「ハムナプトラ2/黄金のピラミッド」

  The Mummy Returns

 (2001/07/16)


「うっかり八兵衛」の存在価値

 僕が前の職場で働いていた時、近所に新しい店が出来た。何の店だろうと興味しんしん。開店どころかまだ改装中のその店を覗きに行ったが、その時に見えた店の名前で僕には何の店だかすぐに察しがついたね。

 何て名前だったかって? その名は「八兵衛」(笑)。

 この名を聞いた人間は、10人なら10人が全員食い物屋を連想した。実際出来上がった店は定食屋だったから、この命名は正解だったわけだ。そして何で「八兵衛」から食い物屋が頭に浮かんだかと言えば、それは何と言ってもかつてのテレビ時代劇「水戸黄門」のレギュラーキャラクター、「うっかり八兵衛」のイメージがあったからだろう。

 「うっかり八兵衛」…年がら年中腹を空かせてブーブー言ってるおかしな奴。茶店や食い物屋を見つけると、旅の目的も忘れて店に入ろう寄って行こうとうるさい男。ここでの「食いしん坊」のイメージの定着ぶりから、「八兵衛」=「食い物屋」というネーミングとなったわけだ。

 しかし「八兵衛」、確かにあのシリーズのレギュラーキャラではあったけど、元々の「水戸黄門」物語にはそんなもの登場してやしなかった。かつて東映で何度も映画化した時も、当然そこに「八兵衛」の姿はなかった。それはテレビで「水戸黄門」が放映されてお化け番組になっていく過程で、新たにつくられたキャラクターだったわけだ。

 このシリーズが長寿番組として続いていくにつれ、鮮度を維持するために新キャラを登場させてガス抜きをする必要があった。本当はご隠居と助さん角さんで事足りるはずなのに、次から次へとどんどんキャラを増やして、一時期には8人くらいでゾロゾロ歩くってな図になるほど。「うっかり八兵衛」は、そんなキャラの増強策の中で定着していったものなんだね。

 実際この「うっかり八兵衛」というキャラ、そんなに強力なキャラなのかと言えばさにあらず。先に言ったように旅の目的やら悪との戦いとは全く関係なく、ご隠居の伝令として働くわけでもない。ただ年中腹が減った、何か食わせろと言ってるだけだ。考えてみると、水戸黄門一行の面々の中でこんなに役に立たない奴もいなければ、こんなにご隠居に対してデカイ面して対等の口をきく奴もいない。役に立たないと言ったがそれはまだ控えめな表現で、こいつがいるおかげで足止めくったり余計な経費がかさんだりと、何かと足を引っぱっている人間なのだ。ならば、なぜ水戸のご隠居はこんな無用の人間をいつも旅に連れて行くのか?

 それは「スター・ウォーズ/エピソード1」で、あんなに賢者であるはずのリーアム・ニーソンが、なぜバカでうるさいだけのジャージャー・ビンクスを連れて歩いているのか?という疑問とほぼ同じ答えが用意出来る。別に水戸のご隠居もリーアム・ニーソンも、こんな役に立たない奴と一緒にいたいわけではない。そうしなければならないのは、制作側の意向なんだよね。

 どいつもこいつも生真面目に仏頂面しているような連中ばかりで旅をしててもつまらない。中には必ずバカを言ってくれる人間が必要だ。たまには足を引っぱって、サスペンスを増す役割もあるだろう。もちろんドラマ進行上はこんな存在は無駄の一言だが、娯楽としてのドラマってのは無駄がなくなりゃいいって訳でもない。まぁ制作側はこう考えた訳だろう。 でも、それにしたって…と僕なんか思ってしまったけどね。

 だって「うっかり八兵衛」が担ってるギャグやユーモアの部分って、全然垢抜けてなくって恥ずかしくなるほどレベルが低いわけ。オヤジギャグくらいで寒いなんて偉そうに言ってる若い女の子なんか、「八兵衛」ギャグ見たらもうひとたまりもないね。マンモスさえ凍り付くような酷寒の冷えっぷり。こんなのがドラマのコメディ・リリーフとして機能しているとは到底思えなかったよ。

 このテレビの「水戸黄門」、マンネリでワンパターンでユルユルのドラマとして悪名も高かった。じゃあ僕は何でこのドラマを見ていたかと言えば、うちの親父がテレビ時代劇好きで、食事時に欠かさず見ていたからなんだね。でも、そんな親父ですらこの「水戸黄門」はくだらないとバカにしていた。そしてバカにしながら見ていた(笑)。そんな「水戸黄門」のユルユルぶりマンネリぶりの象徴とも言えるものが、この無駄そのものの「うっかり八兵衛」キャラだったわけ。

 実は今年21世紀に突入して、この超マンネリ時代劇ドラマ「水戸黄門」にもリニューアルの波が押し寄せてきた。主役のご隠居役に石坂浩二をキャスティングして一気に若返りを図り、あのアゴヒゲもなくすなどスタイルも一新。脇のレギュラーキャラクターも老齢化が進んできたこともあり、何人かを除いて一気に整理された。もちろんこの中にわれらが「うっかり八兵衛」がいたのは言うまでもない。つまりは、体のいいリストラ。こうしてドラマのユルさやマンネリ、泥臭さや鈍臭さやヤボな部分を一掃しようというわけだったんだろう。

 で、ドラマはどうなったって? 実は見ていない。リニューアル後の「水戸黄門」って見たことないんだ。僕がチャンネルを回すわけじゃないから、親父が見ようとしない限り見ることが出来ない。親父はあんなにくだらないとブーブー言いながらも前の「黄門」は毎回見ていたのに、マンネリを払拭して無駄をなくしたはずの「黄門」は見る気がないようだ。実はこう思ってるかつての「黄門」ファンって多いのかも知れないよね。

 確かに「うっかり八兵衛」って無駄で何の役にも立たなかったのかもしれない。だけど大衆娯楽ってものには、そういう無駄もどこか必要なものなんじゃないか。洗練されカッコよければいいってもんでもあるまい。若い奴らは男も女もただただカッコつけてりゃいいと思ってるけど、カッコつけてるって実はすごくカッコ悪いことでもあるんだよね(笑)。このへんちょっと判断が難しいところだけどね。泥臭くって鈍臭くってヤボな部分がなくっちゃ、心の底から楽しめないんじゃないか。いなくなって初めて分かる「八兵衛」の有難み。

 ユルい部分、無駄な部分もあって初めての大衆娯楽ってところ、本当にあるのかもしれない。この夏「ハムナプトラ2/黄金のピラミッド」を見た時、僕は改めてそう思ったね。

 

今回は最初っから飛ばしてます

 今からおよそ5000年以上前のエジプトでのこと、スコーピオン・キングことザ・ロック率いる軍勢は、巨大な帝国に戦いを挑みながらもボロ負けし、砂漠へ敗退を余儀なくされた。ギンギラ太陽に水や食料もなく、何より負けて気力もなくなったスコーピオン“ザ・ロック”キングの兵士は、果てしない砂漠で一人また一人と倒れていく。今どきはマラソンだって途中に給水場があるくらいだから、やっぱり水なしはツラい。最後にはザ・ロックその人もおだぶつ。しかしあの世に行く寸前に、自分の魂を捧げてもいいから復讐を!と祈ったのが運の尽き。

 それを聞きつけた邪悪なアヌビス神が、彼の望みを叶えてやると言ったから大変。たちまち砂漠の地中から地上に現われる、アヌビス神の家来である魑魅魍魎たちの大軍。人間なんてひとたまりもない。スコーピオン“ザ・ロック”キングの軍隊を討ち負かした連中は、この化け物軍にことごとく壊滅させられてしまった。そして毎年夏しか活躍の場がない季節労働者のチューブ(笑)みたいに、敵を根絶やしにした後は次の出番がくるまで眠りについたアヌビス神とその軍勢。今やその下僕となってしまったスコーピオン“ザ・ロック”キングもともに眠りについた。誰かが彼を目覚めさせるまで…。

 

 1933年、エジプト歴によれば「サソリの年」。そのエジプトのどこかの遺跡の奥で今日も今日とてガサゴソやっているのは、例によって前作「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」でおなじみブレンダン・フレーザーとレイチェル・ワイズのお二人。ところがそこに現われた8歳の少年フレディ・ボース、何とこのお二人のお子さんなんだね。ありゃ〜二人にはもう子供もいるリッパな夫婦なんだと感慨に耽る間もなく、さらに遺跡の奥に入り込むフレーザーとワイズ。子供は入口で遊んでな。

 実はワイズは最近寝付きが悪くて、変な夢を見る。先日もここの遺跡の宝物の夢を見て、それでやって来た次第だ。その夢ってのもいささか変わってて、こうして発掘に来ている最中にもワイズを幻覚に誘い、まるで何千年も前のエジプトを見てきたかのような気持ちにさせるのだからすごい。

 そんな時、ボース少年が守る入口に来訪者あり。どう見ても怪しげな盗掘者という風体の3人組、ジョー・ディクソン、ブルース・バイロン、トム・フィッシャーといった面々だ。果たして彼らの目的は?

 それはたぶんこれだろう。ちょうどたった今フレーザーとワイズが見つけたばかりの、ご立派な箱に収められた宝物。ピカピカ黄金製の「スコーピオン・キングの腕輪」だ。だが、そいつに不注意に触れたばっかりに、とんでもないところからナイル川の水が噴き出してきて大騒ぎ。一方、息子のボース少年は例の悪漢3人組に見つかってイジメられそうになるが、この大浸水のドサクサで難を免れた。やれやれ。

 その頃、「ハムナプトラ」1作目に登場した失われた死者の都を、よせばいいのに発掘作業している一団あり。大英博物館長のアラン・アームストロング率いる発掘チームだが、そこに怪しげな他の連中もウロついてるのが解せない。目だけギョロギョロしたアドウェール、さっき現われた妙な3人組に、何だか根性悪そうで助平そうな美女パトリシア・ヴェラスケス。やがて掘りあてたものは何かと思えば、前作でやっとのことで葬ったはずの怪僧イムホテップのミイラではないか。こいつら何をたくらんでいるのか?…と思っていたら、そう思ってたのは僕だけではなくて、物陰に隠れてこいつらを探っていた男が一人。前作にも登場した聖地を守る砂漠の民のリーダー、どこか元ビートルズのジョージ・ハリソンに似たオデット・フェールである。

 舞台はロンドンに移る。懐かしい我が家に帰ってきたフレーザー&ワイズ夫婦と息子ボース。よっこらしょっと戦利品の腕輪をテーブルに置いては、また遺跡発掘に行きたいとか行きたくないとかイチャイチャイチャイチャ。そんな事にはまだ興味もなく毛も生えてないムケてもいない歳のボースは、親にコッソリ宝箱を開けて、中の腕輪を自分の腕にハメちゃった。まだハメるにゃ早いぞボース君。腕にガッチリとハマった腕輪は、いきなりボースに見慣れない砂漠の遺跡の映像を見せるのだった。何だこいつはシネラマかアイマックス・シアターか??

 その頃、このお屋敷に裏口よりご帰宅の方が約1名、いやとりあえず2名。おいしそうな美女をお持ち帰りのエッチ食いしん坊=「ハムナプトラ」のうっかり八兵衛ことジョン・ハンナだ。だが、裏口には先客がいた。もうこの映画のお客さんにはスッカリおなじみ、ギョロ目アドウェール、エッチ女ヴェラスケスら悪役チームの面々だ。お持ち帰り美女はあわてて帰宅で、ジョン・ハンナ食いそびれ。なぜか事情が分からないハンナは悪党どもにフンづかまる。そこに入ってきたのがわれらがブレンダン・フレーザーだ。事情を察したフレーザーはハンナを助けて大暴れ。一方、ワイズにも悪党が襲いかかってくるが、いつの間に強くなったのか、彼女も結構悪党と互角でやり合うんだね。そこに助っ人の風車の矢七ならぬオデット・フェールも乱入してきて、三つ巴四つ巴の大乱闘。うわわ、アタシたちのマイ・スゥィート・ホームがメチャクチャだわぁと騒ぐワイズに、ジョージ・ハリソン似のフェールはそれどこじゃないと一喝。腕輪の箱を取られたらマイ・スゥィート・ホームどころか「マイ・スゥィート・ロード」に祈るしか手がなくなるぞ。

 でも持っていかれた。ついでにワイズもさらわれた。ヨメさんをクラプトンに寝取られっぱなしのジョージ・ハリソンと違って、われらがフレーザーは黙ってないぜ。どうも黒幕には大英博物館長がいるらしいと分かったため、善玉チームは車で大英博物館へ。まずはブレーザーとフェールが博物館に忍び込む。ジョージ・ハリソン似のフェールいわく、何かイヤ〜な「サムシング」を感じるぞ。

 フェールのイヤな予感は当たった。博物館の地下室ではギョロ目アドウェール、エッチ女ヴェラスケスの他、エジプトから連れて来たその他大勢ども従えて、アラン・アームストロング館長が何やら呪文を唱えている。例のイムホテップのミイラを蘇らせようというハラなのだ。そして目覚めたらデザートにどうぞ…と供えられてるのがワイズと言うわけ。ところがもう一つ貢ぎ物を…と、例の腕輪の箱を開けてみたら中味は空っぽ。それもそのはず、今その腕輪はボース少年の腕にハマってる。

 な〜む〜とお祈りするアームストロング館長。すると…ややっ。またまたイムホテップのミイラが蘇った。でも何だか今回の蘇りはヤケに簡単だよなぁ。さぁ景気づけだとワイズを生贄にするところで、われらがフレーザーやフェールが登場。大暴れの末にワイズを取り戻して、博物館から逃げ出した。

 さぁ〜て事情を話せば長くなるがここから競馬の実況アナふうに説明すると、ハンナの大ドジで車が使えなくなり急遽停めてあった二階建てロンドンバスで逃げる一行を、イムホテップのポケットモンスターみたいな4人の家来ミイラが追いかけて車の外で中で大立ち回り、そいつら何とか撃退したものの悪漢一味に息子ボースを腕輪ごと連れ去られたフレーザーたち、みんな一路エジプトをめざすことになるわけだが、悪漢たちは贅沢にお召し列車で旅としゃれこんで車中で3人組の悪党からエネルギーすすってイムホテップ=アーノルド・ヴォスルーはミイラから早くも実体化。悪党たちの目的は?

 5000年前の例のスコーピオン・キングを「サソリの年」に蘇らせ、イムホテップ=ヴォスルーに倒させれば、アヌビス神とその軍勢がわがものとなって世界を征服できるわけ。ボースが腕輪を手にハメた段階でスコーピオン・キングは蘇った。こうなると7日のうちにスコーピオン・キングのいる黄金のピラミッド入りしないと、ボース少年の命はない。

 もう一つ約束事をここで話しておくと、例の悪女ヴェラスケスはかつてのイムホテップ=ヴォスルーの愛人の生まれ変わり。この愛人ヴェラスケス、本当は王の後妻なのに陰にかくれてイムホテップと出来てた。その王の先妻の娘=王女の生まれ変わりがレイチェル・ワイズ。彼女はイムホテップと愛人ヴェラスケスが謀って王を殺す現場を見ちゃったわけ。まぁそのおかげでイムホテップも呪われてミイラにさせられちゃったわけだが、イムホテップ=ヴォスルー、ヴェラスケス、ワイズにはそんな何千年もの因縁話が絡んでるわけだ。

 さぁ〜てとここで一気にまたまた競馬実況アナふうに本題に戻ると、エジプト入りしたフレーザーたちは前作でお世話になったショーン・パークスに飛行船を仕立ててもらって空から先手を打とうとするが、途中イムホテップ=ヴォスルーの妨害に合っててんてこ舞いしたりしながら、なぜか砂漠の中に忽然と現れたジャングル茂る巨大なオアシスにたどり着くが、その中心にあるのがスコーピオン・キングのいる黄金のピラミッドで、今まさにイムホテップ=ヴォスルーやアームストロング館長などの一行もさらったボース少年を連れてここにやってくるが、突然思わぬ伏兵のピグミーミイラの大軍が現れてイムホテップ一行はバタバタ倒れ、そのてんやわんやに乗じてフレーザー一行が登場して、だけど今夜がボースが腕輪をして7日目の夜で、今まさに夜が明けようとしているのであわてて息子ボースを連れてフレーザーとワイズとハンナは黄金のピラミッドめざして駆け出していって…何とかかんとか…とホッとしたところにあのヴェラスケスが現れ…そして腕輪は…フレーザーとイムホテップ=ヴォスルーが…ついに登場したスコーピオン“ザ・ロック”キングの正体とは…それでああなってこうなって…何とまぁ…。

 あとは映画館で見て!

 

頭が下がるサービス精神ではありながら

 前作「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」について、実は僕もうあんまり覚えていないんだよね。ただ、何ともユル〜い懐かしい香りもある冒険活劇だった気がする。日本じゃあ「インディ・ジョーンズ」ものの二番煎じふうに売られてたが、そのインディよりもっと懐かしいユルさがあった気がするんだよね。

 何せ前の「ハムナプトラ」公開時にはまるっきりこんな作品の存在知られてない。監督のスティーブン・ソマーズもB級の見世物映画しかつくってない。主演のブレンダン・フレーザーなんて知らない。レイチェル・ワイズも地味〜なイギリス女優。劇場でようやく公開直前配られたチラシなんて何と二色刷りのショボいやつ。タイトルロゴの書体はモロに「レイダース」のパクりでどう見たって大した作品じゃなかった。頼りはそのショボいチラシにデカく刷ってあった、「全米ナンバーワン」の文字だけ。恐らく配給会社ですら予想外だったろうと思わせる大ヒットが、日本にも飛び火したわけね。こちらでも異例の大ヒットとなった。今回はその続編だ。

 今度はみんなの期待をギンギンに背負って登場。前回は期待しないで軽い気持ちで見たら、意外に面白い活劇だった。だけど、今回は最初から話題作、超大作の構えできてるわけ。面白くて当り前なんだよね。あの後にはブレンダン・フレーザーも「ゴッド・アンド・モンスター」「タイムトラベラー/昨日からきた恋人」「悪いことしましョ!」などでスターとしての華や芸達者ぶりを見せつけた。レイチェル・ワイズもとにかく出演作の連打で、最近では「スターリングラード」で大女優の片鱗が光ってた。もう、みんなまるっきりメンコの数が違っちゃってるわけ。だから、どうしても前と同じようにするわけにはいかないんだよね。しかも鮮度は確実に落ちている

 こうなるとデラックス化しかないというのは世の続編の常道。問題はその程度なわけ。

 普通は2倍3倍増しくらいで対応するのが普通だ。いって10倍だろう、見せ場の数や制作費の増やしかたは。ところがこの映画、制作費の金額はいくらだったか知らないが、見せ場については20倍から30倍くらいにして見せちゃってるわけ。ヤケクソなのか徹底的にいけ〜って感じ。これは大変なことですよ。馬鹿力じゃできない。脚本からしてあの手この手をブチ込めるだけブチ込んでるわけ。そりゃディティールなんかいいかげんで行き当たりばったりなんだけど、何せこの見せ場の連打とそれを全部ブチ込むためのスピードアップで、見ているほうは気付かないんだよね。

 そう、これだけ見せ場があると普通のドラマのスピードじゃあ追い付かない。かくしてちょっと懐かしい味もあったユルい活劇「ハムナプトラ」の続編は、この現代でも異例のスピードで進行するノンストップ・アクション映画と化した。実は今回の感想文のストーリー紹介でも細部の再現は諦めたよ。素早くって忘れた部分もあるくらいなんだ。

 だけどねぇ、「ハムナプトラ」ってそのどこかユルいとこもポイントだったわけ。特にブレンダン・フレーザーとレイチェル・ワイズの大ボケなやり取りがおかしかったんだよね。それなのに、ここでのフレーザーは勇ましいだけで芝居をさせてもらえない。スターとして格が上がったからサマになってはいるものの、そうでなかったら随分薄味のヒーローになっちゃってたよな。ワイズも前はもっとバカ演技見せてくれたのに、今回母親になっちゃったってこともあるけど、さほどバカをやらない。…というか、やってるヒマがないんだろうな。

 ただ、レイチェル・ワイズについては本当に頭が下がる。マイケル・ウィンターボトムの「アイ・ウォント・ユー」とか「輝きの海」とか前出「スターリングラード」などでシリアス女優として売ってる彼女なのに、この映画ではアクション!アクション! しかもパトリシア・ヴェラスケスと一緒にヘソ出してオッパイをチラつかせてチャンチャンバラバラなんて、もう泣けてきます。何たる役者魂! 彼女は女優の鏡だねぇ。ちょっとオスカーとったからってデカイ態度のバカ女優とかは分かってないね。本物の女優ってのはこういうのを言うんだよ。

 話戻るが、万事そんな調子だからジョン・ハンナのバカ兄貴も今回はさほどそのアホぶりを発揮できない。「ハムナプトラ」の「うっかり八兵衛」ぶりを、さほど見ることが出来ないのが残念至極だね。

 そんなわけでサービス精神に富んでて手間も工夫も凝らしてあって、娯楽映画として素晴しいことは確かなんだが、そういったキャラクターからにじみ出る楽しさみたいなものは希薄になってしまった。そう言えば圧倒的悪役だったイムホテップ=アーノルド・ヴォスルーも今回はずいぶん早いうちから実体化してるのに、ずいぶんセコいワルになっちゃってて気の毒。おまけに最後は悲しそうな目で観客の僕らを見つめるもんだから、ちょっとかわいそうになっちゃったよ。でも、悪役がかわいそうってのはちょっとなぁ。

 確かにもう一人の悪役として、さらに強力なスコーピオン・キング=ザ・ロックがいることはいるけど、これは悪役って言うより「怪物」だからねぇ(笑)。そういう意味で人間同士の役者のからみで見せる楽しさってのは、確かにずいぶん後退している気がするんだよね。

 映画の冒頭の5000年前のエピソードなんか、これからどんな凄いドラマが展開するんだろう?ってワクワクした。実際見ている間は息もつけないし、終わってからもエンドクレジットに至るまでCGによるちっちゃい工夫の跡がかいま見えて、最後の最後まで席を立たせないぞって気迫も感じる。確かにシッポまでアンコ詰まった鯛焼き状態。この根性というかガッツというか、スティーブン・ソマーズのエンターテイナーとしての心意気は大いに褒めたい。だけど、やっぱりそれだけでは味気ないんだよな。

 実はこの映画、「A.I.」の感想文を頭抱えてウンウンうなりながら書いたあげくに、何にも考えないで見れる娯楽映画を…と喜び勇んで見に行ったんだよね。確かに頭は使わなかったものの、ものすごい情報量を頭から浴びたみたいで、見た後はガックリ。疲れ切っちゃったよ。

 やっぱり「うっかり八兵衛」がいない「水戸黄門」って、どこかモノ足りないよね。

 

 

 

 

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