「ドリヴン」

  Driven

 (2001/09/10)


実は男っぽいホストの世界?

 ホストの世界って言うと、カッコイイ男が女にコビまくる業界って、みんな思ってるよね?

 実は僕もそう思ってた。同性としちゃそんな男なんてサイテーなわけだから、ケッと思ってたしね。まぁ、カッコイイ男、モテる男へのひがみも手伝って、どこかバカにしてるとこもあったわけ。最近じゃ沢田亜矢子の元亭主のなんとかいうサイテー男もこの世界に身を投じただけに、いいイメージなんて湧きっこないわな。

 総じて水商売の世界って、この業界で働く人には申し訳ないが、あまりイメージによろしくない。でもねぇ、回りから漠然と想像してるのと実際接してみるのとでは大違いってことは、世の中よくある話なんだね。

 かつて僕は仕事を通じて銀座のクラブってとこに行ったことがある。「銀座のクラブ」だよ! 当時僕はまだ20代後半、そりゃビビッちゃうような雲の上の世界だ。そしてたぶん、今後二度と行くこともないだろうけどね(笑)。その時だってお客のお偉いさんに連れていかれたわけ。当然のごとく、僕が自力で行けるわけもない。店の中はと言うと、いかにも「銀座」って世界が展開されてたね。僕みたいなペーペーの若造は浮きまくってた。肩身は狭いよ、そりゃもう。僕を連れていったお客はここでも上客の部類らしく、女の子がササッと何人かついたわけ。何とペーペーの僕にもビックリするような美女がついたんだよね。

 ところで僕も、スナックで女の子がついて…ってな経験がないわけじゃない。だけどそんな時は何とも気詰まりで、いてくれないほうが嬉しいって状態だったんだよね。逆にこっちが気を使ってサービスしてって、とんでもない有様で。だから銀座でも隣りに女の子が来た時には、いたたまれない気になっちゃったんだよ。おまけに場所は高級クラブだ。卑屈になっちゃうよねぇ。

 ところが銀座って、高級クラブって…そこが全く違うんだよね。とにかく楽しい。この女の子がすごく頭良くて話がうまい。何より僕から卑屈な気分を忘れさせる術をわきまえている。例えどんな大したことない奴でも、ちゃんと客としてリラックスさせるテクニックを持っている。しかも変にコビたりしない。これならいくらお金を出しても惜しくはないよな。つまりはプロフェショナルってことなんだろうね。この時から、僕の水商売への見方が変わった。もっとも、僕が行けるようなスナックとここじゃあ、女の子の質からして比べるべくもないけどさ。

 だから当然、ホストクラブと称するところでも、一流ならそれなりのものなんだろうね。

 しかも驚いたことに、ホストって必ずしもスカした美男ばかりとは言えないらしい。テレビで見たんだけど、ある高級店では稼ぎ高ナンバーワンって、実はカッコイイ男じゃないんだよ。売れっ子ってのはちゃんといて、そいつはいわゆるカッコイイ男なんだけど、そいつより稼ぐ奴が別にいる。それが「つなぎ」って言われている奴らしくて、彼は常にカッコイイ奴の引き立て役として場を盛り上げていい雰囲気をつくる。そのためにはあまりカッコよくてはいけない。全身から人の良さをにじみ出させてる苦労人ふうの男がいいわけ。彼はいいムードをつくったら場を売れっ子に譲る。だからこいつがいないと店が回っていかない。インタビューすると、売れっ子たちがこぞって彼に感謝して深い尊敬を抱いてる。しかも、そういう場所って疲れた女性が癒されに来ているわけだから、この「つなぎ」目当てに来る客だっているんだね。だから店もこいつを重要視しているんだ。それこそプロ中のプロ。これって実はかなり男っぽい世界じゃないか?

 ベストサポートこそ、チームの要って考え方がさ…。

 

レースの世界に展開する新旧の激突

 それは世界の強豪がしのぎを削るレースの世界。今年も去年のシーズン・チャンピオンであるティル・シュワイガーが、世界各地のレースを連戦連勝を重ねて独走態勢に入っていた。しかし、どんな世界でもニューカマーは突然やって来る。天才的なドライビング・テクである日突然シュワイガーから勝利をもぎ取った、若きレーサーのキップ・パルデューこそ、まさにそうした鮮やかなニューカマーに違いない。

 やがてパルデューは単なる若手から、シュワイガーのライバルへと頭角を現しだした。この若手に連敗を喫したシュワイガーはイライラが高じて、ついつい恋人エステラ・ウォーレンに八つ当たり。だけどこんなピンチの時に、「あたしとの仲をどう考えてるの?」なんてグチャグチャ言われたら、シュワイガーでなくたって頭に来る。こういう時こそサポートが欲しいのに文句しか言わないウォーレンは、オッパイでかいだけで口ぽか〜んと開けてる見たまんまのバカ女。「おまえは気が散る存在」と切って捨てるシュワイガーは正解なんだよな。バカ女ウォーレンは怒って出ていくが、こんな女と手が切れて良かったではないか。てめえは猿とでも遊んでろっつーの。

 だがその頃、絶好調のはずのパルデューも急に注目を集めた重圧で壁にブチ当たってた。いきなりここまで来ちゃったから余裕がない。「タイタンズを忘れない」一本に脇で出ただけで、日本でファン・クラブまで出来ちゃったあたりからして本人のためにならない。おまけに彼を育てたとデカいツラしてるマネジャーの兄貴ロバート・ショーン・レナードが何から何まで口を出す。レースのことなど分かりもしないのに偉そうに文句言う。でも兄貴だし世話になったし…と何も言えないパルデュー。

 チーム・オーナーのバート・レイノルズはこれではいかんと、起死回生の切り札を出してきた。かつて花形レーサーだったが、事故で現場から離れたシルベスター・スタローンがそれだ。

 レイノルズからの久々の呼び出しに喜々としてレース場に戻ってきたスタローン。しかし、実はパルデューのサポート・レーサーとして雇われたのだと知って、ちょっとブルーになる。だが、やっぱり久しぶりの復帰は嬉しい。軽く腹ごなしに見せたドライビング・テクに、若いパルデューの目はクギづけ。その経験と自信、ピンチの時こそ鼻歌うたってリラックスというプロ魂にぐっと来るが、兄貴レナードが何かとジャマをするのでロクに話も出来ない。スタローンもこのレナード兄貴に自分が信用されずにナメられているのにムッと来たが、ここは我慢だ。久々に再会のシュワイガーにまるっきり過去の人扱いされるが、それも気にしない気にしない。

 だが、かつての恋人ジーナ・ガーションに冷たくイヤミ言われるのはさすがにこたえた。確かに昔は俺もエゴイストでこの女を泣かせた、あげくの果てにポイと捨てた。そんなガーションが、事もあろうに同じチーム・レーサーのクリスチャン・デ・ラ・フュエンテと結婚するとは…。そして今回スタローンがサポート・レーサーとして復帰することで、このデ・ラ・フュエンテの仕事を奪うかたちになってしまったから、ガーションのイヤミもさらに一段とサエわたらざるを得ない。慰めはこのデ・ラ・フュエンテがスタローンを恨まず、今も彼に友情を抱いてくれていること。そしてレイノルズ・チームの追跡取材をしている女記者のステイシー・エドワーズと仲良くなれたことかな。だけどこのエドワーズといいムードになるたびに、ガーションが割って入って昔のイヤな話をむし返すのが頭痛のタネだが…。

 ところで煮詰まったパルデューが思わずすがったのが、何とシュワイガーと別れたウォーレンとくるから世の中分からない。この女もどこまで調子いいのか、口ぽか〜んと開けたバカづらがパルデューのたまってる何かを誘ったのか…。デカいオッパイと反比例してオツムは軽いこの女のどこがいいのか知らないが、シュワイガーもこれにはまいった。

 弱り目にたたり目。次のレースではまたまたシュワイガーとパルデューのツバズレ合い。どっちもどっちの煮詰まり具合だったが、ここにスタローンを投入したレイノルズには秘策があった。久々のレースに張り切っていたスタローンをあえて当て馬に使い、パルデューは僅差でシュワイガーに勝ったわけ。でも実力で勝ったわけじゃないからパルデューは本調子に戻らない。シュワイガーはさらに焦ってドツボ。スタローンはスタローンでやりきれない気分…と三者三様のスッキリしない結果となった。

 次のレースじゃ事故ってリタイアのパルデューはマジでヤバい雰囲気になってくる。兄貴は相変わらずうるさいしねぇ。シュワイガーだって彼女がいない寂しさに、コワモテの顔が弱気にもなってくる。そんなかつてのライバルを忍びなく思ったスタローンは、シュワイガーにアドバイスする。かつての自分の失敗を繰り返させなくない思いから、そんなに好きな女なら土下座したって取り戻せと言ってやるんだね。そうだ、男のプライドが何だ。バカづらウォーレンにそんな価値があるかどうかは別にして、土下座したって女を振り向かせよう、取り戻そうとするのが真の男らしさじゃないか。さすがいい奴、真の男スタローンだぜ。

 そんなある日、スポンサー主催のパーティーがあったわけ。ここでシュワイガーはスタローンのアドバイス通りに素直にウォーレンに謝った。元々シュワイガーへのツラ当てでパルデューとつき合ってたウォーレンは、アッサリと元のサヤに戻っちゃうんだね。まったくどこまでケツの軽い公衆便所女なんだおまえは! これを見たパルデューは逆上。パーティー会場に置いてあったレース用のマシーンに飛び乗って、アッと言う間に公道に飛び出した。これはヤバいと自らもマシーンに飛び乗り、彼の車の後を追うスタローン。公道でしのぎを削るカーチェイスが始まった。沿道のお姉ちゃんなんて、車が猛スピードで通過したらOh!モーレツでスカートおっ広がりのパンツ丸見え。おまわりさんが追っかけたって全然相手にならない。稲垣吾郎もこれくらいドライビング・テクがあったら、あんな目に合わなかったのにねぇ。そりゃあ確かにあいつは悪い。ジャニーズ事務所怖さにちゃんと追及出来ないマスコミもヘッピリ腰。だけど、警察は人気タレント捕まえて得意になってるヒマがあったら、身内に甘い体質をもっと考えたほうがよかぁないか? 激しいカーチェイスの果てに吾郎じゃなくてパルデュー捕まえたスタローンは、勝つことより大切な何かをこの若者に語り聞かせるのだった。

 「純粋なレースの歓びを味わって走れ」

 そんなスタローンの教えを忠実に聞くようになったパルデューが、兄貴のレナードには面白くない。もっと面白くなかったのがレイノルズで、「勝利」以外のアドバイスは余計だという気持ちだったんだね。そこで次のレースではスタローンははずされ、元々のデ・ラ・フュエンテがサポート・ドライバーに復帰したわけ。これには女房のガーションも大喜びだ。やる気まんまん。オットセイもびんびん。よせばいいのにいいとこ見せようと、レイノルズの指示を無視して自分の勝利をめざして飛ばしまくるんだね。これがやっぱりマズかった。

 クラッシュ!

 デ・ラ・フュエンテのマシーンはコースを飛び出して川の中に突っ込んだ。車から出られないデ・ラ・フュエンテ。川にはマシーンから漏れたガソリンが流れ出した。

 これを見たパルデューは、何と優勝のかかったレースから自ら離脱して現場に駆けつけた。しかもシュワイガーまでレースそっちのけでやって来た。いがみ合ってた二人が力を合わせてデ・ラ・フュエンテを助け出そうとする中、炎が川に迫ってきた。遠くで見ていたスタローンもたまらず飛び出す。 こりゃ今回も「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」かなとシュワイガーが観念したちょうどその時…。

 どっか〜ん!

 しかし奇跡的にデ・ラ・フュエンテもパルデューもシュワイガーも助かった。その時、男たちの中で、何かが変わったんだね。

 だが何より勝利を求めてたレイノルズは怒った。レースを投げた奴などいらんと、足を負傷したパルデューを見放そうとする。しかも兄貴レナードまで金づるにならない彼を見捨てて、来期はシュワイガーと契約しようとする。

 いまや四面楚歌のパルデューはどうなる? そして彼の再起に賭けたスタローンは?

 

 

 

 

 

 

 

ここからは一応映画を見てから

 

 

 

 

 

 

 

年齢をくわえた「クリフハンガー」コンビ

 これってレニー・ハーリン監督とシルベスター・スタローンの「クリフハンガー」コンビが再び組んだ作品なんだよね。でもこのご両人の名前を見て、ちょいと身構えちゃう人も少なくないんじゃないの? 僕は「クリフハンガー」は好きな作品だけど、やっぱりこの二人の名前を見たらちょっと心配になったクチだ。

 ハーリンの名前を初めて僕が聞いたのは、やはりあの「ダイ・ハード2」からだよね。第一作には及ばずとも続編であれだけやれば大したものと、最初見た時には目を見張った。フィンランド出身なのにアメリカ人以上にハリウッド気質の大作をつくっちゃうあたりもビックリ。

 続く作品が「クリフハンガー」で、これも山岳アクションとして出色の出来。この時主演したスタローンは当時からすでにジリ貧状態で、この一作でやっと一息ついたかたちだったんだね。…とまぁ、ここらあたりまでは新しいアクション大作のつくり手として見どころある奴という感じだった。

 ところがハーリン、女優のジーナ・デイビスと結婚したのがつまづきの元。この恋女房使った「カトスロート・アイランド」「ロングキス・グッドナイト」を発表したが、この2本がやたら構えがデカいながらも、思いっきり内容空疎で大味な大作だったんだね。見て僕は思わずガックリきたし、映画そのものも大コケした。

 その後、デイビスと別れたのがよかったか、一昨年公開された海洋アクション「ディープ・ブルー」は過度な大作ぶりが影を潜め、ムダのないキビキビしたアクションに戻ってちょっと復活した感じだった。それがこの「ドリヴン」でまたまたの大作ふうの構えに戻ったから、何かイヤ〜な予感がしちゃったわけだよ。

 一方のスタローンと言えば、「クリフハンガー」の後はまたまた低迷が続いた。それが前作「追撃者」では、B級ふうの作品でちょっと変わった雰囲気のいい味出した。スタローンも変わりつつあるのかなと思わせた矢先の大作「ドリヴン」とくるから、あれれ?とこれまた不安になったわけ。

 そんな今回のコンビ作「ドリヴン」、何やら見る前は大味の予感だったが実際はどうか? 結論から言うと、これがなかなかいいんだよ。確かに大味でないわけではないし、例えばのべつまくなし鳴りっぱなしの安いロック・ミュージックもちょいと耳ざわり。だが人気のモータースポーツの世界という、どことなく大味で俗っぽい世界のイメージとしては、これも正解なのかもしれないぜ。そして今回はド派手な作品の構えの前に、登場人物のキャラがキッチリ立っているところがいいのだ。

 レース場面の派手さはハーリン作品らしいところで、今回は発達したCG技術を駆使して今まで見られなかったようなレース・シーンを展開している。何と言おうと、これが最大の見せ場ではあるよね。ただし調子に乗ってCG使いすぎてるもんだから、時々何だかゲーセンでテレビゲームやってる気になるショットも出てくるけどね。これはご愛敬としておきたい。

 そして今回いいなと思う点を挙げると、まず見た後の気持ちの良さがあるんだね。実はハーリン作品ってドデカくて見せ場満載なのはいいけれど、見せ場を派手にしたいがあまりに無神経にモノをブッ壊したりムダに人を殺したりしすぎてた。それがガサツで何ともイヤ〜な気分を残したわけ。でも「ドリヴン」はチト違う。今回も派手なカー・クラッシュがあるにはあるが、過度にブッ壊したりはしないし、何よりムダに人命が失われない。だからとっても後味がいい。それだけでも見ていてだいぶ気分がいいよ。

 考えてみると、生き馬の目を抜くハリウッドで生き抜くために、ハーリンも背伸びして大風呂敷広げて大ボラ吹いてたのかもしれない。女優を女房にもらったんで、見栄を張りたい気もあったかもしれない。そんな彼がかつて組んだ盟友スタローンと再び出会ったことでふと立ち止まる気になった、ちょっと身の丈考えた作品づくりをするようになったんじゃないか? だとすれば、彼も歳を重ねて「大人」になったのかもしれない

 そして主演のスタローン。彼が今回ぐっと引いて抑えに回った、その程の良さが好印象を呼ぶわけ。役どころもしがないサポート・レーサーに徹して、若手を引き立てる役。実際、物語の実質上の主役は若手のキップ・パルデューだと言ってもいい。それをサポートして年齢に見合った味わい出してるスタローンが、なかなかいいんだよ。

 脇にもレイノルズ、シュワイガー、ガーションなど厚みのある役者を配して、それぞれに華を持たせてのアンサンブル演技。かつてのように何が何でも主役のワンマン・ショー、俺が俺がのヒーローぶりを誇示してない。前作「追撃者」でもその傾向が現れていたけど、あれはあくまで彼としては変化球。今回は「ロッキー」から踏襲してきたスタローンの十八番…挫折した「いい奴」の再起というパターンを活かしながら、彼の現在の年齢をも活かしての役どころになっているわけ。それがワンマン・スーパースターとして君臨しながら近年行き詰まっていた彼自身の姿とダブってくるあたりがうまいじゃないか。何しろ今回の一番の見せ場、事故った同僚ドライバーをパルデューとシュワイガーが救出する場面に、不死身のヒーロー役を得意としていたスタローンその人が出てこないんだからね。この一歩退いた謙虚さが全編に貫かれてて、いい味出してるんだよ。

 ではスタローンは見せ場がないではないかと言えば、それは違う。彼が前面にしゃしゃり出はしないが、公道をレースカーで飛ばした後で、さりげなく後進パルデューにアドバイスするくだりはどうだ。公私ともにピリピリのシュワイガーに、女のことで一言告げるくだりはどうだ。決してお説教ではない。自らの悔いをにじませながらの、一歩退いた忠告だから説得力がある。

 脇のパルデューやシュワイガーにしても、ガツガツと勝つことにどん欲なだけの余裕のなさから、人間として目覚めていく。 それが挫折したスタローンの再起と同時進行で語られていくわけ。最終的には映画全編にそんなスタローンの存在感が漂うオイシイ役どころになっているから憎いよね。

 例の見せ場でも、いがみ合ってたライバル同士が力を合わせて救出にあたるという設定だ。ここで友情が芽生えていくんだが、ここをありっこないクサい設定と切って捨てたらこの映画楽しめなくなる。そんなことありっこないって? ありっこないかもしれないからこそ、いいのではないか。

 ピンチの時こそ鼻歌うたってリラックスなんて、老練スタローンのヤボでオヤジな極意をカッコイイ若手パルデューが踏襲していく。その師匠から弟子への心意気の伝承なんて、ありきたりではあっても泣かせる趣向だよね。この映画ではどちらかと言うと「負」の部分を担う仇役に回ったロバート・ショーン・レナードやジーナ・ガーションですら、ラストには「いい奴」になっている。そりゃ確かにクサいことはクサい。そしてありきたりでもある。だけど、ホントはみんな誰でもこんな世界があることを、心のどこかで願ってるんじゃないか? それを照れずに堂々と打ち出した姿勢が、男っぽくも嬉しいんだよ。

 だって単純明快でありふれてるお話ながら、それを真っ向堂々勝負で押し切ってみんなを納得させちゃったのが、スタローンの出世作「ロッキー」じゃないか。

 聞けば今回の作品、スタローンが自ら脚本を書いて映画会社に売り込んで、自力で実現させたものとか。そのスタイルは「ロッキー」の時と同じだよね。今回のこの「ドリヴン」は、だからスタローンにとっての「原点回帰」と言ってもいい。しかも今回はそれにとどまらない。彼は明らかに年齢を重ねて、より大切な何かを映画に持ち込んでいるんだよ。

 この映画は、レース終了後の表彰台で幕を閉じる。

 ライバル同士のパルデューが一位、シュワイガーが二位。そして「絶対ヒーローの主演スター」スタローンは何と謙虚にも三位で表彰台に上がる。その三人の晴れ晴れと楽しげな表情で映画が終わる時、見ている僕らも深い幸福感に包まれる。それは例えはいささか突飛ではあるが、まるであの「点子ちゃんとアントン」のエンディングみたいに、満月のまったく欠けたところがないような至福の時を登場人物と共有する幸福感だ。

 年齢を加え辛酸をなめて身の程をわきまえることを悟った末に、回りをもり立てることの意味を知ったスタローン。彼が表彰台に向かう時、惜しかったなと慰めるチーム・オーナーのレイノルズにこう語るんだね。

 「俺は勝ったよ」

 そうだよ、彼は確かに勝った。この今時珍しいくらい爽やかな後味の映画を見てきた僕らには、何のためらいもなくそう言える。そして実はこの僕らだって、それを実生活の中で求めてやまないんじゃないか?

 なぜなら、「成熟」こそが人生で最高最大の勝利なのだから。

 

 

 

 

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