「WASABI」

  Wasabi

 (2002/02/18)


  

他の国の人間なんて知ったこっちゃない

 みなさんはソルトレーク冬季五輪を熱心にテレビ観戦しているのかな?

 僕はその前の長野は結構気合い入れて見た。だけど、今回は何だかイマイチ見ようという気がしないんだよねぇ。

 そのせいか、先日の開会式もほとんど見ていない。ちょうどその時家にいて、見ようと思えば見れたにも関わらずね。

 そういえばオリンピックの開会式とか閉会式とかって、やっぱりお祭りだから華やかさがあるよね。その国ならではの国際的著名人が出たりして。長野の閉会式にはなぜか欽ちゃんが出てきてビックリしたけど、さすがに二郎さんと一緒に野球拳はしなかった(このギャグ分かる人はもう歳だね)。欽ちゃんが国際的に有名かどうかは別にして、確かに一応有名人ではあるけどね(笑)。

 最近のオリンピック開会式では、冬季じゃないけど生中継でテレビ見ていたシドニー五輪が思い出深いが、これは舞台装置こそ派手だったが有名人は出なかったな。メル・ギブソンとかケイト・ブランシェットとか出てくるかと思ったけど、さすがにねぇ。そういう事を臆面もなくやれるのは、やっぱりスターを数多く抱えているアメリカなんだよね。

 で、今回のソルトレークでもスティングとヨー・ヨー・マが…って、あれれ?アメリカ人ちゃうねん(笑)? この国ってスターはどこの国のも自分とこのもんだと思ってるのか(笑)、アトランタ五輪の時もカナダ人のセリーヌ・ディオンにテーマ曲歌わせてたっけ。というか、オリンピックみたいなビッグイベントはそのくらいの地球的規模で盛り上げないと…というショーマンシップで考えているんだろうね。さすがショービズの国。

 だから聖火の最終点火者にも趣向をこらす。アトランタの時は何とモハメッド・アリ。何だか体の自由がきかなそうでも意識がハッキリしてなさそうでも、ともかく腐ってもアリはアリ。アメリカが世界に誇るスーパースターのアリなのだ。

 だから今回のソルトレーク、どんなスーパースターが現われるのか…と固唾を飲んだ人も多かったはず。僕も夜中の録画ダイジェスト版をチラチラ見ながら、そこだけは期待したんだね。

 ところがどうだ…何だか知らないオッサンたちがノソノソ現われたじゃないか。何なんだこの盛り下がった演出は?…と思ったら、会場はなぜか意外にも異常なほど盛り上がってる。こりゃ一体どうなってるんだ?

 聞くところによれば、このオッサンたちはかつてオリンピックで優勝したアイスホッケーのアメリカ代表チーム。鉄壁のソ連チームを打ち破った国民的英雄なんだそうだけど、そんなことアメリカ人じゃない俺たちは知らねえよ…と、テレビの前のアメリカ人以外の何十億もの人々はそう思ったに違いない。それは確かにアメリカ人は燃えるだろうけど、ショービズの国がずいぶんヤボな演出するじゃないか。

 それがみなさんご承知の同時多発テロ以降のアメリカの気分なんだろうね。ブッシュ大統領の開会宣言にも何だか力コブ入った台詞を無理やり押し込んだみたいだし、例の世界貿易センタービルの瓦礫の下から出てきたボロボロの星条旗を持ち出してくるし…確かに気持ちは分かるよ。だけど、オリンピックは一国の国威掲揚の場として使われるべきものではないんじゃないか? キツい事を言えば、これをやるんだったら、アメリカはナチのベルリン・オリンピックを今後どうこう言えないんじゃないか? 会場にはアメリカ人以外の人々もかなりいたはずだ。それらの人々がシラケわたるとは思わなかったのか。それとも、この際アメリカ人以外の人々の感情なんて、どうでもよかったのか。

 思いあがったアメリカは醜い。

 まぁ正直言って、どこの国の人間も他の国の人間の気持ちなんて、想像も出来ないものなんだろう。それに、ここでそんな暗い人類の歴史のおさらいをしても仕方がない。だからいっそ分からないならば、元々お互い分からなくて仕方ないんだと開き直って、笑い飛ばしちゃった方がまだマシじゃないかとは僕も思う。

 少なくとも、分かってるフリをするよりはね。

 

どこでもオレ流刑事が日本のメスガキにアタフタ

 ここは花のパリーのクラブ。ガキどもジャリどもがキャーキャー踊りまくって、ユーロビートのやかましくて安〜い音楽がピコピコドスバスうるせえことうるせえこと。そこに何と、この場に違和感ありまくり周囲から浮きまくりの刑事ジャン・レノがノッシノッシと乗り込んでくる。だが、レノ刑事まるでひるんでいない。この男、どこに行ってもオレ流ひっさげ、トコトンどこまでもマイペースを貫くんだね。ここでもマイペースぶりは相変らず、いきなり踊ってる大柄な女の顔を鉄拳でブン殴った。

 鼻血出してるこの女を有無を言わさず警察に連れて帰る。すると、そもそもこの女、女じゃなくって女装の男なんだね。さぁこれから取り調べ…と思いきやデカ長からキツ〜いお言葉が…。例のクラブのガサ入れの時、レノ刑事は周囲のジャマくさい若僧を2〜3人ブチのめしていた。そのうちの一人が、何と署長の息子だったと言うのだ。早いとこ謝ってこい!

 で、早速病院にお見舞いに行くジャン・レノ刑事だったが、もとより自分が悪いことしたなんて気がまるっきりないから、謝ろうなんて気持ちもあるわけない。口では申し訳ないとか言いながらマイペースのまんまで、結局クソ生意気なガキの病室メチャメチャにする結果になった。よせばいいのに、親父の権力振り回したガキはそのまま手術室に逆戻りだ(笑)。

 で、署に戻ったレノ刑事は無茶な取り調べのし放題。何とか女装男連中の銀行襲撃計画を吐かせたが、時計を見るとすでに銀行強盗は現在進行中だった。あわてて現場に急行するレノ刑事。

 現場に到着すると、すでに銀行は警官隊に包囲されていた。やって来たレノ刑事の顔を見た現場の担当刑事は、露骨にイヤな顔を隠さない。あいつが来ると、絶対コトは無事に終わらないんだよな〜。

 案の定、ここでも思いっきりマイ・ペースのレノ刑事。警官隊の制止を聞かず、例のごとくノッシノッシと銀行に乗り込んで、人質がいようが爆弾が仕掛けられていようがお構いなし。どこから生まれてくるのか全く分からない超強気で、犯人たちをブチのめして一気にオレ流で事件解決だ。

 さてお休みの日は優雅にゴルフ…というのが、この男の唯一の楽しみ。だが、今回はそれもデカ長に邪魔された。聞けばやっぱり署長の息子にヤキを入れたのがたたって、レノ刑事は長期の謹慎処分と相成ったとか。デカ長はこれを機会にバカンスでもしろと言う。おまえは働きすぎだ、自分の時間をつくれ、女とでも付き合ってみろ

 いや、レノ刑事とても愛する女がいなかったわけではない。今から19年前に付き合っていた日本人女性ミコがそれだ。だが彼女は理由も言わず、突然レノ刑事の前から姿を消した。そしてそのショックから、レノ刑事はその後他の誰かと付き合おうなんて気をなくしてしまったのだ。

 いや、正確には付き合おうとした女が全くいなかったわけじゃない。2年ほど前から付かず離れずの女キャロル・ブーケがいた。彼女は煮え切らないレノ刑事の態度にも、忍耐強く待ってはくれていた。これを機会に関係を深めてみるかと、珍しく気張ってデートの段取りを決めたレノ刑事だが、そこはブーケさすがに女。何だかん言っても彼の心ここにあらずと悟って、自宅に帰ってしまった。

 そう、レノ刑事はまるっきりフッ切れてないのだ。

 しかし、あれからもう19年…。いつまでもこんな事ではいかんとレノ刑事が考え直したとたん、狙い定めたようにレノ刑事のデスクの電話が鳴った。何とそれは国際電話。かけてきたのは日本人の弁護士。発信地はトーキョーだ。

 ミコが死んだ?

 愕然とするレノ刑事に、弁護士は明日すぐに東京に来るようにと告げる。唯一の相続人として指名されたレノ刑事に遺品を分けなければならないし、何よりその日を逃したら火葬になるので故人の顔を見れなくなる。飛行機は手回しよく弁護士が確保してくれた。いつもマイペースのレノ刑事も、そのあまりの手回しの良さにさすがについつい相手ペースに乗せられた

 で、成田に着いた。

 すると税関の日本人職員の態度がえらくムカつくので、日本への名刺代わり小手調べとばかり一発パンチ。さすがレノ刑事、だが相手が違う。本当にブチのめさなけりゃならないのは税関じゃなくて外務省の役人だぜ。ともかく早速オレ流ご披露するレノ刑事は空港警察に御用。普通だったらタダでは済まないと覚悟したところ、ある男がレノ刑事に面会を求めた。

 その男、レノ旧知の仲間ミシェル・ミューラーという。

 実はかつてレノはこの日本で、フランスの諜報機関のメンバーとして働いていた。その当時の仲間がこのミューラーなのだ。ミューラーは今でも同じ諜報機関で働いているが、ずんぐりむっくりおチビな体型とアホなオヤジギャグからは、とてもそんな仕事に就いているとは思えない。それでも、レノ刑事が日本に来ることを独自の情報網で察知して、久々に旧交を暖め合おうとやって来たわけだ。

 だが寒いギャグ連発したかと思えばナハナハとせんだみつおみたいに笑うミューラーを見て、レノ刑事も喜んでいいやら何とも複雑な面持ち…。どうも今回の日本行きはオレ流マイ・ペースの気勢をそがれるなぁ。それでも助けてもらったんだから、ここは文句を言えないところだ。

 「せんだ、えらい。ミューラー、えらい。ナハ、ナハ、ナハ!」

 ともかくこのやかましい相棒連れて、レノ刑事は弁護士事務所へと急いだ。

 弁護士事務所では、わずかながらの彼女の遺品を受け取ったレノ刑事。すっかりシンミリした気分になったところに、弁護士の意外な一言。「ミコさんはあなたに娘さんの世話を見てもらうことを望んでいました」

 な、なにっ? む、む、む、娘っ?

 何と19年前に別れた日本人の恋人は、自分と彼女との間に出来た娘をひそかに生んでいたのだ。彼女の遺言は、その娘が20歳になるまでレノ刑事が面倒を見ること。これにはレノ刑事、日本行きの話が出てから崩されどおしのマイ・ペースをまたまた出鼻くじかれることになった。しかもその娘、隣室で待機しているというではないか。全然心の準備が出来ていないレノ刑事はウロウロするばかり。弁護士は、まだ彼女には父親のことは教えていないし、面倒を見るといっても2日後には20歳の誕生日だからすぐだ…と教えてくれたが、娘がいることそのものが晴天の霹靂のレノ刑事には通じない。それでも意を決してドアのカギ穴を覗いてみれば、穴の向こう側からも覗いている目があるではないか。

 ギャ〜!

 たちまちバ〜ンとドアが勢いよく開いた。出てきたのはハデハデケバケバパッパラパーのバカっぽそうな小娘ヒロスエこと広末涼子だ。服はギラギラ、髪は真っ赤っか。そして開口一番、いきなりハラ減っただの待たせるんじゃねえだのウダウダウダウダ文句垂れ流し。これにはレノ刑事、再びショックを受けたね。ひとつにはもちろん自分に娘がいたことだが、その娘が事もあろうに群を抜いたバカ娘らしいということのほうがショックがデカかった。礼儀も知らねえ、口のきき方も知らねえ…だが、見ようによってはそのどこまでも「オレ流」ってどっかの誰かみたいじゃねえか(笑)? いやいや、考えたくないそんなこと。

 そしてこのヒロスエ、どうも実の父親のことをよく思ってないらしい。単なる母親の友人と自らを偽ったレノ刑事に、実の父親を探す手助けしてくれと頼むヒロスエは、その親父見つけ次第ブッ殺すと穏やかならぬ剣幕でまくし立てる。これにはレノ刑事、自分の正体明かす気がこれっぽっちもなくなった。

 ともあれ葬儀場で棺の中のかつての恋人とご体面。するとさすがにただただバカでやかましいかと思ったヒロスエが、じっとおとなしくなっちまったじゃないか。そしてレノ刑事が棺の中の母親を見つめていると、「積もる話があるんでしょ」とは泣かせるじゃないか。こいつも人の子、いや、俺の子か。キレたところばかりじゃないよな。

 ところがそんなレノ刑事は、女との永久の別れのこんな場面でも職業気質が顔を出す。死んだ彼女の顔にわずかながら何かの結晶の粒が付着しているのを見てとると、それをコッソリとハンカチでぬぐって取った。どうもこいつは何かある。

 ヒロスエに聞くと彼女の死因はガンだと言う。それに疑問を抱いたレノ刑事は、ヒロスエの家に上がり込んで検死カルテを入手。しげしげとそれを見つめるが、日本語チンプンカンプンのレノ刑事に分かるはずもない。カルテと採取した結晶をミューラーに押し付けると、こいつを調べさせろとパシリよろしく命じるレノ刑事。ナハナハと喜んで立ち去るミューラーは、往年のレノと組んで働いてた頃が蘇る気がしていたんだね。

 さて、ヒロスエと連れだって街へ出るレノ刑事。とんでもないパープー娘と思ったヒロスエだが、それでも自分の娘ともなれば人並みに情のひとつも湧こうというもの。少しなりとも力になればと、パリから生活費を送金してやるため銀行に手続きにやってくる。ところが聞いてビックリ、彼女の銀行口座には莫大な金額が米ドルでプールされていた。これは一体何なんだ? そして、そんな莫大な財産のことは全く知らなそうなヒロスエ。さては、かつての恋人ミコはこの金がらみで殺されたのではないか?

 そうなると全てが怪しげに見えてくる。今もヒロスエ連れて銀行を出たところを、得体の知れないサングラス軍団に追いかけられた。ヒロスエが買い物をしたいとやって来たデパートにも、サングラス軍団はついてきた。レノはここで反撃開始。説明しても怯えさせるだけだからヒロスエには真相を告げず、物陰から物陰へ、サングラス軍団を例によって腕力にモノを言わせて黙らせていった

 そしてとり合えずの宿として帝国ホテルの豪華スイートへ。ヒロスエは買ってきた服を披露したいと、ここで即席ファッションショー。そこへあのミューラーも、デカいカバン下げてやってきた。中味は膨大な武器弾薬。いざ、ドンパチする時に使うブツだ。

 「どう? ミューラー、えらい! ナハ、ナハ、ナハ!」

 そこへヒロスエが買ってきたばかりの服着てポーズつけて入ってくるから、レノ刑事もミューラーもあわてて武器を隠して冷や汗…と、またまたドリフの「全員集合」趣向のドタバタが続く。夜は夜でヒロスエがダチとゲーセンに遊びに行くと言い出すから、レノ刑事としては彼女を守るためについて行かないわけにいかない。大体ゲーセンなんぞにたむろしてる奴らはクズガキに決まってる。そんなオツムは軽いくせに態度だけはデカい日本のクソ生意気な若僧どもと調子を合わせて、やりたくもないゲームに興じているうちに…来た来た来た来た! 例のサングラス軍団が次々ゲーセンに押し寄せてきた。今度はもう情け容赦しない。バンバン敵を撃ち殺してその場を退散だ。

 何とか難を逃れたレノ刑事とヒロスエだが、突然のことにヒロスエは呆然。一体なぜ? あなたは誰なの?

 さすがに父だと名乗るのはためらわれたが、とりあえず自分は刑事だと身分を明かすレノ刑事。やはり死んだ元恋人は何か秘密を握っていた。そしてミューラーの調べによると、彼女の顔に付着していた結晶は青酸カリだという。ヤバすぎる秘密のために、彼女は消されてしまったのか。そして魔の手は今、ヒロスエに迫っている。レノ刑事は一人娘ヒロスエのために、何としても事件の真相を暴こうと決心するのだが…。

 

ヒロスエ主演のバカ映画ではあるけれど

 日本での記者会見でいきなりヒロスエが号泣して話題をまいた、あの「WASABI」がいよいよ公開になったんだね。

 そのウワサによれば、この作品の舞台裏はかなりな混乱ぶりだったらしい。あげく、ヒロスエは制作のリュック・ベッソンの一存で起用されたが現場じゃ使い物にならなかったとか、彼女へのベッソンの「やらせろ」攻勢が凄かったとか…まぁウソかホントかいろいろな逸話があったらしい。そもそも「WASABI」なるタイトルはなんぞや?…とか、最近ロクな作品つくってないベッソン印であるとか、どう考えてもいい材料というかいい話が聞こえて来ない。何だかどうしようもない作品である可能性が濃厚じゃないか?

 で、実際にどうしようもない作品なのだこれが(笑)。ところが映画ってのは見てみないと分からないし、うまくつくってあればいいってもんでもない。この映画、ロクな作品ではないものの、決して嫌悪感を感じさせたり死ぬほど退屈させたり、よしんば見ている人が恥ずかしくなってくるような映画では決してない。期待して見るようなシロモノじゃないけれど、こんなもんだと思って見ればドン底ってことでもない。たぶんこの映画ってそれ以上のものを狙ってやしないと思うからね。

 まずみなさん最大の関心の的であるヒロスエだけど、実は彼女はなかなかよくやっている。ただし最近の週刊誌やらゴシップ紙やらワイドショーでおなじみになった、終始ハイテンションでキレまくりで渋谷道玄坂のラブホ街を男アサりに徘徊してるパープー娘という、僕たちが今のヒロスエに期待しているキャラを見事全うし演じ切っているという点において…だけどね(笑)。でも、この芝居って実はかなりキツいんじゃないか? ず〜っとハイテンション持続だからね。これ、どこかで失速したりガス欠になったりしたら、自分も寒くなってツラくなるばかりか見てるこっちも凍えてしまう。これほど映画全編にわたってハジケっぱなしってのは、なかなかキツいよ。それに関してはよくやったと思う。ただ台詞の半分以上が彼女にとって外国語のフランス語だったということが、サメて失速せずにハイテンションを維持できた理由ではないかとは思うけどね。

 それと日本ロケものだと必ず出てくる話だけど、国辱ものの間違いとやらも今回はあまりなかったと思うよ。まぁ、実際のところは細かい点を言えばキリがない。でも、そういうことを云々する映画でもないからね。別にみんな東洋文化研究所でもやってるんじゃないんだから、こんな程度でいいんではないの? 西洋映画の日本描写に誤りがあると、やたら怒ったりキレたりするのってもういいかげんやめにしないか。ことさらに相手が分かってない重箱の隅を突つくってのも、ヤボっていうものだもんね。そんな事やって自分が利口になった気分になるのって、ちょっとみっともないだろう? 「ラストエンペラー」が本当の中国を描いてないって向こうの監督たち怒ってたけど、そんなもん俺たち知ったこっちゃなかったもん(笑)。

 ここまで読んだみなさんは、実は僕が意外にもこの作品のことをケナすつもりがないと分かったろうね。その通り。傑作だなんて言うほどおめでたくないけど、駄作だとムキになってケナすほどヤボでもない。予想ほど悪い映画じゃないなとは思ったよ。それどころか、頭ん中カラッポにしたら結構楽しめるんじゃないか

 リュック・ベッソンって最近の監督作品はまるっきりいただけないと思っているけど、人に監督やらせて脚本と制作だけやってる作品って、僕は意外に好きなんだよね。固いこと抜きで楽しめる。メインのベッソン監督作が、よりスケールを大きく、変に意味ありげに、不自然に立派になっちゃったから余計そうかもしれないね。ジャンヌ・ダルクの話を映画にしたり、ダスティン・ホフマン出すようになっちゃいけないよ。

 だってこの人って本当はトロくて単純な人だと思うよ。それって「フィフス・エレメント」を見てはっきり分かった。今どき中学生だってあんな未来を描かないもんね。ありゃガキの発想だ。

 でも考えてみると、この人の持ち味って元々そういう単純発想だけだったのかもしれない。そしてそれまでは、彼の単純さって映画の訴求力を増す意味で効果があったんだろうと思う。割と理屈っぽくてダイナミズムに欠けるフランス映画の中で、彼の作品の単純さってダイナミックそのものに思えたんじゃないか?

 でも、ヒットが続いてベッソン自身が大家になったら、大型予算もつくしハリウッド・スターも出るようになっちゃたから、何がしかシリアスで偉そうなことを言わなければならなくなった。それで衣も厚く、贅肉もたっぷり付いた映画になってしまったんじゃないか。まぁ、最近の彼の作品のイマイチ感の理由ってのはそんなとこだろう。

 だけど、そういういろいろ大真面目な仕掛けこさえないとつくれなくなったベッソン監督作のウップンばらしか、やたら連発する制作と脚本しかやらない映画では、その単純さがいい感じで活かされているんだね。

 「TAXI」シリーズなんて、気安さが身上の肩の凝らない娯楽作。「キス・オブ・ザ・ドラゴン」のどこか駄菓子屋みたいな安っぽさがまたいい。プロデュースに回った時のベッソンは、なぜかテーマとかそういう事は一切無視。気取りのない作品ばかりつくっているんだよね。で、この「WASABI」もそんな作品の一本。「TAXI 2」のジェラール・クラヴジック監督が撮ったと聞けば、それだけで仕上がりも分かりそうなものだ。

 ジャン・レノが出てきて(そういや、ベッソン作品にレノが出てくるのも久しぶりだ)若い娘を助けるってお話だと、どうしてもあの「レオン」なんか想像しちゃうけど、ここにはあんなシリアスさは微塵もない。大体これハッキリ言ってコメディだよ。「レオン」を期待したらガックリくる。

 フランス本国場面でのレノの活躍ぶりからして、無茶なハミ出し刑事ぶりがすでにお笑いだ。この人物像ってモロにマンガだもんね。そしてお話も行き当たりばったりだし。で、そのまま日本に来て大暴れしてる。その構えは、いかにも大げさなリュック・ベッソン作品って感じじゃない。全編日本ロケによるフランス映画の大作って感じじゃない。実はこれに近い雰囲気の作品を僕はつい最近見てる。それは、やはり全編日本ロケで撮影された香港映画「東京攻略」だ。あのどこか安っぽいところ、あのどこかいいかげんなところ、そんなテイストが随所にチラつく感じがそっくりなんだよね。つまりは、いい意味で香港映画並みのリラックス映画なんだよ。同じ日本で撮影した「ブラックレイン」を見てごらんよ。あっちは重たい日米の国民性の違いのテーマがあって、シリアスなドラマがあって、何より金のかかってそうな重厚な大作感があった。だけど「WASABI」には、理屈もなければ大作感なんてまるっきりないもんね。

 だけど、だからこそ気楽に見ていられる。日仏のカルチャーギャップが重たく主役たちにのしかかるわけもない。ジャン・レノは秋葉原のギラギラ景色を楽しみ、巨大ゲーセンで遊び、京都の寺を見る。それ以外、日本である必然性もない。たぶん、日本でレノの人気が高いというその一点だけだろう。でも、この映画はそれでいいのである。

 そういや「キス・オブ・ザ・ドラゴン」ってパリを舞台にしながらも、主役が香港の男とアメリカ女という点でコスモポリタン的な映画づくりと言える。だけどジェット・リーのカンフーが映画の売りになっているとは言え、それ以外にはこうした「国際的」映画にした意味は全然なかったよね。その点でも今回の「WASABI」とはよく似ている。単にリュック・ベッソンが東洋人やハリウッド・スターが好きで、そいつらをフランス映画の画面の中に置いてみたいってだけのことじゃないかね(笑)。

 いいじゃないの。日仏のギャップ、東洋と西洋の文化の違いなんかで悩まなくったって。この映画のタイトルの由来を表わす、劇中のワサビのエピソードもかなりの脱力ものだもの。見事なまでに中味カラッポ、だけどこれはそれでいいのだ。

 カルチャー・ギャップなんて知ったこっちゃない。何も考えない方がいいことだってあるのだ。

 

 

 

 

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