「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」

  The Lord of the Rings - The Return of the King

  その1

 (2004/02/23)


 

「DAY FOR NIGHT」5周年プレ・イベント感想文

 

 

 みなさま長らくお待たせいたしました。これより当館館主のご挨拶に引き続き、「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」感想文を上映いたします。上映時間は3時間20分。お手元の携帯電話、PHSは周囲のお客様のご迷惑となりますので、電源をお切りになるかマナーモードにしていただきますようお願いいたします。それではみなさま、どうぞ最後までごゆっくりご鑑賞くださいませ。

 

「DAY FOR NIGHT」は今年で5周年を迎えます

 こんにちは、当館「DAY FOR NIGHT」管理人の映画館主・Fです。本日は当館にようこそおいでくださいました。これよりみなさまお待ちかねの「ロード・オブ・ザ・リング」三部作完結編、「王の帰還」の感想文を上映致します。

 前二作の感想文ではナショナル劇場「水戸黄門」をはじめ、アレコレと好き勝手にやってまいりましたが、それもいよいよおしまい。特別な三部作の特別な完結編には、やはりちょっと特別な感想文をご用意したいと考えました。

 ところでみなさまにお楽しみいただいているこの映画サイト「DAY FOR NIGHT」も、今年2004年で早や5周年を迎えるに至りました。実際には5周年にはまだ少々早いのですが、途中いろいろ紆余曲折もありながらも、よくもここまでたどり着いたものよ…と感慨に耽らずにはいられません。

 そしてこの特別な三部作がこの2004年で大団円を迎えるというのも、一つの縁のように思えてなりません。そういった意味でも、今回の感想文を特別なものにしたいと考えた次第です。

 そこで今回は従来通りの「ロード・オブ・ザ・リング」感想文の趣向に加え、当サイト5周年プレ・イベントとしての意味合いも込めて、当サイトを開設した1999年からこの2004年にかけての、数々の映画を回顧する感想文とさせていただきました。

 読んでいただければそんな大げさなシロモノではないのが一目瞭然なのですが(笑)、ともかくはここまで当サイトをご愛顧していただいたみなさまへのお礼として、またこの5年間の素晴らしい映画たちを振り返っていただく一助として、ご一読願えれば幸いと思います。

 では堅苦しい前置きはここまで。まずは八兵衛、ご老公、矢七たちお馴染みのメンバーの活躍を、存分にお楽しみください。映画が終わった後で、またお会いしましょう。

 

この感想文は「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」のストーリーのほぼ全容に触れています。どうか映画をご覧になった後でお読みください。

 

「ロード・オブ・ザ・リング」第一部感想文を読みたい方はこちら

 

「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」感想文を読みたい方はこちら

 

 

いよいよ風雲急を告げる中つ国

 それは昔々のこと。平和に暮らす一人のホビットがおりましたとさ。その名はスメアゴル、またの名をみのもんたことアンディ・サーキス。楽しみと言えば、テレビのプロ野球中継を見ながらコミカルなナレーションをつける「好プレー珍プレー」の芸という愉快な男だった。

 ある日、みの=スメアゴルはもう一人のホビット・デアゴルと川で釣りに興じていた。ところがデアゴルの釣り糸に魚がかかったと喜んだのもつかの間、その魚の引きが強すぎて彼は川に落ちてしまう。

 「な、なんだこの魚は〜! ひょっとして『ソードフィッシュ』『ファインディング・ニモ』か、はたまた『シュリ』か!」

 とか何とか言いながら魚に水中をグイグイ引っぱられていくデアゴル。そんな彼が沈んだ川底で、一つの指輪を見つけたのが運の尽きだった。

 やがてデアゴルを助けに来たみの=スメアゴルとの間で、この指輪を巡って取っ組み合いの大喧嘩。ソレというのもこの指輪に何とも不思議な魅力があったからだが、ケンカのつもりが勢い余ってスメアゴルは「アメリカン・サイコ」状態に陥り、デアゴルの首を絞めて殺してしまった。そんなとんでもない事をした直後も、スメアゴルの顔にはデアゴルを殺してしまった後悔の念より指輪を手に入れた満足の表情が広がるアリサマだ。

 当然スメアゴルは人殺しの汚名で、仲間から総スカンをくらう。それ以来、スメアゴルは暗くじめついた洞穴の中で、ずっと独りぼっちで暮らしていくことを余儀なくされた。寂しさに身もだえし、食料がない事から生魚を常食とするうちに、指輪の魔力も手伝ってすっかり性格も身なりも歪んでしまったスメアゴル。いつしか顔も浅黒くなり、オヤジにアブラぎったあの「思いっきり」みのゴラムとなっていた。

 そんな指輪の亡者みのゴラムが、うっかり八兵衛ことフロド=イライジャ・ウッドとその舎弟のサムことショーン・アスティンの指輪を捨てる旅に同行しているのだ。ただで済む訳がない。案の定フロド=ウッドとサム=アスティンが寝静まった夜中、みのゴラムは自らの「思いっきり」と「珍プレー」の両人格に引き裂かれて、よからぬ企みに悦に耽っていた。

 「いいか。オレたちの『ファイト・クラブ』状態は他言無用だぞ。指輪を手に入れるためにあいつらをハメるんだ。例のクネクネの…」

 「クネクネの電動こけしだね」

 「バカ野郎。クネクネ階段を上ってだな、シェロブの婆さんの餌食にしちまうんだよ」

 「ウシシシ、熟女ババアAVだね」

 …とか何とか、はっきり言って「珍プレー」みのゴラムは分かってるんだか分かってないんだか。だがそんなやりとりの最後の方だけは、つい目を覚ましたサム=アスティンの耳に届いてしまったからたまらない。いきなりみのゴラムをこづいて、「テメエこの野郎!」と胸ぐら掴んだのも無理はない。

 だが狡猾なみのゴラムは、悪だくみの事なんかスッとぼけてばかり。疲れ切っていながら起き出した八兵衛フロド=ウッドも、そんなみのゴラムの言い分ばかり聞くから情けなくなるサム=アスティンだった。そしてサム=アスティンの悩みはもう一つ。彼らの食料が残り少なくなってきた事も…。

 一方、ヘルム峡谷での壮絶な戦いを終えたガンダルフことご老公イアン・マッケラン、人間のアラゴルンこと矢七ヴィゴ・モーテンセン、エルフ族のレゴラスこと助さんオーランド・ブルーム、勇猛な小人ドワーフ族のギムリこと格さんジョン=リス・デイビスらは、樹木マフィアたちが水浸しにした国会議事堂周辺にやって来た。するとホビットのピピンことビリー・ボイドとメリーことドミニク・モナハンの二人がご機嫌で勝利宣言のVサインだ。

 裏切り魔法使いサルマンことコイズミ=クリストファー・リーは衆院選が思うに任せなくても、ひたすら国会議事堂に立て籠もっている。自民党をブッ壊すなんて言い草も今は昔だ。「奴を引っぱり出しましょうか?」

 「結構だ。クリストファー・リーは『スター・ウォーズ/エピソード2』でヨーダとのチャンバラがあったから、この映画はもういいじゃろう」と、ご老公マッケランも余裕のコメント。かくして「王の帰還」からはリーの出番はなくなった。「見たけりゃDVDのスペシャル・エクステンデッド・エディションを買えとは、ピーター・ジャクソンも商売上手なもんだのう

 そんな時、ピピン=ボイドの足下でキラリと光るものが。それに目を留めて拾おうとしたピピン=ボイドから、ご老公マッケランは勢いよくそのブツをかっさらう。「そいつは『ハリー・ポッターと賢者の石』みたいなもんじゃ。魔法界のVIPのポッターならともかく、オマエにはチト荷が重いわ」

 それはキラキラ光るイマドキ珍しいボーリングのボールだった。何やらいわくありげなボールだが、かつてホビット庄のビルボ杯争奪ボーリング大会でパーフェクト・ゲームを達成した事もあるピピン=ボイドは、そいつが気になって仕方ない。

 ともかくは一同はローハンの国に戻った。勝利の美酒に酔いしれる一同。ヘソ出しネエチャンがカウンターに乗って踊り狂うローハン国の酒場「コヨーテ・アグリー」で、ピピン=ボイドとメリー=モナハンもハメを外して大ハシャギ。「ムーラン・ルージュ」仕込みのカンカン・ダンスに興じて、みんなの大受けを取る。だが、どうにもハシャギ切れないのがご老公マッケラン。その後八兵衛フロド=ウッドたちがどうなったのか、一向に分からないのが浮かない表情の理由だった。

 「『千と千尋の神隠し』にでもあったのか、まったくわしの心眼にも見えん。やっぱりあの者たちには『ミッション:インポッシブル2』だったかのう。まったく物事は『ストレイト・ストーリー』にはいかないもんじゃ…」

 そんな一同が寝静まったある晩のこと。ピピン=ボイドはついつい例のボールが見たい気持ちを抑えきれず、ご老公の隙を見計らってボールを取り出した。それに気づいたメリー=モナハンが止めても聞く耳を持たない。「こいつはオレのマイボールにするんだ!」

 と、そいつの穴に指を突っ込んだとたん…。

 うわわわわわわ!

 いきなりボールが燃えるように輝きだし、ピピン=ボイドがボールから手を離せなくなってもんどり打った。慌ててみんなを起こすメリー=モナハンだが、起き出したご老公マッケランやアラゴルン矢七ことモーテンセンも、ピピン=ボイドをボールから引き離すのに四苦八苦だ。

 「バカもん! これはあの中山律子のボールだぞ、ホビット庄のボーリング大会優勝者ごときに扱えるはずもないわ!」と、えらい剣幕で怒るご老公マッケランだが、往年のボーリング・ブームを知らない若いもんにこのギャグが分かるはずもない。だから説明をせずに話題を進める。

 このボール、何を隠そうあのコイズミ・サルマン=リーのマイボールだった。これを覗けばペンタゴンに通じて闇の冥王サウロンことブッシュの思惑が見える。ピピン=ボイドもこのマイボールからサウロンの考えている事を見てしまった。それは…人間の国ゴンドールの首都ミナス・ティリスの攻略だ。

 サウロンの軍勢のミナス・ティリス攻略。それは中つ国を揺るがす一大事だ。早速何とかして援軍をと焦る矢七モーテンセンだが、いかんせんローハンの国王セオデンことバーナード・ヒルはノリが悪かった。「オレたちが攻められていた時に援軍を出さなかったからなぁ。同盟国なら自衛隊を出して一緒に汗流してくれんと。イギリスのブレアとかな」と、まるでサウロン=ブッシュみたいな事を言う。おまけによせばいいのに、これがホントの「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」…などとシャレにならない言葉を付け足すから、座は一気にシラケ返ってしまった。

 ともかくゴンドールの首都ミナス・ティリスに急を知らせねば。ご老公マッケランはミナス・ティリスに飛ぶ事にした。マイボールを見てサウロンに目をつけられてしまったピピン=ボイドをお供に付けて、ご老公マッケランは愛馬「シービスケット」を走らせ、ミナス・ティリスに急ぎに急ぐ。

 さてその頃、お上品なエルフ族は脱出を続けていた。その中に、父エルロンドことヒューゴ・ウィービングの言いつけを聞いて、中つ国を去る船に乗り込もうとするアルウェン姫ことリブ・タイラーの姿もあった。だがタイラー姫は途中である幻影を見る。それは幼い少年を抱く矢七アラゴルン=モーテンセンの姿。あれはきっと、私と矢七アラゴルン=モーテンセンとの間に生まれる息子の姿に違いない。ミステリー・サークルはないけど、これはきっと何かの「サイン」だ!…そう思ったタイラー姫は踏みとどまり、「ラン・ローラ・ラン」のごとく恋人・矢七モーテンセンのため、一路父ウィービングのいるエルフの里に戻った。

 だが戻った娘・タイラー姫の姿を見て、父ウィービングは嘆きに嘆く。矢七モーテンセンの姿を見るとは、オマエは「ソラリス」にでも行ったのか、何かの「まぼろし」でも見たのか…と決めつけ放題。まるで妄想癖オンナの「アメリ」呼ばわりに、タイラー姫は呆れかえって言い返す。「お父様は私の『ハート・オブ・ウーマン』が分かってないのね! 私は『初恋のきた道』を貫きますっ」

 しかし、父ウィービングが難色を示すのも無理はない。今や中つ国もエルフ族にとっては「ワールド・イズ・ノット・イナフ」。ここにとどまるという事は、タイラー姫が「アンブレイカブル」不死の命を捨てることをも意味していたからだ。しかしタイラー姫に迷いはなかった。

 「今こそ例の名剣『グリーン・デスティニー』が必要です!」

 戻ったタイラー姫は父ウィービングに直訴する。名剣「グリーン・デスティニー」と言えば、矢七モーテンセンの祖先、人間の国ゴンドール王イシルドゥアが持っていた剣だ。だから「グリーン・デスティニー」こそは、「アンナと王様」亜州影帝チョウ・ユンファならぬ人間界の王の中の王の証。だが今回のゴタゴタの発端、闇の冥王サウロンことブッシュとのイザコザの際に、折れて使い物にならなくなっていた。それを今こそ鍛え直してくれと言うのだ。それはゴンドールに真の王が復権することを意味していた。そしてそこに座る者こそ、真の王の直系である矢七モーテンセン。娘タイラー姫のたっての願いに、父ウィービングの心も動いた。

 「よし分かった。沖縄の寿司屋『キル・ビル』のソニー千葉に頼んでやる」

 さてさてご老公マッケランとピピン=ボイドが駆けつけた問題のミナス・ティリスでは、ゴンドールの王の不在を守る摂政デネソールことジョン・ノーブルが待ちかまえていた。だがデネソール=ノーブルは息子ボロミア=ショーン・ビーンの死にダメージを受けて、ご老公マッケランの進言などに耳も貸さない。しかも真の王の資格がある矢七モーテンセンに来られては困るので、マッケランの言う事はハナっから信用などしない。「フン、何がご老公だ。所詮アンタは『X-メン』の悪役風情じゃねえか」

 そこを突かれちゃ仕方がない。一旦は引き下がったご老公マッケランだが、そこはそれ年の功。ピピン=ボイドを使ってミナス・ティリスの狼煙にこっそり点火する。これぞ中つ国のホットライン。狼煙は狼煙を呼んで、知らせは山から谷、また山を越えて、中つ国はイッキに緊迫した「13デイズ」キューバ危機状態。その知らせは遠く離れたローハン国にも到達した。

 「狼煙だ、狼煙だぞ!」

 事ここに及んでローハン国王セオデン=ヒルも重い腰を上げた。セオデン王=ヒルは矢七モーテンセン、娘のエオウィン姫=ミランダ・オットーらも伴い、ゴンドールへの進軍を決意する。

 その頃、例の摂政デネソール=ノーブルの息子ファラミアことデビッド・ウェインハムは、「クリムゾン・リバー」「ミスティック・リバー」かは知らないが、ともかくゴンドール国の大河から押し寄せて来たオークの軍勢に押しまくられていた。まるで「ブラックホーク・ダウン」状態にボコボコにされて、ただただ敗走あるのみ。這々の体で首都ミナス・ティリスへ一目散に逃げていく。ところがそんな敗軍にも敵は容赦しなかった。空飛ぶ竜「サラマンダー」やら「レッド・ドラゴン」やらが次々と襲いかかる。

 その様子を見ていたご老公マッケランは、愛馬に乗って一目散に駆けつける。襲いかかる「サラマンダー」どもの大軍に向かって、お約束のアレを持ち出した!

 「この紋所が目に入らぬか!」

 ギラッと輝く印籠の東映三角マーク。さすが時代劇の東映出身・里見浩太郎黄門ことマッケランだけのことはある。「サラマンダー」たちはたちまち退散。この芸当はさすがに石坂浩二黄門にはマネは出来まい。こうしてファラミア=ウェインハムの軍勢は、命からがらミナス・ティリスの門をくぐる事が出来た。

 ところがやっとの事で生還したファラミア=ウェインハムに対して、父デネソール=ノーブルは極めて冷たい。いきなり敵に奪われた領土を「シン・レッド・ライン」まで奪還してくるようにと言い渡す。もちろん危険など承知の上。それでもイラク派兵は既成事実になってしまう。「大量破壊兵器があった証拠がないと言うが、なかった証拠もない。なかった証拠がないということはあったということだ。そうに決まってる」…などとムチャクチャな理屈を並べ立てる始末。何と魔法使いサルマンことクリストファー・リーが無力化したら、コイズミの魂は今度はこのデネソール=ノーブルに「パラサイト」したのか? いや…あの気色悪い三白眼のやぶにらみ顔は、ネチっこくしゃべる割には言ってることがムチャクチャな防衛庁長官の石破とも言える。

 「父上は兄ボロミア=ビーンでなくこの私が死ねばよかったとおっしゃるんですか?」…さすがにあんまりな言い草に、思わずファラミア=ウェインハムは口走る。身内の冷たさに泣かされるのは読売前監督の原と同じ。だがファラミア=ウェインハムには甲子園で抱き留めてくれる男・星野はいない。

 「分かりました。『ぼくの国、パパの国』を守るために、私はもう一度戦さに行きます!」

 こうしてファラミア=ウェインハムは一人悲嘆に暮れつつも、父への愛の証として自ら再び死地へと赴くのだった。

 さてその頃、八兵衛フロド=ウッドとその舎弟サム=アスティン、そしてみのゴラムの一行は荒れ果てた岩山へと差し掛かっていた。頭上の「バニラ・スカイ」には不吉な雲が垂れ込め、切り立った岩山にはかろうじて上れる階段が刻み込まれている。だがこれが「思いっきり」ゴラムの言っていた「クネクネ電動こけし」もとい「クネクネ階段」だとは、フロド=ウッドもサム=アスティンも知る由もない。ここでみのゴラムは、困り切って人生相談の電話をかけてきた主婦を全国放送で偉そうに罵倒する持ち前の根性の悪さを発揮。元々自分を警戒するサム=アスティンがジャマになったみのゴラムは、彼が眠っているうちに持っていた囲いの食料を投げ捨てる。そしてそのパンくずをサム=アスティンに振りまいた。そんな気配を感じたサム=アスティンが起き出すと、素知らぬ顔でトボけるみのゴラムだ。どうも気に入らないサム=アスティンは荷物を探ると、当然のことながら残しておいた食料がないではないか。

 「みの、テメエ食料をどこへやった!」

 だがみのゴラムは哀れっぽくトボけるばかり。起き出してきた八兵衛フロド=ウッドは起き抜けの機嫌の悪さに加え、食料がないと聞いて八兵衛ならではの食いしん坊の虫が騒ぎ出した。そこへ来てサム=アスティンの身の回りにパンくずがついていたのもマズかった。「テメエ、いつの間にか食いやがったな! 腹減ったよ〜ご隠居〜」

 実はフロド=ウッド、ここ最近は例の指輪の魔力に汚染されつつあり、徐々にみのもんたっぽい根性の悪さに染まっていたのだ。そこに食い物がなくなった怒りも手伝って、サム=アスティンに言ってはいけない言葉を言い放つ。「オマエはもう帰れ! オレはテレビ界の帝王だからオマエなしでもやっていけるんだ。これがファイナル・アンサーだ!」

 そんな…あんまりな言葉にサム=アスティンはさめざめと泣くばかり。「オレ何にもやってないっすよ、濡れ衣ですよ冤罪ですよ『ザ・ハリケーン』ですよ!」

 だがもうフロド=ウッドの心は取り戻せない。泣く泣くサム=アスティンは階段を下りて行くほかはなかった。

 さて一方、ローハン国王セオデン=ヒルはじめ矢七モーテンセン、助さんレゴラス=ブルーム、格さんギムリ=デイビス、メリー=モナハン、さらにエオウィン姫=ミランダ・オットーらの軍勢は、鋭い山の中腹に野営を設けていた。だが軍勢はいかんせん足らない。これでは犬死には必至だ。どうしよう?

 矢七モーテンセンが内心穏やかでないのには、もう一つ訳があった。この野営地の奥に、切り立った断崖の峠がある。その向こう側には、忌まわしい死者たちのたまり場があった。そこから吹き付ける霊気が、矢七モーテンセンの胸中を穏やかならざるものにしていたのだ。

 そんな野営地に、矢七モーテンセンを訪ねた者がいる。一体誰だと半信半疑でテントに入った矢七モーテンセンに、聞き慣れたあのフレーズが投げつけられた。「ミスター・アンダーソン、ウェルカムバ〜ック!」

 何だなんだ、「マトリックス」のエージェント・スミスか? そこに立っていたのは、何の事はないエルフ族の長、そしてタイラー姫の父ウィービングだった。それもご丁寧に黒スーツにサングラスという出で立ち。「ハハハ、これは私の自慢の宴会芸だ。どうだ似てるか?」

 こんなバカを言いにわざわざ来たのかとムッとする矢七モーテンセンだが、次の瞬間ウィービングが取り出したモノを見て唖然とした。

 「グリーン・デスティニーだ!」

 これを手にするということは、モーテンセンが王座に座る事を意味する。それまで王国を捨てて放浪していた「過去のない男」アラゴルン=モーテンセンとしては、ちょっと腰が退けてしまうところ。だがウィービングはビビるモーテンセンに、ダメ押しのようにビシッと告げた。「そなたは王になるべく運命づけられた血筋の末裔、『オースティン・パワーズ・ゴールドメンバー』なのだ。もういいかげん大人になれや」

 さらにウィービングは、もっと先をも見越していた。今の軍勢では多勢に無勢。どうしても手駒がいる。そこで例の死者たちを使ってはどうかと言い出したのだ。

 この死者たち、元々は矢七モーテンセンの祖先イシルドゥアに忠誠を誓った者たちだ。ところがいざという時にバックレたので、イシルドゥアに呪いをかけられ成仏出来ない身となってしまった。このグリーン・デスティニーを持っていけば、死者たちはモーテンセンを王の後継者と認めるだろう。そうすれば今こそ義理を果たせ…と援軍に頼めるではないか。

 正直言って死者は怖い。だけどウィービングを前に怖いとは言い出せないモーテンセンは、正直言ってグリーン・デスティニーをもらって失敗したと思ったが後の祭り。しょうがない、例の峠に入って行くしかない。するといつの間にか助さんレゴラス=ブルーム、格さんギムリ=デイビスも傍らに寄り添うではないか。持つべきものは友だ。

 現金なことに俄然勇気百倍の矢七モーテンセンは、助さん格さんの方に向き直った。

 「じゃあ助さん格さん。このへんで例のやついきますか?

 「アレですか?」

 「いきますか!」

 助さんブルーム、格さんリス・デイビスの目がギラギラっと輝いた。「せ〜〜〜〜の!」

 「レッツ・ゴー(行くか)!」と、目を輝かせて矢七モーテンセンが言った。

 「ホワイ・ノット(いいとも)!」と、受けたギムリ=デイビスが笑顔を見せた。

 「またかよ〜俺のセリフないの〜」と、レゴラス=ブルームがお約束の一言。 かくして三人は死者のたまり場を目指していった。

 すると峠の奥に、岩で出来た不気味な入り口がぽっかりと口を開けているではないか。イヤ〜な予感が漂いつつも、その中に乗り込む三人。穴を入って行くと、そこには大きな暗黒の虚空が広がる。だがそのうち、三人の目の前にス〜ッと透き通った死者たちが次々現れるではないか。それも出てくる出てくる、総勢何千人、いや何万人なのか。ともかくワンサカ現れて、三人をグルリ取り囲んでしまう。

 「死人が見えるなんて、『シックス・センス』のオスメントになったみたい」と、助さんレゴラス=ブルームがビビりながらも映画ファンらしい発言。

 「でもこいつらホントは死ねないんだから、実は『バイオハザード』状態じゃないの?」と、これまた映画ファンらしい答えを返すのは格さんギムリ=デイビス。すると彼らを取り囲む死者軍団から鋭い声が!

 「あんなトロい連中と一緒にするな!」

 いきなり死者たちのリーダー格が一喝するので、三人は思わずビビる。「す、す、す、すみません!」

 ところが死者がスゴんだのもそこまで。

 「どっちかと言うと足には自信があるから『28日後…』の方が近いかな」と死者のリーダーはお茶目にもつぶやく。おまけに手下の死者どもまで、「成仏できないんだから早い話が『ゴースト・ドッグ』だわな」「オレたちを犬みたいに言うな、『ゴースト・オブ・マーズ』と言えや」「韓国語では『ユリョン』って言うんだよ」などとお気に入りの映画タイトルを並べるので、三人はすっかり嬉しくなった。死者の連中は成仏出来ずに時間を持て余していたので、この真っ暗な場所に足止めされながらすっかりビデオ三昧のカウチ・ポテト化していたのだ。「いやぁ、みなさん実によく見てますねぇ!」

 「こんな姿で映画館に行けなくなっちゃって、ビデオしか見れなくなったら逆に本数増えちゃったよ」

 「でも透き通ってるから『マトリックス・リローデッド』の双子の白子兄弟みたいじゃないっすか? あれって鳴り物入りで出てきたから期待したけど、『レボリューションズ』には出てこなくて使い捨てにされてましたけどね」と、調子こいた発言をするのは矢七モーテンセン。

 「何っ? あいつらアレでオシマイだったの? ウォシャ兄弟って思いつきだけなんだねぇ。やっぱ『レボリューションズ』見なくて正解だったわ」と死者のリーダー。そんなこんなで彼らはすっかりくつろいで映画バカ話に興じてしまう。おいおい、そんな事やってる場合じゃないんじゃないか? いやいや、矢七アラゴルン=モーテンセンは用事を忘れちゃいなかった。

 「あ、ところで…実は今回みなさんには、うちのご先祖への借りを返してもらおうと思いまして…」

 だが唐突にそんな事を持ち出されても、死者たちはにわかには信じられない。アラゴルン=モーテンセンがホントに王家の末裔なのか、それを知る術もないからだ。「そりゃホントなのか? 衆院議員の古賀のアメリカ留学みたいにウソ八百じゃないのか」「それをボロクソこき下ろしていた自民党の安倍まで、いけしゃあしゃあと留学年数ウソついてたっていうからな。よく言うぜ」「ブッシュもやたらコワモテに戦争ごっこしたがるくせに、ホントは脱走兵だったってマイケル・ムーアも言ってたよ」「小泉の国会答弁はウソの上塗りでまるで日本語になってないしな」「ったく、生きてる奴ってのはウソばかりでイヤだイヤだ」…てな具合に、死者たちは政治の貧困ぶりにすっかり憂いを隠さない。

 「そうでしょうそうでしょう。お怒りごもっとも!」とアラゴルン=モーテンセンはいきなり本題を切り出した「そこでこの私めに政権をお任せいただきたい…」

 だが死者たちはまだ半信半疑。「政権担当能力があるのか?」とか「何か証拠があるのか、米国ペパーダイン大学の卒業証書でも出すのか」とか「高橋尚子が選考会の結果度外視で最初からアテネ五輪代表決定してたら、スッキリしなくておかしいよな」とか「小出監督って何かというとQちゃんQちゃんって気持ち悪くねえか?」とか「しょせんは読売グループ内での人事異動なんじゃないの?」とか「ナベツネのご乱心のせいなのに、堀内がハシャギすぎで見苦しいよな」とか「杉本彩が『花と蛇』で演技を超えちゃったってホント?」とか、何が何だか分からないけど納得しない。そこでアラゴルン=モーテンセンはここぞとばかり、文字通りの伝家の宝刀を持ち出した

 「おお〜〜!」

 それはご存じ王家の印、光輝く名剣「グリーン・デスティニー」だ。

 「おおっ、そなたはまさしく『神に選ばれし無敵の男』!」

 「これでお分かりの通り、私が真の王たる者だ」とアラゴルン=モーテンセンは胸を張る。「しかもこのたび政権担当能力を持った集団に生まれ変わるために、こうしてエルフ族やドワーフ族とも手を組んだ」

 「ふ〜む、自由党の小沢と組むよりはスンナリまとまりそうな気もするな」と死者のリーダーもちょっぴり納得し始めた。

 「そもそもそちらだってこちらに不義理があるんじゃないの? ここで借りを返しておくのが、そりゃあ世間の『サイダーハウス・ルール』ってもんじゃないかい」とアラゴルン=モーテンセンは、これが好機とばかりに一気に死者たちに畳み掛けた。この映画ファンならではのオヤジ・ギャグが功を奏してしまったから、世の中は分からない。

 「義理を返す、そうすりゃ我らの呪いも解ける…ってな、善意が善意を呼ぶ一種の『ペイ・フォワード/可能の王国』だわな」と死者のリーダーは笑い出した。「言い換えれば善意のネズミ講とも言えるが」

 その頃、ローハン国王セオデン=ヒルたちはの軍勢は、アラゴルン=モーテンセンたちの帰りを待たずに進軍する事になった。何しろ、とにかく風前の灯の首都ミナス・ティリスへ急がねばならない。

 進軍の支度に大わらわの集団の中には、ヨロイに身を固めたメリー=モナハンもいた。彼も少しでも戦いで役に立とうと、はやる気持ちを抑えきれずにいたのだ。だがローハン国王セオデン=ヒルは、そんな彼に心ない言葉を浴びせる。「ちっちゃいのがウロチョロしてたらジャマだ。引っ込んでろ!

 「そんなあ!」とメリー=モナハンは一生懸命訴える。「『スパイキッズ』だって『シティ・オブ・ゴッド』だって『リトル・ダンサー』だって、ちっちゃくてもイッチョマエにやってるじゃないですか」…この3本を一緒に扱うのはどうかと思うが、少なくともメリー=モナハンの思いは真剣だった。

 「何度も言わんぞ、早く引っ込め!」と捨てゼリフを残すと、王セオデン=ヒルは軍を率いて出発。次いで軍勢は次々と出発していった。だがいかんせんホビットのメリー=モナハンの短い足では、この軍勢についていく事は難しい。途方に暮れていたメリー=モナハンだが、何者かがサッと彼の身体をすくい上げ、自分の乗っている馬に乗せてくれた。それは一体…。

 「エオウィン姫!」

 そう。ヨロイとカブトに身を包んで男たちの軍勢に忍び込んだエオウィン姫=ミランダ・オットーが、メリー=モナハンを拾ってくれた。男勝りの武勲にはやるエオウィン姫=オットーは、父の王セオデン=ヒルの言いつけに逆らって、秘かに軍勢の中に紛れ込んでいたのだ。

 「カッコイ〜! 『チャーリーズ・エンジェル』のルーシー・リューみたいっすね!」と、ホメ言葉のつもりで言ったメリー=モナハンだが、ハッキリ言ってその例えはエオウィン姫=オットーには嬉しくはなかった。憮然とした彼女はメリー=モナハンにこう答える。「どうせ言うなら『デンジャラス・ビューティー』と言って!」

 ともかくローハン国王セオデン=ヒル率いる軍勢は、一路ミナス・ティリスへと向かった。

 

 

つづく

 

 

 

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