「スパイダーマン」

  Spider-Man

 (2002/05/27)


 ニューヨーク郊外の住宅地に暮らす高校生トビー・マグワイアは、今日もド近眼眼鏡をかけてドタバタとスクールバスを追いかける。人はいいけど押しだしはイマイチ弱い彼は、いつも悪ガキ連中のからかいの的だ。実はクラスのマドンナ=マグワイア家の隣に住むクリスティン・ダンストに昔っからゾッコンなのだが、そんなことおくびにも出せない気の小ささ。大体、そんなマグワイアをイジメからかっている張本人がこのダンストちゃんの彼氏とくれば、そんなこと言えるはずもない。今日も今日とてデリカシー・ゼロ、脳味噌筋肉の彼氏とツルんでるダンストちゃんを見つめて、ため息をついているだけのマグワイアだった。

 そんなマグワイアの一番のダチはジェームズ・フランコ。このフランコ、かつては私立名門高に通っていたものの、ソリが合わずにおん出たクチ。今は公立高校で学ぶフランコ。そこで出来た親友がマグワイアというわけだ。

 フランコの父親は軍需科学産業の大企業オズコープ社の経営者兼科学者のウィレム・デフォー。当然この父親としては息子には名門高で経営者としての「帝王学」を学ばせたかったろうし、科学者としての知識を身につけてもらいたかったろう。だが、フランコはそれが重荷で名門高を辞めた。そんなわけで、この父子の思惑はいつもどこかですれ違ってしまうのだった。

 今日も学校の科学実習ということで、クモの生態を研究する施設にやってきたクラスメートたち。みんなはバスに乗ってやってきたが、何とフランコは父デフォーのロールスロイスで乗り込むハメになったらたまらない。こんなところをみんなに見つかったら浮きまくってしまう。それがイヤでイヤでたまらないフランコなのだが、そんな息子の気持ちを父デフォーは分からない。

 そんな父子が揉めているところに、フランコの友人マグワイアがやって来る。最初はお互い通り一遍の紹介が行われただけのマグワイアとデフォーだが、マグワイアが科学好き、しかもデフォーの編み出した理論を理解したと聞いてはデフォーは黙っていられない。不肖の息子はどうがんばっても科学の道に行けそうもないが、このマグワイアはちょっと脈がありそうだと思ったデフォーは、彼に息子の分の夢を託してみようかとちょっと思い始めちゃったりして。そして、そんな父親デフォーの思惑が分かり過ぎるほど分かるフランコは、わずかながらではあるが内心穏やかではなくなってきた。そんな各人の思惑が全然分かってないお人好しはマグワイアだけ。

 さて例のクモの研究施設は、マグワイアの興味を十分満たすものだった。さまざまな習性を持つクモの数々。中でもここの研究所では、すべてのクモの習性を遺伝子レベルで掛け合わせたスーパースパイダーを生み出しており、それが自慢の種であった。それらクモたちを自慢のカメラの腕前で写真に撮って、学校新聞に載せなくてはなどと律儀に考えているマグワイア。そんな彼がただダンストを遠目に見つめているだけというアリサマがフランコにはまどろっこしくて仕方がない。どうやって彼女に話しかけていいか分からないマグワイアだが、フランコはたった今マグワイアが彼に教えたわずかなクモのマメ知識だけで、知ったかぶりでダンストに近づきすっかり仲良くなってしまった。これにはマグワイアも絶句。 知ったかぶりネタがなくなりゃ「アソコ使ってないとクモの巣張っちゃうぜ」なんてオヤジネタで笑わすフランコが羨ましくてならない。

 それでも人けがなくなったところで、クモとツーショットを撮るなどと言い訳してダンストちゃんの写真をバシバシ撮りまくるマグワイア。やった、今晩のオカズをゲット(笑)。彼としては上首尾と言いたいところだが、その時、何者かが彼の手に近づいていくのをマグワイアは気付かなかった。

 ガブッ!

 イッテテテテ!

 思わずキリリとした痛みに驚くマグワイア。ついつい写真をオカズにしようというイヤラシイ考えを、当のダンストちゃんに見破られてツネられたかと焦り狂うマグワイア。イテテごめんよダンストちゃん、でももっとツネってもっと強くぅ。だがそんな事を言いながらマグワイアが一人でクネクネよがっているうち、彼女はもうとっくに先に行っちゃってる。フト見ると、彼の手にデカく色鮮やかなクモが噛みついているではないか。あわててマグワイアが手を払うと、クモはどこかに消えてしまった。だが実はこのクモこそ、この研究所自慢のスーパースパイダーだったのだ。

 一方その頃、例のウィレム・デフォーは自身の会社オズコープに軍のお偉いさんたちを呼んで事業の説明の真っ最中。だが、軍に提出していたプロジェクトの進行具合は芳しくない。人間の体質を強靱なものとする薬品の開発がイチオシ技術だが、マウスでの実験では凶暴性が高まるというネガティブな結果も出てきて、とてもまだ実用化なんて夢のまた夢。そんなボロボロの進行状況に、軍のお偉いさんは冷たかった。これが日本じゃ外務官僚がどんな不祥事起こそうが、総領事館員がどんなドジをやらかそうが、日本大使が人格的に問題があろうが、外務大臣が使い物にならなかろうが…いやいや、総理大臣の頭がおかしかろうが、誰のクビも切られないかもしれん。だが我々はそんなに甘くもないしいいかげんでもない。このままではおたくへの資金提供は今後一切カットだ! これにはさすがにデフォーも焦りと憤りを隠しきれない。

 さて、そんなこんなで科学実習から帰宅するマグワイア。彼は幼い頃に両親を失って、今は伯父クリフ・ロバートソン、伯母ローズマリー・ハリス夫妻に育てられていた。だが、その伯父伯母が待つわが家に帰ってくると、マグワイアはなぜか気分が悪くなった。速攻で部屋に上がったマグワイアは食事もせず、毎晩の恒例だったダンストちゃんの盗撮写真での一抜きもせずに眠り込んでしまう。

 熟睡爆睡するマグワイア。その体内では、彼も知らない不思議な科学変化が起きようとしていた

 他方、デフォーのオズコープ社でも不穏な動きが起こっていた。軍のお偉いさんにプレッシャーをかけられたデフォーが、よせばいのに開発中の薬品を自分を実験台に使ってみようというのだ。助手の科学者は必死に止めたが、事業の危機を前にしてはデフォーも後には退けない。仕方なく助手の科学者も協力するかたちで、デフォーに実験を行うことにした。デフォーを気密ブースの中に固定して、問題の薬品の気化したガスを噴出する。するとガスのものすごい煙の中で、デフォーが苦しげにむせるばかりではないか。これはマズイと実験をうち切った助手は、気密ブースからガスを除去して慌ててデフォーの様子を見に行った。

 意識を失ったように見えるデフォー。科学者が心配そうにデフォーの顔をのぞき込むと、デフォーがギロッと目を開けた。

 「ウ〜」とうなるデフォー。

 デフォーの意識が回復したのを見て、科学者は安心のあまり軽口を叩いてしまった。「マンボ!」

 するとデフォーはガバッと起きあがると、いきなり科学者の胸ぐらを掴んで首を絞めまくった。「なぁにをくだらんことホザいとるんじゃあ、このボケェェェェェ〜〜〜〜!」

 さて寝苦しい夜を過ごしたマグワイアだが、翌朝目が覚めてみると、いつの間にか眼鏡が必要ないくらい視力が良くなっているのに気がついた。そして、なぜか全身がモリモリと筋肉質に変身。こうなると当然男なら変化を気にする部分があるのだが、なぜかマグワイアはそちらに頓着はしない。あれれ、こっちの変化は大したことないのかな?

 階段を駆け降りる時も、なぜか壁面に横っ飛びしながらという有り余る元気。伯父のロバートソンは「若さじゃのう、ホルモンじゃのう」なんて言ってるが、こちとら中学の頃からこんなに元気有り余ったことはない。第一、ホルモン…なら元気になるとこが違うだろ(笑)。

 例によって例のごとしでスクールバスに置いてけぼりくらわされるマグワイアだが、今日はなぜかバスを追う足取りも軽やかだ。しかもバスの横っ腹に手を付いたら、ペッタリくっついてなかなかはがれないではないか。こりゃ一体何なんだ?

 確かに自分の体に何かが起こっている。いくらニブいマグワイアでも、これだけいろいろ続けば気付かずにはいられない。

 食堂で飯を食っていた時もそうだ。憧れのダンストちゃんが通りかかったとたん、彼女が床に滑って転倒する「予感」がした。すかさず倒れる彼女を抱きかかえて、事なきを得るマグワイア。ダンストちゃんもそんなマグワイアに感謝してくれた。やったぜ。 感謝された上に彼女の体さわりまくり。お尻をムギュ〜ッ(笑)。

 だがふとした事で手を伸ばしたとたん、彼の手首から白い糸のようなものがパッと発射されるに至っては、さすがにマグワイアもちょっと按配が悪かった。こりゃ何だ? 向かいのテーブルの食事盆に引っかかった糸を何とかはずそうとするが、これがなかなか強くて一筋縄ではいかない。思わず一気に引っぱったところ、こともあろうに食事盆は糸にくっついたまま。あのタチの悪いダンストの彼氏の頭から、思いっきり食事をぶっかけるハメになってしまった。

 怒り狂うダンスト彼氏。マグワイアは慌てて逃げるが、どう考えても彼がダンスト彼氏に食事をぶっかけたのは明白。奴は廊下にマグワイアを追い詰めると、何人のパシりと一緒に彼をいたぶろうという魂胆だ。これには通りがかったダンストもフランコもヤバいと固唾を飲んだ。マグワイア絶体絶命。

 ところがいまやマグワイアの動体視力は人間業を大きく超えていた。いくら彼を殴ろうとブンブン拳骨を振り回したところで、まるっきり余裕でマグワイアをかすりもしない。パシリ連中もこれはヤバいと手を引いた。ダンスト彼氏は今さら退くに退けないので頑張ってはいたが、結局マグワイアに触れもせずに自滅して倒れた。

 そう。いまや彼は超人になったのだ。

 帰り道、ふと壁をよじ登ってみる。見ると手のひらに細かく固い繊毛が生えてきて、それが壁に引っかかるではないか。ウソのように壁をスイスイ上ったマグワイアは、思わず歓声を上げた。こうなるといろいろ試したくなるのは人情。ビルからビルへとそのジャンプ力に任せてピョンピョン跳びはねた。後は、手首から飛び出す例のクモの糸を試す番だ。いろいろ試したあげく、勢いよく手首から糸を発射できるようになったマグワイア。糸と言っても太いワイアーくらいはあるシロモノだ。その糸を遥か彼方のビルの壁面に発射して付着させると、グイグイと引っぱって強度を試す。十分な強度を持つと分かったとたん、糸にぶら下がってターザンよろしく空中ブランコのように身を揺らす。こいつはいいやとマグワイアもゴキゲンだ。 心配なのはこの白い糸、一体何から出来ているのかってことだが…まさか? そういや妙に腰が軽くてスッキリするなぁ(笑)。

 さてその頃、自宅のお屋敷でぶっ倒れているところを目覚めるウィレム・デフォー。放心状態の中で昨夜の記憶を探るが、しかと思い出せずに不安感だけがつのる。そこに昨夜、自社の研究所で助手の科学者が殺されたという知らせ。何やら胸騒ぎとイヤな予感が脳裏をよぎるデフォーだった。

 一方マグワイアと来たら、あっちへブラブラこっちへブラブラ。ご機嫌になっているうち時間が経って、家に帰ったのは夜遅く。実はこの日はロバートソン伯父を手伝って壁のペンキ塗りをすることになっていたのだが…ついつい人間はやっぱり面白い方に流れちゃうんだね。ゴミ捨てのために裏口から出てくると、隣の家からは親父の口汚ない罵倒を浴びて、あのキルスティン・ダンストが泣きの涙で飛び出してくる。だが優しいマグワイアは、彼女の親父の虐待については見なかったことにしてあげた。ダンストちゃんの夢は高校卒業と同時にこのいまいましい家を飛び出してニューヨークに向かい、念願の女優をめざすこと。そんな彼女にマグワイアは、きっと女優になれると励ますのだった。

 そんな「いいムード」も束の間。ダンストの彼氏が車で迎えに来ると、彼女は手のひら返したように「アラ? ステキなクルマぁ〜」なんて猫なで声を上げて、一緒に出かけてしまった。ロクデナシ親父に泣かされてる彼女、そんな彼女が選んだ彼氏が同じようなロクデナシ男ってのは一体どういう訳だ…という疑問はとりあえず置いといて(笑)。やっぱり「女をモノにする」には車くらいなきゃあな〜。そんな事を痛感してしまうマグワイアだった。

 ん? 待てよ?

 マグワイアは古新聞の「アマチュア挑戦者来たれ!」ってなレスリング広告に注目した。そういや今はもうマグワイアは「超人」なのだ。このレスリングで一儲けしたって悪いことはあるまい。稼いだ金で車を買って、ダンストちゃんを誘えばいいんだ。

 さぁ、そうするとマグワイアはリングコスチュームをいろいろ考え出す。やっぱりそれはカッコいいほうがいいに決まってる。夜通し根をつめてコスチュームデザインを考えるマグワイアだったが、やっぱり男ってのは女が絡むと俄然張り切るねぇ。女のためとなれば、それが無理ともツラいとも思わなくなる。ここが男の泣き所ってやつだ。

 だけど、伯父伯母夫婦はそんなマグワイアの最近の変化が、妙に気になって仕方がない。ロバートソン伯父はこれも微妙な年齢のせいだわいと、マグワイアの外出を車で送って、車内で男同士の腹を割った話をしようと思っていた。本当だったらマグワイアは一人で出かけたかったのだが…というのも、この日は例のレスリング挑戦の日だったから。

 そんなこんなで苛だっていたところに、ロバートソン伯父としてはマグワイアが心配なあまりの助言の数々。今、おまえは大人になろうとしている最中の難しい時期だ。だから、わしの戯言など聞きたくないかもしれないが、これだけは聞いておいて欲しい。

 「大いなる力には、大いなる責任が付きまとうんだ」

 これが、それでなくてもイライラしていたマグワイアの神経にちょいと触ってしまった。いつもは伯父さんに対しても素直なマグワイアなのに、この時はなぜかカチンと来たんだね。「親父面すんなよ!」などと心にもない言葉を、優しい伯父に吐き捨てて車を降りるマグワイアだった。

 さぁ、問題のレスリング大会は、筋肉ムキムキレスラー一人勝ちで試合が進行していた。素人挑戦者たちが次々に挑んではみるが、まるで相手にならず怪我人の山。一見小柄でひ弱なマグワイアなど、本当に挑戦する気か?…などと主催者側に念押しされる始末。確かにそのムキムキレスラーの凄みっぷりを見ていると、さすがに今回ばかりは失敗だったかと腰が退けてくるマグワイアだった。

 それでも控室で一人コスチュームに着替えるマグワイア。いよいよマグワイアの出番とあって、MCの男がマグワイアにこっそり尋ねた。「おまえ、リングネームは何なんだ?」「ヒューマン・スパイダーだ!」

 だがMCの男はそのリングネームがお気に召さなかったようだ。

 「さぁみなさん、お待たせいたしました〜! 次の挑戦者は〜驚異の…スパイダーマ〜ン!

 マグワイアは勝手にリングネーム変えられたもんだからご不満のようだが、お客は勝手にエキサイト。大歓声の中にノコノコ登場したマグワイアのコスチュームはと言うと…スーパーヒーローとは程遠い、何だか寝間着みたいな冴えないシロモノ。ウ〜とかワ〜とかうなっているムキムキレスラーと比べると、何とも頼りないマグワイア。お客たちも、マグワイアがギッタンギッタンにやられるのを今か今かと待っていた。おまけにマグワイアがリングにたどり着いたとたん、リングがオリに囲まれカギをかけられたではないか。そんなこと聞いてないよと焦ってみても後の祭り。こうなりゃどうあっても勝たなきゃ殺されかねないマグワイアは、火事場のクソ力ならぬクモ力でその場を乗り切り、何とチャンピオンのムキムキレスラーを見事倒してしまったのだった。

 ともかく勝った。試合後に事務所に出向いてお金をもらいに行くマグワイア。だが、こうした裏街道の商売はセコい。試合は3分間なのに1分しかかからなかったとか何とか、試合のプロモーターは中国の日本総領事でも言わないような訳分かんない言い訳で賞金を値切り倒した。もとより彼に金を払う気などなかったのだ。これにはマグワイア、いかにお人好しとはいえさすがに憮然とする。

 奮闘努力の甲斐もなくお金も稼げずションボリと歩いて行くと、後ろから何やら騒々しい物音が。逃げる男とそいつを追う男。追っているのは、さっきマグワイアを値切り倒したプロモーターだ。「捕まえてくれ捕まえてくれ、泥棒だ!

 逃げる泥棒はマグワイアの横をすり抜け、エレベーターに乗り込む。だが、マグワイアは止めようという気が起きなかった。すべては自業自得。逃げる泥棒を見逃してやり、プロモーターをギャフンと言わせてやった。「俺には関係ないよ」

 帰りもロバートソン伯父が車で迎えに来ることになっていたので、先を急ぐマグワイア。ところが待ち合わせの場所にやって来るとものすごい人だかり。人々のしゃべり声がマグワイアの耳に飛び込んでくる。「何者かに通りすがりを襲われたんだ」「銃で撃たれて車を奪われたらしい」…イヤな予感に襲われたマグワイアが人混みを割って入ると…。

 案の定、ロバートソン伯父が撃たれて横たわっているではないか!

 何てことだ。なぜこんなことを。悲しみと怒りで逆上したマグワイアは、例のコスチュームに身を固めると奪われた車を追って飛び出した。手首から糸を発射してはぶら下がり、さらに先に進んでは糸を発射してぶら下がり、ビル街をスイスイと進んでいく「スパイダーマン」マグワイア。その移動スピードと自由度は、地上を行くパトカーの比ではなかった。たちまち奪われた車を前方にとらえると、アッという間に追いつき、難なくその屋根にしがみつくスパイダーマン。彼の邪魔によって運転不能になった悪漢は、車を捨てて近くの廃工場跡に逃げ込んだ。

 うまいこと闇に乗じて追っ手をまいたつもりの悪漢だが、彼を追っていたのがスパイダーマンだったのが運の尽き。たちまち胸ぐら掴まれて身動きできなくなる。ところがこの悪漢を捕まえて驚いた。何と、マグワイアが例のレスリング・プロモーターのところで見逃した泥棒ではないか。奴はその足で伯父を襲って車を奪ったのか。今さらながらに伯父ロバートソンの言葉が、スパイダーマンの脳裏に蘇る。

 「大いなる力には、大いなる責任が付きまとうんだ」

 その一瞬の動揺を衝いて悪漢がスパイダーマンを殺そうとする。怒りに震えるスパイダーマンは、窓から悪漢を突き落とした。

 大いなる力には、大いなる責任が付きまとう…伯父の言い残した最後の言葉は、この日から「スパイダーマン」マグワイアの行動の指針となった。やがて高校卒業と同時に友人のジェームズ・フランコ、憧れのキルスティン・ダンストらと共にニューヨークに移ったマグワイアは、ここで正式に「スパイダーマン」として活躍をスタートさせ、人助けや悪漢退治を始めた。

 だがその頃、薬品によって肉体と人格を変質させたデフォーも、「グリーン・ゴブリン」という超人として悪の毒牙を研いでいるのだった…。

 

 この映画をご覧になった方ならご存じの通り、上に書いたストーリーは映画の物語の前半三分の一くらい。で、実はここから本題が始まるわけなんだね。だから今回は「スパイダーマン」としての活躍が始まる前に、ストーリーを切り上げちゃったわけ。だけど、こういう映画をクドクド説明するのもヤボってもんだよね。それに、ここまでの時点でこの映画について説明すべきことってすべて出てきちゃってるんだよ。 後は実物見ればいいんだから。

 で、ここから例によって例のごとくちょっとした説明をしようと思うんだけど、今回は正直言ってそれほどクドく語るまでもないと思ってるんだね。というのは、もうすでにこの映画についてはいろいろ語られていて、しかも僕もそれと大体同意見だから。 今回の感想は読んでも全然面白くないだろうし、他の人のやつを見た方がいいかも。

 「スパイダーマン」とサム・ライミって、最初っから向いてる企画だよなってみんな思ってたはずだ。ライミにはかつて「ダークマン」ってヒーローものもあったしね。僕は「スパイダーマン」の原作には詳しくなかったものの、これがどうも「スーパーマン」みたいにアッケラカンなヒーローとは思えなかった。だから、そのマンガっぽさと共にどこか漂う陰りみたいなものが、「ダークマン」にも共通したライミっぽさにちょうど合ってるんじゃないかと思った。

 もっともそのサム・ライミ、ここんとこ2作は「シンプル・プラン」「ラブ・オブ・ザ・ゲーム」と、以前のユニークなライミ作品とは一線を画するような「普通の」映画をつくってきてた。だからそんな意味で、ライミとしては「いかにも」の題材「スパイダーマン」をどう撮るんだろうとの興味がつのったんだね。

 しかも驚いたことに、スパイダーマン役にはトビー・マグワイアを起用した。最初に聞いた時にはちょっと信じられなかったよね。若手でうまい役者だけど、まさかアメコミ原作のSFX大作ヒーロー映画に主演するとは。

 だがこの映画、ある意味で主人公スパイダーマンの成長物語と言えなくもない。その中で主人公は物事の善悪やら自分なりの流儀というものをわきまえていく。それって例えば「楽園をください」や「サイダーハウス・ルール」のマグワイアの役柄と、何ら違ったところなんかないんだね。

 で、マグワイア自身もそんな彼の個性と芝居をそのまま持ち込んで演じているから、この映画は楽しいSFX大作でありながら、意外にマジメな風格を感じさせる作品に仕上がっているのだ。

 もちろん手首から糸を発射してビルからビルへとひょいひょい飛び回る場面などは今まで見たこともない映像で、その楽しさはこの文章などでは到底語り尽くせない。

 僕が一番楽しんだのは、何と言ってもウィレム・デフォーの悪役。何のかんの言ってもアメコミの悪役だし、どう見ても正体はバレバレのはずだが…それは置いておいて(笑)。何しろあのデフォーが、大マジになってこの悪役を大熱演しているのが嬉しくなるんだね。特に鏡の前で善玉デフォーと悪玉デフォーがクルクル入れ替わっての演技は圧巻。安上がりなSFXとでも言おうか(笑)。あのキレまくった熱演が印象的だった「処刑人」での彼を彷彿とさせる張り切りぶり。あんなアホなスーツ着込んで、般若のお面みたいなマスクをかぶってワ〜ッハッハッハッハ…なんて高笑いをしているのが楽しい。そのマスクの般若ヅラがデフォーの顔とあまり変わらないのがまたオカシイ(笑)。いい役者ってのはちゃんとバカやれるんだよ。 で、彼はフザケてやってないんだね。マジもマジ、大マジで演じきっている

 キルスティン・ダンストのヒロインには酷評を多く聞いたが、確かにちょっと彼女老けちゃったなとの印象が濃厚。そもそもあのデカい顔がオバンっぽいのだろうか。これから彼女どっちの方向に行くのか、難しいところかも。それと、何だか手近で男探しを済ませちゃってるような安易な印象を与える役柄…こいつがダメなら隣の奴でいいやみたいなキャラ(笑)…も、彼女に損な印象を与えがちかも。

 ともかく派手なSFX場面を折り込みながら、亡き伯父の遺した言葉を胸に正義を実行していくマグワイア=スパイダーマンの健気な活躍が、どんなにひねくれて見ようとしたって素直に楽しめてしまう。そういう意味でこの映画への評価ってバラつきが少ないんだろうし、僕がここに書いたこともこの映画を見た大半の方々と同じ意見だと思うよ

 ところで劇場の予告を見たら、今度は「超人ハルク」をアン・リーが撮ると言う。マグワイアの「スパイダーマン」見たら、もう何が起きても驚かない気構えは出来たけどね(笑)。

 

 

 

 

 

 

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