A. I.

「エイアイ」でなく「アイ」と読め

A. I. - Artificial Intelligence


「早く人間になりたい」

(この物語と映画「A.I.」のストーリーとは別物と考えてください<笑>。)

 

 

必ず映画を見てからお読みください

 

 

 昔むかし…。

 

 アメリカが京都議定書を無視してフンぞり返ってたもんだから地球が温暖化して、地上の主だった都市が水没してしまったくらいの大昔のこと、食料、資源、工業生産などに大きな打撃を受けた人類は、産児制限を行って人口調節をしなくてはならなくなった。で、子供を産むにも許可がいるとか何たらかんたら…てな説明が、どど〜んとスクリーンから客席に向かって押し寄せてくる波をバックに語られる。でも当然のことながら、波間から東映三角マークが飛び出してくるわけではない。

 というわけで、とある研究所で何人もの研究員を集めて得意満面に語っているのは、ロボット学者のウィリアム・ハート。いまや状況はアイボを大きく超えて、ロボットが労働力として重用されている時代。彼が今語っているのは、人間のように愛を持つロボットの製品化についてだ。本物の愛を持つロボットで親に対して変わらぬ愛情を注ぐから、子供が持てない夫婦の子供の代用品として最適などと調子こいてしゃべってる。この研究所を有するサイバトロニクス社の新製品として開発中とのことだが、一人の女性研究員がご機嫌なハート先生にちょいとクギを刺した。親に本物の愛情を抱くロボットをつくるのはいいが、人間の道義的問題はどうなるんです? たまごっちを育てられずにブチブチと殺すみたいなわけにはいかない。三田佳子みたいにほったらかしてグレさせるわけにもいかない。どっかの保険金目当ての鬼オンナみたいに、男にトチ狂ったからって殺させるわけにはいかない。愛を抱くほどよく出来たロボットならほとんど人間みたいなものだから、もう飽きちゃったと放るわけにはいかない。もしそうなったらどうするの? でもハート先生はまったく反省の色などなく、いいかげんに言葉を濁して話を終わらせた。

 さらにハートは、サイバトロニクス社の社員の中でモニターに最適任な人間をひそかに洗い出していたのだ。子供の代用品が欲しいと願っていそうな夫婦を…。

 一方、ここにめっきり家庭の中がクラ〜くなってる夫婦が一組。だからと言って別に嫁さんがPTSDで亭主がマチャアキというわけではない。嫁さんフランシス・オコーナー、ダンナがサム・ロバーズのこの夫婦がめっぽうクラいその訳は、一人息子のジェイク・トーマスが不治の病に侵されて病院に収容されているから。病気の進行を食い止めるため人工冬眠状態にしてはいるけれど、その治療法が見つかるアテなどない。毎週病院に行っては息子のベッドに本を読んで話しかけはするが、当然息子トーマスはただ目をつぶって横たわるだけだ。気丈に耐える母親オコーナーも、実はもうキレる寸前だったりする。こりゃあ何とかしないと…と焦るロバーズだが、彼女にどうしてやることも出来やしない。

 そんなある日、会社から朗報だとロバーズがハシャいで帰宅する。そしてご亭主には連れがいた。それが愛することが出来る少年型ロボット=ハーレイ・ジョエル・オスメントだ。

 あんまりにもあんまりな提案に一瞬逆上するオコーナー。この子は代用品なのそれじゃ息子はどうなるの何てあなたは…とあ〜でもないこ〜でもないと怒りと困惑ブチまけるが、いざロバーズが「じゃあ会社に返そうか?」と言うと、それはちょっと待ってとためらう彼女。

 結局とりあえず引き取って様子を見ようということになる。なぁに、本当に親のことを愛するようになる7つのキーワードさえ入力しなければ大丈夫さ。それを入力しちゃったら後戻り出来ない。ロボットは一生親を愛するようになる。でも入力さえしなければ、ただの人間とロボットの関係だ。

 こうしてオスメント=ロボットの同居生活が始まった。とは言っても、赤の他人だから正直言ってオコーナーは落ち着かない。いや、いくら無邪気で好奇心に満ちた愛くるしい存在であったとしても、どこかロボットとしての違和感のある存在だ。昼間に二人っきりでいると結構おっかなかったりする。彼を置いておくんじゃなかった、いや、でも手放すのはなぁ…と、いまだ思い乱れるオコーナーだった。

 そんなある日、夕食時の夫婦とオスメント。亭主が大好き焼きうどんを夫婦で食べる。オスメントはロボットだから食べるマネだけ。ところがオコーナーが食べたうどんを間違えて鼻から出しちゃった。これにオスメントがバカ笑い。うわ〜、何だか鼻水垂れ流しみたい(笑)。このお下品会話が一気に場の雰囲気を変えた。今までお葬式みたいだった食卓に、つられた夫婦のバカ笑いが響く。

 ひょんな事から子供のお下劣ギャグと笑い声のあるお茶の間の素晴しさを再確認することになったオコーナーとロバーズの夫婦。オスメントとの心の距離は急速に狭まった。いても立ってもいられなくなったオコーナーは、例の7つのキーワードが書いてあるカードを取り出して、オスメントに唱えることにした。これを入力したらもう手放すことは許されない。サイバトロニクス社に返品する時は、ロボットを廃棄処分にする時だと分かっていても、この時点ではオコーナーは自分がよもやこの子を捨てたいなんて思う訳がないと思ってた。

 「さぁ唱えるわよぉ、7つのキーワード…」

 セブン〜セブン〜セブン〜セブン〜。

 セブンセブンセブン!ぶぉ〜。セブンセブンセブン!ぱぉ〜。

 キーワードを入力すると、パッと表情がウルトラに変わったオスメント=ロボット。「ウルトラの母」と呼ばれて喜ぶオコーナーはうれし泣き。母親と認識して愛情を抱くようになると可愛さ倍増。かつて息子に買ってやったスーパートイの熊のテディを遊び相手に与えたり、めったやたらに可愛がって一家はまた楽しく暮らすようになった。

 そんな矢先のこと…。

 何と息子ジェイク・トーマスが奇跡的に回復してしまったのだ。いや、回復したのは別に悪いことではないが、こうなるとオスメントの居場所がなくなる。やっぱ可愛いのは自分の子、腐っても鯛の人間の子。当然同じようにウチの子として育てられはするが、何とはなしに疎んじられるわけ。

 人間のガキのトーマスもそのへんの力関係は察知して、ここは俺の家で俺は人間だぞってな言い分を常にチラつかせる。食べ物が食べられないオスメントをトーマスがバカにして、意地張って夕飯をかっこんだオスメントがブッ壊れたりしたのは序の口。母親の愛を手に入れたいなら言うことをきけと、トーマスは夜中オコーナーの髪の毛を切ってくるようにとオスメントに命じる。イヤイヤながら寝室の義母オコーナーの元にやって来て、チョッキリ一房の髪の毛を切ることは出来たオスメントだが、夜中に枕元でハサミ持って立ってるとこ見つかっちゃったら言い訳無用の問答無用。何がどう考えたってアブない奴にしか見えません。

 おまけにトーマスが夜眠る時に、母親に読んでくれとせがんだ絵本が「ピノキオ」ときた。人間ではない人形のお話をオスメントに聞かせることで、クソガキのトーマスは「所詮おまえは俺とは違う」と思わせて傷つけたかったんだろう。しかし、この絵本はオスメントの心に意外な効果を与えた。妖精のブルーフェアリーのおかげで人間になれたピノキオ。同じ頃、毎週月曜から金曜の夕方に見ていたテレビ東京の再放送アニメ「妖怪人間ベム」のキメ台詞「早く人間になりたい!」を唱えながら、いつの日か自分も人間の子になれる日が来ることを心ひそかに願うオスメントだった。

 ところがそんなオスメントの立場をダメ押し的に悪くする出来事が起きた。トーマスの誕生日にお祝いにやってきたクソガキどもが、ロボットに危害を加えたらどうなるか見ようと悪さのし放題。これでキレたオスメントは 自己防衛本能でトーマスにしがみついたままプールに飛び込んだ。悪ガキのトーマスは溺れて自業自得だが、揃いも揃ってのバカ親父ロバーズはそうは思っちゃいなかった。これで完全に堪忍袋の緒が切れて、オスメントを手放すことに決めたのだった。

 おまけに親父ロバーズは何も悪いことしてないのにジャマになったからとオスメントを捨てることは決意したものの、実際に捨てに行くのはオコーナーにやらせるセコさ。こうなると男なんて調子のいい事言ってる割にはクソの役にも立たない、イザと言うときにはまるっきり頼りにならない無責任な存在なんだよね。

 さて、オスメントには母親と二人っきりのピクニックと偽り、何とか車で連れ出したオコーナーだが、わ〜いわ〜いとあんまりハシャがれるとさすがに気が退けてくる。最初はサイバトロニクス社の敷地内に連れ込むつもりだったものの、そこに連れて行けば間違いなく廃棄処分になって分解される。それを思うと耐えられなくて、最後の最後にオコーナーはくじけて施設の前をやり過ごした。

 奥深い森の中にオスメントを連れてくると、そこに彼を置いたまま車に乗り込もうとするオコーナー。お昼ごはんだとハシャいでビニールシートなんか広げ始めたオスメントは、何が何やら分からない。ごめん勘弁許してね、ピクニックは真っ赤なウソだったの、あなたは家に置いておく訳にはいかないわ。驚いたオスメントはいい子にするから仲良くするからと泣いて叫んで頼むけれど、家で待ってる亭主と息子のウスラバカ男どもの事を考えると、オコーナーはオスメントの言うことを聞いてやるわけにいかない。泣いて泣いてわんわん泣いてるオスメントの声に心乱されながらも、動揺をしゃにむに抑えながら彼を置き去りにしようとするオコーナー。連れていって置いてかないで…自分では何ひとつ悪いことをしていないオスメントは、自分の何がいけなかったのか分からないながらも、必死にオコーナーに泣いてすがり付こうとする。だがオコーナーはいくらかのお金を渡してサイバトロニクス社には近づくなと言い残すと、心を鬼にして一目散に車でその場からやっとこ立ち去った。それはオコーナーにとってどうする事も出来ない中でのギリギリ、最後の最後に母親としての気持ちから思わず見せた、オスメントへのせめてもの思いやりだったのだが…。

 オコーナーを乗せたハイテクカーが、山道をどんどん遠ざかっていく。胸が張り裂けるような思いのオスメントは、誰もいないような奥深い森に一人寂しく取り残されたのだった。

 

 ハ〜イ、ここは快楽の都「ルージュ・シティ」。男も女も老いも若きもハメハメでレロレロでチュパチュパでングングでウヒャヒャヒッヒ!

 僕はご存じテッカテカ輝く目ん中お星さまキラリンのジュード・ロウ様だよん。サッとここでキメキメポーズだ。ど〜うだい、男も女もホレボレするだろ、僕の男ぶり。どだい「リプリー」でのマット・デイモンなんざイモでヤボで話にならないよ。まるで地中海の太陽みたいにキッラキラだろう? だけど僕の武器はこのイカした外見だけじゃないんだぜ。ホ〜ラ、こんなに弓型にそっくり返っちゃって、先端なんて光っちゃってピッカンピッカン。このキリキリ痛いくらいギンギンにおっ立ってるナニをグイとレディのアソコに収納すれば、いやぁもう涙流さんばかりに喜ぶこと喜ぶこと。ヨダレと涙と鼻水とオシッコ垂れ流してタ〜イヘン! 二度と人間の男なんかと寝たいなんて思わないさ。人間の男なんてだらしないしデリカシーないし、まるっきりヘタで鈍くさいからねぇ。

 その点、僕なんかほ〜ら、首をサッと振るとムードミュージックが流れる。女にゃこのムードってやつが必要なんだよねぇ。それを人間の男どもはちっとも分かってないんだからに。おまけにナニは小さいわムケてないわ細いわ固くならないわ早いわチンカス付いてるわじゃあ、そりゃあ女だって逃げてくわなぁ。ハッと、またしてもポーズをキメてっと。

 今日も今日とて連れ込みラブホでレディが僕をお呼びだよ。ははぁ彼女はSMがお好みだなぁ、奥様は静かに抱いて欲しいんだね、お嬢さんはハードにズッコンバッコンだ、お姉さんはお口をお望みだね。ほ〜ら、女たちはみんなそれぞれちゃんと望みを持っているんだ。それを人間の男たちはまるっきり自分勝手に振る舞って、てんで望みを聞いてやろうとしないから逃げられるんだ。そりゃあ僕はセックス専用につくられたジゴロ・ロボットだから、僕と同じようにやろうったって無駄さ。君だってこんな角度でキリキリおっ立ちゃしないだろ? だけど人間には人間のやり方だってあるのにさ。だ〜めなんだよそれじゃ〜。そこでこの愛の求道者の僕の出番。「ミュージック・フロム・アナザー・ルーム」の宣伝コピーじゃないけど、ジュードの魔法でアソコもヌレヌレっと。ちゃ〜んと相手の願いをピタリと当てて、「スターリングラード」のソ連スナイパーのヴァシリよろしく、淑女たちのアソコをズバリと撃ち抜くよ〜ん。バキュ〜ン! ここでピシッとキメポーズっと。

 う〜ん、何だかこの部分書いてる筆者がノリノリで、必要以上に僕の登場シーンが長くなっちゃったね(笑)。そろそろ本題に行くかっと。

 ややっ? 僕をお呼びのレディを訪ねてラブホの部屋までやってくると、レディが血を流してる。血って言ったって月のもんじゃないよ。殺されて倒れてるじゃないの。嫉妬に狂った亭主が殺して、僕をトラブルに巻き込んだんだ。

 まずい、まずい! それでなくてもロボットは肩身が狭い、風俗ロボットはもっと居場所がない。ちょっとでもトラブルと関わったと知れたら、どう頑張っても弁護のしようがない。逃げなきゃ、でもどこへ? パトカーが通りかかってヤバいって時にも、ついついキメのポーズをしてしまう、自分のジゴロなサガが悲しい〜っ(笑)。

 

 義母への嘆願空しく一人取り残されたオスメント。

 いや、正確には一人ではなかった。もらったスーパートイのテディがいた。この熊のおもちゃ、外見こそ熊ちゃんでヨチヨチ歩いて可愛らしいものの、一声しゃべらせればレオナルド熊もかくやの可愛げのないオヤジ声というのが傑作(ところでみなさん、レオナルド熊ってコメディアンがいたことは覚えてる?)。

 「お〜い、 オスメントよぉ。俺たちゃ捨てられちまったみたいだぜぃ」

 この熊相手にオスメントはけなげにも宣言する。僕が人間になればお母さんは僕を受け入れてくれる。そして、「ピノキオ」のブルーフェアリーにさえ会えれば人間になれるんだ。ここでオスメントは、テレビ東京の再放送アニメ「妖怪人間ベム」のキメ台詞を、あの声優そのものの声で再現して聞かせるのだった。「早く人間になりた〜い!」

 しかしレオナルド熊としては、その後でオスメントが「ベム」主題歌を振り付きフルコーラスで歌いまくるのはやめて欲しかった。しかも、その後森を歩きながら続けて歌ったのが「宇宙少年ソラン」「サスケ」「サイボーグ009」と揃いも揃ってレトロなアニメ主題歌ばっかりだったのも気になった。何でおまえその歳でそんな歌ばっか知ってるんだよぉ。それじゃあ40過ぎのオヤジのカラオケ大会みたいじゃねえか。夕方の再放送アニメばっか見てるからそのザマだ。だから同じ歳くらいのガキにイジメられるんだぜぇ。

 そんなこんなでドップリ陽が暮れた。オスメントはいくらレトロアニメの主題歌うたってもロボットだから声が枯れなくていいが、聞かされてるレオナルド熊のほうはいいかげんにして欲しかった。すると…。

 森の中のゴミ捨て場みたいなところにポンコツのロボットたちが集まって、いろんな部品を物色してはまだ使えるものを自分のカラダにはめ込んでるではないか。ここははぐれロボット純情派の吹きだまり。でも、彼らは真野あずさママが待ってるスナックに行けるわけじゃない。もっともそれを言ったら藤田まことのノータイ刑事だって、あんなスナックに入りびたれる金があるとは思えない。渡哲也率いる石原軍団の刑事たちなら銀座のクラブがお似合いだ。居場所なくたむろするやさぐれロボットたちの胸の内に、オスメントが熱唱するテレビで覚えたての「大都会PART2」主題歌「ひとり」がジンワリとしみ渡る。レオナルド熊もうっとりしながら「おめえ演歌もいけるじゃねえか」。

 そんなロボットたちの群れの中には、「ルージュ・シティ」から逃げ出してきたジゴロ・ロボットのジュード・ロウもいて、「う〜〜ん、僕はどっちかと言うと夜のムード歌謡かなぁ。中条きよしの『うそ』なんかいいねぇ。あと鶴岡政義と東京ロマンチカかな?」。

 そこに誰かの叫び声が!「逃げろっ、奴らが来るぞ〜っ」

 ゴ〜ッと遠くから轟音が聞こえる。何とでっかいでっかい満月が猛スピードで上がる。何だこの月は? よく見ると、それは丸く月のようにつくられた飛行船だった。

 ロボットたちはみんなあわてて退散する。オスメントも「ひとり」を歌うのをやめて「サスケ」に切り替えた。「くるぞっくるぞっくるぞっくるぞっ、手ぇ〜ごぉわ〜い〜ぃぃぞ〜」

 「おめえ、逃げる時くらい歌やめたらどうなんだよ」とレオナルド熊。

 はぐれロボットたちは逃げまどうばかり。やがてバイク軍団も出てきてロボットたちを狩りたてる。飛行船の上からはこのロボット狩りの親玉ブレンダン・グリーソンが満足そうに見つめていた。

 そして一網打尽。オスメントはジュード・ロウらと一緒に網にかかって囚われの身となってしまった。飛行船で連れ去られるロボットたち。辛くも逃げおおせたレオナルド熊は、必死に飛行船を追いかけるのであった。

 さぁ彼らはどこに連れ去られたかと言えば、そこは夜にも関わらずギンギラに照明された競技場。客席は満員御礼、ヘビメタ・ロックバンドがギンギンに大音響かき鳴らす中で行われているのは「フレッシュ・フェア」なる野外イベント。先のグリーソンが主催するこのイベントのテーマは「人間中心主義」。もっと分かりやすく言えば「ロボットなんかブチ壊せ」だ。連れ去られたロボットたちは、どれもこれも観衆の前で惨たらしく破壊される。それを見てみんなで大喜びしようという趣向だから悪趣味きわまりないが、人間ってやつはイジメが死ぬほど好きなんだよねぇ。主催者グリーソンはテキサスの石油成金みたいにカウボーイ・ハットなんかかぶってゴキゲンだし、ヘビメタ・バンドはムキムキの腕まくって黒いドクロか何か描いてあるTシャツ着ちゃって、そこに加えて腕まくりしてるスキンヘッドの男とかヘルス・エンジェルスみたいな連中とかもウロウロ。所謂ネオナチとかKKKとかみたいなレッドネックな連中がズラリ勢揃いだ。

 どんどん破壊されていくロボットたち。オスメントとジュード・ロウも、アリーナの中央に引きずり出された。あぁ万事窮す、もうこれまでか。グリーソンはハンドマイクをしっかと握って観衆にアピールだ。

 「さ〜あ、これが人間の子供そっくりの姿で俺たちを欺く、連中の汚さの見本だ!」

 しかしグリーソン、調子に乗ってオスメントの前でハンドマイクをチラつかせたのが運の尽きだった。マイクを見つめたオスメント、アッと気づくが早いかグリーソンからハンドマイクを奪い取り、前傾姿勢45度でしっかと構えて歌い出した。

 「や〜み〜にっ、か〜くれってっいっきっるぅ〜」

 オリに入れられていたやさぐれロボットどもも唱和した。

 「お〜れたっちゃ、よぉ〜かぁ〜いに〜ん〜げんなのさっ」

 ヘビメタ・バンドもついついノリの良さにギンギンに演奏を始めたこの歌は、オスメントの十八番「妖怪人間ベム」主題歌。そしてオスメントの後ろでは、クシで髪をとかすポーズとか腰に手を置いたポーズとかキメキメ・ポーズ連発でジュード・ロウが踊りまくる。観衆はやんやの大喜び。オスメントとジュード・ロウをブチ壊そうとしていたグリーソンは大いに慌てた。そして、いよいよオスメントのあのキメのセリフが!

 「早く人間になりたぁ〜いぃぃぃぃ!」

 焦りに焦ったグリーソンは、つい勢い余って言わなきゃいいことホザく。「こいつは可愛いツラしてるだけのニセモノだ、今すぐブッ壊せ!」この過信がマズかった。

 「こんな幼い子供じゃないの」

 「何て事言うんだ、やめさせろ〜」

 「沖縄の米兵の横暴を許すな〜」

 ようやく目が覚めた観衆たちは、グリーソンに向かって石をバンバン投げつけてきた。それでもここで目が覚めるだけこいつらはまだマシ。烏合の衆ではなかったんだね。 そのドサクサにまぎれてオスメントもジュード・ロウも逃げ出すことが出来たし、熊とも再会することが出来た。

 ジュード・ロウにとってはオスメントは命の恩人。さぁどうしたい? 君の望みをかなえてやるよ。するとオスメントはブルーフェアリーの名前を持ち出した。彼女に会いたい。会って人間の子にしてもらうんだ。

 「ブルーフェアリー? するってえと女だね? まっかせておくれよ、女だったら僕の得意の分野だ!」

 それからジュード・ロウ十八番のングングレロレロの話が始まったが、オスメントそいつには興味がない。でもジュード・ロウは彼女の居場所に連れていってくれそうだ。

 「女だったらあそこに行けばいっぱいいるよ。きっと彼女もそこにいるかも」

 そことはもちろん、ジュード・ロウのホーム・グラウンド、「ルージュ・シティ」だ。途中でやる気まんまんの童貞坊やの車に乗せてもらって、一路「ルージュ・シティ」へ。そこは東京新宿は歌舞伎町のごとく、今夜もギンギラ妖しげに輝いてた。

 しかし「ルージュ・シティ」と言ってもいささか広うござんす。ファッションヘルス「パイパニック」とか韓国エステ「八月のクリなんとか(筆者により自粛)」とかソープランド「ぐっちょん・インポッシブル」とか、毒々しいお店は数々あれど、とってもブルーフェアリーの居場所なんか分かりそうにない。おじさん、これでどうやってたどり着くの?

 まかしてくれよと連れていったのが、新宿コマ劇場裏の「ドクトル・ノウの身の下相談室」。チャリ〜ンとお金を入れて質問してみるが、何だかんだと質問はぐらかされて肝心な事は答えてもらえずボッタくられてばかり。さすがのジュード・ロウもこれにはまいった。

 おいおい、これじゃあ女の子にフルーツとかキス・チョコとか勝手に頼まれたあげく、ちっともいい事してもらえないタチの悪いピンキャバみてえじゃねえかよと思わず毒づく。すると、突然ピコ〜ンと答えが出た。地の果ての街、マーライオンがヨダレ垂れ流す場所に行けときた。

 さぁ行こうと勢い込んだオスメントに、ジュード・ロウは思わずブレーキかけた。地の果てなんて行って戻ってきたロボットはいないんだぞ、それにおまえの母さんだってもう待っちゃくれてないぜ。

 でもオスメントは聞かない。一人だって行くよ。あぁここで二人はお別れか。

 ところがそこに警察がやって来て、ジュード・ロウは重要参考人でしょっ引かれるハメに。パトロールのヘリコプターに乗せられ、もはや絶体絶命だ。そこでオスメント機転をきかせた。ヘリの運転席に乗り込んでメチャメチャに操縦。てんやわんやの大パニックの中、オスメントとジュード・ロウは辛くも「ルージュ・シティ」をヘリで脱出した。もはやジュード・ロウもこの街には居場所がない。オスメントの提案に異存のあろうはずもないのだ。

 「地の果ての街、マンハッタンへ!」

 ヘリでどんどん飛んでいくと、見えてきましたマンハッタン。いまやどっぷりと水没して、そこから廃墟になったビルがにょきにょき林立している。おっ、あったぞマーライオン。でも、マーライオンってシンガポールじゃなかったっけ(笑)?

 そのビルのヘリポートに着陸すると、なるほど誰かが部屋で待っていた。その誰かとは?

 オスメントがもう一人いる!

 「僕は君、君は僕…」とすっかり混乱するオスメント。片や待ち受けていたほうのオスメントは、妙に余裕しゃくしゃくだ。

 自分は世界でたった一人のはずなのに、かけがえのない存在のはずなのに…。この精神的ストレスに耐えかねたオスメントは、待ち受けていた自分の分身を、手近な鈍器で思いっきり殴りつけた。

 ボッコ〜ン! 頭がコロコロコロ〜ッ。

 あらら、あいつ殺しちゃったよ。キレた子供は怖いとばかりにジュード・ロウはこっそり逃げ出した。ところがそこにまた闖入者が一人。出てきました、実はオスメントの生みの親のウィリアム・ハート博士が、なぜかでっかい優勝トロフィー持ってヨロヨロ入場だ。

 「よく来たっ、痛みに耐えてよくやったっ。感動したっ」

 何が何だか分からないオスメントに、一方的にいろいろまくし立てるハート博士。「ドクトル・ノウの身の下相談室」に細工して、彼をここまで誘導したのも博士の仕業だった。オスメントの開発チームの面々と会わせるとかなんとか言って奥に引っ込んだ博士だが、オスメントの混乱は収まるどころか極限に達していた。

 部屋を見ると、あちこちに自分と同じ顔のロボットが置いてある。それどころか箱詰めになって出荷寸前のものまである。僕は唯一のかけがえのない存在じゃなかった。大量生産の工業製品にすぎなかったんだぁ〜。

 オスメント一時の興奮が過ぎ去ってみれば、後はガックリと落ち込みのみ。かけがえのない存在でなければ、僕はママにも愛してもらえはしない。世をはかなんだオスメントは、ビルから真っ逆さまに海に飛び込んだ。

 そんなオスメントを助けたのは、ヘリに乗ったジュード・ロウ。いや〜このヘリって空海両用だったのね。ところがオスメント助けられるやいなや、開口一番とんでもないこと言い出した。

 「いたよいたよ、ブルーフェアリーが海の中にいた!」

 ところが今度はジュード・ロウの様子がおかしくなった。何だか空高く引っ張られていくみたいじゃないか。やややっ。その上空には警察のヘリが。「007は二度死ぬ」に出てきたみたいに、ヘリコプターから磁石ぶら下げているのか、ジュード・ロウは引っ張られて空に浮かび上がりそうになる。

 「もうダメだよ、オスメントくん。ブルーフェアリーによろしくな」

 「さようならぁ」

 ジュード・ロウは「TOKIO」を歌った時のジュリーこと沢田研二みたいに、両手をパァッと広げて最後のポーズをキメたまま、どんどん空中を浮かんでいった。ジュードが空を飛ぶぅ〜っと。去り際までとことん気障を押し通すカサブランカ・ダンディな憎い奴。「クロコダイル・ダンディ in L.A.」とは大違いだぜ。

 オスメントは熊を連れてヘリで海底へと沈んでいった。

 海底には大昔の遊園地が静かに横たわっていた。そこに「ピノキオ」のコーナーが…。いたいた! めざすブルーフェアリーの像は、まるで今も何も変わりがないみたいに静かにたたずんでいた。

 「ブルーフェアリー、お願いです。僕を人間の子にしてください」

 ちょうどその時、ヘリが何かを引っかけたのか、遊園地の大観覧車が「1941」みたいにブッ壊れてヘリに倒れかかってきた。

 「ヤベえぞオスメント、俺たち閉じこめられちまったみてえだぜ」

 でも、オスメントは祈りに祈って他には全く目もくれない。ただひたすらにブルーフェアリーの像を見つめて、祈って祈って祈って、祈り続けて…。

 祈り続けたあげく、2000年の時が経った。

 

 氷漬けのマンハッタン。もはや訪れる者は誰もいないこの廃墟に、何者かの乗り物が忙しく飛び交っていた。今や大氷原と化した海の氷塊を切り出した底に、この正体不明の何者かはヘリとブルーフェアリー像を発見。ヘリの扉を開くと、そこにはオスメントが深い眠りについていた。

 この正体不明の者たちは、未知の宇宙からの来訪者なのか。

 刺激を受けてかオスメントは、深い眠りから眼を覚ました。ブルーフェアリー像はまだそこにある。思わずブルーフェアリー像に駆け寄るオスメント。しかしブルーフェアリー像は、夢が現実の中で色褪せていくように、オスメントの目の前で無惨に砕け散った。

 やがてオスメントは、なぜか見慣れた懐かしい場所に連れてこられる。それはあの自分が子供として迎えられ、愛する義母と過ごした家。レオナルド熊も一緒だ。

 だが、母も誰もそこにはいない。

 それは宇宙人が彼にプレゼントした、彼の故郷だったのだ。

 宇宙人は彼にブルーフェアリーの幻想を見せて、彼の望みを聞き出そうとする。彼の望みは一つ。人間の子になりたい。人間の子になって母に愛されたい。

 だがそれは無理な相談だった。

 宇宙人はオスメントに語りかけた。もうすでに人類は絶滅したこと、当然のごとく母はもういないこと、体の一部でもあればクローン技術で母を蘇らせられるけれど…。

 その時、レオナルド熊が一房の髪の毛を取り出した。オスメントが母の髪を切って窮地に追い込まれた時、その一房の髪を熊は黙ってとっておいたのだ。でかした熊さん!

 だが宇宙人は、そこに追い打ちをかけるような言葉をオスメントに告げるのだった。

 クローン技術で蘇らせても、母はたった一日しか生きられない。そして一度生き返らせたら、もう二度と再び同じ事は出来ない。その日の夜に母が眠りについたら、それが永遠の別れになるのだ…と。

 君はそれでも母に会いたいか? たった一度愛されるだけのために…。

 

 

 

 次ページへつづく

 To Be Continued...

 

 


 

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