「ランダウン/ロッキング・イン・アマゾン」

  The Rundown

 (2004/06/14)


  

見る前の予想

 正直言って、僕は最近の格闘技事情には明るくない。K-1だのPRIDEだのって全然分からないし、めったに見たこともない。そういう意味じゃ世の中に疎いってことはあるんだけどね。でも、ここだけの話を言っちゃうと格闘技に「イマドキの流行り」があるってこと自体がどだい興ざめで、正直言って見たくはないって事はあるんだよね。

 ところでそんな僕でも、この「ザ・ロック」ってのは知っているんだから、その人気たるや大変なモノなんだろうね。

 アメリカのプロレスってかなりショーアップされていて、まるでドラマやショーみたいなエンターテインメントとしての要素が強いらしい。実は僕も何度かテレビで見た事があるが、ヤレ家族が兄弟がお仲間がどうのって絡みが出てきて、そこで対立やら仕返しやらが出てくる。つまりはドラマ仕立てなんだよね。そうなると、役者としてのセンスも要求されて来るんじゃないか。ザ・ロックの映画界進出…その手始めのハムナプトラ2/黄金のピラミッド出演というのは、だから当然の成り行きだったと思う。悪役スコーピオン・キングに扮して、小さな役ではあったが存在感は抜群。それも当然だろう。きっとザ・ロックって芝居心のあるレスラーに違いないからね。

 で、これが好評だったかザ・ロック側の野望かは分からないが、この「ハムナプトラ」シリーズからスピンオフするカタチで「スコーピオン・キング」なる主演作まで登場。これにはさすがの僕も驚いたよ。ザ・ロック人気もそこまでとは思ってなかったからね。でも、彼は映画でのキャリアを築きたいようだ。何と主演第二弾作品がもうやって来た。

 前作は史劇。昔で言えばヴィクター・マチュアみたいな筋肉マンの役どころだったけど、今度は現代劇だという。すると、映画俳優としての真価はむしろここから…と言えるのかもしれない。

 ザ・ロックがもし映画俳優として大成するならば、位置づけとしてはシュワルツェネッガーのそれに酷似するだろうね。そうなると、シュワの場合で言えば「コナン・ザ・グレート」みたいな役をやってた時から「ターミネーター」「コマンドー」に移行したあたりが大事だったはず。ならばザ・ロックもここが正念場だよね。

 そういや僕も、最近キレが良くて楽しいアクション映画をとんと見ていない。よし、ここはザ・ロックに僕の2時間預けてみるか!

 

あらすじ

 某クラブを借り切ってのパーティーは大盛況。セレブも押しかけて大騒ぎだ。そこに一人の大男がやって来る。

 彼の名はザ・ロック。借金の取り立て屋だ。

 今回のターゲットは、パーティーの奥を陣取るアメフト・スターたちの中の一人だ。だが、こいつが大人しく取り立てに応じる訳もない。そうなりゃ周りのアメフト仲間も騒ぐ。いずれもやたらデカくて逞しい屈強の男たちばかりだ。ザ・ロックもこの取り立てには心配が絶えない。ただし自分に…ではなく相手の方に

 「あいつらまだ今シーズン優勝が狙えるんだ。手荒なマネはしたくないなぁ

 気は優しくて力持ち。何とか穏やかに話を進めたいザ・ロックだが、アメフト・スターはナメ切って傲慢な態度。借金を待つ代わりにカタとしてダイヤの指輪を預かりたいと言っても、一笑に付すどころか侮辱するアリサマ。これにはザ・ロック、もはや我慢もこれまで。アメフト・スターにズバリ忠告だ。「2つプランがある。どっちか選んでくれ」

 プラン・A:指輪を大人しく渡す。

 プラン・B:指輪をオレに取られる。

 だが、アメフト・スターは聞く耳持っちゃいない。ためらわずにプラン・Bを取ったのが運の尽き。「選択を間違ったな」

 次の瞬間、アメフト・スターたちは全員大ケガをして、その場に横たわっていたから恐ろしい。

 だがそんなザ・ロックも、ヒマさえあればラジオで聴いた料理のレシピをメモったり、お茶目な面もあるのだ。借金取り立てなど、やりたくてやってる訳ではなかった。すべてはやむにやまれぬ理由があったからだ。

 それは暗黒街の大ボスへの借金

 この大ボスに睨まれては、さすがのザ・ロックもダンマリを決め込むしかない。いささか面白くはないが仕方ない。何せ相手は暗黒街の顔役だ。しかもしたたか借金もある。逆らう訳にはいかないのだ。

 ザ・ロック自身は早くこれを清算して、しがないレストランを開いて堅気に暮らしたいと願っていた。だから、そのためには手っ取り早く稼ぎたい

 それを聞いた大ボスは、ザ・ロックにとっておきの仕事を持ちかけて来た。

 何かと父親に反抗していた大ボスの息子が、アマゾンの奥地に何やらお宝を探しに行ったと言う。だが、そのままそこに居着いてしまった。おまけに地元のワルに目を付けられているらしい。これを何とか奪還してきて欲しい。

 そうなりゃイヤとは言えないザ・ロック。何しろ奪還すれば借金はチャラ、レストランの資金は稼げる。一石二鳥のオイシイ仕事だ。

 だがアマゾンに着く頃には、ザ・ロックも考えを改めざるを得なかった。

 暑い、湿ってる、周囲は鬱蒼と茂る怪しげなジャングル、周りに文明がほとんどない未開の地。おまけに自分を乗せてきたセスナのパイロットはどこか妙な男で、セスナそのものもブッ壊れそうなシロモノ。コワイものなどないはずのザ・ロックも、これには終始怯えっぱなしだ。

 セスナから降りると、今度は山道を延々ジープで走っていく。周囲のジャングルや川には、あらゆる猛獣やら毒虫がウヨウヨ。とてもじゃないが人のいる所ではない。いや、人はいるにはいるが、それは泣く子も黙る反乱軍ゲリラだ。まだ毒虫の方がマシかもしれぬ。

 そんなこんなでやって来た小さな町…その名もエルドラド

 そこは近くで採掘中の金鉱で成り立っている町だった。もとい、金鉱を経営している町の有力者、クリストファー・ウォーケンがつくった町だ。

 近くにすり鉢状に掘られた巨大な金鉱。そこに無数のアリのようにたかって、地元の労働者が手作業で金を掘りだしていた。掘った金はウォーケンたちが買い上げるが、どうせ二束三文でしかない。それでもこの町で暮らして行くにはカネがいる。結局労働者はウォーケンに対して借金を抱え、それに縛られて生きて行くしかない。そんな徹底的な搾取のシステムを創り上げて、この町に君臨するのがウォーケンたちなのだ。

 ザ・ロックはここで、その有力者ウォーケンと直談判だ。実は今度の大ボスの息子は、身柄をこのウォーケンに押さえられていたのだ。で、カネで話はついた

 …はずだった。

 その頃、問題の大ボスの息子ショーン・ウィリアム・スコットは、酒場で店を切り盛りするねえちゃんロザリオ・ドーソンを口説いている真っ最中。そんなウィリアム・スコットをドーソンは相手にしてるんだかしてないんだか。彼の殺し文句は、かねてから探していたアマゾンの秘宝を見つけた…との事だが、元よりそれはこの男のホラ話めいて聞こえるから、ドーソンも半信半疑がいいところだ。

 そこにやって来たのが、泣く子も黙るザ・ロック。

 彼は単刀直入に大ボスの息子ウィリアム・スコットを探しに来た事を告げて、その当人が目の前にいる事も察しをつけた。だが元々が親父イヤさに飛び出した身。しかもお宝を見つけた今はここから離れたくない。そんなこんなで、当然のごとくザ・ロックに「はい、そうですか」と言える訳もない。そんなウィリアム・スコットに、ザ・ロックはお得意の二者択一を迫る。「2つプランがある。どっちか選んでくれ」

 またしてもウィリアム・スコットが誤った選択をした事は言うまでもない。だが、彼がザ・ロックにしたたか叩きのめされ、酒場を連れ出されようとしたその時…。

 酒場にウォーケンとその手下がやって来た。

 どうした、カネは払って話はついたはずじゃないのか? だがウォーケンは事情が変わったと説明する。ウィリアム・スコットがアマゾンの財宝を本当に見つけたらしいと言うのだ。ならばこいつをおとなしく返す訳にはいかない。そんな話は聞いてないとザ・ロックが言っても、ウォーケンに話を聞く気がない事は言うまでもない。たちまち始まる大立ち回り。だが、ウォーケンもまさかザ・ロックがここまでやるとは思わなかった。たちまち手下たちはねじ伏せられ、ザ・ロックはウィリアム・スコットを連れて酒場から脱出。ジープに乗って、セスナを止めた飛行場までまっしぐらだ。

 だが、ウィリアム・スコットもこのままおめおめと連れ戻される訳にはいかない。

 彼は運転中のザ・ロックに体当たりし、爆走中のジープを崖下に転落させる。投げ出されたザ・ロックとウィリアム・スコットはどんどんどんどんゴロゴロゴロゴロ崖を転がって落ちていく。落ちて落ちて落ちて…どこまでも落ちて行った先は、奥深いジャングルの中のアマゾンの渓谷だ

 何と何がいるか分からない得体の知れないジャングル真っ直中に、ザ・ロックはウィリアム・スコットと共に放り出されてしまった。このウィリアム・スコットという男もペラペラと口の減らない男で、何かと言うとザ・ロックをハメてやろうと虎視眈々の油断の出来ない野郎だ。しかもジャングルには、危険極まりない反乱軍が潜んでいるはずではないか。

 いやいや、それより何より、コケにされたウォーケンが黙ってない。このまま大人しく彼らを帰すわけがない。ともかくどいつもこいつも、ウィリアム・スコットが見つけたと言うお宝を狙っているのだ。

 果たしてザ・ロックは万難を排し、このウィリアム・スコットを連れてジャングルを脱出出来るのか?

 

見た後での感想

 ハッキリ言って、ストーリー紹介はここまでで十分。これ以上何を言っても実物を見なけりゃ魅力は伝わらないし、第一お話がどうなるかなんて誰にも大体分かるだろう? つよ〜い善玉が悪玉をぶっつぶす。それだけだ。

 それにしても、これがなかなか面白いんだよ

 まずはザ・ロックがいい。確かに現時点の映画俳優としての彼は、出てきたばかりのイキの良かったシュワルツェネッガーを彷彿とさせる。無口でムチャクチャ強くて、笑顔も見せないくせにケロッとジョークを言う。毎度毎度、ここぞという時に相手に二者択一を迫るのもオカシイ。なかなかご機嫌に楽しいキャラなんだよね。

 そういや、冒頭のパーティー場面でシュワもカメオで出てくる。これなんか、ザ・ロックが跡目襲名って目配せなんだろうか。

 しかも、デカイ図体してレシピをメモるなんてお茶目さが嬉しい。コワモテで強いだけでは、面白くも何ともないんだよ。

 で、今回の楽しさは、このザ・ロックに旅のお相手を絡ませたこと。ショーン・ウィリアム・スコット演じる若造が、何とも食えない男なんだよね。で、こいつがベチャクチャしゃべりまくると。ザ・ロックが苦虫噛みつぶしたような顔になる。ウィリアム・スコットは油断の出来ない男で、何かというとザ・ロックを出し抜いてハメてやろうとするんだよね。そのへんもお楽しみ。つまり、あのウォルター・ヒルの傑作「48時間」に似たような味があるんだよ。まぁ、さすがに芸達者ニック・ノルティとエディ・マーフィーの域にまでは達していないけれど、この二人の掛け合いは楽しいよ。ラストにも楽しいオチがあるんだけど、そのあげくのザ・ロックの幕切れの一言が、「いつかブッ殺す!」だからね(笑)。これには嬉しくなったよ。

 そういえばこのウィリアム・スコットって、「バレットモンク」でチョウ・ユンファと共演して、香港風アクションに大活躍していたではないか。この人ってこっち系のアクション映画専門になっちゃうのかねぇ。それはそれで楽しい気もするが、俳優としてはそれでいいのか人ごとながら心配にもなる(笑)。

 それよりも大きなお楽しみが悪役…そう、何と超大物クリストファー・ウォーケンが出演しているのだ!

 このウォーケンが実に楽しそうに演じているから、こっちも見ていてニコニコしてくる。彼はこういう映画って好きなのかなぁ。ホントに嬉しそうに演じているよ。これって「キャッチ・ミー・オフ・ユー・キャン」に次ぐ好演かもしれない。

 こんな風に、意外にも「ランダウン」は主演者たちの個性と芝居を楽しむ映画なんだよね。決して馬鹿力映画じゃない。むしろいろいろな工夫や仕掛けや芸を楽しむ映画だ。これってイマドキはハリウッド映画でも珍しくなった、娯楽映画の原点だよね。

 もちろんアレコレとふんだんな見せ場の盛り込み方も、惜しげもない大サービスぶりだ。ジャングルでのマントヒヒとの遭遇、地元反乱軍との男たちとのファイト…さらには途中から「インディ・ジョーンズ」シリーズみたいな宝探しの興味も出てくる。その間とぎれる事なくまき散らされるオヤジなギャグ。この脚本には嬉しくなったね。見せ場や工夫をこれでもかと詰め込んだあげく、ザ・ロックの変なキメ台詞などの伏線も張って、最後に粋なオチまで設けているから楽しい。娯楽映画のお手本みたいな脚本なんだよね。

 そして誰が監督したんだと思ったら、クリスチャン・スレーターの実に変な映画(笑)…「ベリー・バッド・ウェディング」を撮ったピーター・バーグという男だと言う。あれも妙な笑いが絶え間なかったからね。何となく分からないでもない。

 しかも当然のことではあるが、いよいよのクライマックスになったら一気にアドレナリン放出。ザ・ロックが本来のコワモテに戻って、怒濤のアクションになだれ込むから興奮するよ。

 いやぁ、こんなに惜しみなく面白さを盛り込んだこの映画、入場料が安く感じるよね。

 

見た後の付け足し

 しかも注目出来るのは、このザ・ロックの信条が「銃を持たない」ことだという点。彼はアメリカン・ヒーローにも関わらず銃を否定する。銃を持つと良くない事になる…というのが座右の銘だ。こりゃ珍しいよね。もっともいよいよクライマックスとなった時にブチ切れて銃を撃ちまくってしまうので、これがアメリカ映画としては画期的な事だとことさらに持ち上げようとは思わないけどね。それでも「銃は良くない」と言い切るのは珍しいんじゃないか。

 もちろんその設定って、ザ・ロックが自らの信条をあえて破るそのブチ切れぶりを強調するために設けられているに違いない。そこでは見ているこっちも「ザ・ロック、思いっ切りやっちまえ!」と熱くなってるからね。

 それでも何でも、仮にこれを偽善だと決めつけたとしても、こんな主張をするアメリカのアクション・ヒーローなんて見たことなかった。

 それだけでも、この映画ってただの馬鹿力映画じゃない。そういや、あのシュワ初期の傑作「コマンドー」だって、脳味噌カラッポな暴力映画じゃなかった。ちゃんとユーモアでカラッと仕上げた品の良さがあった。だからこの「ランダウン」も、ただただ暴力をまき散らしてスカッとするだけの低脳映画じゃないって、僕は断言できるんだよね。

 

 

 

 

 

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