「バイオハザード」

  Resident Evil

 (2002/10/07)


薄汚ねえコソ泥野郎は誰だ?

 先日の札幌市の西友元町店での返金騒ぎほど、ウンザリさせられた事件もなかったよねぇ。

 事件のあらましはみなさんよくご存じだろうが、ここでおさらいさせてもらおうか。輸入豚肉などを国産と偽装して売っていた札幌・西友元町店が、言ってしまえばダマして売ったお客にその代金を返すことになったのが発端。ところがこの返金に「客」が押しかけて、しまいには警備員に暴行をはたらくまでに発展したというお話。いやはや、何とも情ないお話だ。

 確かにダマした西友元町店は悪い。雪印といい日本ハムといい、企業モラルがいまや地に墜ちている。けしからん…と、まぁそんなことはいくらでも言える。

 だけど、返金するとなったら「客」が殺到。返金した金が実際に売った代金の3倍から4倍にまでなってしまったというのはどういうことなんだよ。当り前の話だが、買ってもいない奴が金をチョロまかしたってことに決まっているよな。あるいは買ったことは買ったが、実際の買った金額よりもかるかに多い金額を「返金」してもらったことになる。

 つまりこれってドロボウってことだよな。

 まったく呆れ果てるにはこの段階でも充分だ。警備員に殴る蹴るってのも何を考えているのか分からないが、この暴行事件で逮捕された若僧は、案の定、肉など買っていないと白状した。そりゃあそうだろう。

 だって返金に殺到したのは圧倒的にこうした若僧だっていうじゃないか。若造ばっかり肉なんか買うか? しかもずうずうしくインタビューに答えてる奴までいて、買った金額も5万だ10万だとホザいてる。買うわけないだろオメエらが。肉買うってツラか。これにはマイったぜ。

 何にマイったかって? 平気でドロボウ行為を行なうこと自体にか? そりゃあもちろんそうだ。ドロボウ、ユスリ、タカリ…何と言ってもこりゃ犯罪なんだよね。マトモな奴はそんなことやらねえんだよ。こんな奴らに真っ当なことをいっても仕方がないが、それにしたって少しは情ないとは思わないのか。僕が言いたいのは、むしろそっちの方だ。

 返金に来た連中は若い連中ばっか。どう考えてもオカシイわな。それに実際の代金の何倍も返金したという事実は、この連中の大半がドロボウだということを表わしている。実際に返金してもらいに来た人だっていただろうが、こう言っちゃ悪いが傍から見れば大半の連中はそういう目で見られるのは仕方ないよね。

 でも、こいつらちっとも引け目感じてないわけよ。それどころかインタビューに答えてる。店員の対応が悪いとか何とか文句言ってる奴までいる。おまけに平気で何万ぶんも肉買ったなんて言っている。いや、いや、確かにそれは本当かもしれない。だが、あそこの取材に映った人々のうちに、確実にドロボウは紛れこんでいたわけだし、シラジラしいことを言った奴だっていた。そもそも、あそこにいたらそういう目で見られるのは必至だ。それは間違いないだろう? ここまでで俺が政治的に間違ったことを言っている部分はないよな(笑)?

 なのに彼らは平気でいた。それどころか、たまりかねた店側が返金を早めに打ち切ると、「早い者勝ちかよ!」と怒号まで飛んだという。それってオメエら何か?…早い奴だけネコババ出来て俺たちには分け前なしかよ…って意味か? テメエらそんな事をよくもまぁシャアシャアとでけえ声出して言えるな。

 盗人猛々しいとはよく言う言葉だが、僕はねぇ、この若造どものこのフザケた振る舞いって、そういう事ではないんじゃないかと思っているんだよ。そもそも悪い事だと思ってないのだ。

 カネをくれるんだから、もらう。自分にその資格があるかないかでなくて、もらえるチャンスがあるのだから、当然もらう。自分が欲しいものなら理由はどうあれ、もらう。人がそれでどんな目に合おうと、もらう。しかも、もらえないとなれば諦めるどころか、それを当然の自分の権利として要求してまで、もらう。そうすることがオカシイなんてこれっぽっちも思わず、自分が間違っているなんて夢にも思わず、もらう。もらえないなんて、理解できないし我慢できない。だって、自分が欲しいものをもらうことの、どこがおかしいんだ! この徹頭徹尾テメエさえ良ければいい、テメエが正しい…という揺るぎなさが、こいつら全員に蔓延していると思うんだよね。

 だけど、それってこいつらだけか?

 他人はどうなっても自分さえ良ければいい。自分の欲望を満たすことが善で、自分の主張は常に正しいから何としても通さねばならない。それが満たされないなんて耐えられない。だからそのためには手段を選ばないし、そのことを全く恥じる理由もない。なぜなら、常に自分さえ良ければいいから…の堂々めぐり。

 これってそもそもの発端の西友元町店もそうだし、雪印も日ハムも東京電力も、小泉も外務省も北朝鮮も、ブッシュもフセインも、自分の回りを見渡してみたってどいつもこいつも…そう、君も、そしてもちろん僕だって!

 みんな西友元町店で買ってもいない肉の代金をくすねている、薄汚ねえコソ泥野郎じゃないのか?

 

地下の研究施設を襲った恐怖

 ここは近未来の札幌。そこで偉容を誇る西友は、スーパーの他にもコンピュータやメディカルなどさまざまな分野で圧倒的なシェアを誇る巨大企業だった。その中には、実は人には言えないヤバイ仕事もあった。

 その札幌の地下深くに人知れずつくられた巨大な研究施設…それが西友元町店だった。そこで西友は、輸入肉を国産と偽ったりするような悪い研究を続けていた。そんなある日、あるワクチンが西友元町店から盗まれた。盗んだ賊は、逃げる途中でそのワクチンのうちの一つを元町店店内にバラまいた。

 たちまち元町店のセキュリティー・システムが作動。突然スプリンクラーが放水を始め、店内のあちこちで扉がロックされた。中にいる職員たちは最初は避難訓練だとタカをくくっていたが、どこからも出られないと気づいてパニック状態。しかもスプリンクラーの水は止まらない上に、部屋が完全に閉鎖されているため溺れるやら、逃げ場を失った人々の上からガスが浴びせられるわで、みんなバタバタと倒れていく。運良くエレベーターに乗れたと安心していた人々も、エレベーターのワイヤーが切られて真っ逆さま。店内の人間はすべて殺されてしまった。

 その頃、美女ミラ・ジョボヴィッチは素っ裸のサービスカットで、シャワールームに倒れていた。眼を覚ました彼女にはまるで記憶がない。でっかいお屋敷の中はがらんどうだ。結婚式の写真などもあって、どうやら自分は人妻らしいと分かったものの、自分が今なぜここにいるのかが分からない。ところが突然一人の男が現れて、彼女を屋敷に引っ張り込んだ。と、思ったら、今度はSWATみたいに武装した集団がなだれ込み、ミラジョボを屋敷に引きずりこんだ男を捕まえた。なんだなんだ、どうなってるんだ。

 コリン・サーモンを隊長とする一団は、有無を言わせずにミラジョボと彼女の前に現れた男を連れていく。男はエリック・メビウスという刑事だと名乗ったが、誰もそんなこと気にしてない。すると、屋敷の中に隠し扉があるではないか。そこから一団は地下の巨大な駅のような場所に乗り込んだ。そこには巨大な列車が一台停まっていた。

 一同が地下列車に乗りこむと、そこにはまた一人の男、ジェームズ・ピュアホイが隠れていた。だが、この男も記憶を失っている。だが、ミラジョボは彼に見覚えがあった。屋敷にあった結婚式の写真、そこで自分の夫だった男がこのピュアホイだった。

 一同は列車に乗ってどこかへ行こうとしている。何よどうしたの一体どうなってるのと騒ぐミラジョボに、サーモン隊長は事の次第をかいつまんで説明した。

 札幌の地下に西友が秘かに建設した研究施設・西友元町店で非常事態が発生して、メイン・コンピュータのレッド・クイーンが店内を閉鎖、店にいた全員を殺した。サーモン隊長をはじめとする彼らは西友の保安部隊で、元町店内に潜入してコンピュータのレッド・クイーンの機能を停止する命を帯びているというのだ。その元町店に入り込むための秘密通路の入口が先ほどの屋敷。ミラジョボとピュアホイは屋敷に住む夫婦になりすまし、入口を警備する保安部隊の一員だった。そんなこと急に言われたって…。

 ガランとした店内に入り込んだ一同は、食堂であるはずの巨大な空間にやって来たが、そこは大きなタンクがいくつも設置された殺風景な場所。しかもそのタンクには、得体の知れない何かがうごめいていたのだが…。

 ともかくはコンピュータのレッド・クイーンを機能停止しなければ。サーモン隊長は何人かの隊員をこの「食堂」に残し、自分とミラジョボ、ピュアホイと何人かの隊員を連れて、コンピュータ・ルームへ。コンピュータの心臓部へ高圧電流を流して機能を止めようというわけだ。

 ところがサーモン隊長と何人かの隊員がコンピュータの心臓部に近づいて行ったところ、突然その通路で扉が閉まって閉じこめられた。慌てた隊員のマーティン・クルーズが西友の誇る保安装システムをいじくるが、どうもレッド・クイーンは自分に危害を加える相手を撃退する機能を備えているらしい。すると閉じこめられたサーモン隊長たちに目がけて、レーザー・ビームがすごい速度で近づいてくるではないか。うわっ、指チョン切られた! あれっ、隊員の一人は首チョンパだ!

 大変だとクルーズはあちこちいじって保安システムを解除しようと骨折るが、レーザー・ビームは次々と襲ってくる。ほれ、手羽先一丁。そら、切り身一丁。いよいよ隊長一人になって、さぁどうなると思いきや、レーザー・ビームは網の目のように広がるではないか。そ〜ら、隊長サーモンはズタズタにされて、サイコロ・ステーキの出来上がり〜。さっすが西友、肉にはうるさいね

 結局、何とかクルーズが保安システムを解除した時には手遅れ。閉じこめられた隊員は全員あの世行きと相成った。

 すっかり出鼻をくじかれてビビりまくるクルーズだが、とにかく命令通りコンピュータのレッド・クイーンを停止させねばならない。さぁ止めようとした矢先、レッド・クイーンのイメージがホログラム映像で現れて、クルーズやミラジョボたちの前に現れた。それは幼い女の子の映像だ。「私を止めないで! 止めたらあなたたちは一人も外に出られないわよ

 やかましい! コンピュータを停止した彼らは、慌ててその場を離れた。だが、コンピュータの停止によって、閉鎖されていたあちこちの扉が開き、結果としてとんでもないことになろうとは一同のうち誰もがまだ知らなかった。

 さてその頃「食堂」では、女だてらにコワモテのミシェル・ロドリゲス隊員や自称「刑事」のメビウスなどが待機中。ところがそこにいきなり、フラフラと研究所員らしき人物が現れた。生存者かとロドリゲスが駆け寄ると、そいつはいきなり襲いかかって彼女に噛みつくじゃないか。イッテテ〜!

 ふざけんな、近寄ると撃つよ!…と脅しても効果なし。仕方なく足を撃ってもビクともしない。何だこいつは? しょうがなくて胸板に一発お見舞いしたら、さすがにぶっ倒れて動かなくなった。でも、生存者を撃っちゃってよかったの?

 そこにクルーズ、ミラジョボ、ピュアホイが戻ってきた。ロドリゲスが生存者を撃っちゃったと聞いてびっくりの一同だが、ロドリゲスはロドリゲスで隊長たちがみな死んだと聞いて呆然。一体何やってるんだと怒鳴り合っているうち、いつの間にか撃ったはずの「生存者」の姿がなくなっているのに気がついた。あれれ? 一体どうしちゃったんだ。

 するとあちらこちらから、フラフラフラフラ、「生存者」らしき連中が現れてくるじゃないか。でも、どうも様子が変だ。中には顔がブッつぶれたり引きちぎれたり、どう見てもゾンビ状態の連中がいる。第一こいつら揃いも揃って表情はうつろだし顔色も悪い。マトモな人間とは思えない。そして口々につぶやく言葉もおかしな文句だ。

 にく〜、ニク〜、肉〜。肉の代金くれ〜。

 それもハンパな数ではない。すさまじい数の「生存者」たちが、彼ら目がけてやって来るのだ。

 肉の代金くれ〜。金をくれ〜。俺は牛肉5万円ぶん買ったから、その代金返せ〜。

 間違いない。こいつらマトモな人間じゃない。亡者だ。それも薄汚い思惑に目がくらんだ、「金の亡者」たちだ。だが、一同はいつの間にかこの「亡者」たちに取り囲まれていた。こうなりゃ構ってられねえ。大体、カネ金かねって意地汚ねえ奴らじゃねえか。どうせこいつらは人間じゃねえんだ。メタメタに叩きのめしちまえ〜っ!

 バンバン、ドッカンドッカン撃ちまくる。バタバタ倒れる「亡者」たち。だがこいつら、やっと列から離れたと思ったら、またいつの間にか服を着替え別人になりすまして列に並び直すタチの悪さだ。これじゃキリがない。ふざけるな、現金払い戻しはこれまでだぞ〜っ!

 か〜ね〜、カ〜ネ〜、早い者勝ちかよ〜、払えよカ〜ネ〜。

 どんなヤツにも一律三万円は払うんだろ〜。

 ダメだ、言うことを聞きやしない。いくら撃ってもキリがない。やっとエレベーターの所までたどり着いても、開いたエレベーターにこれまたワンサカ「亡者」たちが乗っていた。気の毒に隊員の一人は、その「亡者」たちに飲み込まれて、あわれ食い物にされる始末だ。

 に〜く〜、ニ〜ク〜、肉の金くれ〜。

 こうなりゃもっともっと撃つしかない。だがハデな銃撃繰り返すうちに、タンクに弾が当たって爆発が起こったからたまらない。

 ドッカ〜ン!

 開いたタンクから何者かが外に飛び出したが、それを見た者は誰もいない。だが、この爆発で恐れを成したか、例の金の…いや、肉の「亡者」たちはみなどこかに姿を消してしまった。

 隊員たちも散り散りにはぐれた。一人になったミラジョボは、やはり「亡者」と化した猛犬と大立ち回り。この身のこなし…やっぱり私は保安隊員だったんだわ。

 そのうちミラジョボは、やはり一人はぐれて何かを探っている「刑事」メビウスと出っくわした。実はメビウス、案の定刑事ではなかった。彼は西友の悪事を暴くべく、内部に自分の妹を潜入させて探らせていたのだ。だが、悲惨なことに彼女もここに閉じこめられ、細菌に侵され「亡者」と化してしまった。そして兄のメビウスに襲いかかってきたため、やむなく殺さざるを得なくなったのだが…。

 西友の悪事を白日の下にさらそうと、メビウスと妹は秘かに計画を立てていた。そして輸入肉と国産肉のすり替えの事実と共に、西友が軍事目的で開発していた細菌兵器を盗み出す手はずだったのだ。そのために、妹は内部の誰かとコンタクトをとっていた。今回の事件はその内部協力者が裏切って起こしたものではないのか?

 その話を聞いた時、ミラジョボは内心穏やかでないものを感じた。とぎれとぎれの記憶の中で、このメビウスの妹と自分が会っていたことを思い出していたのだ。では、ひょっとしたら自分が裏切り者なのか? 自分がこの事件のすべての元凶だったのか?

 ともかく、その場を逃れたミラジョボとメビウスは、何とかロドリゲス、クルーズやピュアホイと合流。だが、「亡者」たちはドンドン彼らに迫ってくる。

 俺は〜キャンプでバーベキュー用に〜7万円ぶん買った〜。

 俺は〜焼き肉用に〜10万買った〜。

 俺なんか〜97万円ぶんも肉買ったぞ〜。どうやって食ったか分からねえけど〜。

 払え〜払え〜、俺たちに〜肉の代金払え〜。

 このままじゃどうにもならない。一同は再びコンピュータを起動させることにした。コンピュータに逃げ道を教えてもらうのだ。途中いろいろあったものの、一同は何とかレッド・クイーンの部屋までたどり着いた。早速コンピュータを再起動させると、例の女の子の声が得意げに話しかけてくる。

 「ホ〜ラ言わんこっちゃない。だから全額レシートなしで返金しちゃダメだって言ったのに」

 ロドリゲスなんかこのクソ生意気なガキの口調に怒り心頭だが、それを何とかなだめて改めてコンピュータに尋ねる。あいつらは一体何なんだ?

 「ここで開発した細菌兵器で死んだ連中よ。彼らはもう死んでいて、脳は働いてないの。ただ一番原始的な本能で動いているだけよ」

 な〜るほど、道理で金カネかねって意地汚ねえわけだ。どいつもこいつも脳味噌からっきし動いてなさそうだしな。それじゃ常識も恥も外聞も期待するほうが無理ってことだな。

 だがここでレッド・クイーンから、「亡者」に噛まれた人間も感染すると聞いたロドリゲスは、思いっきり暗くならざるを得ない。彼女は真っ先に連中に手をガブリと噛まれていたのだ。

 ともかくこうしてはいられない。レッド・クイーンから逃げ道を聞いて、一同は地下通路を一路脱出路へと急いだ。

 だが、そこでも「亡者」たちが列をつくって待っていたところだ。一同が通りかかったのを嗅ぎつけ、もの凄い数の大群が押し寄せてくる。

 肉〜、ニク〜、にく〜、肉の金を払え〜。

 このドロボー猫どもの悪ノリぶりには、さすがに怯えきっていたはずのミラジョボもロドリゲスも堪忍袋の緒が切れた。ブチギレ状態の勢いに任せて、押し寄せるゲス野郎カス下郎どもを片っ端から叩きつぶしまくり始めた。テメエらナメんじゃねえ、このクソガキどもめが〜!

 こ〜のドぐされ亡者ども、肉も買ってないくせにネコババしやがって〜!…と、首の骨をボキリ。

 ふざけんな、テレビの取材にも平気で出てきやがって〜!…と、眉間に弾丸を一発。

 てめえらがバーベキューって柄かよ、ツラを見て出なおせバカ野郎〜!…と背骨をバキリ。

 よくも恥ずかしくもなく金をネコババ出来るな、この人でなしが〜!…と後頭部を一撃。

 店員の対応が悪いだと? ゆすりタカりのウジ虫野郎どもの分際で〜!…と脳天を直撃。

 そうだそうだ、もっとやれ! みんな君たちの味方だぞ。こんなヤツらは所詮もはや人間ではない。いくら痛めつけても構わない。情け容赦などするな。どいつもこいつもギッタンギッタンに、テメエのやったことのロクでもなさを思い知るまで叩きのめしてやれ〜っ!

 中には調子に乗って警備員に襲いかかるバカまで出てきて、捕まって肉買ってなんかいないこと白状させられるテイタラク。ほら見ろ。おめえらどいつもこいつも肉なんか買ってやいないくせに!

 だが、何しろ多勢に無勢。たちまち売った代金の3倍以上払い戻すハメに陥って、ますます窮地に追い込まれる一同。

 慌てて天井近くに伸びるパイプの上に上がって逃げることになるが、「亡者」どもは悪ノリしてそのパイプまで引きずり倒して襲いかかってくる。ここで一同はクルーズとはぐれることになってしまった。

 いよいよ4人だけとなって心細さもいや増すばかり。これでいいのか日本は? ロドリゲスも毒が回ってきたのか、何だかグッタリしてきたぞ。

 その時、ミラジョボの脳裏に何かの残像がチラついた。そうだ、細菌兵器にはワクチンがあった。それは確かにこの近くの研究室にあったはずだ。ロドリゲスを励ましたくてそう明かしたミラジョボだが、その言葉をメビウスは聞き逃すはずもない。

 「君が裏切り者だったのか?」

 そうかもしれない。いや、そうではないのかも…ミラジョボの記憶はまだ不完全なものだった。ところがそんな彼女の記憶が戻って来た時、事態は新たな展開を見せるのだった…。

 

ゲーム映画に傑作なしのジンクスを超えて

 かの有名なゲームソフト「バイオハザード」の映画化…と言っても、ゲーム音痴の僕はやったことなんてない。ただ、ゾンビがウヨウヨ出てくるゲームということしか知らなかった。逆に言えば、そんな僕でも名前を知っているというわけだから、いかに有名かということになるんだろうが。

 正直言ってそんなゲームの映画化だからと言って、いや、ゲームの映画化だからこそ、見ようなんて気は全然起きやしない。主演がミラ・ジョボヴィッチと聞いても、正直言って「フィフス・エレメント」や「ジャンヌ・ダルク」での彼女に何の関心も湧かなかったから、全然見たい動機にはならない。いや、特に「ジャンヌ・ダルク」での彼女のヒステリー演技がうっとうしくてならなかったから、逆に見たくない要素にしかなっていなかった。それではなぜ見る気になったか? それはたった一点…この映画がポール・アンダーソン監督の新作だということに尽きる。

 ポール・アンダーソン…この映画ではなぜか名前と名字の間に「W.S.」という略号が入っているが、彼の名前は僕にとって、SFホラーの傑作「イベント・ホライゾン」の監督として記憶されているんだね。あの映画は素晴らしかった。SFファンの期待にも応えてくれたし、実はその中味は正統的、古典的怪奇映画のテイストが充満するものだったことも嬉しかった。遙か宇宙に打ち捨てられた宇宙船「イベント・ホライゾン号」を舞台にしたいかにもSFチックな設定にも関わらず、映画の骨子は実に昔ながらの話法に忠実な「お化け屋敷」モノ。怖くて、ハラハラドキドキして、面白い。これって近来のSFホラー映画でも屈指の作品と言えるんじゃないだろうか。

 彼はその後、カート・ラッセル主演のSFアクション「ザ・ソルジャー」も撮っている。これはさすがに「イベント・ホライゾン」ほどタイトな出来映えとは言い難かったが、「許されざる者」の脚本家デビッド・ウェブ・ピープルズの脚本を得て、ちょっと面白い作品に仕上がっていたんだね。そして今回の「バイオハザード」映画化ということになるわけ。ゲーム映画…というと多少の懸念もないわけではないが、僕がうっすら伝え聞く「バイオハザード」の世界を題材にするなら、きっと「イベント・ホライゾン」の怖くて面白い語り口を再現してくれるはずと思った。その期待は今回満たされたと言っていいね。

 上にゲーム映画に多少の懸念が…と書いたけど、それって故なきことじゃない。近年のハリウッドは企画の貧困からかゲームの映画化がやたら盛んだ。ゲーム世代が大きくなってきた事もあって、商売から言ってもゲーム映画はイケるんじゃないかとプロデューサーたちも考えているんだろう。だけど、僕が見る限りじゃゲーム映画に成功作ってまだないんじゃないか?

 「スーパー・マリオ」は見てないから分からないが、巷の評判は散々だったよね。「ストリート・ファイター」は、土曜の夜中にぼんやりとテレビで見ているぶんにはいいかな…くらいの出来映え。「48時間」「ダイ・ハード」の名脚本家スティーブン・デ・スーザの監督デビュー作にも関わらずこんなシロモノしか出来なかったんだから、やっぱりゲームの映画化って難しいのかもしれない。いくらゲームがビジュアル的に進歩したからと言って…いや、ビジュアル的に進歩すればするほど、映画とは似て非なるものなんじゃないだろうか。やっぱり一つのメディアである程度成功したものは、単にそのまま移して来たって映画のフォーマットに移し替えられるものじゃない。小説や戯曲はもちろん、マンガについてもある程度そのノウハウが確立してきたのか、最近では映画化作品に成功作が増えてきたが、おそらくはゲームについてはそのノウハウがまだ出来上がっていないのだろう。全編CGによる「ファイナル・ファンタジー」なんて珍品まで登場したものの、これも僕は未見ながらいい評判を聞いたことがない。それも映画ファン側からだけではなく、ゲームのファンからもも不評さくさくなんだから、きっと何かやり方を間違っていたんだろうね。

 唯一成功したのは「トゥームレイダー」ということになるんだろうか。しかしこれとても、主演のアンジェリーナ・ジョリーの体を張っての熱演が高く評価されたものの、作品としては誰もが評価を保留せざるを得ないんじゃないか。そういう意味で、ゲーム映画に傑作なしっていうのは一つの定評となりつつあると思うんだね。

 さて、今回の「バイオハザード」だ

 これってまずゲームのファンから高い評価を得ているみたいだ。ということは、ゲームの世界を維持しつつ、映画としての新味も盛り込んであるってことじゃないのかね。僕はアンダーソンの監督ということもあって、割と安心して見に行ったわけ。その期待は先にも述べたように、100パーセント裏切られなかった。

 怖い、ハラハラドキドキする、面白い。この評価は今度の「バイオハザード」にもピタリと当てはまる。特に都市の地下に大企業の秘密研究所があって、そこで軍需産業のよからぬ研究をしていたこと。それが恐怖の細菌兵器だったこと…。これらの最初の設定の説明の仕方が実にムダがなく、分かりやすく、スピーディー。だから観客はあれよあれよと言う間に作品の世界に馴染んでしまう。しかも主人公が記憶を喪失していること、一緒に研究所内に乗り込んだ保安部隊の連中も事情を教えられてなかったこと…から、観客は彼らと共に裏の事情に触れていき、物語の進行と共に真相を知っていく。この脚本と演出の語り口は見事だ。先の興味を持たされつつ、最後まで映画に引き込まれて見続けることが出来る。こうした作品のお約束を伝えるという点で、たぶんゲームと映画はうまくシンクロしないんじゃないかとずっと思ってきたから、このあたりの手さばきの見事さにはうなったね。

 怖い状況をつくり出し、脅かしとハラハラを交互に繰り出す手腕も「イベント・ホライゾン」のアンダーソンならでは。実は今回劇場パンフレットを見て、アンダーソンが以前にやはりゲーム映画の「モータル・コンバット」をつくっていたことを知った。これもひょっとしたら面白いんじゃないか。先に楽しみが増えたよ。

 この映画をつくったプロデューサーがドイツのベルント・アイヒンガーだというのも注目したいね。「ネバーエンディング・ストーリー」以来、「薔薇の名前」、「愛と精霊の家」…と、ドイツ、そしてヨーロッパ発の世界的娯楽大作を連発するこの人ならではの企画じゃないか。今回も東ドイツ地区に建設途上だった地下鉄駅を使っての撮影など、やはりどこか根っこをヨーロッパに置いての制作姿勢で頑張っている様子が好ましいね。

 で、最も驚いた今回の見どころは、何と主役のミラ・ジョボヴィッチが良かったということなんだよ。「ジャンヌ・ダルク」以降、ハッキリ言ってこの人の顔をスクリーンで見たくないとうのが正直な気持ちだったが、今回はなかなかいい。劇中二回ほど出てくるほとんどヌードのサービス・カットはどうでもいい。元々どこかミステリアスな顔を持っている彼女が、この映画の世界にピッタリ。そしてとにかくよく動く動く。アクションも素晴らしいが、銃を持ったり戦ったりの、彼女の立ち姿がピタッと決まってる。これには正直言って惚れ惚れした。「ゴースト・オブ・マーズ」のナターシャ・ヘンストリッジの時も感心したんだが、ミラ・ジョボヴィッチのアクション・ヒロインへの変貌が何とも言えず素晴らしかったね。これで活劇映画としての基本がキッチリと出来上がったよ。しかも、戦ううちに隊員ミシェル・ロドリゲスへの共感と同情が湧いていくあたりの感情表現や、終盤近くの裏切り者へのハードな態度など、思わず「やってくれるぜ」とニヤリとしてしまう天晴れな役者ぶりだ。これはお世辞じゃないよ。

 とにかく見ている間は文字通り手に汗握る出来映えだ。見る前に多少むしゃくしゃした事があったとしても、見ている間にはサッパリ忘れ去って、見終わった時には気分も晴れ晴れしていることは請け合い。まさに娯楽映画の基本、お手本とも言うべき仕上がりになっていた。

 映画って…特に娯楽映画って、見ている間はお客さんを別の世界に連れていってくれるもの。そういう映画が見たい人は迷わずこれを見て欲しい。日常のウサを忘れるよ。え、人間ドラマだって? 人生哲学だって? 深い思想だって? あんた、一体何を言いたいの?

 これ以上の映画の「深み」ってあるかい。スクリーンで2時間の旅が出来るってこと以上の「深み」がさ。

 

 

 

 

 

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