェジン、髪の短いボーイッシュな彼女はイ・ウンジュ。こうして三人は「友だち」になった。

 一緒にテレビでサッカーの試合を見る、一緒に映画を見に行く、一緒に遊園地に行く。怖いアンチャンが女の子を困らせたら、腕に自信がなくてもチャ・テヒョンはキッパリ彼女を守る。夢のような楽しくて笑いが絶えない日々が続く。

 そんな三人の心を捕らえたのは、一緒に見に行った映画「イル・ポスティーノ」。劇中に出てくる郵便配達の台詞が、彼らの心を代弁してくれるように思えたのだ。

 「恋をして心が痛い。でも、この痛みを持ち続けていたいんです

 チャ・テヒョンもソン・イェジンも、そしてイ・ウンジュも…それぞれの胸の内で、この台詞を噛みしめていた…。

 ある日、チャ・テヒョンに親切心を起こしてか、彼とソン・イェジンを近づけるイ・ウンジュ。だが、それは彼女の本心とは裏腹の行為だった。自分でそうやっておきながら自分で気分を害したイ・ウンジュは、珍しくソン・イェジンと仲違いしたりもする。だがそうは言っても、やっぱりソン・イェジンとは切っても切れないイ・ウンジュではあった

 そんな三人は、チャ・テヒョンが運転するワゴン車で旅行に出かける事になった。出発間もなく、たまたま通りかかった二人の母校の高校を見に行ったり、途中で車中一泊したり…。

 こうして三人は、美しい海辺へとやって来た。

 一人で砂浜を掘って遊ぶボーイッシュなイ・ウンジュを見つめながら、ソン・イェジンはチャ・テヒョンに話しかける。「彼女、とても可愛いでしょう?」

 「うん。時々あの子を小さくしてポケットに入れたくなるよ

 そんなチャ・テヒョンの答えに、ソン・イェジンは何かを感じていたのか。

 民宿の部屋で昼寝をしているうちに、たまたま目覚めたチャ・テヒョンは、その場にソン・イェジンがいない事に気づく。そして無邪気な顔をして眠り込んでいるイ・ウンジュを見つめているうち、ふと彼女に口づけをしようとして愕然とする。いつの間にか自分の気持ちはイ・ウンジュに移っていたのか…。

 そんな動揺を収めようと外に出ると、そこにはソン・イェジンが一人佇んでいた。そんな彼女に、チャ・テヒョンはお互いの初恋について話そうと持ちかける。

 チャ・テヒョンの貸本屋の娘との初恋話は他愛のないものだったが、ソン・イェジンの話は聞いているチャ・テヒョンにもちょっとした感銘を与えた。それは彼女が幼い頃に病気で入院した時のこと、やはり重い病気で入院していたイタズラな男の子との初恋だった。そのうち彼女と男の子は、お互いの名前を取り替えっこする事にした。そうすれば、離ればなれになっても一緒にいられる気がしたから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この後は映画を見てから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて小高い丘に遊びに行った三人だが、生憎と雨が降り出してズブ濡れ。そのうちにみるみるソン・イェジンの具合は悪くなり、宿に戻ってから彼女は寝込んでしまう。そんなソン・イェジンを心配してか、涙を流すイ・ウンジュ。思えば彼女と二人きりになったのは、チャ・テヒョンにとって初めてのこと。何となくドギマギする二人は、いつしか口づけを交わしているのだった…。

 それからは家に帰っても体調が戻らないソン・イェジン。チャ・テヒョンとイ・ウンジュは二人で顔を合わせるが、何となく気まずい。あげくの果てに酒を飲みに行ってイ・ウンジュは泥酔して絡んでくる始末。何が何だか分からないチャ・テヒョン。

 やがて例の先輩の誕生パーティーが、先輩の経営する喫茶店で行われた。チャ・テヒョンは例の二人を誘っていたが、先日のイ・ウンジュの様子から来ないだろうと諦めていた。ところが意外にもソン・イェジンとイ・ウンジュはやって来た。ただし、ソン・イェジンは大きなマスクをして体調は良くない様子だし、イ・ウンジュもどこか表情が固い。結局ソン・イェジンは一足先に帰る事になったが、帰り際に彼女はチャ・テヒョンの顔に触れ、その感触を焼き付けておこうとするかのように手でゆっくりとなでた。

 そんなチャ・テヒョンは店に戻ってから、ソン・イェジン宛の手紙を書いていた。それは自分とイ・ウンジュの仲を取り持ってくれ…という内容だった。彼はハッキリと、イ・ウンジュを愛している自分に気づいたのだ。

 だが、彼がその手紙をイ・ウンジュ自身に託したのがマズかった。彼女は誤解して、その手紙を破ってしまったのだ。

 それからしばらく、二人の娘はチャ・テヒョンの前から姿を消した。迂闊にも電話番号も住所も聞いてなかったチャ・テヒョンは、彼女たちと連絡を取る術もなかった。そんな彼に、あのイ・ウンジュが会いたいと言ってくる。

 屋台で飲みながら再会する二人。だがイ・ウンジュは人が変わったようだ。右手に包帯を巻いているのも気になる。あげく口を開けば、あんまりな言葉が飛び出す。「あなたが重荷になったの…」

 それを聞いたチャ・テヒョンは、思わず心にもない言葉を吐いてしまった。「こっちも君らが重荷になっていたところだよ」

 こうして無惨な幕切れで別れた二人。イ・ウンジュが帰った後も飲み続けたチャ・テヒョンは泥酔し、あんな言葉を放った自分を呪って地面を殴りつけた。その後、どうやって自宅まで戻ったのだろう?

 目覚めてみると自分の部屋。ところが誰が手当てしたのか、昨夜地面を殴って傷ついた右手は、きれいに包帯が巻かれていた…。

 それから5年後…。

 例の写真の送り主を追って、封筒の消印にある郵便局を探すチャ・テヒョン。その郵便局は、ソウルから離れた山の中にあった。ところが郵便局員の男は、そんな封筒など見たことがないの一点張りだ。

 だが、それは郵便局員のウソだった

 実はこの男、差出人の娘にゾッコン惚れていた。その恋の病が高じて、留守中に彼女の家に上がり込んでしまう。彼はそこで、投函されずにしまい込まれた何通もの封書を見つける。そうなると、それらの封書をどうしても郵送せずにはいられなくなった男。それは郵便局員のサガというものだろうか…。

 だが、そんな事情では「知っている」とも言えまい。彼は知らぬ存ぜぬで口をつぐんだ。

 やがてあの二人の消息がどうしても気になってきたチャ・テヒョンは、例の旅行の際に二人の母校を訪ねた事を思い出す。そこで女教師から卒業アルバムを見せてもらうチャ・テヒョン。ところがこの女教師、偶然にも二人と同じ学年だったのだ

 そんな女教師の口から聞いた、二人の秘密とは…?

 

見た後での感想

 正直言って、この映画って見始めた頃はちょこっと恥ずかしくなった(笑)。主人公の男の子が一目惚れして告白しに行くあたりもかなりなもんだが、何しろ一旦は振られた彼が再度二人の女の子に持ちかける提案がスゴイ。

 「今度会った時には、友だちになろう」

 うわ〜、こりゃあくすぐったくてたまんないぜ。「友だち」だよ! 言っておくけど「セックス・フレンド」じゃないよ(笑)。カラダの付き合いじゃない「友だち」…。いや〜、「セックス・フレンド」よりただの「友だち」の方が恥ずかしいっていう、今の日本の在り方も何だけどねぇ…(笑)。

 二人の女の子の方もスゴくて、「キスってどんな感じなの?」…とくる。イマドキなら「フェラチオってどんな感じ?」…と聞いたってカマトト臭く聞こえる(笑)。万事がそんな感じ。「5年前」ったってコレって現代の設定だろうから、いくら何でもそりゃないでしょう…って思ってしまう。一緒にクルマで旅行に行って、一緒に民宿で昼寝…って、普通は何か起きるのが自然だろう? 一人余っちゃマズイって言うなら3Pって手もあるぜ。むしろそこでセックスしない方がどこか危ない(笑)。

 だけど、この映画はソレがお約束なのだ

 ま、ハッキリ言って一昔前の少女マンガの趣向。でも、そこには愛すべき人間本来の純粋さもあったはず。この映画では真っ向から照れもせず、そこに挑戦している。で、そのためらいのなさがいっそサッパリして気持ちいい。

 だからこの映画のルールが分かったとたん、一気に物語も登場人物も好ましく思えてくる。本当は自分の人生も周りの人々も世の中もこうであったらいいのに…と思わせる好ましさだ。それは清く正しいからいいのではない、真っ当な事を真っ当に信じている事の潔さが美しいんだよね。

 あぁ、それなのに…見事に汚れちまったよねぇ。自分も世の中も、忌々しい女どもも…(笑)。

 閑話休題。最初は確かに恥ずかしくて辟易しちゃうこの映画だが、そんなこんなで案配が分かってみるとなかなかにジ〜ンと来る。これはそんな映画だ。

 そして見に行って分かったんだけど、この映画って実はかなりの豪華キャストなのだ。

 主役のチャ・テヒョンは言うまでもなく「猟奇的な彼女」で一気に好感度爆発の「いい奴」俳優。そして彼を取り巻く二人の娘がこれまた豪華。ラブストーリーの古風で儚げな女の子を演じたソン・イェジンが、またまた直球のオトメチックな役柄で好演。…っていうか、この人ってこういう役しか出来ないのかもしれないが(笑)。さらにボーイッシュな方の女の子には、ブラザーフッドでチャン・ドンゴンの婚約者役を演じたイ・ウンジュ。さらにさらに…驚いた事にチャ・テヒョンの妹役には、ホラーの問題作(笑)箪笥の主役姉妹の妹を演じたムン・グニョンが扮しているという念の入れ方。近年の韓国映画にハマった方ならば、おおっと驚いてしまう布陣がズラリと並ぶ壮観さなのだ。言わば、いまや旬の韓国映画の…その真っ直中にあるような映画

 こういうステキな役者さんたちが、それぞれに見せ場があって好ましい印象を振りまくわけ。特にソン・イェジンちゃんに至っては、舌ったらずな可愛い歌まで披露する。こりゃあ韓国映画好きにはたまらないんじゃないだろうか。

 しかも、どの役者たちもどこか人なつこく好ましげな個性の人たちばかり。だからこそ、この映画もとても親しみやすく、気持ちよく感情移入出来るのかもしれない。

 この映画の脚本・監督を手がけたイ・ハンって人は、何とかつてあのペ・チャンホ作品の助監督をやっていた人だと言う。助監督が必ず師匠スジの作風を受け継ぐという訳ではないが、それでもペ・チャンホ作品のどこか「甘い」ところ、にも関わらず「愛すべき」「親しみやすい」と思わされるあたりは、この人の映画に確かに受け継がれているように思うんだよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからは絶対に映画の後で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見た後の付け足し

 ただねぇ…この映画の終わらせ方として、アレはいかがなものだろうか?

 途中で二人の片方が死んだ…と主人公の男の子に知らせておいて、後で名前の交換…というちょっとしたどんでん返しがある。それは確かにベタと言えばベタな、一昔前のメロドラマや少女マンガの定石かもしれない。だが、それにしたってイマドキの韓国映画って、この手の趣向がやたら多くはないか? 最後にM・ナイト・シャマラン風のどんでん返しってやつが(笑)。

 「カル」「H/エイチ」「箪笥」みたいなミステリー仕立てならともかく、「イルマーレ」「ラストプレゼント」「ラブストーリー」…みたいな映画のラストにまで、必ず“驚愕のエンディング”があるっていうのはねぇ(笑)。もっとも、何よりあの「猟奇的な彼女」にすら、ラストのビックリどんでん返しがあったっけ。これってあちらの流行りなんだろうか?

 実際のところ、この名前取り違えってすぐにネタは割れるし、本当のところドラマにおける効果は皆無と言っていい。何でこんな回りくどい事をやったんだか分からないんだけどね(笑)。

 それと、片方の娘を死なせたのは構成上致し方ないとして、もう一人の娘まで重病人でした…ってのはいかがなものだろうか?

 そんな気配がまったく見えなかっただけに、あまりの唐突さに唖然。久々の再会場面で出てきたら、あんなに活発そうだったのがいきなり顔色悪くなってゲッソリ(笑)。そりゃあないだろう。そして主人公を置いて一人で真相を明かしたあげく昇天…って、このエンディングにはやり切れなくなっちゃったよ。わざわざ殺すために再会させたようで、いささかあざとくはないか?

 そういやイ・ウンジュに惚れた郵便局員が勝手に彼女の家に上がりこむのもどうかと思うが、そこで見つけた封筒の束を、わざわざ自分で投函したってのもよく分からない。それって「郵便局員のサガ」だって言われてもねぇ。気が付いたらついつい投函してしまったのか(笑)? これって不自然きわまりなくはないか?

 例えに出しては何だけど、それってTHREE/臨死」韓国篇「箪笥」キム・ジウンの作風みたいだ。必然性もへったくれもないけど、単なる脅かしのために画面にいきなり何かをワッと出す。そんなコケ脅かしの趣向ばかりあちこちに設ける。そんなあざとさにどこか似ているよね。仲良し二人組の女の子の片方を死なせるだけなく、もう一人の方も殺しちゃうなんて、ちょっと趣味が悪すぎやしないか?

 それまでとても好ましく思って見ていただけに、最後のいきなりの「泣け!」と言わんばかりの無理やり趣向に、ちょっとガクッとしちゃったよ。気持ちの持って行き場がなくなって。

 ただね…じゃあキム・ジウン映画ほど頭に来たかと言うとそうじゃない

 それは出てくる登場人物たち一人ひとりが、それらを演じる役者の好感度以上に好感の持てるキャラクターだからだ。ラストのイ・ウンジュの唐突な病死以外は、誰も彼もまずまず共感できる言動をしている。好感度の高い役者ばかりを集めてるってのも、そういうキャラクターの「いい感じ」を大切にしたいって気持ちの表れだろう。この映画はそんな「いい奴」たちの「いい雰囲気」を楽しむための映画なのだ。

 明らかに作者は、見る人たちにも登場人物を好きになってもらいたがってる。これって作者が登場人物に愛情を注いでいる証拠だと思うんだよね。それって先に挙げた師匠ペ・チャンホとも共通する資質だ。どこか人をバカにしているキム・ジウンには、これが見られない。

 さらにこの結末には、イ・ハンの作者としての意志も強く感じられるのだ

 結局主人公の男の子と二人の女の子の恋心は、どれも成就される事なく終わる。だが、実はこの映画のラブストーリーはそれだけではない。そんな本筋とはまったく違うところで、別のラブストーリーが展開しているのだ。

 例えば、僕が先に挙げた郵便局員の男がそれだ。田舎に引っ込んだイ・ウンジュに想いを寄せる彼は、その手紙を秘かに郵送してしまう。この設定はいささか不自然ではあるが、確かに彼は小さな役ながらこの映画の重要な部分を担っている。彼は結局主人公チャ・テヒョンの出現で夢破れ、ついに病いに倒れたイ・ウンジュに涙する。彼の想いもまた実らないのだ。

 さらにチャ・テヒョンの妹ムン・グニョンは、貸本屋のバイトのお兄ちゃんに想いを寄せている。こちらは一応のハッピーエンドではあるが、彼女の想いが届くのは彼が兵役に取られた後のことだ。

 想いは実るとは限らない…実っても、必ずしも望ましいカタチではない。

 それってこう言っているのではないか? 想いが実る事、成就する事に価値があるのではない。想いを持つ事…それ自体に価値があるのだ…と。

 だとしたら、イ・ハンがいささかあざといとも見られるエンディングを採用したのも分かる気がする。僕はこの終わり方を最良の選択だとは思わないが、イ・ハンが言いたい事は分かった。ああなってしまったのは、「ちょっと泣かせてやろう」と考えたスケベ根性か、はずみでやってしまった勇み足によるものだろう。それでも彼には言いたい事があったし、それは伝わってくる。

 それはこの作品とは全然違う映画だが、アメリカ映画アダプテーションでも最後に結論として浮かび上がって来たことだ。思いが成就したかどうかは問題ではない、思いを持つ事それ自体に価値がある…。

 この映画があんまりな幕切れを迎えながらも、なぜかキライになれないのは、そんな作り手のハッキリした意志が感じられるからなんだろうね。

 

 

 

 

 

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