「ゴシップ」

 (ジェイムズ・マーズデン主演)

  Gossip

 (2002/09/09)


アメリカン・バブルの崩壊に思う

 先日、仕事の関係で本屋で雑誌をいろいろ物色してたわけ。実はそれらに掲載されている広告を見てみたかったんだけど、これがまた予想外のことに気づいたんだよね。

 広告が少ない。

 かつてはドッサリと雑誌の内容以上に目だっていた広告が、本当に数えるほどしかない。雑誌によっては相変わらずというものも少なくないよ。でも本当に全体を見渡してみると、広告が激減していることが分かる。

 まぁ、世の中万事せちがらくなってはいるから、読者も昔みたいに広告買わされてるような雑誌は見向きもしなくなったという事もあるだろう。だが、それより何より、肝心の広告を出す客そのものが減ってきたってことはあるんじゃないか。

 だけどこれって雑誌の儲けで大きなウエイトを占めていた広告収入の減退につながるわけだから、かなり苦しいことだと思うよ。売れない雑誌が次々廃刊するわけだ。

 それもこれも、やっぱり今の日本の景気がドン底状態にあるってことなんだろうね。

 バブル以降は全然いいことないわけだから、景気が回復するわけがない。無理もないって言えばその通りなんだけどさ。

 そこへ来て、ここ数年いわゆるバブル状態だったアメリカの様子もおかしくなった。あっちもバブル崩壊だ。でも、実はそんなの我々日本人ならみんなお見通しだったはず。経済学者でなくたって、どうなるか想像ついたけどね。だってあのバブル絶頂期の日本と、まったく同じようにしかみえなかったもの。

 何年か前にテレビで観たアメリカのバブルの様子は、本当に絵に描いたように日本と同じだった。みんなが株に手を出す。ヨットやら高級車をバンバン買う。「やっぱりいい物買わないとねぇ」なんて普通の勤め人みたいなオヤジがヌカす。学校の先生みたいな実直そうな人まで、一発たまたま株で当てたもんだから、仕事を辞めて朝から晩まで株式市場をにらめっこ。「今は損する気がしませんよ」などと豪語。バカだねぇ、こんな奴しょせんは素人。最初こそ稼がせてくれるけど、そのうちケツの毛まで抜かれるに決まってる。こいつら、今はみんなどうなっているんだろ? 考えてみるだに恐ろしい。

 あんな「株で損する気がしない」なんてバカな戯言、日本人ならあの時点で誰もが幻影だって分かったよ。どうしてそんなに奴らはバカだったのか? でも、ああいったバブリーな時代の空気の中で、実は誰もがマトモでなんていられないんだね。それは金銭的な面だけでなく、価値観やら感情やら人間関係やら、物事すべてに対しておかしくなっちゃうんだろう。我々日本人だってその時点ではバブルを通過しちゃったから分かったんであって、自分たちが真只中の時には同じようにクルクルパーになっていたよね。

 自分たちがどこかおかしいということは、傍で見ればどんなに明白な事でもおかしくなっている当人には分からないものなんだよね。

 

傲慢なガキどもが流した流言飛語

 キャンパス内の図書館で勉強に取り組むメガネの女子大生リーナ・ヒーディー。しかし彼女もそのメガネをはずしてぐっとドレスアップしてクラブに出かければ、今時遊び人ギャルに早変わり。彼女とて人生を大いにエンジョイしようというそこらの若いネエチャンと大して変わらない。そんな彼女を迎えるのはいいとこのボンボンで典型的二枚目のジェームズ・マーズデンと、ちょいと影のある芸術家肌のノーマン・リーダスの二人組。彼らは同じキャンパスに通う同居人だ。いや、正確に言うとヒーディーとリーダスは、お金持ちボンボンのマーズデンが借りている豪華ロフトに住まわせてもらっている身。キャンパスで意気投合し、同居することになった幸運な連中だ。まぁ、そう言えば聞えはいいが、マトモな世間じゃたかりとも言うが…。ではこの三人に男と女のナニがあるやなしやと言えば、ボンボンのマーズデンは女の手癖の悪さで有名な男だが、ヒーディーとは一線を画している。ここでナニやらやらかしたら楽しい三人の関係がおかしくなると、ヒーディーもわきまえているつもりだ。そして特に万年金欠で苦しんでいる自称芸術家の卵リーダスには、家賃もいらないというマーズデンのバックアップは有り難い。ヒーディーだって家賃を納めていると言ったところで二束三文に違いない。住むところと金銭面で心配する事のない三人は、夜な夜な酒とバカ騒ぎに明け暮れていた。

 こと若いうちは悪ふざけに興じるもの。今日も今日とてバーにくり出した三人は、例によって例のごとくちょっとしたおふざけをやらかす。女をナンパしに席を立ったリーダスを肴にウソ八百並べるマーズデンは、ウソを言わせれば天下一品。リーダスをロックスターの一粒種で孤独な青年と偽って、バーテンの同情を買ってしこたまタダ酒をくらう。そんな悪ふざけをヒーディーですら大いに楽しんでいた。

 そんな彼らが受講するのは、エリック・ボゴシアン教授のジャーナリズムの授業。今日は「現代のニュースとゴシップとの違い」について。ボゴシアン教授に指されて答えに窮する女生徒を横目に、知ったかぶり訳知りのいつもの調子で一席ぶつマーズデン。この男、確かに外見と富と頭と、天が二物も三物も与えた男に違いない。そんな彼の様子にちょっぴり尊敬さえ感じるヒーディー。さよう、外見と富と頭は女が無条件で求めているものだ。それがすべてと言ってもいい。変わり者ゆえ人からは疎まれることも多いリーダスは、そんなマーズデンをうらやむこともある。だがそんなリーダスの芸術に理解を示し、バックアップを惜しまないマーズデンは、やっぱりリーダスにとって一番の友人に違いないのだ。

 さてその夜、パーティーにくり出した三人。ボゴシアン教授の授業のテーマに刺激されたか、マーズデンはちょっと刺激的な提案をする。人為的にゴシップを流した場合、それはどのように伝染していくか? はたまたどのようにゴシップは変化していくか? 確かにそれはヒーディーにとってもリーダスにとっても興味そそるテーマではあった。ゴシップはみんな好き、ゴシップは今やニュースと同じ事。それを実証するチャンスではないか。低次元の回りの人間たちと違って自分たちはちょいとハイレベルと思ってる彼らには、何ともお楽しみの多そうなテーマだ。それが何の事はないゲスの考えだなんてことは、こいつらには思い付かない

 そんなパーティーたけなわの折りもおり、キャンパスでも評判の美女ケイト・ハドソンが、ウワサの彼氏ジョシュア・ジャクソンを伴って高級車でお着きだ。父親が有力な政治家というハドソンは、お高くてしかも身持ちが堅いともっぱらの評判。だから、今日のお供のジャクソンだってモノには出来まい。

 今でこそリッチな暮らしにありつけてるヒーディーも、元はと言えばさほど豊かな家の出ではない。だから彼女はロクに口もきいたことがないのに、知らず知らずのうちにハドソンを毛嫌いしていた。そんなイヤ〜な感じはちゃんと人に伝わるもの。悪意の視線にハドソンも何となく身構える。おまけにハドソン、ヒーディーの友人マリサ・コフランに、ヒーディーとボゴシアン教授の仲をそれとなく匂わせたから怒りもひとしおだ。

 一方マーズデンはと言えば、パーティーの喧噪を逃れてバスルームにシケこみ、彼にぞっこんの美女としっぽりの真っ最中。ところが彼女、酒を飲み過ぎてか具合が悪くなる。そんな彼女を介抱するうち、奥のベッドルームに誰かがやって来たのに気がついた。

 ハドソンとジャクソンだ。

 ベッドにハドソンを押し倒して迫るジャクソン。いいだろいいだろとベタつくジャクソンに、何だかんだとハドソンは拒む。そうは言うものの、ハドソンもそう悪い気はしてないらしい。二人に気づかれたと思って隠れるマーズデンだが、しばらくするとベッドルームからジャクソンは出ていった。マーズデンがコッソリとベッドルームに忍び込むと、ハドソンはぐっすり眠り込んでいた。どうやらジャクソンは、ハドソンが寝込んだために未遂で終わったらしい。そんなハドソンを見つめるマーズデンは、一体何を思ったのか…。

 一方、ベッドルームを出ていったジャクソンは、仲間に「やったのか」と聞かれて返事をはぐらかす。その後、やはりベッドルームから出てきたマーズデンは、ヒーディーの元にやって来て事の次第を告げた。ハドソンとジャクソンがベッドルームにやって来たが未遂で終わったこと、ハドソンは眠ってしまったこと…。「奴らがネタだ。これでゴシップを広めるぞ」

 泥酔するリーダスを引っ張って家まで戻ってきたマーズデンとヒーディー。妖しげな雰囲気になりそうになる二人だが、最後にはヒーディーが一線を退いた。かくして今夜も微妙なバランスを保ったまま終わった二人だが…。

 翌朝、早速三人は作戦会議だ。昨夜は大いに乗り気だったヒーディーだが、いざ実行ということになると急に腰が退ける。やはり悪者にはなりたくないのだ。だが、そんな彼女の気持ちなどマーズデンは見透かしていた。本当はハドソンに一矢報いたい気がアリアリ。手は汚さずにオイシイ思いだけしたい、彼女ならではの偽善体質が見え隠れしてる。だがそんな彼女を説得するなど、口八丁のマーズデンにはお手のもの。彼一流のあふれる自信で、「いやよいやよ」と言ってる女も自分に理屈がつく言い訳さえありゃ何でもやるんだよ…とでも確信しているのか、マーズデンは何だかんだとうまい文句並べて彼女を言いくるめる。かくしてヒーディーがキャンパスで第一声を発することになった

 まず、いかにも口が軽そうな友人のコフランにそれとなくウワサを流す。ハドソンがジャクソンとついに寝た…そんなたわいもないウワサ話はたちまちキャンパスを駆けめぐった。ただ広まるだけではない。彼女が黒いブラを着けていたとか、口で何やらイタしたとか、元々彼女はヤリ××だったとか…あること無いこと、いや無いこと無いことがドンドン広まる。これにはヒーディーもマーズデンもリーダスも笑いが止まらない。そんなウワサは当然ハドソン本人にも耳に入る。彼女はてっきりジャクソンが勝手な話を仲間内にしたものと決めつけ、ヒーディーがバイトで働く店でも大喧嘩。そんな彼女の姿を見て、ヒーディーは「してやったり」と満足げに微笑む。確かにこの時点までは彼女も笑っていられた。

 ところが流言飛語はますます尾ひれをつけて広まっていった。何と彼女が犯されたという話にまで発展し始めたのだ。これにはさすがに行き過ぎだとビビるヒーディーだったが、マーズデンもリーダスも「単なる世間話」と片づけて一向に動じない。リーダスなど、今回のゴシップ騒ぎに大いに創作意欲をかき立てられて、ハドソンをモチーフにした巨大オブジェをつくり出す始末だ。

 だが、話はそこで止まらなかった。友人に問いつめられたハドソンも、ウワサ話に自分の記憶がぐらついていったのだ。何をされたかは眠っていたから分からない。でも、何かされたなら本人なら分かるはずとまで言われて、ハドソンの心の中に疑念が生まれた。彼女は思いあまって警察に相談に行き、ついにキャンパス内に警官が現れてジャクソンを事情聴取するところまで発展した。

 

 

 

 

 

 

 

 

ここからは映画を見てから!

 

 

 

 

 

 

 

 

 もうみんなジャクソンが強姦犯人だと思い込んでいる。ジャクソンが肝心のハドソンに話をしようにも、彼女は頑なになって顔を合わせようともしない。これはいくら何でも行き過ぎだ。今ごろになって事の重大さに気付いたヒーディーは、一念発起して大学寮内のハドソンの部屋を訪れた。

 最初は思わぬ訪問客に驚き、表情も固いハドソン。無理もない二人の仲は疎遠どころか、元々嫌い合っていた仲でもある。ヒーディーはさすがに自分がゴシップの震源地だとは告白できず、レイプの件は真実かと問いただす。そんなあまりに率直な問いにかえって警戒心を解いたか、ハドソンは彼女に初めて親しみのある表情を見せた。そんな時…。

 ヒーディーがマーズデンの知り合いであることを知ったハドソンは、突如過敏に反応した。怒りを露わにした彼女は、ヒーディーを物凄い剣幕で部屋から追い出すではないか。

 一体、ハドソンとマーズデンには何があったのか?

 マーズデンに問いただしてもラチが明かない。逆に丸め込まれたヒーディーは、何とそれまで頑なに守っていたマーズデンとの男と女の一線を超えてしまう。実のところ、元からマーズデンに食べられたがっていたヒーディーだから、これは時間の問題だった。だが、そうなればなったで余計に彼の過去が気になる。思い詰めたヒーディーはハドソンとマーズデンの過去に何か関係がアリと見て、ハドソンの卒業した高校に調べに行った。

 何とマーズデンはハドソンと同じ高校の卒業生だった。しかも卒業アルバムを調べていくうち、ヒーディーは驚愕の事実を知った。マーズデンとハドソンはどうも恋仲だったようなのだ

 ところがこの学校でハドソンの名前を出すと、みんな怯えたような表情で口を閉ざす。それでも何とか学校職員の一人を捕まえて話を聞いたヒーディーは、さらに驚くべき事実を知った。

 恋仲だったマーズデンとハドソン。だが、ある時その事件は起こった。何とマーズデンがハドソンをレイプしたというのだ。当然大問題になるところを、マーズデンの家がその財力にモノを言わせて揉み消したというのだ。

 この事実を知ったヒーディーは怒り心頭。リーダスのいる前でマーズデンに声を荒げて問いただした。

 「あなたは彼女を知っていて、わざとウワサを広めたのね!

 最初こそマーズデンはトボけていた。それも自分たちが広めたウソ話と同じ、「ゴシップ」ではないかと。痛いところを突かれたヒーディーではあったが、ここは一歩も退くつもりもない。そんな彼女の激しい追及に、ついにマーズデンも根負けした。

 確かに彼らが広めたウワサは、マーズデンが故意で広めたものだった。だがハドソンは元々情緒不安定で、何でも過敏に反応するヒステリー女だと言うのだ。「今回だってやられてもいないレイプをあったと騒いでいるだろう?」

 マーズデンに言わせれば、この高校時代の濡れ衣レイプ事件で彼の信用はガタ落ち。家にいられなくなってこのロフトに一人暮らしするハメになった。だから自分もお返しをしてやったのだ…。涙ながらに訴えるマーズデンの表情には、思わずヒーディーもグラついた。だが、それとこれとは違う。やったことは正当化されやしない。それに何しろウソときたら天才肌のマーズデンだ。彼女もどこまで信じていいのやら分からない。ともかくこのままでいい訳がない。

 真実を暴露する覚悟のヒーディーは、リーダスにも声をかけた。だが、彼はまだ躊躇していた。何から何までマーズデンに世話になっている彼には、無理もないことかもしれない。仕方なくヒーディーは、一人で真相を明かすために部屋を出ていった

 だが、そこでもヒーディーの予想を上回る事態が起きていた。真相を暴露しに警察に行ったところが、逆に女刑事に恫喝されたのだ。何とヒーディーがあのジャクソンにゾッコンだったとのウワサが飛んでいると言うのだ。ここに来たのも捜査を攪乱するためのウソを言いに来たのだろうと、女刑事に決めつけられるヒーディー。自業自得…とは言え、事の成り行きの恐ろしさに身震いするヒーディー。警察から出てきたヒーディーを、あのマーズデンが同情の表情で近づいてくる。「なぁ、人のウワサって恐ろしいだろう?」

 ハドソンに電話をかけても相手をしてくれない。もはや窮地に追い込まれたヒーディー。仕方なくリーダスをレストランに呼び出して相談を持ちかけるヒーディーだったが、リーダスはノートに何やら拳銃の落書きなんか書いていて夢中だ。とてもこれでは頼りになりそうもない。そんなヒーディーとリーダスの切迫した様子を、たまたま店に居合わせたボゴシアン教授が見つめていた

 結局、ヒーディーは家に戻ってきた。手の平を返して慰めるマーズデンに、「このまま黙っていれば、何事もなく終わるわよね」と白旗を揚げるヒーディー。彼女も結局、彼の口車に乗せられ妥協してしまうのか。

 そんなある夜、マーズデンはあのジャクソンに待ち伏せされ、しこたま殴られる。すべての黒幕が彼であることを知らされ怒りのあまりに襲ったジャクソンだったが、敵は一枚も二枚も役者が上。何だかんだとうまいこと丸め込んだあげく、マーズデンは例によって卑怯な手を使いジャクソンをブチのめす。だが、これでマーズデンもキレた。

 彼にしては珍しく興奮して、大学寮のハドソンの部屋に押しかけるマーズデン。怯えと怒りに身をうち振るわせているハドソンを、フザけ言葉と態度でチクチクといたぶる。あげくの果てには彼女にあれこれ因縁をつけると、ベッドに押し倒して襲おうとする。彼女を組みしいているうちに、マーズデンも珍しく興奮を覚えていた。「あの日だってそうだった、その気だったくせに俺を拒みやがって!

 だがハドソンは彼の顔に爪を立て、彼の手に噛みついて応戦。そのあまりの激しさにマーズデンも太刀打ち出来ない。仕方なくマーズデンは、彼女を侮辱しただけで部屋を退散した。

 ところが事態は急転。翌朝、マーズデンがヒーディーにハドソンと話をつけたと告げた折りもおり、何とハドソンが自室で自殺を図ったとの知らせが飛び込んできたではないか。何でも薬と酒の大量摂取が原因だと言う。「自分たちのせいだ」と自らを責めるヒーディー。マーズデンの表情もさすがに穏やかではなくなった。

 しかも事はそれでは終わらなかった。彼らの家に、突然一人の男が現れたのだ。殺人課の刑事エドワード・ジェームズ・オルモスと名乗るこの男は、ハドソンの死を他殺と睨んで捜査を始めたと言うのだ。もちろんその鋭い眼光で、マーズデンの顔と手の傷を見逃すはずもない。

 ヒーディーもリーダスも取り調べに呼ばれるとあって浮き足立ってきた。そんな彼らに自分に不利になる証言をするなと懇願するマーズデン。そんな彼の挙動に怯えたヒーディーは、あのボゴシアン教授の部屋の扉を叩いた。

 真相を知ったかボゴシアン教授は、授業中にハドソン事件に言及。珍しくしどろもどろのマーズデンを厳しく追及した。これにはさすがにこたえたマーズデン。周囲の彼を見る目も心なしか厳しく感じる。人のウワサは恐ろしい…そんな自分の言葉までが蘇ってくる。

 ところが家に戻ってみると、警察が家宅捜索を始めているではないか。オルモス刑事のターゲットが自分に向いていることを確信して、完全に慌てふためくマーズデン。彼はヒーディーやリーダスの前であるのも構わず、オルモス刑事にリーダスの部屋を披露する。そこには彼がゴシップ騒ぎに刺激されて創り上げてきた、ハドソンの巨大オブジェが飾られていた。「ホラ、見てください! ヤツは異常なストーカーなんですよ!

 信用していたマーズデンに裏切られたリーダスの胸中やいかに。外に飛び出していったマーズデンを追っていくヒーディーは、彼がいかがわしい連中から拳銃を手に入れている様子を目撃してしまう

 さぁ、リーダスはその拳銃で一体何をしようとするのか? マーズデンはこの窮地にどうするつもりなのか? はたまた今回の事件は、どのようなかたちで決着するのだろうか?

 

まだ原石の若手スター出演による拾い物サスペンス

 この映画、実は東京でも一館しか上映していない。それも単館上映のミニシアターなどではない。宣伝もロクに行われなかった。つまりは配給会社の期待はそんなとこ…と思われる。確かに有名スターや有名監督の作品ではない(個人的にはかなり興味深い顔ぶれが集まっているけどね)。当たるとは到底思われないが、何となく気になって駆け込んでみると、これなかなか楽しめる青春サスペンスなんだよね。

 個人的に顔ぶれが気になると言えば、まず主演陣が面白い。まず、ジェームズ・マーズデンって「X-メン」でいきなり出てきた男だったよね。リーナ・ヒーディーってイギリスの女優さんで、僕は全く気にとめてなかったけど、「日の名残り」とか「フェイス」なんかに出ていた人らしい。ノーマン・リーダスはあの「処刑人」の兄弟の片割れ。これだけでも気になるところに、「あの頃ペニー・レインと」の“ペニー・レイン”ことケイト・ハドソンが出てる。そしてこの作品は向こうで2000年の公開ということだから、彼らがそれら有名作品(ヒーディーは違うけど)に出演する前の作品ってことになる。まだまだ新人さんだった時の作品ってことだね。

 大体こういう若手俳優が大挙して出てくるホラーものサスペンスものって、発展途上の役者さんたちの登竜門になっている場合が多い。最近では「スクリーム」とか「パラサイト」あたりがそれだよね。「ラストサマー」もそうかな? この「ゴシップ」もまたしかりで、公開がかなり遅れたこともあって主要出演者はすでにボチボチ出世しちゃってる。でも、こういった人たちの足掛りをつくった作品として、映画好きとしては押さえておきたい映画ではあるかも。

 あ、そうそう。脇で刑事役で出てくるエドワード・ジェームズ・オルモスは、あの「ブレードランナー」で折り紙つくる男で知ってる人も多いかも。有名になったのはテレビの「マイアミ・バイス」からかな。だけどその前に「白昼の死角」やら「復活の日」であの角川春樹サンに起用されていたことは、意外に知られていない。

 そういやこの映画、テレビ出身のデイビス・グッゲンハイムなる人物が監督しているが、元々は製作総指揮者(エクゼクティブ・プロデューサー)としてクレジットされているジョエル・シュマッカーが監督する予定だったとか。シュマッカーと言えば腕前がいいんだか悪いんだか全く分からないほど映画の出来にバラつきのある人だが、思い起こせば青春群像劇の「セント・エルモス・ファイアー」を撮った人ではないか。ちょっとサスペンス味の「フラットライナーズ」も、当時の若手を集めてつくった映画だった。こういう題材はお手のものだし、案の定いい味出してるんだね。

 この映画、アメリカの青春ものの一典型である、「傲慢な若造ネエチャンたちが調子こいてたらドツボ」ってパターンを見事に踏襲してる。今回の主役三人もまんまこれに当てハマるわけで、映画がはじまって最初の30分くらいまでは、主人公三人のうち三人全員がどうにも好きになれないイヤな奴らばかり。マーズデンは育ちと容姿と知性で、ヒーディーは知性と意思の強さで、リーダスは知性とセンスの良さで、周囲の人間たちよりも頭一つ上に出ていると思い込み、どこかそれを鼻にかけている。でもそんな三人の裏付けとなるのは、何だかんだ言っても明らかにマーズデンの財力だ。

 本国公開時の2000年といえば、まだまだアメリカのバブルが意気盛んだった頃だ。振り返ってわが国のバブルの頃はと言えば、自分はもうすでに若いとは言えない年令に差しかかって当時の浮かれ気分にドップリ漬かるとこまではいかなかったが、それでもその恩恵は十分受けた。言わんや当時の若い連中は推して知るべしだ。無駄使いっぷりが凄いってならまだ分かるが、貢いだりタカったりなんてことが当り前。もっともあの時代は、国全体が度を超した贅沢を何とも思っていなかった。株をやれば必ず儲かるなんて言葉をそこらのオバチャンが平気で口にする時代だった。だから若い奴らを責められやしない。でも連中の「フツー」感覚ってのは、ハッキリ言ってまるっきり普通じゃなかったね。この映画でも、主人公三人のうちヒーディーとリーダスが金持ちボンボンのマーズデンにタカって何ら恥じない。それに対してオカシイとも思わない。タカられてるマーズデンの方も、世の中何でもカネで解決つくと思い上がったバカ殿学生。まさしくバブリーな時代の価値観で動いている連中なんだよ。

 だからこの映画は一見「人のウワサは怖いよ」なんて事を言っている作品に見えるが、さにあらず。勘違いで思い上がって調子こいてた若造ネエチャンどもが、調子に乗りすぎて墓穴掘りまくるザマを描いた映画だ。

 それってアメリカでさえバブルがハジけたこの2002年に見ると、かえってまた一興というものかもしれないよ。

 

 

 

 

 

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