「アンダーワールド

  Underworld

 (2003/12/08)


  

闇の世界の両陣営が宿命の激突

 それは何千年も前から戦われていた戦いだった。人間のあずかり知らぬところで、ヴァンパイア(吸血鬼)とライカン(狼男)の間で激しい戦いが繰り広げられていたのだ。だが、それも6世紀前、ライカンの首領マイケル・シーンが殺された事で、ほぼ明暗が決していた。今やヴァンパイア族の戦士たちは、生き残りのわずかなライカンたちを抹殺すべく日夜戦っている。それももうすぐ終わりを告げようとしているかに思えたのだが…。

 雨降る寒々とした大都会。ヴァンパイア処刑人の一人ケイト・ベッキンセールは、建物の屋上から遙か下を見下ろしていた。今まさに大男のケビン・グレヴィオーとその相棒が、地下鉄の駅に下りていくところ。その様子を別のヴァンパイア処刑人がカメラで撮影しながら追跡していた。さよう。大男ケビン・グレヴィオーと相棒はライカンだったのだ。ベッキンセールは屋上からひらりと舞い降りると、見張っていた処刑人と地下鉄駅へと向かう。今日の獲物はこのグレヴィオーと相棒と決めていた。だがベッキンセールももう一人の相棒も、グレヴィオーと相棒が誰かを尾行しているとは気づかない。

 それは一人の人間の青年スコット・スピードマンだった。彼は今まさに地下鉄に乗り込もうとしているところ。その後を追っていたグレヴィオーは、自分たちを尾行するヴァンパイア処刑人の姿に気づいた。

 グレヴィオーたちの銃が火を噴く!

 たちまち地下鉄駅は阿鼻叫喚の大騒ぎ。ライカン二人とヴァンパイアたちの間で、猛烈な銃撃戦が展開された。ライカンの銃に倒れたヴァンパイアは、青白い光を放って燃え尽きるように死に絶えた。ベッキンセールは逃げたライカンを追って地下道深く潜り込み、敵に銀の弾丸を何発もお見舞いする。だが彼女は、この激しい銃撃戦と地下道の追跡の果て、地下奥深くに何者かが潜んでいる雰囲気を感じ取っていた

 戦い済んで、ヴァンパイアの本拠である広大な洋館へと引き揚げるベッキンセール。だが他の一般ヴァンパイア族たちは、今や平和をむさぼり怠惰な生活を送っているアリサマだ。だがベッキンセールはどうにも安心出来ない。今日仲間を仕留めた弾丸は、ライカンが従来使っていなかった新しい武器だ。弾丸に紫外線発光装置を仕込んで、撃たれたヴァンパイアを内側から滅ぼす。そんなモノを開発する力がまだライカンには残っているのか?

 現在ヴァンパイア族のリーダー格となっているのはヤサ男のシェーン・ブローリー。だがこのブローリーは、ベッキンセールの「活躍」をいささか持て余し気味だ。そんなブローリーに、ベッキンセールは地下で感じた「気配」を報告する。本当にライカンの勢いは衰えたのか。実は地下で力を蓄え、反撃に備えているのではないか。だがブローリーはそんなベッキンセールの心配を一笑に付する。それに間近に迫る長老の「復活式」に備え、遠来の現長老一族を迎えるなどのビッグ・イベントを控えて、出来れば事は荒立てたくない。そんなブローリーを、ベッキンセールは「官僚」だと吐き捨てる。何でこんな男がかつてのリーダーだった長老ビル・ナイの後継者となったのか。今はこの屋敷の地下に復活を期して眠る、あのホンモノの「戦士」ビル・ナイさえいれば…と歯ぎしりするベッキンセールだった。

 その頃地下の奥深くでは、ベッキンセールの杞憂が現実のものとなっていた。ライカンたちは地底に隠れ家をつくり、そこで着々と反撃の準備を始めていた。しかも、そこで何やら医学実験を繰り返していたのだ。果たしてその目的は…。

 その頃ベッキンセールは、くだんの地下鉄銃撃戦の折りに仲間が撮影していたデジタル画像を調べ、大男のグレヴィオーたちが一人の人間の青年を追跡していた事を知る。検索の結果、その青年が病院に勤める医師のスコット・スピードマンと知り、ブローリーの警告も無視して屋敷を飛び出す。

 ベッキンセールはスピードマンのアパートに先回りして、そこで彼を捕まえる。「なぜ? 何であなたがライカンたちに追われるの?」

 藪から棒にそんな事を言われても、スピードマンは何やらサッパリ分からない。そもそも自分がベッキンセールになぜ捕まっているのか、彼らが何者かも分かっていないのだ。そんな折りもおり、彼らがいるアパートに何者かが襲撃をかけてきた。

 ライカンたちだ!

 変身したライカンたちは、巨大な獣の姿でどんどん襲ってくる。そんなライカンたちにベッキンセールは次々と銃弾を浴びせるが、その隙にスピードマンに逃げられてしまった。あわててエレベーターに乗るスピードマンだが、そこに飛びかかる男が一人。その男は明らかにライカンたちのリーダー格で、首から奇妙なペンダントを下げていた。

 男はスピードマンの首筋にガブリと噛みつく!

 そこに追いついたベッキンセールは、ペンダント男に激しく銃弾を浴びせた。もんどり打って倒れるペンダント男。すぐさまベッキンセールはスピードマンの手を取って、自分のクルマに乗せて急発進だ。だが、ペンダント男は銃弾を受けたのに起きあがる。目を奇妙に光らせて咆哮すると、傷口から銃弾が次々吐き出されていく。銃弾をすべて吐き出したペンダント男は、そのまま脱兎のごとく駆けだしてベッキンセールのクルマを追跡した。

 猛スピードで走るベッキンセールのクルマを、これまたすさまじい早さで追いかけるペンダント男。さらに男はジャンプしてクルマの屋根に乗ると、取り出した鋭利な刃物で天井からグサグサと突き刺す。

 そのうちの一撃はベッキンセールの肩を直撃だ。

 だが痛みをこらえるベッキンセールは、男をクルマから振り落とす。さらに男を跳ね飛ばすと、その場からすみやかに立ち去った。だが深手が祟ったか、運転したまま意識を失ったベッキンセール。クルマはそのまま港の水面に突っ込んだ。

 海底に沈んでいくクルマから、ベッキンセールを助けたのはあのスピードマンだった。彼は近くの廃墟に彼女を運ぶと、傷口を縛って止血した後で意識を失った。やがて気づいたベッキンセールは、スピードマンをヴァンパイアの本拠に匿う。だが、ヴァンパイアの本拠に人間を連れてくるのは、実は御法度だ

 で、今回の諸々の出来事はブローリーの神経を逆なで。彼女はだんだん微妙な立場に追いやられていく。ベッキンセールは今は眠りに就く長老ビル・ナイの復活を、心から望まずにはいられない。

 ベッキンセールがまだ幼い頃、彼女の家族はライカンたちに虐殺された。そんな彼女を救ったのがビル・ナイだった。それ以来、ビル・ナイがベッキンセールの父親代わりとなり、彼女もヴァンパイアの仲間入りをしたのだ。そんなビル・ナイさえ今いてくれれば、彼女の思いが通じるのに…。

 そんな一方でベッキンセールは、ブローリーの事をいろいろ疑いだした。ライカンの首領マイケル・シーンを倒した功労で、いまやヴァンパイアのリーダー格に上りつめたブローリー。だが、あんな根性ナシのブローリーにそんな事が出来るのだろうか? 古文書を紐解くと、確かにシーンを倒したのはブローリーという事になってはいる。だがその古文書の挿し絵に描かれたシーンの姿を見て、ベッキンセールは思わずハッと息を呑んだ。

 挿し絵のシーンが首から下げているペンダント…それは昨日スピードマンを襲った男が身につけていたものと同じだ。するとあの男がマイケル・シーンではないか。シーンは死んではいなかった!

 一方、ヴァンパイアの屋敷に匿われたスピードマンだが、彼の体にはジワジワと異変が迫っていた。ライカンに噛まれたスピードマンは、あと二日でヴァンパイアたちの宿敵ライカンに変身する運命だったのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

できるだけ映画をご覧になってからお読みください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケイト・ベッキンセール初めて本領発揮

 この映画、ホラーと言えばホラーだが、いわゆる典型的ホラーとは少々異なる。ストーリーをご覧になってお察しの通り、銃弾が乱れ飛ぶ現代アクションの色合いが濃い。それも「マトリックス」以降アクション映画の新たな主流となった、あのアクロバティックなスーパー・アクションのスタイルだ。

 だからまず「マトリックス」の亜流である事は間違いない。さらにそんなアクションにホラーの味付けをした、「ブレイド」のスタイリッシュぶりもそのままスライドしている。そういう意味では企画の鮮度というのはほとんどない。近頃どこかで見たような映画と言うのが似つかわしい作品だ。

 監督のレン・ワイズマンという人はこれが長編第一作らしいが、それまでミュージック・ビデオで鳴らした人らしく、あくまでカッコイイ映像づくりに腐心している。というか、それだけと言っても間違いない。まぁ、オリジナリティは皆無なこの映画としては、あとは勢いとカッコよさで押していくしかないんだけどね。

 激しくもポーズをキメキメのガン・アクションと、非現実的でアクロバティックな跳躍や飛翔…とくれば「マトリックス」の十八番。それを演じるヒロインのケイト・ベッキンセールが黒づくめで、長いコートやら体にピチピチのボディスーツというのも「マトリックス」丸出し。いやぁ、こんなに臆面もなくいただいちゃっていいんだろうかと思うほどだ。

 ヴァンパイアとライカンの長年に渡る戦い、それが高性能の銃器を使って戦われる…ってところが新味と言えば新味だが、登場人物たちが「人にあらざる者」ってのも、「マトリックス」が仮想現実を持ち出して来たのと同じ「なんでもあり」アクションの口実だから、やっぱりええカッコのアクションを見せたいがゆえの「それだけ」の作品と言い切って間違いない。

 では、こりゃしょうもない映画かと言えば、そうでもないんだよね。少なくとも収穫はいくつかある。その最大のものがケイト・ベッキンセールの扱いだ。

 ベッキンセールという女優さん、何かと売り出し中の人だけど、僕はイマイチその魅力ってのが分からなかったんだね。何しろ「ブレークした」と言われてるのが「パール・ハーバー」と来るからね。あの映画の彼女はハッキリ言ってあまり好感が持てない女だった。何を考えているのか分からない三角関係ぶりだったし、そもそも看護婦としてはケバすぎた。その後のロマンティック・コメディ「セレンディピティ」も、ジョン・キューザックの好演で見れたものの、彼女はちょいといただけないという印象しかない。そもそも彼女が「運命の出会い」にこだわらなければ、あんなに事態はこじれなかったではないか。もちろんそうならなければ物語が終わってしまうのは百も承知ながら、いまいましい女…と見えてしまうところに彼女の女優としての致命的な点があると思えるのだ。これにケネス・ブラナーの「から騒ぎ」あたりも加えると、ベッキンセールっていつも物事を揉めさせている張本人ってキャラクターになっちゃってる。もちろんそれは役の設定なんだけど、そんな彼女に好感を持てない何かがあるんだよね。思い出せば「ブロークダウン・パレス」も、やっぱり感じが悪かったっけ。

 僕はベッキンセールって女優さん、どこか「根性悪そう」に見える個性を持った人って思ってたんだよね。それは彼女自身がそういう人とか、そんな意味ではないよ(笑)。ただ、出てきただけで根性の悪さを漂わせるように思う。そんな彼女だから、どんな役をやっても好感持てなくなってたんだと思うよ。

 ところがここでのベッキンセールは意外に…と言っては失礼だが、初めていいと思った。黒の衣装が似合ってる。顔色悪そうなメイクも似合ってる。長い手足をフルに活かしたガン・アクションやアクロバティックなワイヤー・アクションが似合ってる。そして何より、ヴァンパイアの愛想なしコワモテ戦士ぶりが似合ってる。そう、これは彼女の一見「根性悪そう」な個性が120パーセント活かされた映画なのだ。

 だからハッキリ言って「マトリックス」トリニティのパクりでしかない、黒のテカテカ光ったボディスーツまでイケている。どこか「女王様とお呼び」的な性悪ぶりがピッタリなのだ。それが嬉しかったのかどうか、ベッキンセールはこの監督ワイズマンと婚約したとのこと。だけど、それはちょっとどうだろうかねぇ(笑)。これって単に設定がハマったってだけだからね。ワイズマンの演出手腕とはチト違うんじゃないかい?

 そもそも初主演がこれってのは、ベッキンセールとしては喜んでいいのかどうか微妙なところだろう。本領発揮は出来たものの、今後はこっち系の出番ばかりありそうな感じだ。それでもハマらないまま普通のドラマに出ているよりはいいか。

 そんな訳で、アクションはどれもこれも見たような場面ばかりだがカッコはいい。ヴァンパイアの長老にビル・ナイを持ってきたのは笑ったけどね。考えてみれば「スティル・クレイジー」の老いぼれロック・ヴォーカリストをやった時から、どこかヴァンパイア的ではあった。ただ、一番のクライマックスとおぼしきヴァンパイア・ライカン混血のスコット・スピードマンの対決場面は、元々ビル・ナイがどこかくたびれちゃってるところにスピードマンが何となくポチャポチャとして凄みのない俳優と来て、イマイチ迫力に欠けるのがツラいところだけどね。

 そして勝ち負け付けるだけが能じゃないって結末の付け方は、ご都合主義かもしれないが僕には好感が持てた。「マトリックス・レボリューションズ」の結末と言いこれと言い、アメリカには今そうした勝敗だけじゃないって厭戦気分が漂い始めているのだろうか。だとしたら、この国にとってこれは成熟と言えるんじゃないかと思うんだけどね。

 まぁお話はがらんどうながら、見ている間だけは楽しめるから悪い気はしない。そして先に挙げたベッキンセールの活用法を発見しただけでも、この映画の価値はあるのかもしれないね。

 

 

 

 

 

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