「パール・ハーバー」

  Pearl Harbor ロング・バージョン

 (2001/07/30)


 

手早く結論知りたい人はこちら

 

日本には、まずはアメリカありき

 選挙のせいもあるのか、今の宰相の口グセでもあるからか、とにかく何でもかんでも改革改革…と毎日まいにち新聞テレビ雑誌では繰り返し繰り返し言ってる。今日日曜日は参院選の投票日。テレビをつけると今度は日本の教育をどう改革するかと延々議論していたが、この内容がまた十年一日のごとし。

 日本の教育は個性を生かせない、突出した人間を伸ばせない、うんぬん。

 いや〜、まったくその通りだよ。でも、それ俺が子供の頃から言われてるよね。別にこの番組に出演してるパネリストたちの専売特許じゃあない。ハッキリ言って耳にタコの話。パネリストにはそれなりに高名なセンセイやら学者やらも出てきているのに、こんなありふれた事しか言えないのかと唖然とした。これじゃ確かに日本の教育には問題あるかも(笑)。

 そして極め付きは、アメリカの企業だか大学で働いているという日本の学者が登場。アメリカがいかに優れているかを力説し、日本はだからダメだとか、自分は日本に帰りたくないとか言いたい放題。いや、別にいいんだよ、このセンセイが勝手にあっちに居座るぶんには。

 だけど、日本にいるうちはダメだとか、日本にいるヤツはダメだとか、勝手に言わないでほしい。自分は違うって言いたいんだろうが、結局自分はエライって言ってることになるのが恥ずかしいことだとなぜ分からないのか。そこへきて、まるで自分がアメリカ人になったみたいな顔をするから、余計恥ずかしい。向こうのヤツはおまえのことを同胞だなんて見てないって。なぁ、イチローよ。

 確かにアメリカにはアメリカの良さがあるだろう。だが、問題点も深い。それを頭に置いた上で、それでもいいと受け入れた上でアメリカ流儀がいいと言っているのか。さもなければ何でも英語で書いてあってカッコいいとか言ってる茶髪の低脳にーちゃんねーちゃんと何ら変わんないよね(笑)。俺はアメリカンな社会なんてこれっぽっちもいいと思ってないよ。あっちの教育がいいとも思ってない。だって、ファストフードで店員が釣り銭を勘定出来ないんだぜ。教育うんぬんを言うなら、まずはマサチューセッツ工科大学とかの話をする前に、下々の方から云々するべきもんじゃないか。

 大体、何かと言えば海外との比較ありき…というとこが、実は一番日本のダメなとこなんだ(笑)ということはさておき、この米国在住のセンセイをはじめ、海外というとバカの一つ覚えに「アメリカ」というその話の早さがまたすごいよね。アフリカやオーストラリアは出ない。コトが福祉とか昔だったらフリーセックス(笑)とかの時だけ北欧とかが話題に出るけど、それが税金問題になったらまずこのへんの国は出てこないしね(笑)。まぁご立派なセンセイ方の発想からしてこれなんだから、日本にとっていまだにアメリカってすごく身近にして重要であることは間違いないんだろうね。

 われらが宰相からして、中国・韓国は無視したってアメリカとは親密にしたいと態度はハッキリしてる。先日の日米首脳会談では「ハラを割って話せた」そうだが、あいつらが俺たちにハラ割って話すことなんてあるのか。何だか日米双方で相当認識の開きがあるような気がするんだが。ま、でも僕らは今さらそんなことに慣れちゃってもいるんだよ。

 例えばこんな映画一つとっても、今さらいちいち動じないもんねぇ。

 

見る前から感想が決まってる

 この映画「パール・ハーバー」の企画が発表されて予告編が流され、さまざまな話題が提供されるうちに、映画ファンであるみなさんはいかなる思いで待ち受けていただろうか? すごく楽しみで傑作に違いない…と思ってた人って、少なくともこの日本ではほとんどいなかったんじゃだろうか?

 そう。ここは日本でこれを読む人々のほとんどすべては日本人だ。その日本がアメリカに仕掛けた「卑劣な」攻撃…真珠湾攻撃を題材にしたアメリカ映画ということからして、イヤ〜な予感がしてくるじゃないか。それでなくともこの真珠湾と広島は両国の間でかなりモノの見方が異なるデリケートな問題を抱えた歴史的大事件だし、この点になるとどちらも譲れずいささか感情的にならざるを得ない経緯がある。 それでなくても立場的に悪玉になる日本だ。こんな映画の中でどのように描かれるか分かったもんじゃない。

 まして日本を描けばいまだに何だか分からないものをこさえるハリウッド映画だ。その歴史観がま真っ当かどうか以前に絶対国辱ものの描写が登場するに違いない。ヘタすりゃ「猿の惑星」リメイク版だって、猿は日本人だったってオチになりかねない(笑)。日本公開版からはあらかじめ日本人の国民感情を逆撫でするシークエンスを削除して公開されるという情報が流れるに至って、「やっぱりな」という気分が広がっていった。

 そこへ製作・監督のチームがジェリー・ブラッカイマーとマイケル・ベイの二人とくれば、不安はなおさら。「ザ・ロック」はともかく、あの「アルマゲドン」の陳腐さに辟易した映画ファンは数知れず。それでなくても大味な娯楽作をこの上なく愛するこの連中が、あんな歴史解釈の難しい大事件を我々日本人まで納得させるかたちで描き得る訳がない。仮に単なる娯楽戦争スペクタクルとして見ても、「アルマゲドン」級の中身スカスカなシロモノになるんじゃないか。

 またドラマの中心が二人の男の友情とそこに絡まる女との三角関係という、イマドキ例を見ないくらいズレた題材とくれば、これはもう終わったも同然だ。とてつもなく見ちゃおれない映画になってるに決まってる。

 案の定、アメリカで公開直後はナンバー・ワン・ヒットになったようだが、後は急降下というテイタラク。日本人が元も恐れる国辱もの、アメリカ愛国映画になっているだけでなく、それ以前に映画としてどうもダメな作品らしいと察しがつく。思った通りだ。

 映画サイトをやってる人のみならず、この映画については見る前から感想が出来ていたんじゃないか? 良くないことと知りつつ、やっぱりこの映画の場合は想像ついちゃうんだよね。それって大体こんなものじゃないかな?

 ブラッカイマー=ベイお得意のSFXを駆使したスペクタクル大作。確かに真珠湾攻撃シーンはすごいけれども、中心になる人間ドラマはお寒い。ただダラダラと長くて退屈。日本側の扱いもお粗末至極でどうしようもない。アメリカ国粋主義を気持ちが悪くなるほど鼓舞するだけで、中身カラッポの映画。

 あとはこれを確認するために映画を見に行くだけ。もう感想は出来ている。なるほど、こうにしかなりようがないはずだ。

 だが、果たしてそうか?

 そして、もしそうなら、どうしてそうなったのか?

 

政治的にやや問題ありのストーリー紹介(笑)

 昔むかし、アメリカのど田舎で飛行機乗りごっこに興じる二人の男の子がおりましたとさ。弟分の男の子の親父の飛行機に勝手に乗りこんで怒られたりしながら、大きくなった二人…兄貴分のベン・アフレック、弟分のジョシュ・ハートネットは米国陸軍の航空隊に所属するパイロットとなっていた。その無茶な操縦っぷりにお小言を頂戴する毎日。ところがまたまた無茶をやったある日のこと、ついに上官のアレック・ボールドウィンに呼ばれた。いよいよこれはヤバいと覚悟したら、アフレックは英国空軍に志願しろと勧められる。米国はまだ第二次大戦には参戦していない。おまえの腕を実戦で活かせというわけだ。一人置いてきぼりのハートネットはスネたが、アフレックは長年の夢の実戦に参加するため、一も二もなくこの話に飛びついた。心残りは一人残していく親友ハートネット…いや、実はもっと心残りなことがもう一つあったのだが。

 それに先立つ数週間前、パイロットになるための健康診断で看護婦ケイト・ベッキンセールと出会ったアフレック。デートでバッチリとキメるつもりがカッチョ悪いザマさらして笑われちゃったものの、それがかえってウケていい仲になっていたのだった。やっぱ「いい奴」アフレックだもんねぇ。

 いよいよイギリスへ出発の前夜、ベッキンセール率いる看護婦さんチームと、アフレック&ハートネット率いるパイロット・チームの合コンが行われた。スネてるハートネットを除いてみんな楽しむその夜、アフレックはイギリス行きを彼女に打ち明ける。実はこの夜、ベッキンセールもある覚悟を胸に秘めて、勝負パンツはいてこの場に臨んでいた。だが、アフレックは人格なくなりそうな下半身を冷やしながら、彼女との一戦交えるエネルギーをドイツ軍にぶつけるべく、よせばいいのに本音抑えてヤセ我慢。これが後々悔やまれることになるのは、みなさんご想像の通り。ここぞという時にはためらわずに「GO!」というのは、今も昔も恋人たちの教訓であるのは言うまでもない。

 アフレックが行った英国での戦況は著しく悪く、戦友も次々命を落とす有様。アフレックは寒いイギリスの気候の中、我慢させた下半身がいつまでもアチチの状況なので何とかかんとか持ちこたえていた。支えは今はハワイに転属になったベッキンセールからのラブレターのみ。頭ん中はアレばっかし。ところがある日、ドイツのメッサーシュミットの魔の手に捕らえられ、冷たい海に真っ逆さま。ほてった下半身が冷たい海水にジュ〜ッと音を立てて冷え切った。

 アフレックが帰らぬ人となったとの報は、今はハートネットからベッキンセールにもたらされた。ハートネットもハワイに配属されたのだ。兄貴肌にちょっとズッコケ三枚目のアフレックと違い、あくまで二枚目で寂しそうな目のハートネットだが、こういう奴ほど下半身に人格がないことは男だったらみんな知っている。そしてこういう奴ほど純粋そうなふりをするのがうまい。あの寂しそうな目を覗きこんでみれば、そこにはでっかく「やりたい」って書いてある(笑)。うまいこと言ってベッキンセールの寂しさ哀しさにチャッカリつけこむハートネットは、ある晩しっかり彼女の肉体をガチンコ勝負でごっつぁんです。ま、しょせんアフレックに限らず、男の存在感なんてこんなもの。そこにうまくつけ込んだハートネットの薄汚さに勝負あったということか。翌日彼女がその事を後悔してなかったことにしようと思っていると、それを察して「昨夜は最高だった」とかうまいこと言って、彼女が別れを言い出す気勢をそぐあたりの狡猾さは、この手のヤサ男特有の嫌らしさ。だが、こんなにミエミエでも女にはそのあたりが決して分からない。 日本をナメきって大ボケこいてたアメリカ軍なみの無防備なニブさ。

 政府ではルーズベルト=ジョン・ボイト大統領がのほほんとしていたが、ハワイの前線にいる軍の連中は日本軍のイヤ〜な動きにイライラしていた。暗号解読の連中は何かあると分かってはいても、それが何かは分からない。実は山本五十六=マコ連合艦隊司令官率いる日本海軍は、着々と真珠湾攻撃の準備を進めてフンドシのヒモを締めていた。それを察した政府の暗号解読チームのダン・エイクロイドが軍に進言していたものの、軍のお偉いサンはあえなく却下。やっぱり黒スーツに黒タイでサングラスでもかけなきゃスゴ味も出ないと、今は亡き相棒ジョン・ベルーシが恋しい限りだったが、今更何もどうすることも出来ないエイクロイドではあった。

 ハワイ真珠湾では、戦艦アリゾナに乗り込んでいた給仕のキューバ・グッディング・ジュニアがボクシングの腕前でいいとこ見せていた。そんな彼を艦の誇りと言ってくれる艦長にどこかロバート・デニーロの面影を感じ、今度海軍に入ったら潜水をやってみようかとなぜか思っているグッディング・ジュニア。かくしてハワイの平和な日々は、軍民問わずみんなチンタラしながらダラけきって過ぎていく

 そんな平和をかき乱したのは、日本軍ならぬベン・アフレック。なんと奴は生きていた。喜び勇んでベッキンセールのもとにやって来るが、どうも様子がオカシイ。そこにやって来たハートネットのツラを見ているうちに、気はいい男だがどこか鈍感なアフレックでも何となく事情を察してしまった。う〜ん、こりゃ最悪だ。

 飲んでからんで、さすがの「いい奴」アフレックもハートネットにツラく当たらずにはいられない。だからあの時ヘンにカッコつけずにやることやっときゃいいものを。アフレックがこんなに怒り狂うのも、結局愛だ何だというキレイごとより「自分はやれなかった」その一点が頭にくるってことなんだよね。だがハートネットはハートネットで「悪かった」の一言も言わず「アソコが欲しがったんだも〜ん」と開き直る一方。こいつはこいつでどこまでもずうずうしく下半身に人格のないヤサ男なのだが、何度も言うように女受けするのはいつも真っ赤な偽善大会のこのタイプ。見ているこっちは、ついつい早いところわが日本軍が来て、このクソ忌々しいハートネットに銃弾の雨あられお見舞いしてくれないかと思わず祈ってしまう。思わず殴りかかって大喧嘩の最中にヤバい手入れが入って、とにもかくにも車でその場を逃げ出す二人だった。

 そして1941年12月7日、運命の朝が来た。ハワイ上空を飛び交うわが日本が誇るゼロ戦の勇姿。だが、それはアメリカ人にとっては阿鼻叫喚、地獄絵図の始まりだった。

 ベッキンセールが病院で孤軍奮闘している間、アフレックとハートネットも地獄の戦場に駆けつけた。阪神タイガースが優勝した昭和60年のシーズン中、反目していた掛布と岡田の両スターが勝利に向けて手打ちしたあの伝説的な焼肉屋会談を思わせるように、二人もここはひとまずタッグを組んでゼロ戦相手に一暴れ。雲霞のごときゼロ戦の猛攻が過ぎ去った後、二人の間には少なくとも上辺だけは、あのひどい諍いは陰を潜めていた。

 今頃になっていきりたつルーズベルト=ジョン・ボイト大統領。煮え切らぬ側近たちの態度に毅然と不自由な足で立ち上がるパフォーマンスまで見せた。やがてハワイで頑張ったアフレックとハートネットの二人には、ボールドウィンから特命を帯びた任務が課せられる

 出発の日、あのベッキンセールがアフレックの元を訪れる。もう忘れたいアフレックに、ベッキンセールは自分が妊娠していることを告げる。どこまで自分勝手でゲスな女なんだおまえは! しかも、続けて言ったセリフがまた調子よくって、今でも忘れがたいのはアフレックだけど、ちゃんとハートネットを無事に帰してね、子供の父親なんだから…だと〜。てめえ〜男なら誰でもいいのかアレならどれでもいいのかこの公衆便所女。わざわざイヤがらせに来やがってクソビッチ女めが。この無神経さにもお人好しアフレックはすげなくあしらえない。飛行場に現れたベッキンセールに、ハートネットはアフレックの気も知れず、「君が僕よりあいつを取るんじゃないかと心配してたよ、ベッキンセールちゃん」とてめえの事ばかり。こいつらお似合いだよまったく。こんなてめえ勝手なド腐れ女と切れてよかったじゃねえかアフレックよ。俺たち男はいつでもみんなおまえの味方だぜ。ニヤけたマスクと口先だけ純粋ぶったゲス男ハートネットの始末は、俺たち日本男児にまかせてくれ! こんな男の風上にも置けないガキはキッチリとタマ抜いてやるぜ。

 出撃する精鋭部隊。行く先は日本、東京の空襲だ。前例のない空母からの出撃のために連日繰り返してきた離陸訓練の成果を見せてやる。余計な荷物も重荷も捨てて、抱えられる燃料持てるだけ持って、一路日本へ飛び立つぞ。帰りの切符はない。爆撃後は中国本土に不時着するという強引な作戦だ。

 さてこの作戦、果たしてその結果はいかに?

 

ある日のディズニー会議室議事録

 まず、僕の個人的感想を云々する前に、この作品の成立の経緯を僕なりに推理してみたい。以下はもちろんフィクションだと断った上で、舞台は今から2〜3年前のある日のハリウッド、場所は映画「パール・ハーバー」の企画書が提出されたディズニー=タッチストーン・ピクチャーズの会議室。出席しているのはディズニーの役員連中とプロデューサーのジェリー・ブラッカイマー、監督マイケル・ベイとご想像願いたい。

役員1:これからブラッカイマー氏提出による企画書を元に、新作映画製作のための企画会議を行います。 あれ? マイケル・ベイ氏はどこ行った?

ブラッカイマー(以下ブ):あ。彼は今、みなさんのためにジュース買いに行ってます

役員1:なんだい、パシリか(笑)。

一同、大笑い。

ベイ(以下ベ):あ、どうも遅くなりまして(とジュースをたくさん抱えて入ってくる)。

ブ:さぁほら、早く配って配って。みなさんお待ちかねだぞ。

役員たち:こりゃこりゃすまないねぇ(苦笑)。

ブ:ありゃっ?1本足らないじゃないか。全部で9本って言っただろ、ベイ?

ベ:あ。ぼ、僕はノド乾いてないんで差し上げます(と、盛んに汗を拭きながら着席)。

役員1:(ゴックンとジュースを飲んで)じゃあ始めましょうか。

役員2:まず僕から一言。ブラッカイマー氏には今まで充分稼がせてもらったから、こんな事は言いたくないんだけど、この企画書は正直言っていただけないな。イマドキ真珠湾攻撃の映画だなんて。若い奴らなんて見ないよ。

役員3:第一、真珠湾を描いた大作と言えば「トラ!トラ!トラ!」があったが、あの映画の興行成績がどうなったか知ってるかい? 当たったのは日本だけだ。そんな負け戦なんて誰も見たがらないよ。

役員4:それに3時間以上の大作だって? みんなウンザリしちゃうよね。

役員5:主役がベン・アフレック? 確かに彼は売れてるしいい役者だけど、こんな大作の主役かね? 他の若い奴二人も知らん役者だし。

役員6:脇に知られた役者を揃えるって言ってもねぇ。第一、制作費がどれだけかかるんだね?

役員7:メインになるのが古くさいメロドラマってのもねぇ。

ブ:おっしゃりたい事はそれだけですか?

役員1:これだけあれば充分だろ。こんな映画の製作は不可能だ。

ブ:では私から。今言われたみなさんの不平そのものが、この映画の成功を約束しております。そうだろ、ベイ? ちゃんとメモとってるか?

ベ:は、はい、ブラッカイマーさん(と手元のクシャクシャのメモ帳に書き留める)。

ブ:まずみなさん、あの「タイタニック」を映画化するという企画を提出した時、どんなリアクションがあったと想像しますかね?

役員たち:??

ブ:まず、あんな古くさい題材じゃダメだときたでしょうな。おまけに悲劇で終わるカタルシスのない話だ。アメリカの観客はソッポを向きかねない。しかも3時間を越える上映時間だ、みんなイヤになる。主役はレオナルド・ディカプリオ。確かに若手スターとしてクセのある作品で頭角を現してきていたが、あんな大作には不向きだ。ヒロインはと言えば、誰も知らないケイト・ウィンスレット。船のセットをはじめ、制作費がどれだけかかるか分からない。ドラマの中心は典型的メロドラマ。こんな映画の製作は不可能だ。で、スタジオが制作を諦めていたらどうなったでしょうかね? フォックスもパラマウントもあの莫大な興行収入は得なかった。「タイタニック」はビデオやDVDになってこれからもでかい稼ぎを生み出し続けている。さぁ、これでも私の言っていることがバカげていると言えますかな? どうだい、ベイ?

ベ:は、はい。

ブ:ん? 間違っているのか私が?

ベ:い、いや! 間違ってません、ブラッカイマーさん!

ブ:ありがとう、ベイ。賛同してくれて嬉しいよ。いかがかな、みなさん。

役員:し、しかし、それとこれとは…。

ブ:何をバカなことを! みなさんは今、手の中に金の卵を持っているんですよ。しかも「タイタニック」をつくった時、スタジオは前例のない大作に大ばくちを打たねばならなかったが、今我々にはこれを成功させるための勝利の方程式が出来ているじゃないですか。よく考えてみてください。

 歴史的な大悲劇…これに勝るドラマなんてないんです。我々には「タイタニック」で培われたノウハウとSFXやCGの技術がある。しかも真珠湾に船を沈めるためのプール付きのスタジオまで「タイタニック」はつくってくれたんですよ? 船ひっくり返して沈めるという、あの「タイタニック」の見せ場もバッチリいただきです。そこにこっちはゼロ戦飛ばすんですから、あっちよりゴージャスじゃないですか。また、これだけの満腹感ある大作を見せるには3時間以上の上映時間は当たり前。「タイタニック」を見た観客なら慣れっこですし、第一それくらいないと満足しませんよ。そして、向こうがディカプリオならこっちは好感度抜群のアフレックだ。ディカプリオだと女のファンしかつかないけど、アフレックは男にも好かれます。ヒロインはと言えばこの時代のエレガンスを出すためにもアメリカ女優じゃダメだ。イギリス出身のベッキンセールがもってこい。そしてみなさん、ケイト・ウィンスレットもイギリス女優だったことをお忘れなく。「風と共に去りぬ」のビビアン・リーをも思い出していただければ、エピック・ドラマにイギリス女優がドンピシャなことをお分かりいただけると思いますよ。制作費が大きくかかるのは、大作だったら必然でしょう。それでも何とか費用を浮かそうと、主役級の他二人は安い役者にしてあるんです。おまけに「タイタニック」は脇にはキャシー・ベイツ以外これといった俳優を持ってこなかったのに対して、こちらは多少なりともスターを配する用意があります。

役員6:ジョン・ボイトにキューバ・グッディング・ジュニア、そしてアレック・ボールドウィンねぇ。彼らのギャラはどうする? 安くはないんだぞ。

ブ:ジョン・ボイトは最近悪役ばかりオファーされるんで嫌気がさしてます。尊敬される大統領役をやらせると言えば飛びつきますよ。それにみんなチラチラしか出さないで、拘束日数を減らしてギャラを抑えます。それで出来るだろう、ベイ?

ベ:は、はい。出来ますとも、ブラッカイマーさん。

ブ:さすがベイだ。そして古くさいメロドラマって点も「タイタニック」の件でご了解いただけますな? しかも今回は単なる階級差の悲恋だけではない。友情に三角関係にとさらにパワーアップさせてある。こっちの方が泣けますよ。そしてエンディングはこのメロドラマを盛り上げる主題歌! ダイアン・ウォーレンって女性歌手に、「タイタニック」のセリーヌ・ディオンばりに泣かせのヴォーカルを歌ってもらいます。

役員7:む、むぅ。何だか君の話を聞いていると本当にそうだという気になるから不思議だなぁ。

役員2:ちょっとダマされてる気にもなりますがね。

役員1:映画のお客と同じにか?

役員たち、大爆笑。

役員3:言いたいことは分かった。しかし、やっぱり「トラ!トラ!トラ!」のことが気にかかる。アメリカの観客はこれをどうとらえるか、だ。

ブ:大丈夫です。真珠湾で終わらせません。負け戦は物語の中盤で終わって、後半は勇ましく立ち上がる大統領、立ち上がるアメリカ、東京空襲でいきます! ジャップをブチ殺せ〜!

役員たち:おお〜。

ブ:ただしアメリカの正当性を主張するために、軍需施設だけ空爆したようなイメージに見せかけますがね。なぁに、わが国がイラクでやったことと同じですよ(笑)。

役員4:待ってくれ。そうなると海外配収はどうなる? これだけの大作となると海外の稼ぎをアテにしないわけにいかないぞ。中でも日本はハリウッド映画の大のお得意様だ。それなのに日本人の神経を逆なでするようなことがあったら…。

ブ:その点も大丈夫ですよ。日本人ってのは自分がアメリカ人だと錯覚しちまうほど、ハリウッド映画に感情移入しちまう人種なんです。もしどうしても気になるようでしたら、山本五十六役に日本人の顔が立つだけのステータスのあるスター、例えばトシロー・ミフネを…。

役員5:ミフネ? 彼はもう死んでいるんじゃないのか?

ブ:え? そうなのか、ベイ?

ベ:は、はい、ブラッカイマーさん。

ブ:むむ。分かりました! ならばハリウッドが誇る日本人スターのマコ岩松を配役すれば、彼らのプライドも立つでしょう。

ベ:(独り言で)立つかなぁ…?

ブ:あ? 何か言ったかベイ?

ベ:いや、何も言ってません、ブラッカイマーさん!

ブ:じゃあ異議なしだ! それでも気になるなら、真珠湾攻撃直前に草野球少年たちの上空を飛んでるゼロ戦パイロットに「おまえら逃げろ!」と一声叫ばせましょう。そうすれば日本人のヒューマンな部分が強調出来て、彼らも感動してくれるんじゃないかと…。

ベ:(独り言で)だけど、その後で民間人も皆殺ししちゃうんだぜぇ…。

ブ:何か言ったか、ベイ?

ベ:い、いや。何も言ってません、ブラッカイマーさん!

ブ:ふむ。賛同してくれてありがとう、ベイ。いかがです、みなさん!

役員6:いや、まだある。例え言ってる通りいくとしても、これでは制作費がかかりすぎだ。何とかならんかね。せめてこの半分とか。

ブ:む、むぅ。もちろん出来ます! 出来るよな、ベイ?

ベ:は、はいっ、ブラッカイマーさん。たぶん…。

ブ:何だったら主役のアフレックのギャラも値切らせます。いや、もちろん我々二人のギャラも返上しますよ。いいだろ、ベイ?

ベ:え? は、は、はい。分かりました、ブラッカイマーさん〜(涙声)。

ブ:もちろん! 安くつくったなんて分からないくらいスペクタクルを見せますよ。「アルマゲドン」を思い出してください。その点ではベイは天才です。な、ベイ?

ベ:は、はい、ブラッカイマーさ〜ん。お〜いおいおい(と机に突っ伏して泣く)。

ブ:はははは、ベイのやつ、感激のあまり泣いちまってやがる。どうです、乗ってくれますか?

役員たち:まったく君には根負けだよ。分かった、やってくれ。ただし、制作費とギャラの件、忘れないでくれよ

ブ:もっちろんですとも! な、ベイ?

ベ:お〜いおいおい、おぉぉ〜いおいおいおい(と、泣き出して何も言えない)。

…とまぁ、こんな具合(笑)。あくまで笑い話だけど、ありそうな話じゃないか? 僕はどう考えても、この作品の企画の出発点には、あの「タイタニック」があったように思われるんだよ。でも、この場にいた全員が一番肝心な事を忘れちゃってるんだよねぇ。

 つくる目的とつくりたい意志を持っていた実力ある人物。

 ここには決定的に、ジェームズ・キャメロンが欠けているってことを。

 

言いたいことは何もないのかマイケル・ベイ?

 実際のところ、これだけ不評をくらい、悪い予感もたちこめてる作品はめったにない。何をどう考えてもロクな作品じゃないことは間違いないと思えてくる。おまけに上映時間がバカ長いとくれば、相当つまんないだろうなと覚悟も決めた。死ぬほどの退屈とこみ上げる怒りに対しての心構えも充分出来た。先入観でコチンコチンに凝り固まって、あとはスクリーンと対峙するだけ。

 するとねぇ、人間の想像力には限りがないということがよく分かるよ。なぜかと言うと…。

 まず、最初に退屈するかどうかだけ言うと、3時間の長丁場にも関わらず、意外に退屈はあまりしなかった。もちろん見ようによっては片っ端からケチをつけたくなるだろう。だけど極端な言い方をすれば、この映画はそういった見方をするようにつくられてはいない(笑)。この映画、ただポップコーンなんか食いながらボ〜ッと見ているぶんには(実際に僕はそうやって見た)、そこそこ見ていられる出来なんだよ。史上最悪の死にそうなほどつまらない映画ではない。第一、傑作の誉れ高いのにこれよりダレるミニシアター系映画なんてゴマンとあるからね(笑)。

 それから日本の扱いについてだが、国辱描写をカットしたという日本公開版に限って言えば、それほどのひどさでもない。もちろん山本五十六以下が参加している作戦会議の様子などは、まるでコメディみたいな背景で展開される。真っ昼間から野外で「風林火山」みたいなノボリ立てちゃって、黒澤明の「影武者」みたい(笑)。だから確かに笑っちゃうけど、目を背けたくなるほど悪意がこもったひどさと言うほどではない。山本五十六役を演じたマコも頑張ってたしね。マジで彼は悪くなかったよ。大体もっとひどい日本描写は今までハリウッド映画で死ぬほど見ている。それどころか、日本映画だって日本軍の描き方が正しいかどうか分からない。ちょっと前に長髪の人気タレントに戦闘機乗り演じさせた映画あったけど、それに比べりゃ大したことない。あの映画の監督、今の若者にもピンとくるようにあえて長髪で演じさせたなんて平気で言ってたけど、そんなのタレントが所属するプロダクションに押し切られたからだってミエミエじゃないか。つくる側の怠慢なのに見え透いた言い訳なんてやめてもらいたい。そんな愚作と比べれば、こっちのほうがまだ全然マシだ。俺もっともっと限りなく無茶苦茶な、モロ「チビで短足で狂ったジャップ死ね〜」みたいなものを予想していたからね。

 一応参戦には必ずしも賛成ではない山本五十六とか、出撃の際に覚悟のほどを吐露する日本軍兵士のモノローグが流れるとか、とってつけたようではあるが日本側に配慮したとおぼしき描写も出てくる。それでもやっぱり、しまいにゃ得体が知れない卑劣なジャップということにはなっちゃうんだけど、まぁこれは真珠湾攻撃の被害者側であり戦勝国であるアメリカが、自国の観客に向けて製作した娯楽映画である以上、こうならざるを得ないだろう。これより偏った歴史観の映画はいくらでもあるし、いわんや教科書つくってる国もある。「いい」とも「正しい」とも思わないが、これはこれで仕方ない。所詮とどのつまりは、アメリカのサマーシーズンにガッポリ稼ぐ国民映画めざしてるんだから。第二次大戦を正義の戦争として描いた大衆娯楽ハリウッド映画に、完全にフェアな視点なんて誰も期待しちゃいないだろ(笑)。正直言ってこの100倍はやるだろうと思ってたから、こりゃ配慮してるほうだって気になっちゃうんだね。

 ドラマなんか、俺はもっともっと寒気がするほど恥ずかしいものを想像していたもんね。だから、最初の頃なんかちょっとは好ましく思う部分もないわけじゃない。だって、誰だってこの映画にリアルな人間ドラマなんて期待するほどヤボじゃないでしょ(笑)? 飛行機でイタズラしたガキを叱る親父が、自分の従軍体験を思い起こされて愕然とするあたりも、これから起こる悲劇を予感させるものとしては悪くはない。ベン・アフレックとケイト・ベッキンセールのなれそめとかも、アホっぽいエピソードがアフレックの人の良さそうな個性とマッチして悪くはない。これで相手役ベッキンセールがもうちょっと何とかなりゃあ別だったんだけどねぇ。まぁ始まってすぐのあたりは、ありゃりゃ思ったよりいいかも?と思わされちゃったよ。

 先に「人間の想像力には限りがない」と言ったのは、まさにそのことなわけ。他のみなさんはどうか知らないが、僕は見る前にありとあらゆる最悪の可能性を想定していたため、この映画相当なひどさで一分一秒も見ちゃおれないシロモノなのでは?と身構えていたんだよね。その事前の思いこみがあったから、な〜んだ、まずまず見れるじゃないと思った。

 だから一部で言われているような、この映画が世紀の大愚作で全く見れたもんじゃないフィルムのクズとまで言う批判は、ちょっと感情的に過ぎる評価じゃないかと思うよ。何か言いたくなる要素があることは分かるけど、そこまでエスカレートした評価は出すのはヤボだろう。大体これってムキになって徹底的に叩かなけりゃならない映画じゃない。これより叩くべき映画はいくらでもある。かなり覚悟して身構えて接してみると、これが意外にフツーに出来た映画なんだよ。少なくとも見ただけで目に毒ってわけじゃない。

 そういったことを一旦ちゃんと評価した上で、改めてこの映画が作品としてどうかを考える必要があるんだね。そうなると、この映画は「アルマゲドン」チームの新作だということが改めて思い起こされるんだよ。

 だいたいアフレックとベッキンセールが離ればなれになったあたりから、正直言ってあまりと言えばあんまりなご都合主義の嵐。それに、せっかくアフレックの識字力の弱さというちょっと面白い要素を盛り込んでいながら、最初の部分以外まったくこれを活かしてないんだよね。「ブレイブハート」の脚本家ランダル・ウォーレス、ちょっとやる気ないんじゃないの?

 ベッキンセールという女優がエレガントに見せようとすればするほどにじみ出る、どこか下品な個性が災いしたのか。ハートネットという男優のヤサ男ぶりが嫌らしいのか。もちろん脚本の設定からして無理があるんだけど、とにかく主役三人のうちの二人にまったく共感も感情移入も出来ないのは致命的。ベッキンセールとハートネットはただ物事万事自分にとって都合のいい考え方ばかりする、品性の卑しい人物にしか見えない。唯一アフレックの「いい奴」ぶりだけは相変わらずなんだが、それもこの映画の無理な設定の中で歪んでしまってるんだね。まぁ、僕は何となく男として話が分かってそうなアフレックが好きだからねぇ、それでかもしれないけど(笑)。

  …とまぁ、ツッコミ入れられる部分はゴマンとあるわけ。でも、実は僕が問題にしたいのはそんなところではないのだ。

 それでも肝心の真珠湾攻撃をはじめ、戦闘スペクタクル・シーンはさすがにすごい。縦横無尽に動きまくるステディカムと見事なCG技術によって、凄まじい映像が展開することは確か。僕なんか初めて、真珠湾攻撃ってやられた当事者にとっては本当にひどい災厄だったんだなと思っちゃったくらいだもんねぇ。このあたりは皮肉ではなく本気で、さすが「アルマゲドン」のチームの作品と言うべきなんだろう。強烈なスペクタクルを楽しませると同時に、その圧倒的な破壊のひどさを見せつけて、冒頭のガキの親父のセリフとともに厭戦気分が最高潮に盛り上がる場面ではある。こんなに戦争の悲惨さがリアルに立ち上ってくるとは、ブラッカイマー=ベイのコンビも考えてなかったのではないか? ただ単にどんどん見せ場をリアルに強烈につくっていった結果、どんな反戦映画よりも厭戦ムードが漂うことになったんだよね。

 ところが後半はアメリカの娯楽映画として反撃を持ってくるのは当然というわけで、たちまち厭戦気分は吹っ飛んでそれ行けやれ行けというわけ。こうなるとこの映画の作者は一体何を言いたいのか…いや、本気でなくていいから、一応のところ一体何を言ってるふりをしたいのか…が、よく分からなっちゃうんだよね。だって冒頭のガキの親父の呆然自失に始まり、アフレックとベッキンセールとハートネットの関係がこじれにこじれるに至った元凶として、そして何より真珠湾で多くの尊い人命を奪い去った災厄として、これまでの作者の口ぶりってとにかく戦争ってイヤだねって話にしたかったんじゃないの?

 要は真珠湾の恨みを晴らせってことで戦意高揚は正当化されると言いたいんだろうが、そこに至るまでになまじっか中途半端な日本への配慮らしきもの(全然配慮になってないんだけど)というか、やらずもがなの描写を入れてしまったため、ますます狙いが分からなくなってる。しかもエンディングのベッキンセールのナレーションによれば、この苦難によってわが祖国はますます強く再生したとかヌカしておるわけ。何でこの女が唐突にこの映画の結論めいたことを言う役を仰せつかったのかがまたよく分からない。それより、ここへ来て最終的な結論はいきなりビバ!アメリカってことなのか(笑)? それって、チャランポランにやってたアメリカが日本にカツ入れてもらってオトコになったって感謝の意味なのかとまで思い違いしそう(笑)。実はこの映画の一番困ったとこは、退屈なとこでも日本人にとっての国辱でもアメリカ国粋主義でもドラマがスカスカなとこでも何でもない。こんな事を言ったら不謹慎だが、反戦でも好戦でもどうでもいい。そんな事より、要するにおまえ一体何が言いてえんだよ?っていうのが分からないとこなんだよね。

 この映画の発想の根底には、「タイタニック」みたいな映画をつくろうという意図があったことは、どこから見ても明白だ。そういった意味で、前に僕が「初恋のきた道」感想文で指摘したことが当たっていれば、この「パール・ハーバー」は「初恋のきた道」の腹違いの兄弟みたいなことになるわけ(笑)。でも、「タイタニック」を発奮材料にしたチャン・イーモウと比べると、その出来のレベルは天と地ほどの開きがある。もっとも、この両者を比べることが間違いか(笑)。どうしてこうも違っちゃったんだろう?

 考えてみれば「タイタニック」にはコアの部分に明確なコンセプトというかビジョンがあったよね。あの映画を見終わった時に胸に残ったのは、あのタイタニックの船には20世紀そのものが乗っかっていたという強烈な印象だった。テクノロジーの進歩と過信、かりそめの豊かさの享受とそこから生まれる階級格差…とか、そんな諸々がすべてあそこに乗って一緒に沈んでいった。そして、それが20世紀そのものの運命だったような印象があった。それを描ききれていたかどうか、そんな思いそのものが語るに足るものかどうかは、人によりそれぞれ異論はあるだろう。だがその是非はともかく、つくり手たるジェームズ・キャメロンがそうしたビジョンを明快に持っていたということは確かに言えるはず。語りたい事があって、彼はあの作品をつくったのだ。

 ところが引き合いに出すのは全くお気の毒だが、「パール・ハーバー」にはそれがまるっきり欠落している。あるのはただ「タイタニック」みたいな映画をつくろう、それで大きく儲けようという意志のみ。コアの部分ががらんどうだから、後から何をペタペタ貼っても張りぼてにしかならないのだ。語りたいことがないのにつくる、これは映画に限らずどんな作品にとっても致命傷だよね。見せ物に徹して観客を驚かし魅了したいという意図ですら、難しくデリケートな「戦争」という題材がジャマして変な言い訳かまさなくてはならなくなって、スッキリしなくなっちゃってるんだよ。これなら「アルマゲドン」の方が罪がない。あれほど映画をムチャクチャにしそうなヤバい要素を抱えながら、何とかかんとか苦心さんたん、どうにかこうにか一般に見せられる映画のセンまでは持ってきたものの、肝心要の中味がないんじゃそれまでの苦労が水の泡。マイケル・ベイはこの映画つくってて何が楽しかったのかねぇ?

 なぁ、マイケル・ベイ。自分で言いたいこと、やりたいことぐらい何かなかったの? ジェリー・ブラッカイマーには何も言えないってのは分かる(笑)。だが、せめて自分の映画の中でくらいは言いたいことを言ってくれ。だって映画つくるにゃお金も時間もかかる。大人数も必要だ。何よりつくってる自分がヘトヘトに疲れる。お金のためだと言ったところで、この映画本当のところは大コケしちゃったんだろう? だったらこれつくって、あんたに何かいいことあったのか。 ここはせめて、ディズニーから金が出なかったとかつまらん言い訳せずに、男らしくキッチリ責任とろうぜ。

 そして僕らもわが身を振り返るべきだ。言うべきことを持とう、よく考えてやるべきことをやろう、そして最後にはキッチリ責任をとろう。

 それも出来ない人間たちが、きっとまたどこかで「真珠湾」をやらかしてしまうのだから。

 

 

 

 

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