「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」

  The Lord of the Rings - The Two Towers

 (2003/03/24)


第二部に入る前のお約束

 今、最新作「ダイ・アナザー・デイ」が絶賛上映中のボンド・シリーズ、主人公ジェームズ・ボンド役のピアース・ブロスナンの最終作と言われていたけど、どうやらもう一本出るらしいね。

 ボンド・シリーズでは初代ショーン・コネリーからブロスナンで4代目となっているわけだけど、ちゃんとシリーズでのイメージの踏襲は出来ているわけ。まぁ長期に渡るシリーズともなれば降板、交代はつきもの。このシリーズじゃMだってQだってマネペニーだって代わってる。

 「男はつらいよ」だっておいちゃんが代わってるし、「ハリー・ポッター」シリーズの校長先生も、リチャード・ハリスが亡くなったから代わらざるを得ないだろう。これらは毎回一話完結のシリーズだからまだいいけど、何と「バック・トゥ・ザ・フューチャー」三部作なんて、お話は続いているのに主人公のガールフレンドが二作目からエリザベス・シューに代わっちゃうなんて荒技使ってたもんね。

 とまぁ長々と語ってきたそのわけは、実は今回の「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」では、前作とは若干の配役交代をしたいという言い訳なのだ(笑)。何しろあれから一年も経つと、事情がスッカリ変わるもんねぇ。前作では闇の冥王サウロンに当時人気絶頂だったムネオ(笑)を起用したんだけど、この人も今じゃすっかり忘れ去られてるもんねぇ。「なんでだろう」歌ってるコンビも、気をつけてないと猿岩石化するよ(笑)。

 そこで今回の第二部ではこの闇の冥王サウロンに、いまや世界で人気ナンバーワン…特にイスラム圏で絶大な人気を誇るアメリカのブッシュを起用しようと思ってる(笑)。実はこのブッシュ、前作ではボロミア=ショーン・ビーンとして登場していただいたが、今回はそのボロミアも出てこない。そこで今度はさらにパワーアップして再登場していただこうという訳だ。まぁ、ボンド・シリーズでも悪役だったジョー・ドン・ベイカーが別の作品でボンドの相棒になったりしてるからね、いいんではないかい(笑)?

 でもって、お話の骨子がナショナル劇場「水戸黄門」なのは今回も変わらない(笑)。では、今回の「二つの塔」、その水戸のご隠居のあの堂々仁王立ち場面から再びスタートだ。

 

 

この感想文は「ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔」のストーリーのほぼ全容に触れています。どうか映画をご覧になった後でお読みください。

 

 

「ロード・オブ・ザ・リング」
第一部感想文を読みたい方はこちらへ

 

 

 

三方に別れた「旅の仲間」たち

 巨大な図体に吉野屋のロゴマークでおなじみ牛の頭部を持ち、ムチをふるいながらオレンジ色の吉野屋コーポレートカラーに燃えたおそるべき巨人…悪鬼ヨシノヤ。そのヨシノヤが今まさに石橋を渡ろうとしている。

 「この橋は渡さん!」と、魔法使いのガンダルフことご老公イアン・マッケランは橋の中央で仁王立ちだ。他の面々は何とか橋を渡り切った。ここで悪鬼ヨシノヤを食い止めれば無事だ。

 「静まれ〜静まれ〜い! この紋どころが目に入らぬか!」

 すると悪鬼ヨシノヤの足元で橋が崩れ出した。あっと言う間に奈落の底に飲み込まれていくヨシノヤ。

 「わっはっはっは!」とご老公マッケランが番組恒例の高笑いを上げたその時!

 悪鬼ヨシノヤが転落しながら断末魔でふるったムチが、ご老公マッケランの足元をすくった。態勢を崩して落ちそうになり、かろうじて橋の崩れた場所にぶら下がるご老公。

 「ご隠居〜!」 うっかり八兵衛ことフロド=イライジャ・ウッドは泣き叫んで、橋まで戻ろうとする。だが、そんな八兵衛を矢七ことヴィゴ・モーテンセンは必死に止めた。

 そして、ご老公マッケランは自らの運命を悟った。

 「矢七、後は頼んだぞ。八、達者でな。わっはっはっは!」

 さっと手を放したご老公は、たちまち暗黒の裂け目の中に飲み込まれていった。わっはっはっは…と高笑いを上げながら。

 「ご隠居〜! ご隠居〜っ!」 八兵衛の悲痛な叫びがこだまする…。

 

 ここまでは前作でみなさんご覧になった通り。さて、その後ご老公マッケランがどうなったかと言えば、どこまでもどこまでも地下深く切り立った裂け目を落ちていき、やがて同じように落ちていく悪鬼ヨシノヤに飛びつくと、こやつの体に所構わず剣を突き立てた。

 ギャ〜〜〜ッ

 悪鬼ヨシノヤが泣こうがわめこうが、ご老公マッケランは手を緩めようとしない。かくしてこの両者もつれ合ったまま、奈落のドン底まで落っこちていった訳だが…。

 

 その後、国連査察団こと大量破壊兵器=指輪を捨てる旅の仲間たちは、その役目を全うする前に分解してしまった。

 魔法使いのご老公マッケランは上記のごとく奈落の底に消え、人間のボロミア=ショーン・ビーンは命を落とした。

 ホビットのピピンことビリー・ボイドとメリーことドミニク・モナハンの二人は、裏切り魔法使いサルマンことコイズミ=クリストファー・リーの放ったウルク=ハイの兵士たちにさらわれてしまった。

 人間のアラゴルンこと矢七ヴィゴ・モーテンセン、エルフ族のレゴラスことオーランド・ブルーム、勇猛な小人ドワーフ族のギムリことジョン=リス・デイビスの三人は、そのさらわれたピピン=ボイドとメリー=モナハンの二人を追っていた。

 そしていまや指輪を捨てるという重大な任務は、ホビットのうっかり八兵衛ことフロド=イライジャ・ウッド、そして彼に従う舎弟のサムことショーン・アスティンの二人に託されることになった。

 荒涼たる荒野を行く八兵衛ウッドとサム=アスティン。めざすは悪の総本部ペンタゴン…じゃなくて、モンドールの黒門の彼方にある火の山。そこでこの指輪を捨てなければ災いは消えない。だが、彼らは道に迷ってばかり。いつまで経っても先に進んでいない毎日に、さすがに焦りの色を隠せなくなっていた。

 そんなある日、眠っている二人に襲いかかる不審な人影。

 だがこの二人、実は目を開けていた。何日も前から人の気配と傲慢チキな臭いが漂っていたことから、何者かがつけているのは分かっていた。そこで二人はそいつが襲ってくるのを今や遅しと待ちかまえていた訳だ。

 そして捕まえたそいつは、かつて指輪を持っていたこともあるみのもんたこと例のゴラムという気色悪い化け物だった。

 「指輪を返せ〜指輪を返せ〜、おもいっきり指輪を返せ〜」

 この野郎、ふざけんなとばかり縛り上げるサム=アスティン。こぅして道中に思わぬ連れが出来た。だが、首を縛られて痛がるみのことゴラムは、哀れな声を張り上げる。サム=アスティンはこいつに対する情け容赦もないが、なぜか八兵衛ウッドには同情の思いが湧いてこないでもないのだ。

 あいつだって昔は少しはマトモなタレントだったはず。みんな指輪がいけないんだ。

 あげくの果てにみのゴラムもマトモな善人に戻るはずなどと言い出すので、サム=アスティンは冗談じゃないと憤慨する。いいですか、こいつは人生相談の電話をかけてきた視聴者の主婦を罵倒するような、骨の髄まで根性が腐ったゴーマン司会者なんですよ!

 だがゴラムを下の善人に戻せると八兵衛ウッドが思ったのは、故なきことではなかった。実は彼も指輪の悪しき影響を受け始めていた。スーパーパワーさえ持てば何でも出来る、テレビで視聴率稼げばどんな横暴も思いのまま…そんな思い上がりと邪悪な思いが、ともすれば心の中を支配しそうになりつつあるのだった。でも、自分は元の善良な人間に戻りたい。みのゴラムが戻れるならば、自分だってそうできるはず。それは八兵衛ウッドの悲痛な願望でもあった。

 ちょうど自分たちも道に迷っていたところだ、こいつに敵の牙城モンドールの黒門まで道案内させてみたらどうだ。こんな八兵衛ウッドの提案に、もちろんサム=アスティンは大反対。だが、他にこれといった妙案もない以上、ウッドの提案通りするしかなかった。かくして縄を解かれて大喜びのみのゴラム。彼は八兵衛ウッドに信用されたありがたさも手伝って、嬉々としてガイド役を買って出ることになった。

 「お待たせしました!プロ野球珍プレー好プレー!」

 みのゴラムは近道と称して、一歩間違えば足をとられかねない沼地へとやって来る。よくよく見ると沼の中には、メディアに翻弄されたあげく葬られた連中の死骸が累々。元・カープ監督でよせばいいのに広島市長選に立候補した古葉、猿岩石、「ニュースステーション」の若林さん(笑)、水沢アキ、矢部美穂、サンプラザ中野、高部知子、若乃花、北尾、セイント・フォー、B&B、ザ・ぼんち、ぴんから兄弟、伊藤咲子、佐良直美、元フォー・リーブスの北光次、映画評論家の増田貴光、ケンちゃん、「黒猫のタンゴ」の皆川おさむ、スプーン曲げの関口少年…。だが、さすがにそんなメディアの泥沼を長年泳ぎ回ってきた、老練みのゴラムの足取りは危なげがない。

 ところが今度はなぜか八兵衛ウッドの様子がおかしい

 フラフラっと目がくらんで、沼の中に飛び込んでしまうじゃないか。水の中に沈み込んでいく八兵衛ウッドの回りには、メディアの亡霊が殺到してくる。「俺をもう一回テレビに出してくれぇ〜」「ヘアヌードになるから取材に来てぇ〜」「スキャンダル本出すから話題にしてくれよぉ〜」「処女喪失告白するからぁ〜」

 そんな八兵衛ウッドの首根っこをつかんで引きずり上げたのは…何と悪党とばかり思っていたみのゴラム。辛くも助かった八兵衛ウッドは、ちょっとはみのゴラムを見直した。こいつ、少しは「珍プレー好プレー」をやっていたころの性根を思い出したんだろうか?

 その頃、矢七モーテンセンと助さんレゴラス=ブルーム、格さんギムリ=リス・デイビスは、見渡す限りの原野を必死に駆けていた。ウルク=ハイの兵士たちにさらわれたピピン=ボイドとメリー=モナハンの足取りを追っていたのだ。

 「矢七、助さん、ちょっと待ってくれぇ!」

 どうしても短足の格さんことギムリ=リス・デイビスは、他の二人から後れをとる。そんな格さんリス・デイビスの尻を何とかかんとか叩きながら、さらわれたホビット二人の後を追う一行であった。

 一方、闇の冥王サウロンことブッシュのパシリと化した魔法使い小泉サルマン=クリストファー・リーは、サウロンによる人間界の支配を容認、支持して、着々と準備を進めていた。目障りな奴は、有無を言わさず手段を選ばず叩きつぶす。その目下のターゲットはローハンの国の攻撃だ。国連決議もへったくれもなく、それは徐々に進行していた。

 ローハンの国王セオデンことバーナード・ヒルの様子がおかしくなったのも、その一例だ。小泉サルマンことリーは、この国王の相談役として竹中経済財政・金融担当相こと蛇の舌グリマ=ブラッド・ドゥーリフを送り込んでいた。そしてこの男の助言に耳を傾けているうちに、ローハン王ヒルはすっかりボケてしまった。あまりのそのボケっぷりについつい苦言を言った甥のエオメル=カール・アーバンの言うことも耳に入らない。あげく厄介者とばかりにエオメル=アーバンは、ローハンの国から彼の軍勢ごと追い出されてしまった。そんなアリサマを見ていた彼の妹エオウィン=ミランダ・オットーも、王の迷走に為す術がない。そして、かねてから竹中こと蛇の舌グリマ=ドゥーリフにセクハラされていただけに、これから自分がどうなるのか暗澹とせざるを得ないエオウィン=オットーであった。

 さてさらわれたホビット二人を追う矢七、助さん、格さんの三人は、その途中で例のローハン国を追い出されたエオメル=アーバンの一行に出くわす。そして隊長アーバンより驚愕の事実を知らされた。

 実はこのアーバンたちの一隊は、昨夜ピピン=ボイドとメリー=モナハンを連れていた敵兵士ウルク=ハイの一団とぶつかったらしいのだ。そして奴らを全滅させた…生存者はないと言う。

 そんな! せっかくここまで追ってきたのに!

 慌ててその交戦現場にやって来る三人。だが、そこには火を付けられて燃やされた敵の死骸が累々と積み重なるのみ。しかも例のホビットのベルトまでそこで見つかった。あの二人、運悪く敵と一緒に皆殺しにされ、燃やされてしまったのか?

 ガックリする三人だったが、さすがの矢七モーテンセンの嗅覚はごまかせなかった。彼は現場の草むらの様子から、ピピン=ボイドとメリー=モナハンのホビット二人組が難を逃れたことを知る。そして二人は戦いから逃れ…太古からある奥深い原生林、ファンゴルンの森に逃げ込んだらしい

 実は…確かに矢七モーテンセンの読み通り、ピピン=ボイドとメリー=モナハンの二人はこの森に逃げ込んできた。だが、例の小泉サルマン=リーの追っ手が二人を追ってくる。慌てた二人はついつい手近の巨木によじ登った。

 だが、この巨木は生きていた!

 いきなり巨木は目を見開き、根を地表から持ち上げて動き出した。次の一瞬、目障りなサルマン=リーの追っ手は、巨木の根に押しつぶされた。

 「ひえ〜」

 さすがにこの巨木にしがみついていたピピン=ボイドとメリー=モナハンはビビる。そんな二人に、巨木は自らを樹木の牧者エントと名乗るのだった。

 「俺はこのシマを仕切る樹木マフィアだ。ショバ荒らしには容赦しねえぞ」

 さすが地元ヤクザは厳しい。で、樹木ヤクザのエントはこのホビット二人にも疑いの目を向けた。「このファンゴルンのシマをチャイニーズ・マフィアの好きにはさせねえぜ。もう雑居ビルに放火なんかさせねえ」

 さて、そんな経緯があったとは知らない矢七、助さん、格さんの三人も、この森が新宿歌舞伎町並みにヤバそうだとは感じていた。それでもピピン=ボイドとメリー=モナハンの後を追おうと、おそるおそる森に踏み込む三人。するとその三人の前に、ピカーッとまばゆい閃光が輝くではないか。

 そこにはまぶしさのためにしかと確かめられないが、一人の白髪で白い老人の姿が!

 白の魔法使いと言えば、あの小泉サルマンことクリストファー・リーではないか?

 矢七モーテンセンは、おそるおそるその白い老人にホビット二人組のことを尋ねた。すると二人はさらに森の奥に行ったと言う。業を煮やした三人は、この白い老人が何者かを尋ねた。

 「この越後のちりめん問屋の年寄りの顔を、見忘れましたかな?」 老人はいきなり袂から、見覚えのある小物を取り出して三人の前に掲げた。

 この紋所が目に入らぬか!

 ボワ〜〜〜〜〜〜ン!

 「ご、ご、ご、ご老公!」 

 何とこの白い老人は、奈落の底に落ちたはずのガンダルフことご老公イアン・マッケランだった! 思わず恭しくひざまずく矢七、助さん、格さん。「へへ〜〜〜〜〜〜っ」

 わっはっはっはっは!と、真っ白な衣装に身を包んだご老公マッケランは高笑い。

 「で、でもご隠居は確か灰色の石坂浩二だったはず」と、おそるおそる三人は尋ねた。

 するとご老公はここまでのあらすじをナレーションしてくれた。あの後、悪鬼ヨシノヤを倒してパワーアップし、石坂浩二から里見浩太郎へとグレードアップしたと言うのだ。なるほど、よくよく印籠を見てみると、そこには東映三角マークが輝いている。

 「今は白の里見黄門じゃ。」

 「なるほど。やっぱり時代劇では伝統のある、東映出身の里見浩太郎の方が上ですからね!」と、思わず納得のキャスティングに膝を打つ矢七、助さん、格さん。つい調子に乗って、言わなくてもいい言葉まで付け加える。「なんでも鑑定団の司会なんてやってる奴じゃ、黄門さまには相応しくありませんや」「よくてせいぜい金田一耕助ですからねっ」

 これにはそれまで石坂黄門だったご老公マッケランも心中穏やかではなかったが、そこは大人の対応で慌てず騒がず。「石坂も、昔はウルトラQのナレーションといういい仕事をやってたことを忘れてはいかんぞ」

 「これは失礼いたしました、ご隠居」

 「あのホビット二人組なら大丈夫じゃ。我々はローハンの国に行きますぞ。あっちの方が今は大変じゃからな」

 「はは〜っ!」

 というわけで、再会なった黄門ご一行は、一路ローハンの国に急ぐことになった。

 その頃、八兵衛ウッドとサム=アスティン、そしてみのゴラムは、ペンタゴンことモンドールの黒門をめざしていた。確かにみのゴラムは日に日にあの邪悪な様子を消し去っていた。それでもサム=アスティンは疑いの目を緩めない。しかし八兵衛ウッドとサム=アスティンは、そんなみのもんたゴラムの胸中に激しい葛藤があるとは知らなかった

 二人が寝静まった夜、みのゴラムに話しかける邪悪な声…それはみのゴラムのもう一つの顔、邪悪で腐りきったおもいっきりゴラムだった。「オマエ、あんな食いしん坊のパシリでいいのか? テレビ界でどんなワガママだって通せるオマエがだよ」

 それに対して善のみのゴラム、珍プレー好プレーゴラムが反論した。「いやだ、八兵衛さまは俺によくしてくれるよ。もう、オマエの言いなりになんかならないぞ!」

 「バカだなぁ、もうプロ野球ニュースだってなくなっちゃったんだ。それにあの番組じゃ、オマエは顔も出してもらえなかったじゃねえか」

 「試合のVTRにナレーションをつけていた時は楽しかったよ」

 「ふん! もう日本のプロ野球は終わりだよ。それより俺とアホな主婦をコキ下ろしたりインチキ健康法を吹きまくったり、商売に行き詰まった奴を高見の見物しながら偉そうに説教したり、ハッタリだけで中身カラッポのクイズ番組とかやった方が面白えぜ」

 「そんなクズ番組なんて! 俺が珍プレー好プレーやってた頃は、似たような番組いっぱい出来たけど、他のはどれも寒くて見てられなかった。俺のが一番だったんだ」

 「ケッ、俺をとるか、八をとるか。どっちなんだ。ファイナル・アンサー!

 「八兵衛さまをとるよ。これがファイナル・アンサーだ!」

 すると邪悪なおもいっきりゴラムはウソのように消えた。今までの陰鬱な気分がスッカリ晴れたみのゴラムは、すっかり心を入れ替えた…ように見えた。

 そんな八兵衛ウッドとサム=アスティン、みのゴラムだったが、ついにめざすペンタゴンの黒門にたどり着いた。だがさすがに敵の本拠地だけあって、何とも守りが堅い。IDカードでもなければ入れそうにない。

 「そこのオネエサンっ、こんなところから入ろうなんて無理ですよ〜。おやめなさいって」とみのゴラムもすっかりビビる。それでも何とか入り込もうとする八兵衛ウッド。折りしもちょうど敵兵士ウルク=ハイの軍勢が門を開けてペンタゴンに入って行くところだ。「あんたね、そんなとこから行こうったってダメなんだって!」

 そんなスッタモンダしているうちに、サム=アスティンが崖から転がり落ちてウルク=ハイの軍勢にバレそうになったり、まぁいろいろあった。結局、黒門は再び閉じて、三人はここからの侵入を断念した。

 「ここからじゃなくて、いい抜け道があるんですよ」

 結局、八兵衛ウッドとサム=アスティンは、このみのゴラムの言葉を信じて別の道を行くことにしたのだが…。

 さて黄門ご一行はローハンの国に到着。早速国王のお目通りを得ることになったが、どうも歓迎されている様子ではない。国王の面前に出ても、国王セオデン=ヒルはまったく精彩がない。しかもその側には竹中経済財政・金融担当相こと蛇の舌グリマ=ブラッド・ドゥーリフがピッタリくっついて、調子のいいヨタを飛ばしている。「国王、これは絶対に儲かります、私が保証します」

 あまりのひどい様子を見るに見かねたご老公マッケランは、国王ヒルに声をかけた。

 「国王さま、ここにもサルマンの脅威が迫っております。国乱れ、民百姓はみな嘆いておりますぞ」

 だが国王ヒルは全く反応なし。逆に竹中こと蛇の舌グリマ=ドゥーリフに言いたい放題されるアリサマだ。

 「曲者だ、出合え出合え〜っ」

 城中の武士たちがザザッと出てくる。すると月曜夜8時45分ごろの番組恒例の見せ場がやってきたと言わんばかりに、ご老公マッケランの目がぎらりと光った。

 「助さん、格さん、矢七、やっつけてしまいなさい!」

 さぁたちまち始まった大チャンバラ。由美かおるの姿はないものの、黄門ご一行の強いこと強いこと。たちまちその場を鎮圧して、竹中こと蛇の舌グリマ=ドゥーリフを叩きのめしてしまう。

 「助さん、格さん、矢七、もういいでしょう!」

 控え〜っ!控え〜っ! この紋所が目に入らぬか!

 だが、濁った国王ヒルの目は生気が戻らない。それもそのはず。国王ヒルはあの小泉サルマン=リーに操られていたのだ。

 「おのれマッケランめ! 灰色の石坂黄門ごときが小賢しいわ。俺に立ち向かえると思っているのか!」 あの国会議事堂から国王ヒルを遠隔操作していた小泉サルマンことリーは、ご老公マッケランをせせら笑った。

 「だまらっしゃい!」

 ついに怒ったご老公マッケランは、印籠を見せた。印籠のど真ん中に燦然と輝く、時代劇の伝統を誇る栄光の東映三角マーク。すると辺り一面にまばゆい光が溢れ返る。

 「うわ〜〜〜〜〜〜っ!」 小泉サルマン=リーは、その光のパワーにすっ飛ばされた。そのとたん、ふぬけだった国王ヒルの目に、活気が戻った。「さ、さ、さ、里見黄門だぁぁ〜っ」

 「ご老公の御前である。控えおろう〜!」

 ご老公マッケランは蛇の舌グリマ=ドゥーリフに近づくと、のっけに一喝した。「竹中平蔵こと蛇の舌グリマ、オマエは国王の相談役という要職にありながら、サルマンと共謀して国王の心を攪乱しようとした。日本経済もメチャクチャにして国民を苦しめた。その罪断じて許せませんぞっ」

 「さて、エオウィンさま」と、それまでの厳しい顔を一変させてエオウィン=オットーの方を向くご老公マッケラン。「これまでご苦労が耐えませんでしたな。これからも伯父さまの国王を支えていくんですぞ」

 「はいっ、ありがとうございます。ご老公さま」

 こうして竹中経済財政・金融担当相こと蛇の舌グリマ=ドゥーリフは城中から叩き出された。こうなると、もう奴には小泉サルマン=リーの元に走るしかない。

 それにしても戦争の脅威は去ってはいない。そこでご老公マッケランは、去っていったエオメル=アーバンとその軍勢を探しに行くことにした。「今日から5日目の朝までには戻ります。後は頼みましたぞ!」

 ご老公マッケランは、白馬に跨って彼方に去って行った。

 

風雲急を告げるヘルム峡谷

 さてローハン国王のヒルは、ここで苦渋の決断をした。都を捨て国民とともにヘルム峡谷の石の要塞に避難することにしたのだ。だが、その行程には危険が付きまとう。矢七モーテンセンと助さんレゴラス=ブルーム、格さんギムリ=リス・デイビスは国王軍とともに、この避難民たちの護衛をすることになった。そんな中、エオウィン=ミランダ・オットーは矢七モーテンセンにいつの間にか心惹かれていくのだった。

 だが、そんな矢七モーテンセンの胸中には、いまだエルフ族のアルウェンことリブ・タイラーへの想いが燃えていた。エルフ族はこの「中つ国」での暮らしを捨て、不死の国に旅立つことになった。だが、アルウェン=タイラーは自らの不死の定めを捨ててでも、矢七モーテンセンと共に生きる道を選んで「中つ国」に残る決心をしていたのだ。

 そんな避難民に、敵ウルク=ハイの軍勢が襲いかかってくる。その際、一度は崖下に転落して命を落としたかに思われた矢七モーテンセン。だが彼は奇跡的に助かって、避難民たちが無事たどり着いたヘルム峡谷の石の要塞に颯爽と現れた。その時エオウィン=オットーも、自分の矢七モーテンセンへの愛を確信する。それはモーテンセンのリブ・タイラーへの愛を察してはいても、やむにやまれぬ想いだった。

 一方、八兵衛ウッド、サム=アスティン、みのゴラムたちは、新手の人間族の軍勢に身柄を拘束されていた。この連中の親玉は、あの死んだ旅の仲間のボロミア=ビーンの弟…ファラミアことデビッド・ウェンハムだった。あの兄にしてこの弟あり。このファラミア=ウェンハムも指輪に目がくらみ、何とかこれを自分たちに役立てたいと考えた。かくして身柄を捕らえられた三人は、このファラミア=ウェンハムの軍勢にゴンドールの都へと連れて行かれる。

 しかもマズイことが一つ起きてしまった。ファラミアからみのゴラムの命を守ろうとするあまり、八兵衛ウッドは彼をダマすことになってしまったのだ。如何ともしがたい状況だったのだが、みのゴラムはそんな事はつゆ知らず。自分を裏切った八兵衛ウッドを逆恨みするうちに、あの邪悪なおもいっきりゴラムが蘇ってしまった。しかし、そんなみのゴラムの内面の葛藤は、いまだ八兵衛は気づいてはいない。

 そして、いよいよ敵ウルク=ハイ軍は総攻撃の準備を終えた。沖縄に集結した圧倒的軍勢を前に、小泉サルマン=リーはしてやったりの表情だ。記者会見のテレビカメラの前でマイクに向かうと、小泉サルマン=リーは高らかに宣言する。「私はこの際、米国の武力行使開始を理解し、支持いたします!」

 おお〜っと雄叫びを上げるウルク=ハイ軍の軍勢。小泉サルマン=リーはさらに続ける。「同時多発テロから戦争の意味は変わったんだ。ツインタワービル…すなわち“二つの塔”を忘れるな!」

 さて、戦い迫るヘルム峡谷の石の要塞。だが、味方の手勢はごくわずか。それも民間人の老人から子供まで数に入れても…である。悲壮感漂う石の要塞。そこに思わぬ援軍が現れた。

 エルフ族の軍勢だ!

 エルフの王エルロンド=ヒョーゴ・ウィービングから遣わされてきたこの援軍の指揮をとるのが、ガラドリエル=ケイト・ブランシェットの元で指輪の仲間たちと出会ったハルディア=クレイギ・パーカー。矢七モーテンセンは彼を歓迎すると、久々の再会を喜び合う。「エルフは人間と再び共に戦えることを誇りに思います」

 だが、やって来たウルク=ハイの軍勢の強大さと言ったら…ここヘルム峡谷を覆い尽くさんばかり。そして戦いの火ぶたは切って落とされた!

 その頃深い深い森の奥では、例の樹木マフィアのエントが同じく森のマフィアたちを集めて、樹木ファミリーがこの戦いに参加するかどうかを決めていた。オブザーバーとして出席したピピン=ボイドとメリー=モナハンは、一向にまとまらない話に業を煮やす。だが話し合いの結果は不調に終わった。樹木たちは人間の争いに関係ない。ここは静観の構えだと高みの見物を決め込んだのだ。あまりの決定にピピン=ボイドとメリー=モナハンは失望せざるを得ない。落ち込む二人を見かねた樹木マフィアのエントは、彼らを途中まで送って行くことにする。せめて自分たちで何とか出来ないか…と考えたピピン=ボイドとメリー=モナハンは、エントに南回りのコースで帰ることを告げた。南には小泉サルマンの国会議事堂の塔がある。何とか自分たちだけでも出来ることをしようと悲壮な決意を胸に抱く二人であった。

 案の定、ヘルム峡谷での戦いは人間軍の苦戦となっていた。いくら倒してもいくらやっつけても、圧倒的なウルク=ハイの軍勢は抑えきれない。やがて城壁は爆破され、塀は乗り越えられ、城門は破られた。戦いの最中、エルフ軍の指揮官ハルディア=パーカーも命を落とした。残り少ない人間軍・エルフ軍の軍勢は、石の要塞の中に退却せざるを得なくなっていた

 さて、その頃人間の都ゴンドールに連れてこられた八兵衛ウッド、サム=アスティン、みのゴラムの三人。ゴンドールもまた、ウルク=ハイの激しい攻撃で陥落寸前だった。案の定、指輪に血迷うファラミア=ウェンハム。事ここに及んで、サム=アスティンの怒りは爆発した。

 「あんたの兄貴が何で命を落としたか分かってるのか?」

 その頃、ピピン=ボイドとメリー=モナハンを抱えながら歩いていた樹木マフィアのエントは、森のはずれに差し掛かった。そこで彼らが見たものは…?

 森が伐採されている!

 小泉サルマンが調子こいて国会議事堂の塔を要塞化する際に、周囲の森に痛みを伴う改革を行っていたのだ。これには樹木マフィアのエルフの怒りが爆発した。

 「ぬおおおおおお〜〜〜〜〜〜〜っ!」

 おのれ小泉サルマンめ、きさま改革派だと言っていた言葉は何だっだのだ。闇の冥王サウロンことブッシュのパシリに成り下がりおって。こうなったら俺は怒ったぞ!

 エルフの呼びかけに、他の樹木マフィアたちが駆けつけた。ピピン=ボイドとメリー=モナハンは大喜びだ。

 やつらをやっちまえ〜〜〜〜!

 さて、いよいよ進退窮まったヘルム峡谷石の要塞では、国王ヒル、矢七モーテンセン、助さんブルーム、格さんリス・デイビスが、悲壮な決意を固めていた。ここの門も、激しい敵の攻撃で風前の灯だ。

 かくなる上は栄光ある死を選ぼうぞ!

 彼らは馬に跨って、最後の勇気ある突撃に臨むことになった。

 その時、矢七モーテンセンの脳裏には、援軍を探しに出かけたご老公マッケランの最後の言葉が蘇る。「5日目の朝には戻る」…それは今ではないか!

 俄然勇気づけられた矢七モーテンセンは、助さん格さんの方に向き直った。

 「よ〜し、助さん格さん。じゃあそろそろ、例のやついきますか?」

 「アレですか?」

 「いきますか!」

 助さんブルーム、格さんリス・デイビスの目がギラギラっと輝いた。「せ〜〜〜〜の!」

 「レッツ・ゴー(行くか)!」と、目を輝かせて矢七モーテンセンが言った。

 「ホワイ・ノット(いいとも)!」と、受けたギムリ=デイビスが笑顔を見せた。

 「な〜んだよ〜、また俺のセリフないの〜」と、レゴラス=ブルームが笑いを誘った。

 国王、矢七、助さん、格さん率いる人間・エルフ連合軍は、門が破られるや否や脱兎のごとく突撃した。砦の中に突っ込もうとするウルク=ハイ軍を、勢いにまかせてめったやたらにとっ散らかして突っ走る。

 ダダダダダダ〜〜〜〜〜〜ッ!

 勢いに飲まれたウルク=ハイ軍は、次々国王軍に打ち倒される。だが、外にはやはり圧倒的な軍勢が控えていた。これはどう考えても悲壮な戦いだ。

 その時!

 わっはっはっは!わっはっはっは! うわっはっはっはっは!

 ヘルム峡谷に響き渡る、あの聞き覚えある高笑い。崖の遙か頂上には、白馬にまたがった白い老人の姿がスックと堂々仁王立ちだ!

 「ご隠居!」

 ご老公マッケランが帰ってきた! その隣には急を聞いて駆けつけたエオメル=アーバンの軍勢が!

 「さぁ、主君をしっかりお守りするんですぞ」

 「かたじけない」

 満を持したご老公マッケランは、さすがに今回の一番の見せ場を分かっていた。フトコロに手を突っ込むと、例のブツをここぞとばかり敵に突きつけた!

 「この紋所が目に入らぬか〜〜〜〜〜っ!」

 高々と掲げられた印籠の東映三角マークから、まばゆい光があたり一面を覆い尽くした。思わず目をくらませるウルク=ハイの軍勢の元に、エオメル=アーバンの軍勢がドドドドッと一気に駆け下りる。

 「うわぁぁぁ〜〜〜〜〜〜っ!」

 たまらず次々と叩きのめされるウルク=ハイ軍たち。戦況はここに一変したのは言うまでもない。さすがまばゆい光が売り物の、ナショナル・パルックの威力は絶大だ。

 その頃、国会議事堂周辺でも異変が起こっていた。樹木マフィアたちが国会の敷地内に乗り込んで、襲いかかる敵たちをなぎ倒す。要塞を打ち壊し、上流部のダムを破壊する。

 ドドドド〜〜〜〜ッ!

 勢いよく激しい奔流が襲いかかり、国会議事堂に襲いかかる。敵たちは水に飲み込まれ、要塞は次々破壊されていった。

 「うわわわ〜っ」と慌てる小泉サルマン=リー。「内閣支持率が40パーセントを切るぞ〜っ。もう不景気の責任をイラク情勢のせいには出来ない〜っ」

 一方、ここは陥落寸前のゴンドールの都。一段と激しい攻撃が起こり、八兵衛ウッド、サム=アスティンらも散り散りになる。そして彼らの目の前に襲いかかるのは、敵最新鋭のステルス戦闘機だ。

 すると、八兵衛ウッドは指輪の魔力のせいか、飛来するステルス戦闘機に向かってフラフラと夢遊病者のように近づいていく。何と、八兵衛ウッドは敵に指輪を差し出すつもりだ!

 危ないっ!

 サム=アスティンは八兵衛ウッドに体当たり。二人はもんどり打って倒れ、指輪を敵に奪われる難は逃れた。だが、これに逆上した八兵衛ウッドは、サム=アスティンに剣を突きつけた!

 「待って、待って! 俺ですよ。八兵衛さん。しっかりしてください」

 間一髪、我に返った八兵衛ウッド。自分のしようとしたことに気づいた彼は、思わずフラフラと崩れ落ちた。「腹が減ってフラフラだよ。おいらもうこんな仕事やってけない…」

 そんな八兵衛ウッドの姿を見つめるサム=アスティンも、悲しみで胸がいっぱいだ。彼は思わず誰に言うともなく、彼は心の内を語り始めた。なぜかいきなり関西弁になって、さながら往年の藤山寛美を思わせる松竹新喜劇の芝居のヤマ場のように…。 

 これではまるで救いのないお話みたいに思えますわな。ど〜うにもならんようにしか思えまへん。そりゃあ落ち込んで何もかもイヤになることもありますやろ。フテりたくもなりまんがな。その気持ちはよ〜う分かりまっせ。だけどわてが昔読んだそういうお話では、主役の人たちはみ〜んな最後まで希望を捨てなかったやないでっか。例えどないしたって、決して前進することを止めたりしなかったやないでっか。だからそういうお話を見て、わてらも勇気づけられたんと違いまっか? それがわてらの心に残ったんと違います? それがお話の主役ちゅうもんやおまへんか。シラケたらあかん。最後まで諦めたらあかん。投げるのは簡単や。だけどわてらは、決して希望だけは捨てたらあきまへんのや。人っちゅうもんは…人っちゅうもんは、最後の最後までそない生きなあかんのと違いまっか?

 「サムやん…」 すっかり弱気になっていた八兵衛ウッドの目に、生気が蘇ってきた。

 「八兵衛はん。あんた、わてのヒーローやないでっか。どうかそんな弱気にならんと、ちゃ〜んと立ち上がっておくんなはれ」

 「寛美ッ!」 そこに思わず大向こうから声がかかった。それは自らも松竹新喜劇の隠れ大ファンだった、ファラミア=ウェンハムがかけた声だった。彼は大粒の涙を流しながら、おひねりを投げると拍手を送った。「ホンマ堪忍な、許してえな。わてがどうかしてたんや。指輪がなんや。スーパーパワーがなんや。わてはオマエらをここで釈放するで!

 そこにファラミア=ウェンハムの側近が、言わなきゃいいことを進言する。「しかし、勝手に釈放したらあなたが死刑になってしまいます」

 「やっかましいわこのボケェ〜!」 ファラミア=ウェンハムは額に血管を浮かべ、いきなりポケットから取り出したキツいグラサンかけて、ヤクザまがいのドスのきいた関西弁で一喝した。「これやから東京もんはいけすかんわ」

 そんなファラミア=ウェンハムも次の瞬間にはグラサンをはずし、再びやさしい顔を八兵衛ウッドやサム=アスティンに向けた。「安心せえ。これからも松竹新喜劇の灯を絶やさず、せいぜい芸の道に精進してや!」

 なぜかファラミアの側近を除く誰も彼もが関西弁になっていた。ここで、前作の感想文ではエルフ族の言語が関西弁になっていたのに…との、ヤボなツッコミはご遠慮願いたい。ともかくは熱い万雷の拍手がこだまする、ここは人生模様渦巻く商人の街、人情味溢れる大阪は道頓堀での出来事であった。

 圧倒的なウルク=ハイの軍勢を向こうに回して、戦いは人間軍の勝利に終わった。晴れやかな陽の光が差し込んで、「中つ国」に明るく広がっている。爽やかな風が吹き付ける中、ご老公、矢七、助さん、格さんの黄門ご一行は、遙かな大地の向こうにまなざしを投げかけていた。

 「戦いはまだまだこれからですぞ!」

 次の戦いが待っている。共に戦う仲間も待っている。指輪を捨てるという使命も待っている。新たな決意を胸に秘め、「中つ国」の解放をめざして再び旅立つご老公であった…。

 では、また来年!

 

アクションの連打で突っ走る第二部

 まずここでハッキリ申し上げるが、僕はイラクのサダム・フセイン政権を支持などしていない。ヤボを承知で申し上げる。そうでないと、いらぬ火の粉が飛んで来そうだからね。そして今回の感想文はいかなる政治勢力や言論団体や政党や国の意見にも与しない。これは断じてプラカードではない。ただ僕が一本の映画に対して勝手なことをつぶやいている感想文で、それ以上でも以下でもないことを最初に申しあげておく。

 そんな断り書きを入れてまで「いかにも今時」の時事ネタを入れてみたのは、この映画を扱うにあたってどうしても、あまりにホットな「いま」の状況に触れるのを避けられないと思ったから。ハッキリ言ってそんな今の世界情勢などに引っかけられるのは、映画の作者たちから原作者のトールキンに至るまで不本意だろうとは思うが、そもそもこのお話自体が多民族同士の葛藤と戦いを扱ったものである以上、どうしたってその時々の世界情勢などに思いを馳せずにはいられないのだ。それがまったく「ない」ふりをする方がウソくさい。ならばいっそドップリ浸かってしまった方がいい…とやってしまった結果がこの感想文とご理解いただきたい。

 で、この作品も二作目になってみれば、ますますどれか一作単体で語るべきでないことが明らかになってきた観がある。三作揃ってナンボのところがある気がしてくるんだね。前作は登場人物紹介編でもあり、起承転結らしきカタチをとって、一応あのエピソードなりに結末を迎えたように見えなくもなかった。だから、あの時点では一作目を単体で見ることも出来たんだけど、今回は「前作のあらすじ」も何も小気味よくすっ飛ばしていきなり本題に入り、前作以上に露骨に「つづく」と終わる構成だ。まぁ、三部作のど真ん中となればキッパリとそういう構成をとらざるを得なかったのだろうが、それにしてもその思い切りの良さは評価に値するかも。まるっきりそういうスタイルをとることに対して、腰の退けたところが見られないのだ。これをつくったピーター・ジャクソンって、ホントにいい度胸しているよねぇ。

 で…だからこの映画は、お話的にどうの…ということを語れる作品ではない。先に述べた酔うに登場人物と設定は説明済み…ということが前提でストーリーは進むわけ。それではこの映画、前作を見ている人しか対象にしていないのか? 確かに基本的にはそうだろう。だが、僕はたぶん前作を見ていない人もこの映画は楽しめると思う。

 なぜなら、エルフがどうの、サウロンがどうの…な〜んてどうでもいい(ごめんなさい、トールキン・ファンの方々。でも、そんなコチョコチョした事ばかりこだわっててもねぇ…)ことは分からなくても、この映画の最大の魅力は十分堪能出来るからだ。

 それは何と言っても、立て続けに描かれる戦いの迫力、壮絶さ、スケール感だ。

 まずはCGがどうのって事を言わねばならないんだろうね。確かにもの凄い合戦シーンはCGを駆使したのに決まってる。ただ、CGすごいCGえらいだけ連発していても始まるまい。この映画では「戦いの状況」が実に分かりやすく観客の目の前に提示される。これって意外にちゃんと行われている作品は少ない。だけど、「その場の状況」をキチンと描きこむ、観客に分かるように見せるってのは、実は良くできたアクション映画に不可欠の要素なんだよね。イマドキの映画はこれが実にヘタで、やたら派手に飾り立てたり、カットを細かく刻んだり、スピード感を強調したり、はたまたフィルムのランニング・スピードをいじくり回してスタイリッシュにしたつもりになっている。ハッキリ言って分かっていない。アクション映画にとって「空間」の描き方ってのは命なんだよ。それが出来てないアクション映画は、ハッキリ言ってアクション映画本来の素晴らしさからはほど遠いものだ。

 「ロード・オブ・ザ・リング」の二本…特にこの二作目「二つの塔」に関して言えば、アクションの状況描写や空間設定の見せ方が明快で素晴らしい。いくらCGの助けを借りていると言っても、監督がそれを使いこなしていなければこうはならないだろうし、何より元々そんな空間のビジョンが監督の頭にハッキリと浮かんでいなければ描けるわけもない。これにはスッカリ感心しちゃったよ。

 で、三作でナンボ…という言い方をしちゃったので、これで作品評価をオシマイにしたいところなんだが、適切なこととは思わないけれど一応は「前作との比較」みたいなことをしなくちゃいけないんだろう。

 これ、「ロード・オブ・ザ・リング」に何を求めるかによって、両者への評価は180度変わると思うよ。

 前作は紹介に時間と力をとられていたのに比べ、今回はストレートに「戦い」に焦点が絞られている。見せ場も多い。だから面白い…って言う人が多いんじゃないかな。

 でも、僕は逆に前作の方が好きではあるんだけどね。何か風格みたいなものが違う気がする。スケール感も前作の方があった気がするんだね。

 というのも、今回は「旅の仲間」が三つに分裂して、それぞれの話が細切れになって進行するわけ。それでスケール感が増すかと言うと、むしろ逆だった気がするんだよ。

 それは話が三つにバラけたと言っても、その中心はあくまでヴィゴ・モーテンセン扮するアラゴルンたちの「戦い」のお話にあるからだ。そこに一番の時間と力が注がれているのは間違いない。だからお話が三つに分散したというより、アラゴルンたちの話に収束していく感じがあるんだよ。

 実際のところ、実質的な主人公としてのイライジャ・ウッド扮するフロドの印象は今回は極端に薄い。前作のような明快さは影を潜め、指輪の魔力に侵されてスッキリしないキャラになっちゃったからだろう。代わりにアラゴルンの「主役」感が強まっているのが今回の作品だ。

 もっとも、前作でも予想外な好演と文句なしのカッコ良さで、それまで線の細い役者にしか見えなかったヴィゴ・モーテンセンの好イメージは一気に上がった。そんな適役好演、役にピッタリとハマったモーテンセンが前面に出ることとアクションの大幅増量が、多くの人に今回の「二つの塔」を支持させることになるのでは…と思ったわけだ。僕も個人的には前作が好きだけど、それはあくまで比較した場合に過ぎない。今回のは今回ですごいボリューム感で、一気に見てしまう面白さであることは間違いないよ。

 他に今回特筆すべきは、まずCGキャラであるゴラムだろう。これは実際の俳優が演じた上をCGでなぞっていく作業のようで、その意味だけなら近年の「スター・ウォーズ」シリーズにおけるジャージャー・ビンクスと同じ要領と言えるのだろう。だが、出来栄えはこちらの方が格段に上。特にこのキャラが人格を分裂させるあたりの描写は見事だ。

 そして、やはり今回目立ったのは、前作でフロドの影に隠れていたサム演じるショーン・アスティンだ。フロドの印象が稀薄になったこともあって、今回はキメのセリフもかなり多いオイシイ役回りになっている。これは儲け役かも。

 今回新登場のキャラも数々あるが、とりあえずの注目株はエオウィン役のミランダ・オットーだろう。オーストラリア出身のこの女優は、「ラブ・セレナーデ」「女と女と井戸の中」で注目されてアメリカ映画にも進出。「シン・レッド・ライン」の小さな役から「ホワット・ライズ・ビニース」にも起用された。今回の出番は少なく大して活躍もしていないが、続く第三作できっと目立ってくるのだろう。

 そして戦いに次ぐ戦いのこの第二部だけど、決して今回も対立こそを賛美している訳ではないことだけは押さえておかねばいけないね。もうどの国もアテには出来ないと、他者への不信に凝り固まって援軍を求めないローハン国王。だがそんな崖っぷちに追いつめられた人間たちに、間際に思わぬ援軍が現れる。それが異種族エルフの軍勢であったことは象徴的だ。姿形も立場も人間とは異なるエルフ族、愚かな人間に愛想を尽かしたはずのエルフ族こそが、最後に勝ち目のない戦さの助っ人に駆けつけるあたり、そしてゴンドールの都でサムが延々と「希望を捨てないこと」を呼びかける長台詞に、実は今回の作品のポイントがある。そこには人としてのかくあるべき連帯の模索と、最後まで信じ続けることの大切さという、前作に通じるメッセージが確かに踏襲されているはずだ。

 ともあれ、この映画を一作づつバラして語るのは大して面白いことではない。特にこの二作目はなおさらだ。だから、第三作の登場を首を長くして待ちたいと思う。三本一気に見ようとは、さすがに思わないけどね(笑)。

 

 

「ロード・オブ・ザ・リング」第三部へつづく

 

 

 

 

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