「ミッション・クレオパトラ」

  Asterix & Obelix : Mission Cleopatre

  (Asterix & Obelix : Mission Cleopatra)

 (2004/01/12)


  

今回のマクラ

 毎年僕は、一年の最初と最後の映画選びには苦労する。特に正月最初に見る映画は…。ハッキリ言っておとそ気分の抜けないうちに見る映画だから、シリアスな映画は見たくない。どっちかと言えばバカ映画がピッタリだと思ってる。2000年には「ワイルド・ワイルド・ウエスト」を見て、ケネス・ブラナーのブチ切れ演技を堪能。とってもいいスタートが切れたからね。今年もそんなバカ映画を見てスカッとしたいものだと思っていた。

 では今年は何があるか…と思ったら、「ミシェル・ヴァイヨン」がバカっぽくて良さそうだ。リュック・ベッソン・プレゼンツのレース映画というだけでバカっぽいではないか。きっと見事に中味のないバカ映画に違いない。これでも見て、爽快にいい気分で正月を始めるか。

 ところがこの映画、見た人からはすごぶる評判が悪い。いや、なに、僕はマジメに出来の良い映画が見たいんじゃないんだ。お正月らしくおめでたくで派手な映画なら何でもいい。ところが見た後の気分も全然盛り上がらないと言う。それじゃ見たって仕方がない。ヘタにカッコつけられてスベったら目も当てられない。

 すると、普段はめったに足を運ばない六本木ヒルズの映画館に、「ミッション・クレオパトラ」なる映画がかかっているではないか。出ているメンツもジェラール・ドパルデューやらモニカ・ベルッチとなかなか豪華。おまけにクレオパトラやらシーザーが出てくる話で、なかなか豪華に金もかかってるみたいだ。そして何よりコメディ映画…。ならばこっちの方がピッタリではないか。少なくともノー・スターの「ミシェル・ヴァイヨン」よりはマシなはずだ。

 よし、決めた。今年はこの映画からスタートだ。

 

見る前の予想

 フランスやヨーロッパのコメディって、ハッキリ言って笑えないのが多い。あちらでのヒット作と言われているものでも、僕らの感覚にはついていけない。昨年はウェルカム!ヘヴンなるスペインのコメディがあって、ヴィクトリア・アブリルやらペネロペ・クルス、そこに何とファニー・アルダンまで出てくる豪華版だったのに、まるっきり笑えなかったのにはマイッタ。何しろ途中で妙に重苦しくなっちまうんだからね。良かったのはペネロペが「燃えよカンフー」に合わせて踊りまくる場面だけ。

 だからこの映画とて、ゆめゆめ油断をしてはならない。決して面白いなんて思ってはいけないのだ。期待は禁物。

 実際、事前に見た人の話によれば、イマイチどころかイマニ、イマサンみたいな内容らしい。それは十分に予測出来たけどね。

 そして聞くところによれば、この映画はすでに向こうでヒットした作品の続編だと言う。そういえば原題には、「ミッション・クレオパトラ」の前にナントカカントカと並んでいたっけ。それって「踊る大捜査線 THE MOVIE 2/レインボーブリッジを封鎖せよ」みたいなもんだろうか。邦題はきっと、その「レインボーブリッジを封鎖せよ」だけ取って付けたに違いない。

 ならばストーリー的に見えない部分があっても、いちいち気にしないのが鑑賞のコツだ。それは前作を見た人にお馴染みのエピソードなりネタなんだろうからね。事前に見た人がノレないのも、きっとそのせいだろう。

 さぁ、そこまでこの映画に対して大らかな気分で接すれば、決して退屈で死にそうということもあるまい。ギャグで笑えなければドパルデューはじめ豪華キャストを眺めていれば飽きないはず。少なくともベルッチのクレオパトラは見もののはず。オフィシャル・サイトを見たら、「アメリ」で八百屋のアンチャンを演じた小男がここでもアチャラカ演技を見せているしね。

 

あらすじ

 紀元前52年のこと、エジプトの女王クレオパトラことモニカ・ベルッチは、愛人であるローマ皇帝ジュリアス・シーザーことアラン・シャバの態度が腹に据えかねた。シーザー=シャバは傲慢にもエジプトを過去の国と切り捨てバカにしたのだ。これにはワガママな事では人後に落ちないクレオパトラ=ベルッチは我慢がならない。シーザー=シャバのための宮殿を、何と三ヶ月で完成させると断言。自分がこの賭けに勝ったらエジプトを世界一偉大な国と認めよと迫る。元よりそんな賭けが成立するはずもないとタカをくくったシーザー=シャバは、面白がってこの賭けに乗った。かくして人類史上最も無謀な賭けがスタートする事になったのだ。

 とりあえず建築家が呼ばれた。しかしその建築家ジャメル・ドゥブーズは、他の建築家がみんな忙しいので呼ばれたというのだから、腕前のほどは推して知るべしだ。

 そんなドゥブーズをクレオパトラ=ベルッチは脅しに脅す。三ヶ月で出来なければワニのエサ。出来れば莫大な黄金を進呈という話だが、立派な宮殿が三ヶ月で出来るわけもない。さすがにドゥブーズは煮詰まった。一体どうすればいいのだ。

 そうだ、魔法だ!

 北の国には、確か腕の立つ魔法使いがいると言う。取るモノも取らず、ドゥブーズは北方に旅立った。北へ。北へ…。

 ル〜ル〜ル〜ル〜ルルル〜…。

 さだまさしのテーマソングが流れる、ここは「北の国から」(笑)。もとい、「北の国」ガリア。そこはローマ帝国に制圧された土地ではあったが、今もしぶとく抵抗する連中もいた。フセイン一派もアルジャイラもいるわけでないのに、占領するアメリカ軍…いやローマ軍は手こずるばかりだ。やはりスジの通らない占領はうまくいくもんじゃない

 その秘密は大量破壊兵器ならぬ魔法の薬。

 魔法使いパノラミックスことクロード・リッシュの調合するこの薬を飲めば、たちどころに無敵の力が沸き上がる。その魔法の薬のパワーを引っさげ、今日もローマ軍をボコボコにして溜飲を下げるのは、ガリアの正義の味方の二人。羽根の生えた帽子をかぶるアステリックスことクリスチャン・クラヴィエと、おデブの巨漢オベリックスことジェラール・ドパルデューだ。そんな二人にバッタリ出会って、捜し物を見つけたと気づく旅人ドゥブーズ。二人はドゥブーズを、田中邦衛がつくったような「北の国から」ログ・ハウスに案内した。

 ところが魔法使いパノラミックス=リッシュは、薬は市販品でないから分けられないとつれない返事。しかし気の毒なドゥブーズを見るに見かねて、魔法使いパノラミックス=リッシュはアステリックス=クラヴィエとオベリックス=ドパルデューをお供にエジプトへ旅立つ事にした。彼らの愛犬イデフィックスがついていくのも言うまでもない。

 早速一同はエジプトの船に乗って、一路海路をエジプトまで

 途中、海賊赤ヒゲの一派にジャマされそうになるが、彼らは以前アステリックス=クラヴィエとオベリックス=ドパルデューの二人にコテンパンにされたトラウマがあったため、二人の姿を見かけたとたん戦意喪失。自ら船を捨てて逃げ出す始末だ。

 さてエジプトに着いた一同は、クレオパトラ=ベルッチの謁見を得る。この折りにクレオパトラの周りにはべる女子十二楽坊ならぬ侍女たちの一人が、アステリックス=クラヴィエを夢中にさせるという一幕もあったが、詳しくはまた後のお話。

 ともかくこの様子を見て、一人大いに焦る人物がいた。それは王宮付きの建築家ジェラール・ダルモン。彼はドゥブーズに仕事を取られたと逆恨みして、工事の失敗を心待ちにしていたのだ。それでも彼は魔法の薬の真価を知らなかったので、まだ高見の見物を決め込んではいた。

 さて、いよいよ工事はスタートだ。すでに一ヶ月が経過していたのに、基礎工事の段階。とてもじゃないが間に合う訳もない。しかも例の王宮付きの建築家ダルモンが、レーニンみたいな大演説ぶって労働者たちを扇動し始めるではないか。

 「万国の労働者諸君、搾取に断固として立ち上がれ!

 元々突貫工事に不満が高まっていた労働者たちは、この扇動で一気に怒りに火がついた。待遇改善を求めてストライキが始まったのは間もなくの事だ。だがドゥブーズも譲れない。それでなくても間に合わない工期が、ますますベタ遅れになる。

 ここで立ち上がったのが魔法使いパノラミックス=リッシュ。彼は秘伝の魔法の薬を調合。これで労働者たちは一気にパワーアップ。時間短縮して休暇をやっても足りるくらいに、作業効率が一気に上がった

 だがこうなると困るのが例のダルモン。そこで一計を案じて、ナイル川岸から切り出す石材の運搬をストップしてしまう。この状況を打開するべく、魔法使いパノラミックス=リッシュとアステリックス=クラヴィエ、オベリックス=ドパルデューは現場へ急ぐ。ところが途中で物見遊山にスフィンクスなど名所旧跡に立ち寄った事から、ピラミッド内部に閉じこめられる危機一髪の目に合ったりする。それでも何とかなって脱出。見事に石材運搬ルートを確保したから大したものだ。

 またも妨害に失敗したダルモンは、今度は大勝負に出た。シーザーに直訴して、ローマ軍に妨害を依頼したのだ。シーザーとてこの賭けに負けたくはない。しかも工事の中心に目の上のタンコブのガリア人がいるとくればなおさらだ。早速軍勢を率いて建築現場に向かった。

 さぁ、彼らはシーザーの軍勢を向こうに回し、無事に建築現場を守りきれるか。そして宮殿建設は、期日までに終わる事が出来るのか?

 

見た後での感想

 予想通り…というべきか、この映画はクロード・ジディ監督の「Asterix et Obelix contre Caesar」(1999)の続編だった。この時には魔法使いパノラミックスとシーザーの役者は今回と違うが、主役二人のアステリックスとオベリックスを演じる、クリスチャン・クラヴィエとジェラール・ドパルデューはそのまま。つまりは前作の好評を受けての続編というわけなんだよね。

 で、劇場パンフを見て分かったんだけど、このアステリックスとオベリックスってのはフランスの人気マンガのキャラらしい。それもかなり昔から知られたものだったらしいんだよね。確かにそのへんが分からないとピンと来ないところもあるかも。ま、だからこの映画ってのは、最初に引き合いに出した「踊る大捜査線 THE MOVIE 2」というよりは、モロに「こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE 2/UFO襲来!トルネード大作戦!!」ってな作品なわけ。そういやジェラール・ドパルデューの絶えず腹を空かした巨漢デブってのは、どこか両さん的キャラでもある。こっちは「ミッション・クレオパトラ」だから、「クレオパトラ大作戦」って感じだね。いや、これはまったく冗談ではなくて。

 劇中に何度も登場する海賊赤ヒゲも、たぶん前作で出てきたキャラなんだろう。前作で二人にコテンパンにされたから、相当懲りてるって感じだからね。だからいかにも「お馴染み」って感じで出てくる最初の出番では、見ている僕らは戸惑ってしまう部分もある。だけどこの海賊がその後もナイル川なりエジプト沿岸に出没して、そのたびに懲りずにメタメタにされるに至っては、見ているこっちもバカバカしくて笑ってしまう。ビートルズの「HELP!四人はアイドル」で、オーストリア・アルプスの氷の穴やらカリブ海の海岸から同じ遠泳の選手が出没してくるような、いささかクドいナンセンス・ギャグの味があるんだよね。

 笑いはどれもこれもバカバカしいものばかり。その半分くらいは正直言ってスベってる。スベってる理由はセリフのタイミングが僕らには伝わらなかったり、フランスの笑いがピンと来なかったり…という事もあるし、ホントにくだらなすぎるということもある(笑)。しゃべってるセリフがマイクの調子が悪いみたいにとぎれるギャグなんて、ハッキリ言って意味もないし低レベルだ。でも、僕は今回最初から期待しない…という態度で見てたから、結構許せちゃったんだよね。少なくとも見て見ぬフリは出来た(笑)

 あとは赤ヒゲ海賊が「タイタニック」のデカプーみたいに船首に仁王立ちして「オレは世界の王だ〜!」とか豪語したり、スフィンクスの土産を日本髪結った日本女が観光客みたいに物色してたり、シーザーが自分の名前を「フランス映画だからセザールでいいか」などと言ってみたり、ドゥブーズとダルモンがカンフーを始めたとたんに広東語をしゃべりだしたり、ローマ軍の大将のヘルメットがダースベイダーみたいだったり…と、どれもこれもくだらない小ネタが満載。ドゥブーズが何度も何度も名前を間違えるクドいギャグとかね。名前と言えば、いかにも古代風ながら怪しげな「パナソニクス」とか「アンチウィルス」なんて名前も出てくる小ネタもあったっけ。それらってハッキリ言って、僕らが飲み屋でダベるバカ話と大差はない。(笑)。でも僕は脳味噌カラッポにしてボケ〜ッと見てたんで、結構楽しめちゃったんだよ。笑えた。

 ともかくこの映画、くだらない事はくだらないんだけど、製作規模はかなりデカい。CGなどを駆使してはいるが、エキストラも大量に動員して大セットを建造。そういう部分はかなりマジでやってる。フランスのコメディって大概はチマッとしてるから、こんなアメリカ映画みたいなバカバカしいコメディ大作ってのが興味深かった。これだけ金かけてマジでやりながらくだらないってのが、僕には好ましく思えたわけ。

 実はこの作品のプロデューサーのクロード・ベリって、「愛と宿命の泉」とか「ジェルミナル」とか、他にも「愛人/ラマン」や「王妃マルゴ」などのフランス映画としては破格の大作を手がけて来た人。だからこの映画の大スケールも、この人ならでは…ってとこがあるんだろうね。

 で、フランス映画にして破格の大作バカ・コメディを、一体誰がつくったのかと思えば…何とシーザー役で出演もしているアラン・シャバが脚本・監督も手がけていた。この男、どこかで見た事があると思いきや、「ムッシュ・カステラの恋」で社長のお抱え運転手を演じていた人物。あんな誠実そうな人がこんな壮大なバカ映画をつくってしまうとは…人は見かけによらないものだ。

 そうそう、ついでに言えばクレオパトラの肖像画を描く画家の役で、プロデューサーのベリ自身が顔を出していたのも驚いた。ひょっとしてそうかな…とは思ったけれど、パンフで確認した時には笑ったよ。これほどの人があんなバカなチョイ役で出てるとは嬉しくなった。

 さらにさらに、その豪華なキャストがもちろん見ものだ。オベリックス役を演じるフランス映画のトップスター、ジェラール・ドパルデューのバカ演技は今始まった事じゃない。最近では「メルシィ!人生」でもそのコメディ・センスは実証済みだ。だけど、ここまでバカっぽい役までやるとは驚いた。まぁ、「102」のちょっとオカマっぽいデザイナー役も相当だったけどね(笑)。相棒のアステリックスを演じるクリスチャン・クラヴィエはパトリス・ルコントの「レ・ブロンゼ/スキーに行く」に出ていたらしいが、この映画が「人間模様」というタイトルで限定上映されたのはもう20年以上前だから、どの役で出ていたかなんて覚えていない。でも、アステリックスとオベリックスの二人組ではあくまでアステリックスの方がメイン(「釣りバカ日誌」のハマちゃん・スーさんのハマちゃんの方の感じと言えばお分かりいただけるだろうか?)のようだから、この人も本国では有名な人なんだろう。もしコメディ俳優だとしたら作品が日本には紹介されにくいので、こちらでの知名度がないんだろうね。

 その他にも先に触れたように、「アメリ」の八百屋のアンチャン役で見たばかりのジャメル・ドゥブーズやら、「ディーバ」の殺し屋とか「ル・ブレ」なんかで顔なじみになったジェラール・ダルモンもいたっけ。こういう知った顔に出会えたのも嬉しい。

 そして…何と言ってもクレオパトラ役のモニカ・ベルッチ。今、クレオパトラを演じるならこの人しかいないだろう…と思わせる華やかなスターぶりだ。それって先日たまたまビデオで見た稲垣浩の日本誕生での、天照大神役を演じた原節子といい勝負の「この人」ならではのキャスティングだ。問答無用のハマり役。それも、いまや「マトリックス」シリーズなどハリウッド進出までしてる彼女が、ハミ乳に半ケツ出したキテレツ衣装で出てくるバカバカしさだ。こうした顔なじみ俳優が大挙出演して、揃いも揃ってくだらない事をやってるから、おとそ気分にはピッタリなんだよね。僕は結構満足しちゃったんだよ。

 

見た後の付け足し

 …と、言うとかなり面白いコメディ映画だと思えるこの作品。確かに僕は結構楽しんだし、面白がった。この映画のスケールのデカさ、顔ぶれの豪華さ、にも関わらずのくだらなさが楽しかったんだよね。

 でも、この映画を楽しむには、何度も言うようだけど心の準備がいる。これは日本人の僕らにはピンと来にくいフレンチ・コメディであること、それでなくても字幕で笑いのタイミングを逃しやすいこと、最初からギャグのネタが相当にくだらないであろうこと…を覚悟してかからないと楽しめない。何度ギャグがスベっても気楽に受け止めるだけの大らかさが要る。まぁ、こんなもんか…と期待しないことが肝心だ。それって本来、娯楽映画を楽しむって態度なのか…と言われると言葉に窮するのだが(笑)。

 そんな僕でも、まだ正月気分の抜けきってないうちに見たってことが大きいんじゃないかと思うよ。だから本当に面白いコメディで思いっきり笑おう…と思って見たら、かなりキツいかもしれない。そこまでは僕も品質保証が出来かねる。見る人はそのへんを念頭に置いて見て欲しいよね。念のため(笑)。

 

 

 

 

 

 to : Review 2004

 

 to : Classics Index

  

 to : HOME