「アルタード・ステーツ/未知への挑戦」

  Altered States

 (1981/05/14)


 話題騒然の鬼才ケン・ラッセルのSFトリップ映画。しかし見る前と見た後では、だいぶ印象が違ってしまう映画である。そして映画の最初の方が異常なムードが強く、見ていくにしたがってマトモというか普通の映画になっていく感がある。例をあげれば、初めの頃の主人公夫婦が知り合うきっかけのパーティーのシーン。どうという見せ場でもないのに、カメラと音楽で異常なムードをかもしだしてしまう。このパーティーのシーンは1967年ごろの設定で、服装も多少ヒッピー・ムーブメントの色がちた者がいたり、インド音楽がさりげなくかかっていたり、マリファナの回しのみをしていたりで、このへんは後半のトリップに何か関連があるのかもしれないし、脚本家に60年代後半への思い入れがあったのかもしれない。メキシコのインディアン集落のふんいきも異常だが、これはいわば前半と後半の橋渡しの役をはたしていて、ここから前半が設定がマトモで描写が異常、後半が設定が異常で描写がマトモという、きわめてユニークな構成をもっているのだ。幻覚は最初のそれが宗教的(キリストなんか出てくる)なものなので、イメージはすごいけれど「エクソシスト」みたいに日本人にはよくわからない映画になるかと心配になったが、その後は宗教臭がなくなり一安心。後半の幻覚には「2001年宇宙の旅」を思わせる絵もあるが、それほどの深みはない。だがこの作品は、見る前の印象のように「超大作」でもないし「哲学的映画」でもないのだから、これはこれでよいと思うのだ。それに少なくともケン・ラッセルとしては、「トミー」よりもイメージはずっと豊かだ。俳優陣はウィリアム・ハートという細身の少々神経質そうな二枚目が大熱演! そして「未知の遭遇」でわれらがトリュフォー演じるフランス人科学者の通訳兼片腕を演じていたボブ・バラバンが、その時の印象を拡大して好演。何だか「ジョーズ」でリチャード・ドレイファスが扮した海洋学者みたいでもある。しかし何といってもすばらしいのは、ブレア・ブラウンという主人公の妻を演じる女優さん。知性的であたたかみがあって…この手の女性にはヨワいのですよ。まぁ、とにかくこの映画は、だだっ子みたいに「実験をやるんだ、やるんだい」と言い張る子供っぽい男と、母性的にそんな男を抱きしめる女のラブストーリーでもありまして。だから一見「愛はすべてを救う」的に見える結末に失望する人も多いと思うが、ぼくはこの結末はこれでよいと思うのだ。そしてこの事からも、この映画は異常なコロモをかぶったきわめてマトモなお話であるといえるし、ユニークな映画ばっかりつくってきたケン・ラッセルにしてはメいっぱい正攻法でつくった作品といえるのだ。とにかくいたってラブストーリーをtくりにくい現代ならではの、大マジのラブストーリーなのですよ!

 

 

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