「パイレーツ・オブ・カリビアン

  /呪われた海賊たち」

  Pirates of the Caribbean - The Curse of the Black Pearl

 (2003/08/18)


 

最後にクイズがあるよ!みんな応募してね!

(締切は2003年8月25日(月)午前0時まで)

 

 

カリブ海に怪しげな海賊参上

 “ホ〜ネッまぁ〜で、とっける〜よっなっ…テキィ〜ラッみたいなっキィッスをし〜てぇ〜”

 まだあどけない少女が口づさんでいるのは、ご存知懐かしのあるテレビ連ドラ主題歌。彼女は大型帆船の舳先から、遠く海を見つめていた。“カ〜リ〜ビアンナ〜イト、もぉ〜っと抱いて抱い〜てぇ、もえあが〜るリ〜ズム〜”

 すると、そんな少女をたしなめる声が飛ぶ。

 「いけませんやお嬢さん!」

声の主は、今回の航海に雇われた荒くれ船員の一人。「そんな懐かしドラマ主題歌歌ってたら、寄ってくるのはオタクか海賊って相場が決まってますぜ」

 時は18世紀。ここは故国を遙か離れたカリブ海。今この英国海軍が誇る大型帆船は、植民地総督に任命されたジョナサン・プライスを赴任地まで送り届ける航海の途中。少女はそのプライスの娘だ。

 「なぁに、海賊が何だ」と話に割り込んで来たのは、プライスの部下ジャック・ダベンポート。「海賊が出てきたら、石原プロの黒岩軍団方式に一網打尽にしてボコボコにしたあげく、片っ端から吊し首にしてやる。情けは無用だ」

 …と、まぁ根っからの役人根性丸出しのダベンポートに辟易した少女は、再び海に目を凝らした。

 すると…!

 何と一枚の板に乗って、少年が波間を漂流しているではないか。たちまちロープが下ろされ、少年は船の甲板へと引き揚げられる。少年は自分の名をウィル・ターナーと名乗るや否や、そのまま気絶してしまった。

 果たしてこの少年はどこから…と一同が思った時、その答えは前方の海面に忽然と現れる。

 そこには爆発して炎上する大型帆船が浮かんでいた!

 その凄惨な状況から見て、生存者はこの少年以外期待できそうになかった。一体原因は何だ? 火災か、弾薬庫の爆発か? それとも…もちろんこの船の乗員全員にはすぐに察しがついた。

 「海賊だ!」

 その頃、気絶している少年を物珍しげに見つめていた少女は、その首に奇妙なコインが下がっているのに気づいた。それは不気味なドクロが彫ってある黄金のコインだ。

 もしかして海賊?

 少女は瞬間的に少年の首からコインをもぎ取り、自分の手もとに隠した。もしこの少年が海賊だったら、縛り首にさせられてしまうかも…。そう思った少女が、少年の命を守らんとして、とっさにとった行動だったのだが…。

 それから幾年月。

 ここは英国植民地ポート・ロイヤルの港。総督の娘のあの少女は、美しい女性キーラ・ナイトレイとして立派に成長していた。いまやその胸も、柱谷をトリコにしたNHK山形放送局の女子アナ顔負けのスイカップだ。そんな彼女が思い出すのは漂流していた少年を引き揚げたあの日のこと。少年からコッソリともぎ取ったあのドクロのコインは、今もナイトレイがしっかりしまっていた。それを首から下げてじっと見入っていた時、部屋に父親である総督プライスが入って来ようとした。慌ててコインを胸元に隠すナイトレイ。

 「ん? オマエ一体何やってるんだ?」

 “胸ぇ〜につけ〜てる、マ〜〜〜〜クはりゅ〜せぇ〜〜”とか何とか歌いながら、胸元のコインを隠すナイトレイ。これには親父プライスも頭を抱えた。「いい歳して懐かしテレビドラマの歌なんか歌ってるんじゃない。オタクだと思われるぞ」

 そう。オタクと思われちゃマズイ。ナイトレイは例の父親の部下だったダベンポートから近々プロポーズされようという状況だ。ダベンポートは彼女の父親の後任として総督に任命された出世頭。彼からプロポーズされるとなれば良縁であることは間違いない。父親も大乗り気。だがここだけの話、ナイトレイはイマイチこの話に気分が乗らないのだった。ともあれ今日はダベンポートの総督就任式典がある。ならば彼女も着飾って出席しなくてはなるまい。というわけで今日も朝から女中の手によって、コルセットで身体を締めに締め付けられるナイトレイなのだった。

 そんなナイトレイの屋敷に、一人の青年がやって来た。彼は鍛冶屋で働く若者で、今日の総督就任式にダベンポートに手渡される剣を届けに来たのだ。そんな彼を見つけて、ナイトレイの目はパッと輝いた。若者も彼女を見て表情を輝かせる。

 「あぁ、お嬢さん!」

 実はこの若者、あの漂流していた助けられた少年ウィル・ターナーことオーランド・ブルームの成長した姿だった。あれ以来、二人は幼なじみとして親しくしていたのだ。

 「私のことは呼び捨てでいいのよ」

 「いや、僕にとってはあなたはいつまでもお嬢さんです

 せっかく親愛の情を見せたナイトレイなのに、そう言われちゃ気持ちのやり場がない。ついついまたしても歌が口を突いて出る。

 “今すぐあ…って見つめるそぶりをしてぇ〜み〜ても〜、なぜにだま…ってここぉ〜ろ離れてしまぁ〜うぅ〜”

 ナイトレイはちょっと不満げな表情で総督就任式へと出掛けて行った。そりゃあブルームだって親しげにしたい。だけど所詮は身分違いのオレだもんなぁ。そこで知らず知らずのうちに彼女の歌を続けるところが、実は相性の良さだったりするのだが。

 “マジで怒っ…たときほど素顔がいとぉしぃ〜くてぇ〜、たがいにも…っとわかぁ〜りあえてたつもぉ〜りぃ〜”

 だがそんなブルームの気持ちをよそに、ナイトレイ一行は総督就任式へと急ぐ。おそらく今日あのダベンポートからプロポーズがあるのだろう。そう思うとやり切れないブルームなのだった。

 “行かぁな〜ぁいでぇ〜胸が〜いったぁむか〜らぁ〜、他のぉ〜誰かとぉ〜出会うためぇにぃ〜”

 一方その頃、港には小舟に乗った怪しげな男がやって来た。妙な替え歌を口ずさみながら…。

 “マハリィ〜クマハァ〜リタヤンバラヤンヤンヤン、ボ〜ト〜にのぉってやぁ〜ってきた、ちょ〜っとチャ〜ム〜なオト〜コの子、ジョニィ〜〜、ジョニィ〜〜”

 その男…長髪にヒゲを伸ばしたジョニー・デップは、どこからどう見ても海賊でございという風体で港をウロつき回る。あげく港に停泊する英国海軍随一のスピードを誇るインターセプター号に乗り込んで、今にも出帆しようとするところを見張りの兵隊に見つかった。

 「何やってるんだオマエ?」

 答えに窮したデップは、何を考えたかいきなり兵隊たちの前で腰に手を当てて仁王立ちしたあげく、思わず苦し紛れの歌を勇ましげに一曲。

 “ひっかるぅ〜海、ひっかるおぉ〜ぞら、ひ〜か〜る〜だいぃ〜ちぃ〜”

 ところがその時ちょうど岸壁の上では、就任式を終えたダベンポートがいよいよナイトレイに求婚しようとしている最中だった。

 “き〜みだけを〜しんじぃ〜てぇ〜〜、きみ〜だけをキズつぅけてぇ〜〜、ぼぉくらは〜いぃつも、は・る・か・は・る・か・と・お・い・み・ら・い・を、ゆめぇみてた〜はずさ〜”

 だがナイトレイはその時それどころじゃなかった。胸に食い込んだコルセットがいよいよ苦しく、意識を失う寸前だったのだ。だがダベンポートはそんな彼女に気づかず、絶好調で歌いまくる。“せ・か・いじゅうの誰ぇ〜より〜きぃぃっと、果てしないそのえがぁ〜お、ずぅっとだ〜きしめぇ〜て〜いたい、季節ぅ〜をこ〜えてぇ〜いぃ〜つぅ〜でもぉ〜”

 ついにはナイトレイは気を失って断崖から海中に落ちてしまった!

 それに気づいたダベンポートは即飛び込もうとするが、下が岩場のために飛び込めない。仕方なく慌てて水辺に向かって降りていく。

 一方、それをたまたま船上から見ていたデップと兵隊たち。すわ一大事。海に落ちた彼女を助けなくては!

 “さぁ〜け〜べっ胸をはれっ、こうて〜つの胸を〜〜”…何とデップは歌いながら逞しげなポーズをつくりつつ、船から海に身を躍らせた。

 ザッパ〜ン!

 海に落ちて沈んだナイトレイの元へ、デップは一目散に泳いでいく。それを見つめる兵隊たちは、デップを応援すべくかけ声をかけた。“エイトッ!エイトッ!エイトエイトエイトッ!”

 こうして何とかナイトレイを助けて岸に上がってきたデップ。そんな彼を待っていたのはダベンポート、プライスはじめ英国軍の面々だ。

 「きさま、海賊のジョニー・デップだな、神妙にお縄を頂戴しろいっ!

 なんとデップはこの界隈でもかなり悪名高い海賊の一人だったのだ。兵隊たちに取り囲まれたデップは、たちまち手錠をかけられてしまう。

 これにはナイトレイが驚いた。「ちょっと待って、この人は私の命の恩人なのよ!

 ところがそこで英国軍の面々がひるんでいると見るや、デップはアッという間にナイトレイを捕まえて人質に取った。さすがに名の知れた海賊には油断も隙もありゃしない。ゴキゲンなデップはダベンポートに歯をむき出して笑う。

 “ロッ、ロッ、ロ〜ボタン、ウ〜ヒャヒャッのキッキッキ!”

 そしてあっけにとられた一同の目前で、デップは鮮やかに立ち去った。こんなあざ笑われ方をしたまま、まんまとデップに逃げられたダベンポートは憤懣やるかたない。「くっそぉぉぉぉ〜〜〜! 奴を捕らえろ、必ず縛り首にしてやる!」

 さて街の中に紛れ込んだデップが隠れたのは、街の鍛冶屋。親方が一人飲んだくれて眠っていたが、起きてきそうにない。早速その場にあった道具を使って、デップは手錠を壊しにかかった。ところがそこにあのウィル・ターナーことオーランド・ブルームがやって来たからたまらない。

 「おのれ、きさま海賊だな! 覚悟っ!」

 たちまち始まるチャンチャンバラバラ。何とこのブルーム、鍛冶屋のくせにやたら腕が立つ。それもそのはず、仕事の合間にヒマをみては剣の練習をしていたのだ。

 「なかなかやるな、だが剣の練習なんかやってたとこ見ると、オマエにゃ女もいないだろう

 「やかましいっ、海賊は敵だっ」

 図星を突かれて頭に来るブルーム。さらに丁々発止の戦いは続くが、何とそれにケリをつけたのは、眠っていたはずの親方だった。奮闘の甲斐なく兵隊に引っ張られて行くデップ。

 さて、そんなある晩のこと。

 暗い外海から、このポート・ロイヤルの港にゆっくりと近づいてくる船影があった。やがてこの船の乗組員は静かにボートで岸に近づき…。

 “ビル〜のまち〜にガオ〜〜、夜〜のハイウェ〜にガオ〜〜”

 いきなり上陸してきた連中は、世にも危険な荒くれ海賊ども。たちまちポート・ロイヤルの街は阿鼻叫喚の渦となった。

 “ダ・ダ・ダ・ダ・ダ〜ンとた〜ま〜がくる〜、バ・バ・バ・バ・バ〜ンとはれ〜つする〜”

 あちこちで破壊と銃声と悲鳴が上がり、海賊どもは非道と蹂躙の限りを尽くす。英国軍が出動するが、この海賊たちには歯が立たない。みなバッタバッタと倒されるのみだ。

 さて海賊どもは、元総督のプライスの屋敷にもやって来た。女中たちを慌てて逃がしたナイトレイだが、自分は逃げ切れずに海賊たちに捕まってしまう。

 「へっへっへ、お嬢さん、オレたちゃアンタの持ってるそのコインに用事があるんだよ

 するとナイトレイは気丈にも海賊たちに言い放った。「ちょっと待って! 海賊の掟では私にも交渉権があるんでしょ? 私は船長と交渉するわ!

 かくしてナイトレイは海賊たちに引っ立てられて行った。その様子を通りかかったブルームが偶然見かけたからたまらない。

 「彼女がさらわれる!」

 かくして日頃秘かに鍛え上げた腕で、海賊たちと奮戦するブルーム。だが何しろ多勢に無勢。ブルームは頭をブン殴られて気絶。そのままその場にのびてしまった。

 さらに海賊たちへブタ箱にもやって来る。そこに捕らえられていた男を見て、海賊たちはニンマリとした。

 「お〜や、これはこれはジョニー・デップ様だぞ?」

 どうもこの海賊たちとデップは顔見知りらしい。しかも、海賊たちが乗って来たブラック・パール号に、何やら因縁がありそうだ。だが海賊たちに減らず口を叩いてばかりのデップ。怒った海賊はそんな彼の胸ぐらをグイッと掴んだ。すると…。

 何と腕がガイコツではないか!

 “ホ〜ネ〜まぁ〜で、すっける〜よっなっ…” ニヤ笑いしたデップは、思わず妙ちきりんな替え歌を口ずさんだ。

 「どうやらウワサは本当だったようだな。オマエら呪われてやがる

 「じゃかあしい! そこで吠え面かいてろ!」せせら笑うデップに海賊たちは怒りを隠しきれない。デップを一人ブタ箱に残し、海賊たちは去って行くのだった。

 さてそのブラック・パール号の船上では、ナイトレイが荒くれ者たちに引っ立てられて甲板に上がっていた。「船長に交渉を要求するわ! ドラフトだって逆指名がある世の中よ、要求を聞いてっ」

 そんな彼女の前に現れたのが彼らのリーダー、ジェフリー・ラッシュだ。「おやおや、これは勇ましいこった。アンタの名前は何て言う?

 ナイトレイは一瞬考えた。もし自分の本名を言って、元総督の娘とバレたら面倒な事になる。ここは偽名を使った方が良さそうだ。「ターナーよ」

 とっさにターナーという姓を名乗ったあたり、ナイトレイのターナー=ブルームへの思いを想起せざるを得ないが、実はこれが知らず知らずに墓穴を掘っていた。ターナーという姓を耳にしたとたん、彼らの間に動揺がはしったのだ。中でもラッシュ船長は、してやったりとばかりほくそ笑んだ。

 「で、一体何を元手に交渉するんだね?」

 ナイトレイは例のドクロのコインを海賊たちに向かってかざした。最初は関心なさそうにしていた彼らだったが、ナイトレイがコインを海中に捨てようとすると、ラッシュ船長以下狼狽したところで勝負あった。

 「で、そのコインの代わりにオレたちに何を要求するんだ?」

 「もう街への攻撃はやめて」

 すると驚いた事に、ラッシュは海賊たちに攻撃中止を指令した。だがナイトレイが喜んだのもつかの間。そのまま船を港から出帆させるではないか。まだ彼女が船から下りてないのに。

 「待って、私を船から下ろしてちょうだい!

 「そいつはダメだ!」とラッシュはニヤニヤ笑いながら答えた。まず第一に、ナイトレイは自分の釈放を要求しなかった。第二に、そもそも交渉は海賊同士の掟で決まっているもので、ナイトレイは本来関係ない。第三に、掟なんてもともと法でも何でもない、単なるガイドラインみたいなもんなんだ…。

 かくして唖然とするナイトレイを乗せて、船は大海原へと走り出して行った

 さて翌朝、ナイトレイをさらわれて焦り狂うブルームは、あのデップだったら海賊の行方が分かるかも…とダベンポートに提案する。だが役人根性で杓子定規なダベンポートはこの提案を一蹴。そうしている間にも彼女は遠くに連れ去られてしまう。こうなったら非常手段しかない。思い詰めたブルームはブタ箱に乗り込んだ。

 中にはデップが逃げるに逃げられず立ち往生。そんな彼にブルームが海賊船ブラック・パール号の事を尋ねると、打てば響くよに答えが返ってくるじゃないか。奴は海賊たちのねぐらを知っていた。しかもブルームのまたの名をターナーと知るや、たちまち目の色を変える。そんなデップにブルームは驚くべき提案をした。

 「彼女を救うのを助けてくれるなら、ここから出してやる」

 かくしてデップをブタ箱から出したブルーム。いよいよ大冒険の始まりに、デップはまずブルームの覚悟のほどを確かめた。

 「僕は彼女のために命を懸ける」

 よし、いいぞ、ならば問題はない。デップの口から思わず鼻歌もこぼれ出た。

 “オ〜ト〜コだった〜らぁ〜ひっとつにぃ〜かけぇ〜るぅ〜、か〜けぇ〜てぇ〜も〜つれぇ〜た〜ナ〜ゾをと〜くぅ〜”

 そんなこんなしているうちに、デップとブルームはコッソリ港に停泊している英国軍の帆船に乗り込むと、その船をチャッカリいただく素振りを見せた

 「奴らが船を盗むぞーっ!」

 船上にデップとブルームを認めたダベンポートは、烈火のごとく怒り狂った。「船を奪還せよ!」

 たちまちナイトレイ救出のために出航準備を整えていたインターセプター号が、ダベンポート以下を乗せて追いかけてきた。さすがに速さを誇る大型船だけに、たちまちデップとブルームが盗んだ船に横付けする。だが、ダベンポート以下全員が盗船に乗り込むや否や、突然インターセプター号が盗船から離れて航行を始めるではないか。何といつの間にか今度はインターセプター号が、デップとブルームに乗っ取られていたのだ。これには地団駄踏まずにいられないダベンポート。だが盗まれたインターセプター号は、英国軍でも最も早い船。しかも今ダベンポートたちが乗り込んだ船は、デップによって舵まで壊されていた。かくしてインターセプター号はダベンポートの目の前でどんどん小さくなっていく。

 この鮮やかさに、ダベンポートの部下たちもつい口を滑らせた。「敵ながらアッパレ…」

 イジケたダベンポートはいきなりレイバンのサングラスを渡哲也ばりにかけると、一人静かに背を向けてタバコを吹かしながら甲板を歩みさるしかない。もちろんドラマのエンディングを飾る、十八番のあの歌を口ずさみながら…。

 “ひとりぃ〜、ひとぉ〜りぃ〜、オ〜レぇぇ〜もぉぉ〜ひと〜りぃ〜…”

 こうして無事に大海原へ乗り出したインターセプター号。そこでブルームはデップに尋ねたい事があった。なぜ自分の姓ターナーを聞いて反応したのか? だが返って来た答えは予想外のものだった。

 「オマエの親父は海賊なんだよ」

 旅だったまま消息不明の父親を捜して、このカリブの海にやって来た幼い頃のブルーム。彼はてっきり父親が海賊にやられたと思い、海賊は仇だと常に思って来た。その当の父親自身が海賊だとは…ブルームはにわかに信じる事が出来なかったが、デップの口振りからはまんざらウソにも思えない。それはそれとして、ブルームも受け入れざるを得なかった。

 一方、デップにはデップの事情もあった。彼は元々ブラック・パール号の船長だったが、例のラッシュの裏切りで船員に謀反を起こされ、船を乗っ取られてしまったのだ。そして無人島に一人取り残されてしまった。そこを奇跡的に脱出して、復讐のためにラッシュたちを追っているのだ…。

 さて、彼らはまず船乗りたちの溜まり場の港町へ出向く。ここで今回の航海に参加する船員を集めるのだ。デップは酒場で顔見知りの男に声をかけるが、それは奇しくもこの映画冒頭で少女時代のナイトレイの歌をたしなめたあの船員だった。

 「デップよ、オマエはラッシュに復讐したいんだろうが、それはちょっとヤバイんじゃないかい?」

 「それが今回、オレにはちょっとした切り札があるんだよ

 そのデップが切り札扱いしたのが、何と今回の旅の相棒ブルーム。さて、一体いかなる理由でこの若者が切り札となり得るのだろうか…?

 さて、一方ブラック・パール号にさらわれたナイトレイはと言うと、いきなりラッシュ船長との晩餐に招かれていた。怯えつつも空腹には耐えかねて船長室を訪れると、ラッシュは驚くべき事実を彼女に告げるのだった。

 それは彼らがかつて奪った、アステカ人の呪われた金貨の物語だ。

 このコインは盗んだ者に呪いをかける。そうとは知らぬラッシュたちは、この金貨を盗んで使いまくり、連日連夜遊びほうけた。だが、いくら酒を飲んでも酔えない。いくら食っても味がない。いくら女を抱いても気持ちよくない。そして死ぬことも出来ない、生ける屍と化してしまったのだ。

 その呪いを解く方法はたった一つ。盗んだ金貨をすべて元の場所に戻すこと、そしてその際に贖いの血を捧げることだ。それで彼らはあたり一帯の港町を襲っては、失われた金貨を一枚一枚取り戻して来たのだ。それもナイトレイが持っている一枚で終わりを告げる。あとは贖いの血だけ…。

 話がここまで及んで、ナイトレイにもようやく事情が見えて来た。自分がこの航海に連れて来られた理由は、この贖いの血のためだった。彼女がとっさの事で自分をターナーと名乗ったのがアダになった。彼らの海賊仲間の一人だったターナーこそが、贖いのために必要な血を持つ人間だったのだ。当人がいない今、その血を引く人間が生け贄にならねばならない。彼女は海賊ターナーの娘と思われていたのだ!

 冗談じゃない!

 慌てて船長室から飛び出したナイトレイは、甲板に飛び出した。しかし彼女はそこで思わぬものを目撃することになる。外は月夜の晩、月光に照らされた甲板の船乗りたちは、みなガイコツやゾンビさながらの姿ではないか!

 きゃああああ〜〜〜っ!

 船室から彼女を追って甲板に出てきたラッシュ自身も、たちまち月光を浴びるとガイコツに早変わり。彼らは文字通り生ける屍で、月の光にさらされるとその本当の姿が見えて来るのだ

 “楽しいな〜、楽しいな〜、おっばけは死なない〜〜〜〜、ビョ〜キもなん〜にもないっ”

 彼らガイコツ海賊どもは、悲鳴を上げるナイトレイに向かって、朽ち果てた顔をゆがめて笑い騒ぐのだった…。

 さて、その頃デップとブルームはと言えば、インターセプター号に新たな乗組員を招き入れ、一路海賊たちは根城にしている無人島へと向かっていた。ボートで島に上陸し、こっそり島の洞窟へと忍び込むデップとブルーム。すると、案の定そこは海賊たちの盗品の貯蔵倉庫になっていた。ふざけハシャぐ海賊たちの足下には、各地から奪ってきた金銀宝石など財宝がザクザクと山のように積まれていた。そしてそんな宝物の山の頂上には奇妙な大箱が…。

 アステカの呪いのコインの箱だ!

 そして、そこにはナイトレイを連れたラッシュがいた。

 「くそっ!」とはやる気持ちで物陰から飛びだそうとするブルーム。だが、デップはそんな彼を止めた。「気持ちは分かるが様子を見ていよう」

 一方ラッシュは、洞窟の中にいる部下たちに芝居がかったポーズと口調で語りかける。「いよいよここにある最後の一枚で、コインが全部揃うことになる。そこにこの女の贖いの血さえ垂らせば、俺たちは長年の呪いから救われるのだ!

 「お〜〜〜〜〜っ!」

 “くっらっいっさ〜だめっをいっきっる〜、おれたちゃよ〜うか〜いにんげんなのさっ”

 “早く人間になりた〜〜いっ!”

 このままではナイトレイが危ない。だがデップは一向に動こうとしない。そんなデップに、ブルームはしばし疑いを持った。こいつ、奪われた自分の船を取り戻したいだけで、彼女の命を守ろうという気なんてないんじゃないか? 思いあまったブルームは、石でデップの後頭部を直撃。デップはその場で気を失ってしまった。

 ナイトレイはいよいよ自分が生け贄にされるのかと思うと気が気でない。こんな時に誰かが助けに来てくれないかと、心の中で願わずにいられない。 

 “こ〜んなとっき〜、だ〜れっかがホラ〜、もう〜じっきあの〜、あ〜の〜ひっとがぁぁ〜…来ってくれる〜き〜っとまた〜、ちい〜さな夢もぉってぇぇ〜〜〜〜”

 だが、ラッシュはナイトレイにナイフを突きつけ、一気に…!

 

 …彼女の手の平を傷つけてアステカ金貨に垂らした。何の事はない。別に彼女を殺して血を奪うまでもない。血は数滴で足りるのだ。思わずホッとするナイトレイと、そんな彼女を見つめていたブルーム。

 ところが一同の身体には何も変化が見られない。ラッシュは試しに部下を銃で撃ってみるが、やっぱり死ななかった。

 呪いが解けない…?

 「どうなってるんだよ〜!」「そうだそうだ〜!」「オマエについてからこっち、良いこと一つもねえじゃねえか!」 たちまち荒くれ野郎どもの罵倒がラッシュめがけて飛んでくる。

 そんな海賊たちがザワザワしている最中、ブルームは物陰からナイトレイに向かって合図した。ナイトレイは回りの海賊たちの様子を伺いながら、コインを一枚拾ってソロソロと物陰へと移動する。そしてブルームと再会を喜んだ。

 “ま〜た〜めぐりあえ〜たの〜も〜きっとぐぅ〜ぜん〜じゃないぃ〜よ、心ぉ〜のどこかぁ〜でまぁってたぁぁ〜〜〜”

 こうしてブルームは、まんまとナイトレイを奪還して洞窟を後にした。海賊たちが、どうやらナイトレイは「ターナー」の血を引いていなかったらしいと気づいた時には、彼らはトンズラこいた後。そんな海賊たちの前に、目覚めたデップがヨロヨロと歩いて来たからたまらない。

 「おやおやおや、これはこれはデップ船長じゃないかね?」

 さすがに多勢に無勢で気まずさの絶頂みたいな雰囲気の中、それでもデップは全然めげてながった。空元気なのか何なのか、またしても余裕で歌なんぞかます。

 “口の〜き〜きか〜た〜を〜知らない〜ナマイキな奴ぅ〜だと思った〜…。ま〜もる〜べき〜も〜の〜がなんなの〜かぁ〜、こ〜のごろ〜それが〜わから〜な〜く〜なる”

 「何だ何だ、オマエは一体何が言いたいんだ?」と、ふざけたデップの歌に業を煮やしたラッシュがたまりかねてわめく。

 するとデップは自分に向けられたいくつもの銃口にも動じず、ニヤリと笑ってまた歌い始めた。

 “あ〜るときはせ〜いぎ〜のみっかったっ、あ〜るときはあ〜くま〜のてっさっきっ”

 さらにギョッとするラッシュに向かって、デップはこう告げるのだった。

 「オマエは本当のターナーの血スジが誰か知らないだろう? オレなら知ってるぜ

 さて再びラッシュと手を組もうというデップの狙いは何か? ラッシュたちにかけられた呪いは解けるのか? はたまたブルームとナイトレイの愛のゆくえは…?

 

「海賊映画」再興のカギはアニメーションにあり

 ジェリー・ブラッカイマーの新しい夏の大作が海賊映画だ…と聞いて、イヤな予感がしなかった映画ファンはいないんじゃないだろうか?

 「アルマゲドン」「パール・ハーバー」と、大味大作の名を欲しいままにする作品群を連発してきたブラッカイマー。実はあの「ブラックホーク・ダウン」もブラッカイマーのプロデュースなんだけどね、なぜかみんなそういう都合の悪い事は忘れちゃう(笑)。ブラッカイマーと言えばハリウッドの悪しき大作主義の権化として、みんな血祭りに挙げたくてウズウズしてるわけ。かく言うこの僕もその一人と言っていい。ま、SFXやCGを多用したアクション・ムービーだったり、MTV感覚の映像やらサントラ盤との連動ミエミエの音楽設計やら…今時槍玉に挙げられる、ハリウッド映画の悪い部分をすべて兼ね備えたような作品ばかりつくってきたからねぇ。

 それがなぜか今度は海賊映画。近年完全に廃れちゃったジャンルで、たまに復活させようという試みもあったがことごとく失敗してきた。それをこのブラッカイマーが…とくれば、どうせ大味にデカい海賊船やら帆船をつくってぶっ壊したりするんだろう。何だかいかにもつまらなそう。

 監督がゴア・ヴァービンスキーってとこも微妙だ。この人、先の「ザ・リング」はなかなか良かったものの、僕は未見ながら最悪だったと評判の「ザ・メキシカン」のイメージが強い。まして今回ブラッカイマーと組むとなれば、どうしてもこっちのイメージが脳裏に甦って来ないわけにいかない。「ザ・リング」だってオリジナルの日本映画に忠実につくったから見れる映画になったとも言える。となると、こいつの実力ってちょいと危ないんじゃないか?

 もし唯一この映画に期待が持てるとすれば、この要素だけだ…「主演:ジョニー・デップ」

 実際のところ、この映画の特報予告編を劇場で見るにつけ、どうにも釈然としなかった。ブラッカイマーのいかにもSFXとCGをふんだんに使った大作映画らしい、監督が「ザ・メキシカン」のヴァービンスキー…なのに…なぜかそこに主演ジョニー・デップ!

 いやはや…この器、このメンツの中で、一見ジョニー・デップが何とも浮きまくってるんだよね(笑)。

 ジョニー・デップって言うと、どちらかと言うとアメリカの大スターなのにヨーロッパ映画志向が強く、本国でもヘタするとジム・ジャームッシュ映画とかに出ちゃう。軽めのコメディに出た…と思いきや、マーロン・ブランドやフェイ・ダナウェイとクセ者役者で固めた「ドンファン」だったりもする。なにしろこの人の出演作の中心をなすのが、ティム・バートンの映画だからねぇ。ティム・バートンはあのクセの強いまんまハリウッドの主流になっちゃった人で、勢いそのバートン作品が主演作の中心をなすデップもまた、クセが強いのにスターであり続けるという希有な存在となったわけだ。今ざっと考えてみたけど、ストレートな娯楽映画ってジョン・バダムの「ニック・オブ・タイム」ぐらいじゃないか?

 ともかく、「マトリックス・リローデッド」「チャーリーズ・エンジェル・フルスロットル」「ターミネーター3」「ハルク」…と、こう並んだハリウッド夏の大作群の中でも、この「パイレーツ・オブ・カリビアン」はかなり分が悪く感じられたんだよ。しかも製作元がディズニーと知って、「なぁんだ、ディズニーランドのあの“カリブの海賊”じゃないか…と事情を察した人も少なくないと思う。だからこそ、よけいにジョニー・デップの出演が気になった。何でこんなハリウッド娯楽大作、それもよりによってジェリー・ブラッカイマーの作品に出たのか分からなかった。

 いや、ハリウッド大作に出るのが悪いなんて言ってない。むしろ、「オレってインテリだから」なんて勘違いされて、妙に頭でっかちなばかりでつまらない映画に出るよりは、こういう娯楽作に出てもらう方がナンボか好感が持てる。だけど、ブラッカイマーとデップの落差の激しさに、この映画って一体どんな映画なんだ…と謎は深まるばかりだった訳。

 ところがフタを開けてみたら大好評、大ヒットみたいじゃないか。これは一体どうした事かと慌てて劇場に駆けつけてみたんだよね。そして見たら疑問はたちまち解けた。

 面白い!

 おそらく夏休み大作群のうちでも…いや、近来のアメリカ映画でも屈指の面白さと言える。これは意外だったねぇ。

 ところで海賊映画…と言えば、かつてのハリウッド娯楽映画の有名ジャンルの一つとして、必ず引き合いに出されるものだ。あとは西部劇、ギャング映画、ミュージカル…ってな感じだね。これらの大半は今は絶滅してしまったものだ。だからこそ、時折、これら滅びたジャンルの復権が叫ばれたりもする。それはハリウッド娯楽映画の原点を模索する試みなんだろう。

 だけど、若いファンはともかく、ある程度の年齢になっているファンの方々ですら、海賊映画を目撃している人って少ないんじゃないか?

 まずはリアルタイムで見るべくもない。そして旧作のリバイバルなり何なりというのもほとんどない。テレビ放映も日本では現在ほぼ皆無だろう。みんな全盛期の西部劇、ギャング映画、ミュージカルあたりは見たことがあるにせよ、海賊映画ってのはほとんど見た覚えがないんじゃないか?

 考えてみれば海賊映画って、上に挙げたハリウッド名物の中でも一番早く廃れたんじゃないかと思う。それと、他のジャンルには娯楽映画としてつくられても映画史に燦然と輝く名作に化けたような作品があったが、海賊映画にはそんなものがなかったんじゃないかと思うよ。だから後の世に残る作品もなかった。

 つまりは、そういう化ける要素が少ないジャンルって事でもある。

 どうしてか? それは後に僕なりに考えてゆっくりと説明するね。

 ともかく僕は海賊映画の全盛時代も、その頃の作品も知らない。ダグラス・フェアバンクスとかエロール・フリンの海賊映画は見ていないわけ。それを前提にして読んでいただければ幸いだ。

 で、海賊映画は早々に娯楽映画の最前線から退場し、その後には何も残さなかった。では、まったくその姿かたちは消えてしまったのか?

 西部劇でもミュージカルでも、それぞれジャンルの復権を叫んで突然変異的な作品が生まれることがある。ギャング映画は結構今でもつくられるよね。で、実は海賊映画だって、今まで一切復権の狼煙が上がらなかったわけではないんだよ

 だが、これも他ジャンルから見ると少ない。本当はいくつもあるのかもしれないが、僕が今パッと思いつく例はわずか3本しかないんだ。

 まずは「大地震」「エアポート」シリーズで意気上がっていた、ユニバーサル映画のジェニングス・ラングがプロデュースした作品「カリブの嵐」(1976)。「ジョーズ」「ブラック・サンデー」といきなりメンコの数が増えてスターダムにのし上がったロバート・ショーが主演、相手役にはこれまた「大地震」で久々復活のジュヌビエーブ・ブジョルドという布陣だ。監督はジェームズ・ゴールドストーンで、これ以外には「ジェットローラーコースター」「世界崩壊の序曲」なんかも撮っている。だが、この作品って狙いは今回の「パイレーツ・オブ・カリビアン」にかなり近いんだけど、何しろロバート・ショーという人が重量感ありすぎで、軽妙で快活なイメージがイマイチ。しかも致命的な事に、帆船がなぜか一隻しか出てこない(涙)。CGがまだなかった頃で、海賊映画の過去の資産も何もかもなくなっちゃった時点では、こうなるしかなかったのかもしれないね。

 そして「ダイ・ハード2」「クリフハンガー」で一気に頭角を現したレニー・ハーリン監督の「カットスロート・アイランド」(1995)。こちらはちゃんと帆船を何隻か建造しての大作だ。ただし船がいっぱい出りゃいいってもんじゃない。レニー・ハーリンと言えばこれに先立つ「ロング・キス・グッドナイト」で、派手派手にぶっ壊しをやらかした御仁。大作を2作も成功させれば鼻息も荒くなるんだろうが、「ロング・キス〜」あたりではいささかそれも鼻につき始めた。制作したのが無駄に金を使いたがるカロルコってところもマズかった。せっかくつくった船を惜しげもなく爆破して粉々にしたりしたのだが、それで映画が面白くなるなら苦労はないのだ。重量級のスペクタクルで押しまくっても、爽快な味は出るわけがない。しかも嫁さんにもらったばかりのジーナ・デイビスをやたらヒロインに起用し始めたのも裏目。相手役のヒーローが、どちらかと言えばひ弱で考え込み型のマシュー・モディーンじゃ爽快感が出る訳もない。かくして、これは金を浪費しただけの空疎な大作となった。

 で、正統派がダメなら変化球で…と言うわけでもないだろうが、「カリブの嵐」でコケたユニバーサルが放ったのが「アイランド」(1980)。これは先に述べたように、実はちゃんとした海賊映画ではない。時代背景も18世紀ではなく現代。何とかつての海賊の末裔がバハマ諸島沖に生きていて、現在まで海賊行為を行っているという奇想天外な物語だ。これは「ジョーズ」の原作者ピーター・ベンチリーの小説の映画化第三弾に当たり、「ジョーズ」をつくったリチャード・D・ザナックとデイヴィッド・ブラウンが夢よもう一度とばかり製作、何と「がんばれ!ベアーズ」のマイケル・リッチーが監督にあたった。主人公に扮したのはマイケル・ケイン。で、これをお読みのみなさんはお察しの通り、ベンチリーもの映画は「ジョーズ」「ザ・ディープ」とどんどんレベルダウンしていったのは言うまでもない。この「アイランド」で完全に沈没状態になり、次のベンチリー映画「ザ・ビースト」に至ると、海にイカの化け物が出現するという「ジョーズ」亜流作品と同様のシロモノとなった。で、ベンチリー作品だからサスペンスで、古くから海賊行為を続けてきた野蛮な連中の陰惨な生態を描く作品になっているので、およそ爽快感などとはほど遠い。最後には主人公がこの海賊たちを皆殺しにするバイオレンス場面が用意されるなど、後味の悪いことおびただしい作品となってしまった。

 ここまで読んでいただいてお分かりだろうか? 海賊映画を楽しく面白いものにするためには、どうやら「軽妙さ」「爽快さ」「あっけらかんさ」…が必須みたいなんだよね。それは海という圧倒的に解放感のあるアウトドアで展開される活劇で、なおかつ主人公が海賊という、どこか権威や既成概念を飛び越した存在…アウトローであることも関係があるだろう。アウトローとは実は法を犯す犯罪者であり、描き方によってはワルなのだ。それを(特に今よりもはるかに倫理的な締め付けの強かったハリウッドで)正当化してヒロイズムをうたいあげるとすると、おそらくは無邪気さあっけらかんさでくるむしかないだろう。こうして海賊映画の必須条件が必然として生まれたんではないかと思うわけだ。

 で、上に挙げた3作はいずれもそこの部分で失敗している。逆に言えば、かつての海賊映画というジャンルが映画マニア的にではなく、一般的に認知される「映画史に残る傑作」を輩出しなかった理由もそこだろう。「軽妙さ」「爽快さ」「あっけらかんさ」…ってのは、どう考えてもシリアスさを求められる「傑作」とは相容れないよね。

 しかも今や観客は刺激にニブくなってて、緩い映画には反応しなくなっている。シラケやすくもなっている。そこに「軽妙さ」「爽快さ」「あっけらかんさ」…を持ってきてエンターテインメント映画を作り出すのは、なるほど至難のワザだと思うんだよね。

 では、この「パイレーツ・オブ・カリビアン」、一体いかなる方法で現代に海賊映画を復活させたのか?

 先にこの映画を面白いとさんざホメちぎったが、何が面白いって何しろ脚本がよく書けてる。娯楽映画のあの手この手が満載してる。小ネタも含めて楽しい趣向がギュー詰め。後で知ったんだけど、「アラジン」の脚本家チームが書いてるんだって? そりゃ面白いのも道理だ。

 で、ここがこの映画の最大の成功理由だと思うんだよね。

 どう描いても、現代のアクション映画では人が死んだり殺したりと陰惨な部分が出ざるを得ない。逆にそうしないと絵空事になる。また、ワルはワルのまま出てくる。それを何か理由をつくって正当化するなんてまどろっこしい手続きは踏まない。でも、これでは海賊映画はつくれない。結果として今の映画としてシラける作品になるか、海賊映画として具合が悪い出来映えにならざるを得ない。

 では、なぜ「パイレーツ・オブ・カリビアン」は面白い海賊映画たり得たのか?

 今時、真っ正面の娯楽映画なのに妙なリアリズムの洗礼を受けず、ワルをシリアスに描かず、無邪気なあっけらかんさで全編を覆ってしまう映画づくりを行っているのは何だ? しかもそれが立派に「今の映画」として流通出来ているのは何だ?

 アニメーション映画ではないか?

 特にディズニーが「リトル・マーメイド」以降発表してきたアニメーションは、俗悪さを出すことなしに、立派に今の作品としてアップトゥデートに通用している。この方法論をうまいこと実写映画に移し替えることが出来れば、今回の海賊映画も成功に導けるのではないか? 「アラジン」脚本チームの起用は、おそらくこのへんの発想から出ているのだと思う。ディズニー側の要請として、ディズニーランドのアトラクション「カリブの海賊」のプロモーションも兼ねているのだから、どこか「健全さ」を保持して欲しいというところがあったのだろうが、偶然幸いにもそんな映画製作上の「縛り」がこの映画の海賊映画としての正当性を補強することになったわけだ。

 だからこの映画では、人が殺される残虐シーンが極端に少ない。死んではいるのだろうが、描写を巧妙に避けている。それでもウソっぽく見せないような巧みな話術が駆使されている。また、生け贄にされると覚悟していたヒロインが手の平を切られただけで拍子抜け…などと、巧みにギャグに転化している部分もあって実にうまいのだ。

 それより何よりジョニー・デップ演ずる主役から、ジェフリー・ラッシュ演ずる悪役、キーラ・ナイトレイのヒロイン、そしてオーランド・ブルームの実質上の主人公に至るまで、どれもこれもキャラが立っているのが見事だ。魅力的なキャラクターあっての娯楽映画だからねぇ。

 で、このジョニー・デップが曲者なんだよね。マジなんだかフザケてるんだか何を考えているのか分からない、裏切ったと思えば人のいいところも見せて、やる気あるんだかないんだか分からなくて、頭のネジが緩んでいるのかと思いきや妙にサエてもいて、そして魅力的。「妹の恋人」「エド・ウッド」「ドンファン」「ラスベガスをやっつけろ!」…などを筆頭に、ジョニー・デップが今まで見せてきたキャラでも陽性なものと共通する部分があるではないか。そして大時代的なロマンティシズムは、「ドンファン」譲りでもある。何よりそこには無邪気なあっけらかんさがある。それもジョニー・デップ一流の「それ」だから、今の時代に通用するアップトゥデートなものに見えるのだ。そんなデップが一貫してアウトローであるのは、今さら言うまでもないよね。なるほど、これなら彼もこの役をやりたがる訳だ。

 全編を通じて海賊映画のお約束もガッチリとキープ。ジェフリー・ラッシュの肩にしがみついてる小ザルなんて趣向も楽しい限りだ。きれいな景色の中で展開する大らか極まりないアクション…というのも、夏向きで気持ちがいい。今日びの娯楽大作群、「マトリックス・リローデッド」とか「ターミネーター2」などに代表されるようなジェットコースター・ムービーと比べるとかなりユルいノンビリした印象もあるけど、そこがかえって魅力でもある。だって、これは「海賊映画」。青い海、広々とした大空の下で、大の大人が大っぴらに海賊ごっこをやらかしてる映画なんだからね。そういう意味では古き良き時代の映画の良さを踏襲して、人のぬくもりを感じさせる映画でもあるんだよ。

 だけどやっぱりジェリー・ブラッカイマーは今時映画のプロデューサーだから、それでは終わらない。海賊たちにとんでもない呪いがかかってるという趣向を盛り込んで、ちゃんと今の映画じゃなきゃ出来ないCG技術も駆使しているわけ。いつもは裏目に出るこの人のイマドキ映画人の俗っぽさと流行りモノ好きが、今回だけはプラスに作用してる。基本を押さえつつ、今風趣向を盛り込んでいるんだね。

 ま、屁理屈はこれくらいにして、これはともかく黙ってスクリーンに向き合おう。娯楽映画だ、ハリウッド映画だ、大型予算の大作だって言うと、ケナさなきゃマズイと思いこんじゃってる自称「映画ファン」が巷にウジャウジャいるのは承知の上。そいつらがそう言いたくなる気持ちも分からないではないが、この作品だけはちょっとその考えを窓の外に放り出してご覧いただきたい。わざわざ自分で映画をつまんなくして見る「映画ファン」ってどこかオカシイよ。ハリウッドの資本の論理だ、テクノロジー万能に対する嫌悪感だ、アメリカの文化侵略だ帝国主義だ、あるいは政治的な正しさだ何だ…は置いといて、たまには頭をカラッポにして心から映画を楽しもうではないか。ついでにポップコーンも忘れずに買っておこう。

 元々映画なんてそう大層なもんじゃないんだからね。

 

 

 

 

「パイレーツ・オブ・カリビアン」夏休みお楽しみクイズ!

 

今週の「パイレーツ・オブ・カリビアン」感想文に歌詞が挿入されたテレビ番組主題歌・挿入歌のうち、あなたは何曲分かりましたか? 分かった曲の題名を登場順に書いて、「DAY FOR NIGHT」映画館主・Fあてにメールでお送りください。最も分かった曲数の多かった方々の中から上位1名の方に、「DAY FOR NIGHT」特製オリジナルグッズを差し上げます。

 

*アニメ・特撮もの番組の主題歌は曲名でも番組名でも構いませんが、それ以外のドラマ主題歌・挿入歌は曲目と番組名の両方記入で正解とします!

 

*あくまで正しい曲名・題名のみ正解とします。お間違えのなきよう!

 (漢数字と洋数字、漢字とひらがなの違い程度ならセーフです)

*同じ曲が2度以上登場した場合は、初回登場のみ数えます!

 

*替え歌で登場するものも、1曲とみなします!

 

締切は次回更新時2003年8月25日(月)午前0時まで。当選者並びに高得点者の発表は後日行います。奮ってご応募ください!

 

なお、このクイズは映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」ならびにウォルト・ディズニー社からは、一切サポートを受けておりません(笑)。 

 

 

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