「ブルース・オールマイティ」

  Bruce Almighty

 (2004/01/05)


  

今回のマクラ

 いやホントに今年はいろいろあったよね。おっと、これがネット上にアップされるのは2004年のことだから、もう去年って事になるのか。ともかく去年はいろいろあった。

 で、グチは悪いと思っていても、ついついグチの一つや二つ、三つ四つ五つ六つ、七つ八つ九つ十…二十や三十、いや100や200ぐらい言ってしまった(笑)。自分でももうちょっとマシな事を言えないのか…と本当に思わされたよね。そんな事やってるから招かなくてもいい災いまで招いてしまった。

 それらを大目に見てくれなんて言うのはバチが当たりそうなので言う気もないが、そもそもそんな事を言わずに済むような年に今年2004年はしたいものだ。僕も残り時間が少なくなって来ただけに、毎日毎日を楽しく過ごしていきたいからね。

 

見る前の予想

 僕はジム・キャリーは好きじゃない。あのクドい顔がダメなのか、エグい芝居がダメなのか。ともかくこれは好みだから仕方がない。映画好きで映画を語るのならフェアでいろと言われても、僕だって人間だから好みぐらいあるよ。女の好き嫌いがあるように、いいものはいいし、ダメなものはダメだ。

 そうは言ってもこの映画は、それなりに楽しめそうな気がした。キャリーの不平不満男が神様と出会って…というお話が、アメリカ映画伝統のファンタジー風コメディの定石だ。こういうジャンルを描くと、アメリカ映画は他の追随を許さない。そして神様がモーガン・フリーマンってのがいいではないか。

 きっとモーガン・フリーマンがキャリーのアクを中和して、それなりに楽しめるコメディにしているのではないかという予想が成り立つ。さて、その結果はいかに?

 

あらすじ

 ジム・キャリーはローカル・テレビ局に勤める男。レポーターとして日常的な題材を取材する日々だが、それが町の菓子屋が世界一巨大なパイをつくったとか、そんな話題ばかりだからクサってる。本当はニュースのメイン・キャスターを張りたいのだが、どうもそんなお声はかからない。ライバルのレポーターのスティーブン・キャレルにもバカにされて腹を立てる日々だ。上司のフィリップ・ベイカー・ホールにチャンスをくれと懇願しても、君にはメイン・キャスターよりも笑いをとる才能があるじゃないかといなされるばかり。ついつい恋人のジェニファー・アニストン相手にグチたれるしかない

 そう思ってると次から次へとロクでもない事が巻き起こるから不思議だ。肝心要の時に渋滞に巻き込まれ遅刻。まったくどうしてこうなるんだ。

 そんなある日、長年勤めたベテランのメイン・キャスターが勇退。新たなメイン・キャスターに昇格するチャンスが巡ってきた。ナイアガラ遊覧船の取材に出かけながらも、キャリーは次はオレに…の期待で胸ふくらませる。ところが本番寸前、次期キャスターにあのキャレルが昇格した事を知るキャリー。ショックでキレまくった彼は、本番をメチャクチャにしてしまう。あげく勤めていたテレビ局をクビ。ふと浮浪者がゴロツキに絡まれているのを見て助けようとすると、逆にボコボコにされてしまう始末だ。

 ついてない、ついてない…頭にきたキャリーはまたまたアニストンに当たり散らす。そして夜の街でクルマをぶっ飛ばすが、勢い余って電柱にぶつけるテイタラク。

 「ふざけんな神様、オマエは不公平だ。職務怠慢だぞ!」

 そんなある日、彼のポケベルに連絡が入る。連絡を取ってみると彼に新しい仕事をくれると言う。訪れてみたのは人気のない事務所。そこには一人の男が彼を待っていた。

 「待っていたよ、私は神だ

 その男モーガン・フリーマンは、自分を神様だと名乗った。当然そんなことをキャリーが信じる訳もない。だが、信じざるを得ない事が次々起こるから不思議だ。そしてこのフリーマンは、それほど不満を言うならオマエがやってみろと言い出す。自分は休暇をとるから、その間は神様の仕事を代わってやれと言うのだ。

 最初は信じなかったキャリーも、自分が次々奇跡を起こせる事を知って信じない訳にいかない。そうなりゃ強気のキャリーだ。例のゴロツキを痛めつけるわ、恋人アニストンとの夜を演出するために月を地球に近づけるわ、やりたい放題

 やがて元の職場のテレビ局に戻ってくると、レポーターとして次々スクープをモノにする。それも彼がつくりあげた奇跡のなせる業だ。あげくメイン・キャスターになったキャレルにいろいろ細工をして失脚させて、自分がまんまと後がまに座った。

 だが、好事魔多し

 結婚を申し込んでくれるのでは…と期待していたアニストンに対しては、自分のメイン・キャスター昇格を自慢げにアピールするだけ。そんなすれ違いに誤解まで与えたキャリーは、アニストンに去られる憂き目にあった。

 しかもやりたい放題やったツケも返ってきた…。

 

見た後での感想

 思った通り、やっぱりこの作品はそれなりに楽しめた。古くは「素晴らしき哉!人生」あたりから、「天国から来たチャンピオン」「セカンド・チャンス」…などなど、神様や天国を扱ったアメリカ映画にはハズレがない。こういう有り難くも縁遠い素材を世俗のレベルまで引き下げて笑わせる発想は、やっぱりアメリカ映画らしい題材なんだよね。

 ジム・キャリーもここでは元々が不平不満ブーたれ専門のエゴイスト男という設定だからピッタリくる。この男の持つイヤ〜な感じ(ファンの方には申し訳ない)が、この役にはピッタリ。さんざっぱらテメエ勝手にやり放題もうなづけるから、キャスティングとしてはハマってるんじゃないか。

 そしてモーガン・フリーマンの神様役がやはりズバリ的中。威厳と気品ある重厚感が、この人ならではだ。今まで「バンデットQ」のラルフ・リチャードソン、「オー・ゴッド」のジョージ・バーンズなどが演じてきた神様だが、フリーマンもうってつけな好演ぶりを見せる。

 思えばフリーマンって「ディープ・インパクト」でいきなりアメリカ大統領役を演じていた時も違和感がまるでなかった。現実には黒人大統領はまだ実現していないし、映画でもめったにお目にかからない。それを題材にしたジェームズ・アール・ジョーンズ主演の「ザ・マン」なるテレビムービーもあったけど、そこでは初の黒人大統領が誕生したらどうなる?…というシミュレーション・ドラマが展開されていたんだよね。つまり黒人大統領の実現ってのは、やっぱり「事件」なわけ。

 ところが「ディープ・インパクト」ではそんなけたたましさなんぞ皆無で、実にさりげなく当然のようにフリーマンが大統領として登場してきた。言葉を換えれば、フリーマンってのは大統領であるのも当然なほどの、重厚感と威厳がある役者なんだよね。だからここで「黒人」の神様であっても、誰も文句など言わないし違和感がない。これって意外に保守的なハリウッド映画にして、異例の事だと思えるんだよね。そして、そのくらいフリーマンって「大物」感が漂っているって事でもある。この映画でもフリーマンが出た事で、格が確実にぐっと上がったと思うよ。

 監督のジム・シャドヤックって、「エース・ベンチュラ」とか「ライアー・ライアー」でジム・キャリーとは息が合う間柄らしい。あとは「ナッティ・プロフェッサー」二作で当たりをとった人だが、正直言って僕としてはあまり感心しない作品群だった。だから「パッチ・アダムス」も見ていない。ところがまったく期待していないケビン・コスナーの「コーリング」では、意外な面白さを見せていたんだよね。その「コーリング」で見せていた神秘主義への興味みたいなものが、この「ブルース〜」でも生かされているのかもしれない。

 というわけで、この作品はそれなりに楽しめる映画に仕上がっている。ところどころキャリーのギャグがクセがあって楽しめない部分はあっても、全体としてはハリウッド製コメディ娯楽映画としてソコソコ水準の出来になってるんじゃないかと思うよ。

 

見た後の付け足し

 ここからは「ブルース〜」作品自体とは関係ない僕の感慨。映画自体は深刻に考える作品じゃないし、そうそうマジメに考えたらおかしな事になる。ただ見ていろいろ連想するところはあった。それは映画そのものとは関係のないものだ。いや…まったく関係ないって訳でもないけどね。

 正直言ってジム・キャリーが見せる自分勝手なグチたれ大会は、まるで最近の自分を見ているようで、少々ツラかった。テメエの事だけ考えてるとああなる…という見本を見せられているようで、ウンザリもしたよ。おまけに神様の能力を得たとたんに、テメエに都合のいい事ばかりやり出すのも同じ。僕も自分のわずかな好調時にはあんなものだった。この映画ではコメディだから誇張されているのに、僕の場合は本当にあのまんまだったから笑えない。さすがにイヤになったよねぇ。それがこの男の愚かさだと描かれているからという事もあるし、それを演じるのが自分のキライなジム・キャリーで、それも自分とやってる事も言って事もそっくりだというところがますますウンザリさせられる所以だ。シャレになってないんだよ。

 だから反省して…などと言うと、またまた偽善者めいて見えてしまう。それは当たっているよ。ホントに僕は偽善者だからね。骨の髄まで生まれついてのウソつきで偽善者だ。前につき合っていた女も、さんざっぱらいい人ブリッ子とバカにしてたからね。

 でも、今回は本当に僕はそう思わずにはいられなかったよ。確かにこれは他愛のないお笑い映画だ。所詮はシリアスに受け止める映画なんかじゃないし、そう思ったところで心底それを思い知った訳でもないだろう。どうせ忘れた頃にはまたグチたれてエゴイストにもなるだろう。反省などは一時の事だ。ここまで歳をくえば、人間もそう変われるものでもない。元々が僕という人間は決して善人でも人格者でもないし、正直言ってそんな程度の心の狭い人間に過ぎない。ここではカッコつけてもっともらしい事を言っているだけだ。言ってる事とやってる事はまるで違うよ。ここで言ってるように出来ていれば、もっと他人の尊敬なり愛情を勝ち得ているだろうからね。

 でも、それでも一時とは言えそういう気持ちになったのなら、こんな映画でもそれなりに効用があるというものだ。これからはそうそうグチも言うまい、人を悪くも思うまい、何でも悪く受け止める事もするまい…と思ったからね。少なくとも今年いっぱいは…と。

 だって「ブルース〜」を見たのは2003年も押し詰まった12月の28日。いくら何でもほんの数日ぐらいだけなら、愚かで罪深い僕も善人のマネ事ぐらいは出来るだろうからね(笑)。

 

 

 

 

 

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