「ドリームキャッチャー」

  Dreamcatcher

 (2003/04/28)


付き合いも付き合ったり四半世紀

 先日、高校時代の友人の家に遊びに行ったんだよね。

 その時集まったのは僕だけじゃなくて、同じ高校時代の仲間たちとその嫁さんやらお子さん連中もいて、大いにニギヤカ。友人についに第一子誕生というわけで、そのお子さんの顔を見にみんなで集まったわけ。

 ただ、このお子さんの顔を見るというのも目的の一つだが、みんなが集まったのはそれだけではないよな。やっぱりみんなの顔を久々に見たかったんだろう。

 僕らが高校生だった時期ってのは、今からもう25年くらい前になっちゃうんだよね。

 四半世紀(笑)!

 それだけの長い間経ってはいたが、なぜか僕らはマメに顔を合わせていた。何ヶ月に一回かは飲みに行ってたし、毎年恒例の旅行にも行ってた。この旅行の時は全員でコテージを借り切って、それぞれ妻帯者・子持ちは家族も連れて参加していたわけ。だから、僕らはみんな身内みたいなもんだし、それぞれお互いをよく知ってもいた。まぁ、こんな年齢になってもこんなに顔を合わせている連中なんて、そうそういないんじゃないかねぇ?

 ところがここ最近、そんな僕らも顔を合わせる機会が激減したんだね。理由はいろいろあるけど、みんなたまたま忙しくなったって事はあるだろう。職場のトラブルに巻き込まれて、健康まで害しちゃったヤツもいるし。そんなこんなでここ2年ばかり旅行も行けなくなっていた。そこへ今回の友人の第一子誕生。彼がそれまでいろいろな集まりや旅行の音頭とりをやっていた事もあって、なかなかイベントが組めなくもなったわけ。まぁ、そんなこんなの巡り合わせってやつだろうね。

 そういう僕自身、ここ2年ばかりはこの連中ともご無沙汰が多かった。どうしても私事を優先させてしまったので、会う機会が減っていたのだ。そこへ来て昨年後半からは人に会いたい心境にもなれなかった。だから、ちょっとばっかり疎遠になっていたんだね。

 というわけで、みんなそれぞれ自分の事情を持ってはいたが、ここらでまたお互いの顔が見たくなった。そこに例の友人の第一子誕生というわけで、これをネタに一挙に会おうということになったわけ。いやぁ、久々に会ったみんなは変わっちゃいなかったよ。

 会って何を話すって訳でもない。僕なんか最近は黙ってることも多いんだけど、別に無理して話すこともないから楽なのだ。ただそこにいればいいってのは、それはそれで楽しいもんだよ。僕はすっかりリラックスしてしまった。

 僕の身に最近降りかかったいろいろな事も、みんなは察してはいただろうが問いつめはしなかった。そして最近ずっとご無沙汰だったけど、以前と同じように僕を受け入れてもくれた。特に何も変わった事もないし、構えもしないってのはいいよね。その時に撮った写真を見ると、久々に僕も満面の笑みを浮かべていたよ。よっぽど僕もホッとしていたのだろうね。おそらくは相当癒されたんだろう。確かにここ半年ばかり僕を苦しめてきた精神的苦痛は、この日だけはかなり軽くなっていたように思う。僕は何だか自分が、本当に久しぶりで地球に帰ってきた気がしたよ。そしてたぶん例のトラブルで痛めつけられた男も、その他の仕事やプライベートに疲れた男たちも、みんな同じように癒されていたのに違いない

 そんな時、僕らはいつも毎度おなじみのように昔話に興じる。嫁さん連中はみんな同じ話ばかりでつまらないとボヤくが、申し訳ないけどそれはまったく分かっちゃいない。芸能ネタ、スポーツネタ、時事ネタ、そして趣味や生活ネタ、あれやこれやの仕事にまつわる話…確かに話題は他にもいろいろあるだろう。だけど、それは他の誰かとだって出来る話だ。別にこのメンツで話さねばならない事じゃない。この特別なメンツで会う時は、このメンツでなきゃ出来ない話がしたいのだ。いや、話がしたい訳でもないのだろう。きっと、みんなお互いの顔が見たいだけだ。否、みんなと同じ場を共有したいんだろう。

 そんな気分になる間柄ってのは、やっぱりお互いがこれを特別なものだと思っているからだろうね。そして、それは残念ながら大人になってからでは得られない。大人になってからではいろいろな思惑が絡むもんね。どんなに「これは…」と思う関係が築けたと思っても、結局はそこに打算やらカネやら見栄やらエエかっこしいやらが関わってくる。どっちが上だとか偉いとか儲けてるとか…。でなかったら、役人が知り合いだとトクだとか、ギョーカイ人とお近づきになりたいとか、貧乏人とは関わりたくないとか…まぁ、ウンザリするような事をゾロゾロ引きずるわけ。

 だから僕らはこの日みたいな場を大切にしているんだろう。そこは昔自分たちが持っていた、まっすぐな気持ちに戻れる場所だからね。

 

再会した幼なじみ4人の共有する秘密

 精神科医トーマス・ジェーンは今日も患者のカウンセリングを行っているところ。患者が語る悩み事に耳を傾けながら、その心の痛みを探っている。だが彼はなぜか患者が語っていないことまで分かってしまう。そう。彼は人の心が読めてしまうのだ。患者はそれにかえって傷つき、逆上して帰ってしまった。

 あぁ、またしても患者を救えなかった…。

 いつものように、トーマス・ジェーンは深い徒労感を感じていた。思わず机の引き出しに手を伸ばすと、そこには一丁の拳銃が…。そしてゆっくりと銃を手に取ると、それを自らの頭に向ける…。実は彼がこんな自殺衝動にかられたのは、今日が初めてではない。今度こそ、今日こそやってしまおう…。彼が銃の引き金を引こうとしたちょうどその時…。

 いきなり電話のベルが鳴った!

 間一髪、今日もジャマが入った。ため息をついて銃を下ろす彼は、銃に代わって受話器を手に取る。電話は幼なじみの友人ダミアン・ルイスからだった。

 「今日もクソみたいな日か?」「ああ、クソ日和だ」

 これが昔からの、彼らの合い言葉みたいなものだ。ルイスはジェーンに、今度の週末に故郷に帰ろうと提案する。そして昔懐かしい「ダディッツ」に会おうと…。

 ダディッツ…それは何者なのか?

 そんなルイスは大学の助教授。今日は大学内の自室に学生を呼び、彼が行った試験の不正を問いただしていた。とどのつまりはカンニングだ。最初は厳しく処分するつもりだったルイスだが、学生の落ち込んだ顔を見ると厳しいことが言えなくなる。結局は追試で許すことにするルイスは、やっぱり優しい男なのだ。だがそんな彼が、一体どうやって学生の不正に気づいたのか…?

 その頃、まったく別な街でもう一人の男…自動車販売員のティモシー・オリファントの元に、好みのタイプの女がクルマのキーをなくしたと困って駆け込んで来た。ここは一丁助けてやって、彼女とうまくやれれば…オリファントは彼女のために一肌脱いでやることにする。彼女がキーをなくしたと言うコンビニに同行してあれこれ話を聞くうちに、オリファントはその時の彼女の行動をピタリピタリと言い当てていく。これには彼女も驚いた。

 結局見事に彼女のキーを見つけだしたオリファント。

 彼女は大いに感謝。オリファントとのデートの約束にもオーケーしてその場を立ち去った。だが、彼にはすでに分かっていた。彼女がデートの約束の場所に来ないことが…。彼の特殊な能力が、女たちを怯えさせてしまうのだ。いつもと同じ、気味悪がられてしまうのがオチ…。今夜も一人寝の寂しさか。ため息をつくしかないオリファントだった。

 そんなある日、助教授のルイスの元に電話が…それはやはり幼なじみの、爪楊枝をいつも加えているジェイソン・リーからだった。

 「何かよくない予感がする」

 そんなリーの電話に不安をかき立てていたルイスは、ある日道路を隔てた向こう側に何かを見つけて、慌てて駆けだした。案の定、激しい往来の道路を横切るとはあまりに無謀。ルイスはクルマにはねられて瀕死の重傷を負った。救急車で搬送される途中、ルイスの心臓は停止した…。

 それから半年…。

 雪深い山奥の別荘に、ジェーン、ルイス、リー、オリファントの4人が集まった。彼らはみなこの故郷にほど近い山奥の別荘に集まって、旧交を暖めあうのが恒例となっていたのだ。交通事故で一命をとりとめたルイスも、何とか今回参加出来てめでたし。

 それにしても、ルイスはなぜあの時にクルマが行き交う道路を横切るなんて無茶なことをしでかしたのか?

 実はあの時、ルイスの目には道路の向こう側に「ダディッツ」が見えたのだ。それもかつて出会った時のまんま、男の子の姿の「ダディッツ」が彼を呼んでいるように見えた…。

 ダディッツ…それは何者なのか?

 今年も訪れた彼ら4人を別荘で出迎えたのは、あの「ダディッツ」がつくってくれた「ドリームキャッチャー」だ。それは天井からぶら下げられた不思議なお守り。忍び込んでくる悪夢から守ってくれるという、ネイティブ・アメリカンのお守りだ。

 別荘に落ち着いた彼らは、いつものように昔の語らいに興ずる。このメンツが集まれば出てくるのが、「ダディッツ」の思い出話だ。

 ダディッツ…それは何者なのか?

 それは20年前に遡る。故郷の町で一緒に育った仲良し4人組だった彼ら。そんな彼らが歩いていると、上級生のアメフト部員3人が、知恵遅れの男の子をイジメているのに出くわした。仲良し4人組はまだ小さい男の子ながら、正義感だけは人一倍。相手が誰だろうと臆することなく、彼らは男の子を放すように上級生に言い放つ。こちらには陸上選手で足に自信の奴がいる。彼が走って言いつければ、上級生だってタダじゃ済むまい。「俺たちが怖くないのか」と脅す上級生に対して、彼らは頑として言い張った。

 「そんなことをするのは間違ってる!」

 4人の毅然とした態度に、思わずタジタジとなって引き下がる上級生。だが知恵遅れの男の子は、イジメていた上級生がいなくなってもすっかり怯えきったままだ。4人はそんな彼に歌をうたって聴かせて安心させたり、何とか慰めたりする。これにはこの男の子もすっかり心を許した。彼はご機嫌になって両手を挙げて叫んだ。「ぼく、ダディッツ!」

 その日から、4人とダディッツとの交流が始まった…。

 ところで先に述べたように、4人には他の人間にはない特殊な能力が備わっていた。ジェーンは人の心を読む力、オリファントは失せモノを探す力、リーはかすかながら「イヤな予感」を知覚する力、そしてルイスは頭の中に記憶の図書館を持って、そこにさまざまな記憶を保管する力があった。それはすべて、あの「ダディッツ」と関係があったのだが…。

 そんな昔話に興じた翌朝、彼らのうちジェーンとオリファントは町に買い出しに出かけるため、クルマで出かけていった。残った二人のうち、リーは外で銃を構えて狩りをしに出かけた。ルイスは別荘で留守番だ。

 ところがそこにヨロヨロと疲れ切った中年男がやって来る。それもどうも具合が悪そうだ。ルイスは男に駆け寄り、別荘に招き入れる。だが男の顔色はすぐれない。よく見ると顔に赤い湿疹も出来ている。病気なのか?

 狩りから戻ってきたリーも、この別荘にやって来た珍客の様子がオカシイと見てとった。それは顔色がどうのなんて生やさしいものではない。

 「ゲプ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 突然異常にデカいゲップもする。男はさすがに恐縮するし、二人も笑っちゃマズイとガマンはしたものの、いやはやこれはスゴイ。そうかと思えばしまいにはダメ押しだ。

 「プゥゥゥ〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 何ともミまで出そうなオナラまで発する。これにはマイッタ二人は、男に休むように言って寝室まで連れていってやった。だが、それにしてもオカシイ。なぜなら男の腹が異常に膨れているのだ。さっき男を別荘に連れてきた時は、あんなに腹は膨れていなかったはず。

 だが二人はもっと奇妙なことに気が付いた。

 森の奥からゾロゾロゾロゾロ、クマだシカだリスだキツネだ…ありとあらゆる動物たちが現れてきたのだ。彼らはどれもこれも、まるで何かから逃れるように走り去っていく。しかもそれらの動物の中には、あの男と同じ赤い湿疹が出来ているものまでいた。

 こりゃホントにオカシイぞ!

 やがて別荘の上空には、軍用のヘリコプターが現れた。二人は慌てて外に飛び出すと、ヘリに向かって大声で叫ぶ。

 「おおい、助けてくれえ! ここに病人が一人いるんだ!」

 だがヘリコプターはそれには答えず、ただ拡声器で怒鳴るだけだ。

 「この一帯は隔離地域に指定されました。指示があるまでここから出ないでください」

 そして飛び去って行くヘリコプター。そのヘリからは、一人の男…モーガン・フリーマンがじっと別荘の二人を見つめていたのだが…。

 さてその頃、買い出しを終えてクルマで帰路についていたジェーンとオリファント。だが突っ走るクルマの前方に、なぜか雪道のど真ん中で座り込んでいる人影が…。

 危ないっ!

 人影を避けて急ハンドルを切ったクルマは、雪にタイヤをとられて横転。何とかクルマから這い出した二人だが、オリファントは足を痛めてしまった。一つ間違えば死んだかもしれない状況に、二人は道のど真ん中に座り込んだ人影に一言文句を言いに駆け寄った。

 だが、その人物は尋常な状態ではなかった

 顔はありきたりの中年女だが、何か放心状態のようなアリサマ。そして顔にはなぜか赤い湿疹があった

 そして、人目をはばからぬ屁のぶっこき。これにはジェーンもオリファントも唖然だ。

 ともかくこのままではどうにもならない。ジェーンは足を痛めたオリファントと、動ける気配もない中年女を置いて、一人別荘まで助けを呼びに行くことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからは映画を見てから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪深い田舎町に襲いかかった異常事態

 一方、町ではとんでもない事態が進行していた。突如現れた軍隊のような一団に、町は制圧されていたのだ。隔離地域に指定されたとのことで、フェンスに隔てられた場所に連れて行かれる住人たち。そんなこの場一帯を仕切っているのが、この特殊部隊の司令官…先ほどヘリから別荘の二人を見つめていた男、モーガン・フリーマンだ。

 実はフリーマン、今まで極秘の特殊部隊を率いて、地球にやって来たエイリアン征伐に身を挺してきた男。彼は今回、付近に墜落したナゾの宇宙船に関する作戦の一切を任され、この地にやって来たのだ。そんなフリーマンは、ずっと運命を共にしてきた副司令官トム・サイズモアを誰よりも信頼していた。「オマエと俺は、完全に考えが一致している。そうだな?」

 フリーマンに言わせれば、ことエイリアン退治に関して正規軍は生ぬるいと言う。長年この道一筋にやって来た自分たちだけに、事態の鎮圧が出来ると固く信じているのだ。やるとなったら徹底的にやる。地球にやって来たエイリアンも全滅させねばならないし、付近で何やら得体の知れない疫病に感染したとおぼしき人々にだって、手加減をしてはいけない。もちろん今回も、そんな彼の流儀をどこまでも押し通すつもりだ。そんなフリーマンの言い分を聞きながら、内心サイズモアは少々辟易もしていたのだが、信頼厚いこの上官にそんな素振りは見せられない。

 この日もフリーマンは住民を逃がそうとした新兵に激高。彼が疫病に感染していない住人がいると訴えても聞く耳を持たない。それどころか、その新兵の手を銃で撃ち抜き、有無を言わさぬ制裁を加えた。これにはさすがのサイズモアも、少々フリーマンの正気を疑わずにはいられない

 さてその頃例の別荘では、留守を守るルイスとリーが異常事態に気づき始めていた。例の男が寝室から抜け出したようなのだが、そこにはおびただしい血が…! その血痕は便所まで続いていた。どうも男は便所に籠もっているようだ。このままでは危険だ!

 二人は便所の扉をブチ破って中に入った。そこで二人が見たものは…?

 中には便座に座ったまま身動きしない例の男がいた。だが、その男の姿と言ったら…なぜか全身が真っ赤に爛れて、見るも無惨な姿。だが、その時にボチャン…と何かが水に落ちる音がする。クソをしたのか? それでは、まだこの男は生きている。慌てて男に触れてみるが、男は何も言わずにぶっ倒れた。どう考えても無事に生きている状況とは思えない。では、先ほどのクソの音は?

 その時、便器の中から何かがバシャバシャとうごめく物音がするではないか!

 慌てたリーは便器のフタを閉じると、その上に重しとなって座り込んだ。とたんに便器の中から何者かがド〜ンと体当たりする衝撃が伝わる。そのあまりの衝撃に、リーはいつもくわえているトレードマークの爪楊枝を全部床にブチまけてしまうアリサマだ。

 大変だ! 一体何かは分からないが、とにかく何か得体の知れない生き物がいる。

 ともかく便器のフタを粘着テープで閉じて、あの「もの」が外に出られないようにしなくてはいけない。リーが重しになっているうちに、ルイスが何とか粘着テープを探し出すことになった。だが、あの「もの」は何とか外に出ようと、激しくフタにぶつかってくるではないか。恐ろしさに血も凍る思いのリーは、自分の心の拠り所として爪楊枝が欲しくてたまらない。よせばいいのに何とか手を伸ばして、床に落ちた爪楊枝を拾おうとする。だが、その体のバランスが崩れた一瞬…。

 ド〜〜〜ン!

 激しい勢いにぶっ倒れたリー。便器のフタをぶち破って、何者かが出てきた。それは…。

 特大のウナギとでも言えばいいのか、とにかくこの世のものとも思えない生き物が現れた。それはリーを威嚇するようにカマ首をもたげると、その鋭い牙を無数に生やした口を広げて襲いかかってくる。

 クワァァァ〜〜〜〜〜〜!

 やっとの事で粘着テープを見つけたルイスが便所にやって来ると、リーがその「もの」と格闘している真っ最中だった。リーはもうダメだと観念すると、ルイスに逃げろとわめいた。その瞬間、「もの」はリーに襲いかかって、アッと言う間に食い殺してしまった

 慌てて扉を閉めるルイス。親友の死を間の前で見て、ルイスは激しい悲嘆と憤りに苛まれずにはいられない。「畜生、テメエ、あいつを殺しやがったな!

 だが、ルイスがそんな思いに苦しみ悶えていられたのもつかの間。例の「もの」はド〜ンド〜ンと扉に体当たりしてくる。激しい「もの」の攻撃に、ついにはドアノブもはずれてしまった。

 ドアがゆっくりと開いていく…。

 呆然自失するルイスはドアが開いても、もはや為す術もなく凍り付いて立ちすくむばかり。そんなルイスの足下からスルスルと這い出してくるあの「もの」。ルイスが我に返って振り返ると…。

 彼を見下ろすように、巨大な「何者か」が立ちはだかっていた。例の鋭い牙を持った「もの」は、その巨大な「何者か」になつくようにまとわりつく。その「何者か」の顔はルイスにも見覚えがあった。

 「ミスター・グレイ」。

 さまざまな目撃報告から形づくられた典型的「宇宙人」顔…そんな「何者か」が、ルイスをのぞき込むように見下ろしているのだ。衝撃的な出来事の連続、親友リーの死、そして彼の目の前に立ちはだかる恐怖…神経がズタズタになったルイスは、たださめざめと泣き出すしかない。

 「オマエら一体どうしようっていうんだ…」

 その時、この巨大な「ミスター・グレイ」が一瞬にして霧散霧消し、真っ赤な塵のように姿を変えてルイスに取り憑いた!

 一方、足を痛めたオリファントは、例の黙りこくった中年女と共にジェーンの帰りを待っていた。だが、彼は知らなかった。この中年女がとっくに事切れていることを。そして彼女の身体から、何者か異物が外に飛び出していたことを…。

 そうとは知らぬオリファントは、のんきにダディッツの思い出に耽っていた。あまりに無垢で善人だったダディッツ。その心の汚れのなさは、まるで人間とは思えないほどだ。それってひょっとしたら、ダディッツが宇宙人だったってことじゃないのか?…あくまで暇つぶしの冗談ではあったが、オリファントのその独り言はどこか彼の本質を突いてはいた。

 ついでに冷えてきたので立ち小便。雪にナニで「ダディッツ」と書いていると、ボコッと小さな穴が開く。アレ?…何だこれは?

 クワ〜〜〜〜ッ!

 とつぜんイチモツ状の生き物が飛び出して来て、オリファントのイチモツに食いつこうとする。もちろんオリファントは知らないが、先ほど別荘でリーを亡き者にしたものと同じ「もの」だ。慌てたオリファントは逃げまどうものの、このイチモツ=ウナギっぽい「もの」はえらく動作が素早い。そして口には無数の鋭い牙が生えている。オリファント、これには肝を冷やすばかり。何度か食い殺されそうになりながらも何とか踏みとどまり、やっとこ焚き火の薪を掴んで、飛びかかって来た例の「もの」に炎を突きつけた。

 ジュウゥゥゥゥゥ〜〜〜〜〜ッ!

 クワァァァァ〜〜〜〜〜〜〜ッ!

 「もの」は火のついた薪で灼き焦がされ、一巻の終わり。この場は何とかオリファントも難を逃れたわけだったが…。

 その頃、別荘に向かってトボトボ歩いていたジェーンは、前方からスノーモビルの軽快な物音を聞きつける。

 「助かった、あまり遅いんでルイスが探しに来てくれたな!」

 だが様子が変だ。最初は喜んでいたジェーンだが、異変を察知して物陰に隠れる。その目の前を確かにルイスがスノーモビルに乗って突っ走って行く。

 だがジェーンにはルイスのテレパシーが伝わって来ない。あれは違う。ルイスの顔はしているが、まったくの別物だ。

 スノーモビルに乗ったルイス…それは例の巨大エイリアン「ミスター・グレイ」に乗っ取られていたのだ。そしてこの「エイリアン=ルイス」は、雪の中で「もの」との死闘を演じたばかりのオリファントの元に辿り着く。別荘での一件を知らないため、最初こそ自分たちを助けるために来たものと勘違いしたオリファントだが、何だかんだ言っても彼も特殊能力の持ち主。こいつがルイスその人ではないことなど即座に見破ってしまう。

 ならばそれまで!

 今まさに邪魔ものとしてオリファントを殺そうとする「エイリアン=ルイス」。だが、何者かがそれを思いとどまらせた。それは誰あろうルイス本人!

 実はルイス本人の精神は、エイリアンによって破壊されてはいなかった。一時しのぎながら、彼の頭の中にあるバーチャル図書館の中に逃げ込んだのだ。そして扉にカギをかけ、エイリアンが入って来れないようにした。そんなルイスの精神は閉じこもった部屋の中から、エイリアンに必死で訴えたのだ。

 「こいつを殺すな! こいつは便利な能力を持っているぞ」

 ルイスの精神はまた、オリファントにも働きかける。「ここはおとなしくヤツの言うことを聞け。とにかく無茶をするな」

 こうしたルイスの精神からのアドバイスが功を奏したか、オリファントは「エイリアン=ルイス」への抵抗を止めた。そしてエイリアンもオリファントの失せモノ発見の能力を知り、「こいつは使える」とスノーモビルに乗せた。こうして「エイリアン=ルイス」とオリファントの二人は、一番近くの国道めざしてスノーモビルで突っ走るのであった。

 さて一方、やっとこ別荘に辿り着いたトーマス・ジェーン。彼はエイリアンに乗っ取られたルイスを目撃して、すでに異変は察知していた。おそるおそる別荘内に入るジェーン。その目に飛び込んできたものは、家中をものすごいスピードで繁殖する気色悪い赤いカビの猛威だった。やはりただならぬ出来事が起きていたのか。さらに便所で無惨な姿となったリーも見つけた。そして愕然となったジェーンの耳に、どこからともなく聞こえてくる奇妙な音。いまや無人のはずのこの別荘の中に、一体彼の他に何者がいると言うのだ

 何と寝室のベッドの上に、何とも奇妙な「もの」が鎮座しているではないか。そのイチモツとも特大ウナギとも見える「もの」は、当然先ほどから暴れ回っている例の「もの」だ。だが、今はなぜかベッドの上で大人しくしている。それはなぜか?

 何とこやつベッドの上で産卵の真っ最中だったのだ。それもポロポロポロポロ山ほど生んでいる。そのあまりの奇怪な光景に思わず呆然としていたジェーンだったが、間もなくとんでもない事にハタと気づいた。

 こいつらが全部卵から孵ったら、大変なことになる!

 まずは持っていた銃で、でっかい親イチモツを仕留める。そしてオイルを持ってきてベッドの回りにジャブジャブかける。だが、オイルをそこら中にかけているうちに、ジェーンは見たくもないものを見つけてしまった。実は卵の山はもう一つあった。しかもそちらの卵はあらかた孵った後の殻しかないではないか。すると孵った赤ちゃん…というか、子供のイチモツは?

 いたいたいたいた! そんなジェーンの足下から、湧いて出てくるように現れた。見た目は何か稚魚みたいなちっこい身体だが、そのすばしっこさエゲツなさは親譲り。ウジャウジャ現れた稚魚のイチモツは、アッと言う間にジェーンにたかり、その身体をよじ登ろうとする。こりゃたまらんと稚魚たちを振り払うと、いらだちと憎しみを込めて辺り一面を踏みつけ始めるジェーンだった。「この気色の悪いチビどもめ!」

 だが後から後から湧いて出てくるチビ・イチモツども。踏みつぶしても踏みつぶしても出てくるので、逆にどんどん追いつめられる始末だ。

 「これでも食らえ!」

 マッチを擦って火を放つジェーン。たちまち寝室は火の海。卵もチビ・イチモツもひとたまりもない。さらに別荘中にオイルを撒いて、赤いカビも何もかも焼き払うことにした。いまや無惨な姿となった、親友リーの亡骸に別れを告げながら…。

 その時トーマス・ジェーンは、胸の中に抑えがたい怒りと不屈の闘志がみなぎるのを感じた。それは日頃鬱屈とした思いに取り憑かれ、自殺未遂を重ねていたあの男ではもはやなかった。少年の日に仲間たちと分かち合ったあの感情…正しいことを勇気を持って行おうとする気持ちが、その胸に甦っていたのだ。

 

勇気を奮え、あの少年の日のように

 思い起こせば20年前、彼ら幼なじみと知恵遅れの少年ダディッツは、よく一緒に遊んでいた。そして彼らはダディッツに特殊な力が備わっていると知った。

 そんな彼らは、最近ある少女が行方不明になっていたことを知ると、自分たちの手で彼女を探そうと思い立った。それは少年特有の一本気な勇気と正義感からのこと。そして彼らは、ここ一番に頼りになるダディッツの力を借りることにした。4人全員がダディッツと手をつなぎ、一心に少女のことを念じる。

 するとどうだ!

 確かに不思議な何かが起こった。そして4人の少年たちに不思議な能力が備わったのだ。その力のおかげで少女を救出することが出来た彼ら。その後4人は、備わった力のことを隠して生きてきた…。

 不思議な少年ダディッツ。彼はしかし、その当時彼らに何かを訴えようとしていたのだが…。

 そんな思い出を反芻しながら、トーマス・ジェーンは暗くなって来た雪道を町までひた走りに走る。だが、そんな彼を待っていたのは、例の特殊部隊の銃口だった。

 「止まれ!」

 こうしてトーマス・ジェーンもまた特殊部隊が制圧した町に連れて来られ、隔離用のフェンスの中に閉じこめられた。そんな彼の視野に入ってきたのは、部隊を掌握する司令官モーガン・フリーマンとその副官トム・サイズモアの二人。彼らの会話と考えを知るなど、ジェーンには朝飯前だ。だが、そこでのフリーマンの言い草を聞いていたジェーンは、思わず血圧が上がらずにはいられなかった

 「こういう事態にはやる事は一つだ、手加減無用。例え相手がアメリカ市民だろうが、一人たりとも生き延びさせてはいかんのだ!

 あまりにあまりなフリーマンの発言に、反論はせずとも不信感を抱き始めたサイズモア。それを見てとったジェーンは、ちょうど自分の方へ歩いてきたサイズモアにフェンスごしに話しかけた。

 「あんた方のやろうとしている事は分かっている。それに対してあんたがどうしようと思ってるか…もな」

 このトーマス・ジェーンの言葉にギョッとするサイズモア。実は彼はフリーマンのやり方に疑問を感じ、秘かに正規軍に連絡をとろうと考えていたのだ。一方、ジェーンにはそんなサイズモアの気持ちも、フリーマンが長年のエイリアン退治で精神に異常をきたしていることも分かっていた。ジェーンが人の心を読めることに驚いたサイズモアに、彼はさらに畳みかけるように言葉を続ける。

 「あんた方が最も恐れていることが起こりつつあるぞ。俺の友人がエイリアンに乗っ取られ、ヒッチハイカーに化けて移動している最中だ」

 その通り。「エイリアン=ルイス」はすでに用済みとばかりにオリファントを食い殺し、ついに国道へとやって来た。ヒッチハイカーを装って走ってきたトラックを停め、ドライバーを速攻で餌食にする。さらにその飼い犬を連れてその場を立ち去った…。

 一体ヤツは何をしようとしているのか?

 いまやトーマス・ジェーンはあの鬱屈とした態度をかなぐり捨て、自信に満ちた態度でサイズモアに接していた。その迫力が半信半疑なサイズモアを圧倒せずにおかない。

 ジェーンの言葉に揺り動かされたサイズモアは、秘かに行動を開始した。やがて突如現れた正規軍にあたりは騒然。特殊部隊はアッという間に鎮圧され、すべて武装解除させられてしまう。もちろん知らせたのはサイズモアだ。そんなドサクサに紛れて、サイズモアは車にジェーンを乗せて町を脱出。一路、「エイリアン=ルイス」の行方を追うことになった。

 やがて「エイリアン=ルイス」はパトカーを奪い、さらに逃走を続ける。だが、その「エイリアン=ルイス」の頭脳の奥には、本物のルイスの精神が隠れていた。ジェーンは持ち前のテレパシー能力で、この本物ルイスと交信を試みる。

 するとどうだ!

 何と「エイリアン=ルイス」は例の犬に赤カビを食わせ、その腹の中でイチモツ・エイリアンを孵化させていたのだ。どんどん膨れる犬の腹。そして目指すは貯水池だ。ここは大都市ボストンの水がめ。もしここに一匹でもイチモツ・エイリアンが入り込めば…。

 最後は人類が全滅だ!

 だが、このままではまだエイリアンに対抗するための力が不足だ。絶対の戦力が欲しい。そんな時にジェーンの脳裏に浮かんだのはダディッツのことだった。彼ならば何とか出来るかも…。

 実は例のルイスに取り憑いたエイリアンも、彼の脳裏に残るダディッツの記憶に興味を示していた。「このダディッツという輩、ひょっとして?」…エイリアンにはどうやら心当たりがあるようだ。

 だが一方、解任された特殊部隊の司令官フリーマンも、サイズモアの裏切りにキレてヘリを強奪。空から彼らの足取りを追っていた。もうエイリアン退治なんかそっちのけ。俺の部下の分際で小賢しいマネしやがって、あれだけ世話になったこの俺を裏切りやがって、必ずこの手でブチ殺してくれるわ!

 さぁ、人類の運命がかかった大追跡は間に合うのか? エイリアンに身体を乗っ取られたルイスは無事に助かることが出来るのか? キレたフリーマンはどう出るのか?

 そしてナゾの少年ダディッツは、一体いかなる存在なのだろうか?

 

ローレンス・カスダンの長き低迷

 ローレンス・カスダン久々の新作…実際にはコンスタントに作品を発表していたのかも知れないが、僕にとってはかなり久々な感じだ。ローレンス・カスダンと言えば、僕にとってすでに懐かしさのある名前になっていたんだね。その彼の新作が、何とスティーブン・キング原作と言うのもちょっと驚いた。ホラー作品を今まで彼が手がけたことはなかったからね。

 カスダンと言えば、僕にとってはまず「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」「レイダース/失われたアーク」などのルーカス=スピルバーグ作品で華々しくデビューした脚本家のイメージがある。その後「白いドレスの女」で監督デビュー。「再会の時」、「シルバラード」と、さまざまなジャンルを縦断しながら傑作・佳作を連発して才人ぶりを発揮した。その守備範囲の広さもさることながら、娯楽作品をつくる手並みも確か。さすがルーカス=スピルバーグに見いだされた男だわいと大いに感心した記憶がある。

 特に「再会の時」は人間群像劇がツボの僕にとって、ゾクゾクするほど面白いドラマだった。かつて共に過ごした仲間たちが、仲間の一人の死によって久しぶりに再会する物語。冒頭に流れるマーヴィン・ゲイの「悲しいうわさ」から、エンディングにスリー・ドッグ・ナイトの「喜びの世界」が絶妙なタイミングで流れるくだりに至るまで、まるでシッポまでアンコが詰まった鯛焼きのような映画だった。

 「シルバラード」だってマカロニやらアメリカン・ニューシネマの洗礼を受けてすっかり意気消沈した西部劇の復権を狙って、ニュー・エンターテインメント派のカスダンがあの手この手を尽くして趣向をてんこ盛りにしての大サービス。酒場の大姉御、スタンピード、幌馬車隊、ワケありのギャンブラー、そして一対一の決闘…と、この一本で西部劇の醍醐味をすべて満喫させようという意気込みが感じられたね。それも基本は、昔懐かしい正統派ハリウッド・ウエスタン。それでいて、ガンマンたちの連帯や主人公格ケビン・クラインの屈折キャラに、あの「再会の時」の人間関係がチラついたりしてカスダンらしさも満点の作品だった。

 そんな上げ潮だったカスダンの評価に、かげりが差し始めたのはいつの頃だろうか? それはやっぱりルーカス=スピルバーグの低迷期と歩調を同じくしていたんじゃないかな。

 少なくとも僕にとってカスダン凋落の始まりは、「偶然の旅行者」からだった。これって公開当時はいろいろ賞なんか取ってたし評判も良かった。批評もどれもこれもホメてた。だけど、僕は見ていてちっとも面白くなかったんだよね。これの一体どこが面白かったの? それまで見て一発で良さが伝わったカスダン作品だったのに、これは全然ピンと来なかった。僕はなぜこの映画の評価が高かったのか、いまだに分からないんだよね。現に今、この映画のことを覚えてる人なんて、どこにもいないんじゃないの?

 次の「殺したいほどアイ・ラブ・ユー」はブラックなドタバタコメディ。前の「偶然の旅行者」と比べればそれなりに面白かったけど、たぶん僕がカスダン作品に求めているものではなかったんだね。初めて脚本をカスダン自身が担当しなかったってことも、そんな違和感を助長していたのかもしれない。

 次いでの「わが街」は「再会の時」以来十八番の集団劇だが、やっぱりかつての元気はなかった。主人公たちの連帯ぶりにイマイチ無理がある感じだしね。僕にとっては好きな作品だが、声を大にして「傑作だ!」と言いたい映画ではなかったんだね。

 そして…ついにやってしまったんだよねぇ、「ワイアット・アープ」

 「シルバラード」であれだけいいところを見せた西部劇に再挑戦と来れば、「ここんとこちょっと下り坂かなぁ」と思わされたカスダンでもやっぱり期待してしまう。それがねぇ…とにかくダラダラと冗長で全然面白くない。キャストも豪華は豪華なんだけど、どうしてあの映画ってあんなに面白くなかったんだろう。やっぱりガンはケビン・コスナーだったのかね(笑)? ともかくこの作品が、僕にとって…おそらく世間的にも、カスダン「落ち目」のイメージを決定的にしてしまった映画だと思うんだよね。

 その後はロマンティック・コメディの佳作「フレンチ・キス」なんか撮ってるけど、その次の「マムフォード先生」ってのは確か日本では劇場公開してないんじゃないか? 作品は何作か連続でイマイチ精彩がないし、そもそも作品の制作ペースも落ちてたところに、ダメ押し的に一本未公開作をはさんでしまったせいで、すっかり元気がないってイメージが定着しちゃったんだね。

 ともかく近年のカスダンはあまりいいところがなかった。最初の破竹の勢いのようなものが、その作品から影を潜めてしまった。いつかは調子を取り戻すんじゃないかと思いつつ、何だかすっかりひっそりした存在となって今日に至っていたんだね。

 だから今回の「ドリームキャッチャー」も、見る前は正直言ってあんまり期待はしていなかった。しかもカスダンとキング、カスダンとホラーと言う取り合わせがどうもピンと来ない。だから、なおさら盛り上がっては来なかった。

 ところで見て二度ビックリなのは、キング作品だからホラー…とは思っていたけど、これってかなり本格的でハードなSF作品なんだよね。キングのSF…そしてカスダンのSF。いやぁ、事前情報がほとんどなかったもんだから、これには驚いた。何と今時珍しいくらいガチガチの正統派宇宙人侵略モノではないか。こんな本格SFホラーを発表するとはね。大体カスダンって監督作としては特撮をつかった作品を発表してなかったから、ちょっと驚いちゃったよ。だから、途中からかなり興味しんしんでスクリーンと対峙することになった。そして映画を見終わった結果はと言うと…。

 これがなかなかいいんだよ。

 まぁ一時期の何つくっても面白い、何やってもヒット…ってほどの絶好調ぶりじゃないかもしれない。でも、映画としてなかなか面白いよ。かなり頑張って取り戻してる感じがする。それに、僕には今回の映画って、久方ぶりにカスダンらしさが出ている気がするんだね。

 ローレンス・カスダンがスティーブン・キング原作を映画化、それも本格SF…と言えば、「カスダンらしさ」とは逆にかなり奇異に感じる。だけど、実はカスダンの軌跡…それも絶好調な初期の頃を考えると、これはちっとも驚くべきことではないのだ。そもそも「帝国の逆襲」「レイダース」の脚本家として特撮作品、SF作品は通過済みではないか。それに、「白いドレスの女」でファム・ファタールもの、「シルバラード」「ワイアット・アープ」で西部劇、「殺したいほどアイ・ラブ・ユー」でブラック・コメディ、「フレンチ・キス」でロマンティック・コメディ…などなど、それこそあらゆる「ジャンル映画」を自由に行き来していた人だ。本格的宇宙人侵略SFをつくったって何の不思議もない。元々からこの人って何でもありなんだもの。

 そしてやるとなったら、そのジャンルの気分をうまく出すのもこの人ならでは。「白いドレスの女」のむせかえるような熱気と濃厚でダークな雰囲気、「シルバラード」での変化球ではなくあくまで正統派の懐かしい西部劇の香り…この人ってかつてのアメリカ映画を徹底的に勉強してて、そのへんが映画黄金時代の神髄を現代に再生産するルーカス=スピルバーグの姿勢とも一致するところだったんだろう。だから、「ジャンル映画」をつくっても本腰入れた作品に仕上がるんだね。

 今回もそのあたりは変わりない。ホラーもの、SFものは初挑戦と言っても、その手つきに危うさは微塵もない。結構怖がらせてくれる。その恐怖の正体が見えてしまう中盤までは、特に見事だ。「もの」の正体が見えてしまうと、何だか「エイリアン」シリーズみたいとか「遊星からの物体X」がチラつくとか…過去の映画を勉強し尽くした優等生ぶりが災いしてか、何となく「どこかで見た」イメージが漂ってしまうんだけどね。それでもまずはうまくやった方ではないか?

 中には宇宙人やモンスターが出てきたとたんに興ざめとかチープとかって批判する向きもあるかもしれないけど、そんな批判に対しては僕はこの映画を弁護したいね。だって元々、「宇宙人侵略モノ」ってジャンルがB級なシロモノだ。これを文芸大作みたいにつくっても面白くない。「ジャンル映画」の達人カスダンならば、やはり本来のB級スピリットを大切に再現するに違いない。この映画そのものが、昔懐かしい宇宙人侵略SFの現代的再生産なんだからね。

 そんな風にこの映画の肩を持ちながらもさらにもう一つ難を言うとすれば、それはこの映画全体の語り口に関する問題点だ。スティーブン・キング原作の映画化に常につきまとう事ではあるが、おそらくは長大な原作を料理するために全体が冗長かつ舌足らずになりがちなこと。今回も主人公たちの少年時代、そしてそこで出会った不思議な少年の話が一方であって、もう一方で本筋の宇宙人の侵略が進行するから、どこか駆け足になってしまうきらいがある。しかもこの少年時代の挿話が付け足しではなく物語の大前提になっていて、彼らが仲良し4人組だったこと、ダディッツと知り合ったこと、ダディッツが不思議な能力の持ち主だったこと、ダディッツから彼らも特殊能力を与えられたこと…と、物語を語る上での重要なファクターが何段階ものプロセスを踏んで語られるわけ。だから、それを説明するためにどうしても展開がワン・クッション、ツー・クッション必要になってしまう。映画としちゃあストレートならストレートなほど訴求力が高まるわけだから、これがどうしてもまどろっこしい印象を与えちゃうんだね。これについては後ほどゆっくり説明したい。

 だけどこの少年時代の挿話は絶対に必要だ。これがあるからこそ、この題材がローレンス・カスダン向きのものになっている気がするんだよ。

 

純粋な連帯の大切さを訴えるカスダンとキング

 カスダンって人間群像劇を得意とする作家でもあるよね。まずは筆頭に「再会の時」、「わが街」…そして西部劇というかたちをとってはいるが「シルバラード」もその範疇に入るだろうね。そこではいつも、屈折を乗り越えて最終的に人間たちの連帯のすばらしさがうたわれる。中でも「再会の時」では、登場人物たちが共有する過去というものが大きな意味を持ってくる。

 で、前述したように、僕はカスダン作品で最良のものって、たぶん「再会の時」じゃないかと思っているんだよね。あらゆる「ジャンル映画」に挑戦する映画の虫のカスダン、娯楽映画をキッチリつくるエンターテイナーのカスダン…どれもこれも彼の資質の重要かつ代表的なものだけど、どれが最も本質に近いのか…と言えば、この「再会の時」ではないかと思うんだ。つまりは人間同士の連帯と共感だね。

 それって今回の「ドリームキャッチャー」の、一番大きな要素でもあるんだよ。

 過去に共有した出来事が、主人公たちの人生に大きな影響を与えている。そして大人になった今、それは必ずしも彼らにとって恩恵とはなっていない。そんな複雑な思いを抱いた彼らが、大事件に遭遇する。そこで彼らは(そのうち何人かは命を落とすが)失っていた何か大切なものを取り戻す…。これって「再会の時」の基本コンセプトとほぼ一致するんだよね。そこにカスダン一流の「ジャンル映画」の追求とエンターテイナーぶりが加わったのが今回の作品だとは思えないか。つまりは「らしい」題材を久々に手がけたってことなんだよ。今回の好調ぶりってそこに起因するのではないかと思うんだよね。

 そういう意味で、今回スティーブン・キングとカスダンが出会ったことは、まことラッキーな出来事だったと言っていいのではないか。

 というのは、キングもまた今回の「ドリームキャッチャー」的な世界が彼の本質であるように思うからだ。

 いや。キングの世界を語るほど、僕は熱心な読者なんかじゃない。そもそもキングの本などロクに読んでない。だから、上記の一行は勇み足だ。だが、映画化されたキング作品…に関することだったら僕にも発言が許されるだろう。

 今回の「ドリームキャッチャー」の主人公たちの少年時代の挿話を見て、「スタンド・バイ・ミー」を連想しない人はいまい。そしてこの「スタンド・バイ・ミー」的な世界は、どこか他のキング作品にもチョコチョコ顔を出していると思うんだよ。しかも今回、ご丁寧にも「行方不明の女の子を探す」エピソードまで出てくるに至って、キングもカスダンもこの挿話を「スタンド・バイ・ミー」と同様と受けとってもらって構わない…と読者や観客に宣言しているようなものだ。

 そして今回特に見る者の心を打つのは、この主人公たちのまっすぐな心だ。

 幼い頃、上級生のイジメに目をつぶらず、真っ向から立ち向かって知恵遅れの少年を助けた彼ら。盛んに先輩風を吹かせながら脅しをかける上級生たちに対して、彼らは決然と言い放つのだ。

 「こんな事は間違ってる!」

 その後大人になっていくと、誰しもそのまっすぐさだけでは生きていけなくなってくる。まして彼らの場合、偶然に手に入れることになった特殊能力を持て余して、必ずしもハッピーとは言えない人生だ。4人の中でもメインの扱いで描かれる精神科医などは、自分の能力が患者を救うどころか逆に傷つけることになってしまい、自殺未遂を重ねるほどにウツに陥っている。

 それがたまたま未曾有の事態に直面するに至って、彼らの幼い頃からのまっすぐな心、まっすぐな正義感、まっすぐな勇気が甦ってくる

 「こんな事は間違ってる!」

 それまでともすれば無気力に流されがちだった主人公たちは、宇宙人による人類の危機、そして特殊部隊の人々への冷血ぶりを前に、少年時代に仲間たちと共有していた「まっすぐな心」で果敢に立ち向かうのだ。それは彼らがイジメられてたダディッツを助けた時、行方不明になった少女を探そうとした時と、何ら変わりはしない。

 ところで今回の作品をご覧になった方なら、誰もがある一本の映画を脳裏に思い浮かべるのではないか。そう。昨年公開されたM・ナイト・シャマラン監督の「サイン」がその作品だ。実はこの「サイン」を横に置いて比較してみると、「ドリームキャッチャー」という映画がさらによく見えてくるのだ。

 

 

 

 

 

 

「サイン」をご覧になっている方はこちら

「サイン」をご覧になってない方はこちら

 

 

 

 

 

 

 「シックス・センス」で金鉱脈を掘り当て、その延長線上で「アンブレイカブル」を発表したシャマラン。だが、彼の方法論は元々ある問題点を抱えていた。そして「アンブレイカブル」では終盤のドンデン返しがつまらなかったために、その問題点がハッキリと露呈してしまった。そこで彼の方法論の元々の問題点を補完し、満を持して発表したのが「サイン」だ。実は「シックス・センス」からずっと彼の映画に苦言を呈してきた僕だが、この「サイン」にはさすがに感心した。やってる事は変わらない。だけど今回は話の持っていき方によって、見事に彼の映画づくりの危うさが補強されている。よくぞここに思いついたと僕は感心したよ。

 でも今回、この「ドリームキャッチャー」を見て納得した。あれはシャマランのオリジナルな発想ではない。おそらくは「サイン」の元ネタはこの「ドリームキャッチャー」のキング原作だ。

 単に宇宙人侵略モノと言うだけではない。構成そのものがそうなっている。過去の衝撃的な出来事が影を落としている主人公の生活、そして数々の異変、宇宙人の侵略、それによって最後にハッキリする過去の出来事の真の意味、それを通過した主人公の救い・悟り…両者はものの見事に展開が重なり合うではないか。ドアを通してのエイリアンとのやりとりなど、そっくりな場面まである。そもそも身の丈レベルのお話から宇宙人の侵略という破天荒な事件に発展していく、物語自体のつくりが似通っているではないか。間違いなく「サイン」は「ドリームキャッチャー」原作のパクりだと考えるべきだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おそらくは「アンブレイカブル」の大失敗で懲りたシャマランは、自分の映画づくりの方程式にピッタリとハマる題材を探していたのだろう。そこで見つけたのがスティーブン・キングの小説「ドリームキャッチャー」というわけだ。いや、これって僕は決してシャマランをケナしてはいないよ。パクりだって努力のうちだ。映画を面白くするためのパクりで、それもちゃんと自分流に消化しているなら大いに結構! 「サイン」ではシャマランも、きっちりと自分なりのアレンジで使っている。

 その上で、「サイン」はさすがに映画化前提にシナリオから書き起こしたものだから、映画としての見せ方を考えた力強く単純な構成をとっているんだね。

 そして皮肉なことに、今回の「ドリームキャッチャー」の弱いところがそこなのだ。何しろ前に述べたように、やたら長大なキング原作、そして宇宙人の侵略と主人公たちの少年時代が不可分に絡み合った構成…枝葉をバッサリ落としてスッキリした構成をとった「サイン」と比べると、要素がゴチャゴチャしすぎてスッキリしない。また同時に、展開を駆け足で舌足らずにせざるを得ない。だから訴求力がいささか弱くなってしまうのは致し方ないところなのだ。

 本当だったら序盤の主人公たちの陰りも、もっと念入りに描かれるべきだったろう。少年時代の思い出も、もっと時間を割いて描きたいところだ。幼い頃からの大切な仲間がエイリアンに殺されるあたりの悲痛と憤りも、もっとアクセントをつけてじっくり描きたいはず。だから作者たちが意図した主人公たちの思いが、十分観客に到達したかというといささか疑問が残る。もっと胸を打つものになった可能性はあるだろう。

 その他にも、このエイリアンと疫病とカビの因果関係がどうなっているのか…とか、トム・サイズモアの副司令官が何でいとも簡単に主人公を信用して協力するのか…とか、尺数を割けなかったばかりに不完全燃焼になっている部分はいくつもある。これは、どうしても原作を割愛するというプロセスを踏まねばならない、キング原作の映画化の宿命だろう。残念ではある。

 だが、ここはむしろ頑張ってやっている方だと評価すべきではないか?

 例えば4人の仲間たちのうちメガネの爪楊枝男が、エイリアンを閉じこめるべくなけなしの勇気を奮って、便座に腰掛けながらフタを抑えつけているくだり。恐ろしさに凍り付きながらも彼が必死に自分を鼓舞すべく口ずさむ歌は、リンダ・ロンシュタットのカバーでも知られるロイ・オービソンの「ブルー・バイユー」。実はこの曲は、20年前にイジメで怯えきった少年ダディッツを慰めるために歌われている。つまりは彼らが少年時代に共有していた正義感、勇気…まっすぐな気持ちの象徴として使われているんだね。このくだりはなかなか感動的だったよ。

 そう。確かにこの映画は宇宙人侵略SFという「ジャンル映画」ではある。だが、実際に描きたいものは、それとは別のところにあるのだ。

 善であろう、正しいことをしよう、まっすぐに生きようという少年ならではの気持ち…それを共有できた少年時代の友情の大切さ、この映画が描きたいのはそれだ。

 イマドキまっすぐな事を言おうとする映画は少ない。言ってもどこかウソくさくなる。だけど人間は、心の奥では誰でもそれを希求しているのではないか? だとしたら、それを人々が受け入れやすいように語るにはどうすべきだろうか? その解答がこの物語だとは言えないだろうか。

 この映画は一見エグい侵略SFのカタチをとってはいる。いや、侵略SFとして本気でつくってはいる。だけど、その一方でこの映画は「まっすぐな気持ちの大切さ」を一貫して訴えているのだ。それが証拠に、特殊部隊の副司令官トム・サイズモアでさえ、本当に正しいこととは何かと迷い、悩むではないか。そして最後には決断して彼なりの勇気を奮う。

 その勇気が決して蛮勇ではないこと…そういう独善とは一線を画するものであることは、対立する存在として発狂した司令官モーガン・フリーマンが配置されていることからも明らかだ。そして最初ここでのフリーマンとサイズモアは、戦友的な絆で結ばれているかのように見える。だがそれもフリーマンにとって、一方的に自分に従うことを条件にしたテメエ勝手な絆に過ぎない。上意下達の軍隊ならば無理もないかもしれないが、それは決して本来あるべき人間同士の関係とは言えまい。そのモーガン・フリーマンが自身を託すべくサイズモアに渡す拳銃が、元々はあの保守ガチガチの反動的映画スター=ジョン・ウェインの持ち物だと言うのも象徴的だ。

 この作品がうたいあげる正義・勇気は、ジョン・ウェインからジョージ・ブッシュに行きつくような、そんなシロモノでは決してない。誰かを力でねじ伏せる、誰かを屈服させる…そんなことを意図したものでは決してない。純粋な正義感や勇気はそんなものではないし、どっちが上か、どっちが強いか…そんな歪んだ考え方から生まれ出ることなどあり得ない。

 打算もカネも権力も関係ない…そんなものとは無縁でいられた、子供時代の純粋な友情。まっすぐな気持ちは、そんな真の連帯のみが生み出すものなのだ。だとしたら、それこそが一番僕らに重要なものではないのか?

 大人にとって、純粋な連帯ほど得難いものはないのだから。

 

 

 

 

 

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