「ハルク

  Hulk

  ショート・バージョン

  絵と文:ふましんいち

 (2003/08/11)


  

  

 

 

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夏やすみ・F坊の絵日記帳

×月×日(×曜日)

 ことしはきんじょのおじさんもひまなのか、いっぱいえいがにつれてってもらえます。きょうは「ハルク」につれてってもらいました。ぼくも「ハルク」はまえからみたかったのでおおよろこびしました。だって「ハルク」っておおあばれするからおもしろそうです。せんしゃもなげてしまうほどかいりきです。いえもバリンとこわしてしまいます。ぼくはものをこわすえいががすきなので、すごくわくわくしました。

 でも、えいがかんではひとつだけいやなことがありました。おじさんのまえのせきに、すごくあたまがおおきくてせがたかいおとこのひとがいるのです。でもおじさんは、こういうのは「せがたかい」というのではなく「ざこうがたかい」というのだとおしえてくれました。

 まえがぜんぜんみえないので、おじさんはすこしひくくしてくれるようにおとこのひとにおねがいしました。するとふりむいたおとこのひとは、メガネをかけたこわいかおでにらみます。

 「ざこうがたかいからひくくできませんっ。ぼくはまいとし100ぽんえいがをみてるんだよっ、きぃぃっ」

 そのまま、またまえをむいてしまいました。そしてぜんぜんあたまをひくくしてくれません。ぼくたちにいったことばのいみもわかりません。えいが100ぽんみるとざこうがたかくてもいいのかな。これではこまってしまうので、おじさんはもういちどおとこのひとにたのみました。

 するとおとこのひとはもっとおこって、こわいかおでいいました。

 「ぼくはいままで1000ぼんいじょうえいがをみてるけど、こんなことはいわれたことはないよっ。しつれいなっ。ききぃっ」

 なんでえいがのほんすうがかんけいあるのかわかりませんが、おとこのひとはまえをむいたままです。おじさんはもうあきらめてしまいました。「あつくなるとおかしなやつがふえるからね」

 「ハルク」はへんしんするときにからだがおおきくなるので、きているふくがビリビリやぶけてしまいます。ぼくもよくズボンのおしりがやぶけてしまいますが、「ハルク」はもっとすごくてふくがぜんぶやぶけてしまいます。

 でもなぜかパンツだけはやぶけません。「ハルク」ははだかでおおあばれするのに、パンツだけはいつもはいています。ふしぎだな。なんでパンツだけはいているのだろう。

 そういえば、まえにきんじょにいたおねえさんに、おんせんにりょこうにつれていってもらったことがあります。そこで、こんよくのろてんぶろというそとにあるおふろにはいりました。ぼくはひろいおふろがうれしくってまっぱだかになってジャブジャブおよぎましたが、おねえさんはからだにタオルをまいてかくしています。おねえさんははずかしいのかな。

 おねえさんはぼくをみて、まっぱだかになるのはこどもだよといいました。おとなはちゃんとだいじなところをかくします。そういうのを「エチケット」というのだそうです。おとなってたいへんだなぁとおもいました。

 「ハルク」もあんなにおこっているのに、いつもちゃんとパンツはわすれません。あれだけふくがビリビリやぶけても、パンツだけはやぶれないです。きっとおおきくなってもやぶれないパンツをはいて、じゅんびしてるんだな。そんなことをわすれずにちゃんとしている「ハルク」はえらいです。せんしゃをこわしたりヘリコプターをこわしたりするし、だれもこわくないはずの「ハルク」なのに、パンツのことになるとすごくきをつかっています。ぼくならそんなにあばれたりしてたらわすれちゃいそうです。ふつうはあたまにきたらほかのことはどうでもよくなるのに、「ハルク」はいろいろかんがえています。

 やっぱり「エチケット」をちゃんとできるひとはおとななんだな。まえのせきにすわっている「ざこうのたかい」おとこのひとは、きっとおとなじゃないんだな。「ハルク」は「ざこうがたかい」だけじゃなくて、しんちょうもたかいし、たいじゅうもおもそうだし、とにかくからだぜんたいがすごくおおきいのに、パンツはちゃんとはいているんだよ。

 だから、いくらおおあばれしたって「ハルク」はえらいとおもいます。「ざこうがたかい」だけでえばっているおとこのひとは、はずかしいとおもいます。ぼくは「ハルク」っておとなだなぁと、すごくみなおしてしまいました。そして「ハルク」がでてきて、このおとこのひとをどこかにふっとばしてくれたらいいのにとおもいました。おしまい。

 

 

 

 

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