「ツバル」

  Tuvalu

 (2001/04/23)


 ここはどこかの国。回りの建物はみんな立ち退いてサラ地になった廃虚の街に、ポツリとおんぼろビルが建っている。その屋上から表を眺めているのが、爬虫類みたいな顔はしてても性格素朴で純情なドニ・ラヴァンくん。だけどラヴァンくん、もういい歳みたいだけどこのビルから一歩も出たことがない。実はこのビル、みんなの憩いの場所である有料プールが入ってるビルで、ラヴァンの盲目の親父フィリップ・クレーの持ち物。このクレー親父は頑固一徹かつ威厳を持ってこのプールを管理しているので、ラヴァンはまるっきり頭が上がらなくって下働きしかやらせてもらえない。っていうと野村監督がギッチギチに管理してる阪神タイガースで、一人大ボケこいてた昨年までの新庄みたいな状況にも思えるが、まぁあいつも最初の頃はピッチャーと両立とか言ってご機嫌こいてたからなぁ。ラヴァンくんはさすがに新庄ほど自由はもらえていなかった。まぁとにかくそんな半人前扱いだから、外の世界なんてもっての他ってことなんだろうね。

 でもこのプール、今日も今日とて開業してるけど、実はもう施設も建物も何もかもボロボロ。って言うとますます落ち目のわが阪神タイガースみたいじゃないか。お客はタイガースの方はまだ入ってるものの、プールの方はこの界隈じゃあほとんど人がいなくなったこともあってパラパラ。パラパラったって誰か踊ってるわけじゃない。松葉づえついた婆さんとか、元気のない変り映えのない連中がホンのわずか訪れるだけだ。しかもこいつらロクに金持ってるわけでもない。受付やってるカタリナ・ムルジアばあさんは、お客が金持ってなくても、きれいな服のボタンをもらえれば中に入れてやっていた。…というのも、とうの昔にこのプールで金儲けようなんてこたぁ考えてないからなんだよね。

 だってこんなガラガラのプールなのに、毎日クレー親父ときたひにゃ目も見えないくせに笛持ってプールの警備。やたら威張って張り切ってるこの親父にとって、プールは生きがいであり唯一の威厳のよりどころなんだね。いまやボロボロで廃虚寸前であったとしても。

 だからラヴァンもムルジアばあさんも、この盲目の親父がフンぞりかえっていられるように、プールが昔みたいに大繁盛しているフリをする。テープレコーダーでお客がワイワイバシャバシャやってるノイズをループにして流したり、わざと浮き輪を水面に投げてバシャバシャ音をたてる。そんな息子の心を知ってか知らずか、クレー親父はラヴァンをガキ扱いして抑え付けてるわけ。でもラヴァンもラヴァンでそれを甘んじて受け入れてるところがある。だって俺、半人前だもんな。外に一歩出ると足がすくんで歩けないほどだしね。ラヴァンのツラがまえたるや、ローリング・ストーンズきっての猛者キース・リチャーズをどこか思わせるワイルドさなのに、心臓はノミなみで気立てはやさしく、これほど内外落差が激しい男も珍しい。ついでに言えば、頭の程度は新庄なみ(笑)。

 そんな彼も、心のどこかでは広い世界を夢見てはいる。それが証拠に船のおもちゃを手に入れると、それを喜々としてプールに浮かべてみようとする無邪気さ。あぁ、もっと広い世界に、大リーグに行きてえなぁ…。でも、そんな新庄ラヴァンの思いをよそに、おもちゃの船は浮かばない。底深く沈んでしまう。心の奥深く沈み込んでいく旅立ちへの思い。

 そんなある日、いつもと同じく場末のストリップなみに客が少ないこのプールに珍客登場。元船乗りのジョコ・ロジッヒとその娘のチュルパン・ハマートヴァだ。ハッキリ言って若くてきれいな女の子なんて初めて見たラヴァンは、胸もアソコもズッキュ〜ンと高鳴った。表に出たこともないラヴァン、もちろん風俗にだって行けるわきゃあない。童貞であることは、まず100パーセント間違いないだろう。新庄は…あのホストづらで童貞なわきゃ〜ない。あ、結婚してたっけ(笑)。

 思いっきり小汚い更衣室やらシャワー室で、彼女の姿をチラチラ横目で見ながら落ちつかないラヴァン。水着姿もグー。泳ぐ姿も美しい。水から上がって更衣室で水着をとった彼女の姿を、見るつもりないのに床下の穴から見てしまった彼。目の前に彼女が落としたブラジャーがぶら下がってくると、思わずむしゃぶりついてニオイ嗅ぎはじめるからたまらない。さすがに普通の男はそこまでやらないが、溜まりにたまった童貞坊やはいきり立つと止まんねえからな。

 さて落としたブラジャーを探してたハマートヴァちゃん、このアリサマを見てキャ〜と叫ぶかと思えば、あたしのニオイ必死に嗅いじゃって可っ愛いわね男って…なんて感じでニンマリ。う〜ん、女心は分からない

 さてさて、そんな奇妙な父子のクレーとラヴァンではあるが、実はクレーには息子がもう一人いる。ラヴァンには兄に当たるその男、パイナップルみたいな髪形のいけすかない野郎テレンス・ギレスピーは、なぜか独立して事業などに手を染めて羽振りもいいらしい。今この男の懸案なのが、街の再開発プラン。ここにあった古い建物根こそぎとっぱらってサラ地にしちまった手口たるや、他11球団から4番打者、エースピッチャー、人気選手をゴボウ抜きして日本プロ野球界を不毛地帯にした読売巨人軍の手口に酷似。今日も今日とてこの廃虚の街に最後に残ったアパート・ビル取り壊しとあって、街のお偉いさん呼んでセレモニーなどやっている。この晴れ姿を見せたいのか、珍しく親父のクレーもその場に呼ばれたわけ。それならジャビットも呼んでこいよ。

 だけどそのアパート・ビルには住人がいる。でも、そんなの構わずに強制的に追い出すわけ。そんな居場所がなくなった住人たちの中に、船乗りジョコ・ロジッヒ&チュルパン・ハマートヴァの父娘もいたんだね。それを遠くのプール・ビルからラヴァンは眺めてた。

 結局ビルは爆破されるんだけど、家を守ろうとしたのかロジッヒは爆発に巻き込まれて大ケガ。ギレスピーは…と言うと、クレー親父のプール・ビルも片付けて一気に再開発を進めたいと思っていた意図がバレバレで、親父の逆鱗に触れた。プール大事の親父は怒って帰っちまうんだよ。

 さて、その日から住む所がなくなったロジッヒ&チュルパンちゃん父娘は、他の浮浪者同様に例のプール・ビルに身を寄せた。心やさしいラヴァンは、前から浮浪者たちのために内緒でビルの地下室を開放してたんだね。

 果てさて、折角の再開発をあんなボロ・ビルに邪魔されてはたまらないパイナップル頭の小さな巨人軍ギレスピー。何とかこいつを手中に収められる手はないかと、ツバル…いやスバル360(笑)ならぬ高級車で乗り付けた。

 すると、あの愚弟ラヴァンごときが、かわい子ちゃんチュルパン・ハマートヴァとプールで仲良くやっとるではないか。なんだと〜。資本主義では金持ちがモテていい思いをすると決まってるのだ。金持ちこそが善なのだ。ブッシュのボケナス息子だって自民党だって読売巨人軍だってそれを保証しているんだ。人気のない橋龍だって無理やり勝たせるんだ…と、下々の奴らはともかく少なくとも上の連中はそう思ってた。奴らその後の選挙でボコボコに負けてもどうなってもいいと思ってたのかね? 巨人戦の視聴率はガタ落ちだし大リーグばかり人気になっても、それでも長嶋は気にしてないのと同じ。要は自分が上にいる間は安泰ならそれでいいわけ。長嶋って昔はこんなじゃなかったよなぁ。おまえ少しは自分が恥ずかしくないのかよ〜。

 そんな折りもおり、天井からセメントがはがれてプールに落ちてきた。いやはや老朽化もいいとこのプール。チュルパンちゃんはラヴァンに、天井からまた石が落ちてきた時のために網で自分たちを守っているように頼んだ。よしきた! 守備には自信がある新庄ことラヴァン。おいおい、君はその過信がよくないのだよ

 その時、小さな巨人ギレスピーのパイナップル頭に、ピカッとまたよからぬ企みがひらめいた。また空白の一日か? またルーキーを海外に連れていって囲い込みか? また前年の日本シリーズ対戦相手チームのエースピッチャーを恥も外聞もなく引き抜きか? どこまで悪いことをやれば気が済むんだ自民党…じゃない読売巨人軍!

 ギレスピーは天井裏に上がると石のカケラを拾い、プールで泳いでる元・船乗りロジッヒの頭めがけて落っことした! お〜と、新庄は果敢に飛びついたが取れません! ホームラン! 見事に石はロジッヒの頭に命中。事情がまるっきり見えてないチュルパン・ハマートヴァは父親の大ケガはラヴァンのせいだとばかり怒って態度が冷たくなる。スタンドから新庄めがけて缶ビールやメガホンが投げ込まれています!  

 そこをすかさず出てくるパイナップル巨人のギレスピー、全部てめえの仕業なのにラヴァンを非難。アホ女チュルパンはそれに簡単に丸め込まれて、ギレスピーに寄りかかって去っていく。男の下心も悪だくみもな〜んも分かってないオメデタさなんだよねぇ。一方、何も悪いことしてないのにサンザンなラヴァン。おまけにギレスピーは石が落っこちてくるようなプールは安全性に問題があるとまくしたてて、街の安全検査官の検査を受けさせることになったわけ。もちろん検査不合格ならプールは即刻営業停止だ。女はてめえになびかせる、邪魔なプールはぶっつぶす…一挙両得をはかろうという企みなんだよね。いかにも巨人が考えそうな汚ねえ企み。ラヴァンたちにすれば泣きっツラにハチ。ガックリ肩を落として、何年か前の新庄みたいに「ボク野球のセンスないから辞めます」とか寝言言いだしかねないアリサマ。おまえから野球のセンスとったら、後に一体何が残るんだよ新庄ぉぉぉぉ〜!

 だけど何も分かってないパー女チュルパンは、家なくて困ってる時にビルの地下に入れてくれた恩も忘れて、思いっきりラヴァンを嫌って冷たい態度をとる。まったく、「プルーフ・オブ・ライフ」のメグ・ライアンもビビるほど調子いいビッチ女だぜ!

 この時のケガが元で父親を亡くしたチュルパン・ハマートヴァは、父親の形見となった港の廃船に居を移す。ボロっちい船をきれいにして改修すると、今にも海に乗り出せそうだ。父親は船室に一枚の地図を残してて、そこには南海の小島「ツバル」へ行くコースが描いてあった。

 あぁ、行きたや南海の楽園「ツバル」。

 だけど、唯一エンジンがガタきてる。信頼のブランド元気ハツラツ「インペリアル社」製の巨大エンジンをどんなにピカピカに磨いても、ある部品が一個足りないために動かすことが出来ないのだ。街の部品屋に買いに行っても、もうその部品は廃番になっていて手に入れることが出来ない。あぁ、残念!

 その頃、例のプールにはパイナップル頭ギレスピー、警官のトドール・グォルギエフに連れられて、街の検査官E・J・カラハンがやってきた。しかし何をどう見たって老朽化した施設以外の何者でもない。ラヴァンやムルジアおばさんが悪戦苦闘した甲斐もなく、哀れ不合格のハンコを押された。不合格から免れたのは、地下のプールの動力源である巨大なエンジン。信頼のブランド「 インペリアル社」製のピカピカなエンジンで、これだけはこんな廃虚みたいなプールに似つかわしくない立派さだった。 何とか検査官の同情をかって、数日後の再検査までは生き延びることになったが、その時までに改善できなきゃアウトだから大して事情は変わらない。お金もないし状況打開のアテもないラヴァンたちだった。

 ところがパイナップル頭ギレスピーは、チュルパンちゃんから「インペリアル社」製のエンジン部品を探してると聞いてハタと気がついた。あのプールのエンジンも「インペリアル社」製だ。あいつの部品はずせば使えるぜ。こんな悪巧みにマンマと乗るんだからこの女も悪い。プールに乗り込んで例の部品をかっぱらおうという算段だ。

 早速女ねずみ小僧よろしく忍び込むと、ラヴァンは間抜けにも浮浪者からもらったスッポンポンのダッチワイフを抱いて眠りこけてる始末。この時チュルパン、なぜかチュルっとパンツ脱いでダッチワイフにはかせたりしてるんだから、この女も何考えてるんだか分からない。さて、その後チュルパンはエンジンから例の部品をかっぱらうと、そこにはラヴァンが飛んできた。部品の取り合いでもみ合った時、ラヴァンはついついチュルパンの胸をわしづかみ〜。

 ムギュッ。

 思わずうっとりのラヴァンが気を許した隙に、チュルンと身をかわしたチュルパンは、大事な大事な部品を持って逃げてった。男の弱みにつけこみやがって、許せねえぞぉぉぉぉ〜。外に逃げ出してったチュルパン追って自分もビルから出ようとしたラヴァンだが、一歩外に出たら足がすくんじゃってまるっきり歩けない。哀しや野外童貞でもあったラヴァンであった。

 しかし、そこを何とかド根性と部品取り戻したい一心で勇気振り絞り、気がつくと野外でも平気で突っ走ってたラヴァン。こりゃあ男の旅立ちだわなぁ。いくぜ大リーグへまっしぐらぁ〜。やりゃあ出来るじゃねえか新庄ぉぉぉ〜!

 新庄ならぬラヴァンは港に向けてまっしぐら。例のチュルパンの親父が遺した船に泳ぎ着いて、エンジン開いて部品を取り戻したぁ。おのれチュルパンはどこだと船室のぞいてみると、彼女は寝台で夢見ごこち。「ツバル」への航海を夢見ている真っ最中だった。

 な〜にが「ツバル」だ。人のもん盗んどいていい目見ようと思うなよ。わぁ〜れはゆくぅぅぅ〜、さらばぁぁ〜ツバルよぉぉぉ〜てなもんだ。ラヴァンは部品持って船から海に飛び込んだ。自分の帰りを待つプールへ一直線。

 しかし部品は取り戻したものの、プールはどうなるんだラヴァン! パイナップル頭ギレスピーはどうする? 部品を持ってかれたチュルパンはどう出る? そして最初はいい感じだったラヴァンとチュルパンはこのまま仲違いしたままなのか〜?

 

 ドイツで短編映画撮っていたファイト・ヘルマーって監督の、これは何と長編第一作なんだってね。それにしても何とも特異な題材を思い付いたものだ。いつのどこだかも分からない物語、何とセリフなんてあってなくがごとくで、そこで話されている言葉もそれぞれの名前の他は、誰でも知っている単語以外、どこの言葉だか分からない。ほとんどサイレント映画のノリ。監督自身、どこの国の奴が見てもいいようにつくったと言っている。明らかにセリフに頼った最近の映画に対するアンチテーゼとしてつくってるんだね。その意気やよし。

 それにしても、このボロボロのプールを見つけにわざわざブルガリアまで行ったっていうから、デビュー作でここまで贅沢やるとは大した根性だ。それもこんな特殊な題材でつくるんだから、やった方もやらせた方も偉かった。しかもセリフの制約がないから出演者も世界各地からの寄せ集めなんだよね。それがまたいい味出してる。

 またフィルムも単純なカラー撮影でなくて、モノクロ風なんだが後から着色するという変わったこともやっている。それが確かに不思議な効果も出しているんだよ。

 そして何より今この時代にサイレントよろしく映画を撮るという試みが、映像で語る映画らしい映画をつくろうという意志を感じさせるじゃないか。でもね、ここまでは誰でも確かに考える。トーキーになってからこのかた、サイレント映画をつくろうという試みは多くの映画人が試みてはいる。最近じゃあのアキ・カウリスマキが「白い花びら」でやってるよね。あれはあれで興味深かった。

 でもね、これらの作品って、どうも今の時代にサイレント映画つくるって発想そのものにとらわれすぎてて、どこか不自然と言えなくもないんだよね。ワイドスクリーンが主流で、画面には色もつけられる、素晴らしい音響効果だって可能なのに、あえてスタンダードサイズでモノクロでサイレント。気持ちは分かるけど、何だかどうも窮屈な感じがするじゃないか。それって映画つくるのに何だかんだと制約をつけて、童貞少年の純潔の誓いみたいなことを映画作家に強いている、あのラース・フォン・トリヤーの気持ち悪い「ドグマ」とかいう映画運動みたいでイヤだよね。カウリスマキの「白い花びら」も愛すべき映画ではあったが、そういう意味では何かちょっと狭っ苦しい感じからは逃れ切れてなかった。それは、なぜ今サイレントなのか?という本来の目的を忘れてるからじゃないか?

 元々、今、サイレントでつくろうという発想の原点は、セリフに頼らず映像本来で語ろうと決意するところから始まっているはずだ。昔のサイレント映画ってのは一つの形式でしかない。それを踏襲しようというのは、映画的な趣味というかマニアックな嗜好でしかない。本来の目的をいささか逸脱したものと言えなくもないんだよ。

 だけどこの「ツバル」は、セリフの呪縛からは解き放たれてはいるが、別にサイレント映画の手法にこだわってはいない。スクリーンは何とシネマスコープ。フィルムにだって自由に色を付けている。サウンドもドルビー・デジタルで、セリフはないものの音響効果にはかなり凝ってるみたいなんだよね。こうしたどうでもいい約束事から徹頭徹尾自由な発想が何とも柔軟で、僕は好感持ったよね。

 この映画では主役のドニ・ラヴァンがとにかく意外なまでにいいんだよ。昔、レオス・カラックスの分身みたいに演じさせられてた「ボーイ・ミーツ・ガール」からの三部作では、僕は彼はどうも苦手だったんだよね。で、カラックスと切れたら、これだけ一つの色に染め抜かれた彼は、もう映画で仕事ないんじゃないかとまで思ってしまったんだよ。だから、ここでの復活はうれしかったな。それに「ツバル」では彼が今まで見せなかった多彩な表情を見せている。すっごくチャーミングで前より全然いいんだよね。これは意外な驚きだった。

 さっきサイレント映画の手法にはこだわってないと言ったけど、セリフがない映画として演技的にはかなりサイレントのスタイルを意識しているのは事実。で、このラヴァンが、まるでチャップリンやキートンみたいに生きいき動いて頑張ってる。もっとも、さすがに往年のチャップリンやキートンほどの身のこなしのキレはないもんだから、ちょっとモタモタして「何やってるんだ」と観客に思わせてしまいがちな一瞬とかもあるんだけど、これはサイレントの伝統がとぎれて何十年も経ってるんだからいたしかたないのかな。そこんとこがやや惜しいんだけど、これはやっぱり彼でないとここまで出来なかったのでは…と思わせるような好演だ。

 もう一つ残念な点は、ヘルマーという監督、この作品では技術や進歩というものへの異議申し立てをやりたいらしく、映画のスタイルもテーマも確かにその方向を向いているのはアリアリ。それはいいんだけど、劇中に「テクノロジー・システム・プロフィット」なる券売機まで登場してドタバタやらかすのは、これだけ映像が雄弁な映画なのにちょっとあざとくはないか。そこだけテーマが浮き立ってしまって残念だったな。だって、そんなことわざわざ言わなくても、テーマはもう十分伝わってるんだからね。何かそこだけナマぐさくなっちゃったのが惜しい。

 とは言え、ここまで映像でつくり込んでいったんだから大したものだ。少なくても頭でっかちなシネフィルには出来ない芸当で、この人の今後には期待したいよね。もっとも、これだけユニークな作品つくっちゃうと次にこの手は使えないんだから、かなり苦しいとは思うけどね。

 映画にはまだまだいろいろ手はある、それに気づかせてくれただけでも嬉しかったよ。

 

 

 

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