「追撃者」

  Get Carter

 (2001/01/29)


 

 

 

 

 

ネタバレほどではありませんが

できれば映画観賞後お読みください

 

 

 

 

 

クールなワルのスタローン故郷に帰る

 ラスベガスの路上をあわてて逃げる男。それを追っているのが、ヒゲを生やしてもデカい図体ですぐそれと分かるシルベスター・スタローン。テラテラしたスーツで一見してヤクザな男と分かるスライは、問答無用で逃げる男を引っ立てる。踏み倒そうとする奴を有無を言わさず痛めつけ、借金取り立てるのが彼の仕事。彼が乗り出す段階になったらもはや踏み倒し野郎は謝ろうが何しようが無駄。セカンドチャンスなんて期待できないと覚悟しなきゃいけない。「悪党」としての汚れた仕事に対しても自分のポジションに対しても、売り物の「情け容赦ない」やり方についても何の疑いも持ってないし、ハッキリ言って何の感情も持ってはいない。これから自分が正しい道を歩めるとも思っちゃない。もう今更出直しの機会なんざないし、汚れきった自分にそのチャンスも与えられないことはよく分かってるからね。したがっていつも迷いがなくてクール。

 だが、今回の彼の仕事ぶりはなぜかいつになく荒っぽい。クールに決めてるスライが心なしか熱くなっているのは、別れてからずっと連絡を絶っていた弟が、その故郷の街シアトルで死んだと聞いたから。スライはボスからベガスを離れるなと言われていたが、「俺が掟だ」とばかりシカトして故郷に帰ると言い出すので相棒はビビる。でも、スライは思ったらやる男。レーガン政権と仲良かった頃にはモスクワでもベトナムでもアフガンでも独断先行で暴れ回った彼、ボスや相棒などヘとも思わず制止を振り切って強引にシアトルに帰ってきた。

 墓地はしとしと涙雨。しめやかに行われている弟の葬儀を、一人遠目から傘もささずに見つめる男一匹スライ。そんな彼を見つけた弟の妻ミランダ・リチャードソンは、彼を葬儀の人の輪に連れてはくるが、その態度は実に冷ややかだ。他の面々も何となくよそよそしい。それもそのはず。彼は何年も前に故郷と弟を捨てて音信不通でいた男。それが急に帰ってこられても、いきなり善人ヅラするなと言いたくもなるだろう。だが、彼は別に善人ヅラしに戻ってきたわけではない。酔って車をぶつけて死んだという弟の死因が、彼にはどうにも解せなかったのだ。

 だが、葬儀の客たちに生前の弟のことを根掘り葉掘り聞き出そうとするスライに、いいかげんにしてと弟の妻リチャードソンはキレる。そんな時、弟の娘レイチェル・リー・クックがパッと家を飛び出した。叔父さんなんて他人同然とこれも冷たいリー・クックちゃんだが、ワルの道一筋のスライには彼女がズベってると一目で分かる。だからスライにはそんな姪のリー・クックの様子がどうにも気になるんだね。しかも彼女、生前の弟について絶対酒飲み運転などしない男だったと言うではないか。全然なついてこない彼女ではあったが、何かあったら相談に来いとスライは自分のホテルを教えた。家族親戚一同の鼻つまみ者という点では五十歩百歩のスライとリー・クック。俺も親戚の中じゃ鬼っ子鼻つまみだったから、その気持ちよ〜く分かる。

 さて、生前に弟が働いていたバーを訪ねてみると、葬儀にも来なかった店のオーナーのマイケル・ケインの様子がちょっと怪しい。また隠れてエーテルでも吸ってるんじゃねえのか(笑)。一応スゴ味をきかせると、聖人君子だと思っていた弟には愛人がいたと言うではないか。

 鼻をきかせたスライが、昔のワル仲間だったミッキー・ロークの怪しげな店を訪ねてみると、果たしてそこには弟の愛人とおぼしきローナ・ミトラがいた。昔はチンピラのロークも今ではインターネットのポルノ・ビジネスで結構「顔」になりつつあるらしい。今でも一介の取り立て屋でしかないスライはコケにされっぱなし。昔のケチなワル仲間に「もっと将来考えろ」なんて言われちゃって、痛いとこ突かれてトホホ。国民年金入っとこうかなぁ、でもこれからは年金も当てに出来ねえし。スライの筋肉頭じゃ考えるのもここまでが限界。イライラもつのって、ウサばらしに一応ロークをいかついカラダと筋肉でたっぷり脅しておいた。

 すると案の定、猫パンチのロークはビビって腰が浮いてきた。あわてて高級会員制ゴルフ・コースにひ弱男アラン・カミングを訪ねるではないか。「タイタス」じゃローマ皇帝だったカミング、ここでもそのひ弱な風貌に似合わぬ大物ヅラ。実は彼はインターネット・ビジネスで大儲けしていて、裏でロークのヤバい仕事にも手を貸している。大物ヅラはしてるけど、自分じゃ手を汚す度胸もない小悪党だ。

 だが、今度はスライを街から追い出そうとチンピラの登場。こんな雑魚など難なく蹴散らしたスライは、こいつに追い出しを頼んだマイケル・ケインのところに怒鳴り込む。すると、こいつはこいつでミッキー・ロークが頼んだというから、また余計な手間が増えた。やれやれ俺は筋肉でモノ考えてるから面倒くさいことは苦手なんだよ。今度はロークをつるし上げにいくと、ロークはロークで開き直る。終わったことをほじくり返してどうなるんだよ。おまえの弟だって時がたって変わったんだ。誰だって汚れちまったんだよ。

 スライはウンザリ。そんなことは聞きたくなかった。おまけにベガスからはボスが帰ってこいとウルセエことウルセエこと。実はスライはボスの妻グレッチェン・モルとデキてたんだが、どうやらそれもバレそうだ。ケツに火がつきっぱなし。組織の中での出世もこれでフイか…どころか、無事でいられるかも怪しい。あ〜あ面倒くせえなぁ、将来なんて考えたこともねえよ。「パリの確率」のジャン=ポール・ベルモンドじゃないけど、ここシアトルのヤクザな大男の身にだって、将来は否応無く答えを迫ってくるんだね。ウーズ!

 そんな夜、ホテルに何とあのズベった姪のリー・クックちゃんが訪ねてくるではないか。彼女を夜間営業の店に連れだして、飲み食いさせながらあれこれ話すスライ。そんな彼は、久々にくつろいだ顔を見せた。ひねくれてズベった姪リー・クックも、自分と同じ臭いをこの叔父に嗅ぎとったのに違いない。弟を故郷を捨てたヤクザ者と弟の妻リチャードソンはじめ一族郎党はスライに冷たく当たるけど、そんな彼にも彼なりの理由はあった。今まで固く自分の口を閉ざして自らを語ろうとしなかったスライが珍しく過去を振り返りながら、この姪だけには心の内を語るんだね。

「自分の姿が見たくなくって、世界中の鏡を全部叩き割りたくなったことはないかい?」

 スライ、俺はあるよ。

 

おまえに俺のもらえなかったものをやる

 だがスライのいぶり出し作戦が功を奏しすぎてか、今度はリチャードソン&リー・クック母娘が暮らす亡き弟の家に賊が押し入ってきた。これもあんたのせいだとリチャードソンからはお約束の文句で決めつけられ、スライはサンザン。早く出ていけと言われて立場がない。ベガスのボスには女房グレッチェン・モルとの仲がバレた。電話でモルに一緒にベガスを出ようと持ちかけるスライだったが、彼女には明るくキッパリ「ハイそれまでよ」と告げられ通話を切られた。ただただ苦笑のスライ。こんなメス犬に何かを期待した俺が馬鹿だった。女を見る目もまるっきりない。どこまでも見通し真っ暗な俺だが、良くも悪くも一つづつ物事ハッキリはしてきてるんだから、よしとするか?

 気を取り直したスライは、マイケル・ケインから借りたお店の監視カメラのビデオテープをチェック。すると、弟が例の愛人ローナ・ミトラが、何やらCD-ROMを弟に手渡す場面が写ってるではないか。このCD-ROMは今どこにある? スライは弟の家に乗り込んだ。あった、このCD-ROMだ。スライは早速、この家にあるiMacを借りて起動させたが、スライとパソコンほど似合わないものはない。バカヤロー俺だってパソコンぐらい使えるし、将来だって考えてるぜ。

 問題のシロモノは、非合法地下流通のポルノディスク。どれもこれも濃厚な濡れ場の連続で、中には未成年も出演してる感じ。そんなCD-ROMの中に収められた多数のムービーを異常にマメにチェックするスライの姿には、事件解決への熱意とは無関係なものも少々チラついてはいた(笑)。ところが…!?

 あのリー・クックちゃんが出てるではないか?

 しかも、イヤがる彼女が無理やりとんでもない事をされている。そのお相手となっているのは、弟と同じ店で働いていた男ジョニー・ストロングだ!

 許せねえ!

 弟はこのディスクを見て激怒し、あのポルノビジネスの大物きどりミッキー・ロークを脅かしたのではないか。この非合法ディスクをバラされては困るロークは、弟をいたぶって酒を飲ませたあげく、殺して事故に見せかけたのだ。

 ぬををををををををを〜〜〜〜〜〜〜〜!!

 …と得意の口をへの字に曲げての怒りの雄叫びを上げはしなかったものの、心の中はいつものように熱く煮えくりかえったスタローン。今まで暗黒街でワルを長くやっている男としてクールに決めた伊達男を装ってはいたが、何だかどうもシックリ来なかった。ここへ来てようやく、「らしい」顔を見せてくれるじゃないか。そうだ、スタローン。あんたはそうでなくっちゃいけない。熱くなって闘志燃やしてガッツむき出しにしてこそのスライじゃないか。

 ホテルに戻ったスライは、母親のところから飛び出してまた彼の元に身を寄せていたリー・クックをがっちり抱きしめると、何も問わず何も責めずにやさしく囁きかける。

 誰でも間違いを犯すことがある。過ぎたことは忘れろ。人生はやり直せるんだ

 それは自らも傷つき間違いを犯した者だけが言える言葉だ。そして、今回ばかりはスタローン、袋小路に追い詰められてしまった自らにも言い聞かせるように、その言葉をつぶやいたのに違いない。 

 しかも今度は弟の愛人ローナ・ミトラが、CD-ROMを持ち出したことがミッキー・ロークにバレて殺された。

 さぁ、もうクールな表情は捨てて、本来の気は優しくて力持ちの性格に完全復帰のスタローン。気が優しいところはリー・クックちゃん相手に十分出した。ここから先は力持ちのスタローン全開だ!

 まず腹ごなしに…とばかり、ニヤケたレイプ野郎ジョニー・ストロングをアパートの二階から叩き落とす。ところが、そこにベガスからの追っ手がやってきた。邪魔するんじゃねえ!

 力持ちのスタローン、筋肉ばかりかドライビング・テクも超一流で、激しいカーチェイスの果てにベガスの連中の車は大破。ありゃあ連中ちょっと命がないかな?

 勢いに乗ってパソコン成金アラン・カミングの家に乗り込んだスタローンは、いきなりミッキー・ロークにガン飛ばしてからむ。ところがこのミッキー・ロークが、よせばいいのに猫パンチの分際でロッキー=スタローンに挑戦するんだよ。なめんなよ…って猫と言えば、昔そんな特攻服やガクラン着た猫が大流行しましたね(笑)。ところが、なぜかこの映画ではスタローンがメチャクチャ弱くて、猫パンチのロークごときにブチのめされるからどうかしてる。何だ、また八百長かよ(笑)。

 ところが調子に乗ったローク、ボコボコにされ大の字になったスタローンに、「おまえの弟の最期はもうちょっと根性あったぜ」などと言ってはいけない一言を言っちまった。すると血管と神経ブッチと切れて、たちまちムックリ起き上がる不死身のスタローン。そうか、ヤツはただ強いんじゃない。エイドリア〜ンとかミッキーィ〜(トレーナーの方)とかアポロ〜とか、「力」プラス根性が出てくる要因が何かないとダメなんだ。

 それに気付かず女と踊っていい気になってるロークは、たちまちスタローンに胸ぐらつかまれボコボコにされてロッキーにグロッキー。折角整えたはずの整形の顔もグチャグチャにならんばかりの殴られようでオダブツだ。さま〜みろ、日本の映画ファンとボクシング・ファンをナメるんじゃねえ。

 さぁこいつを仕上げたら、今度はグルのアラン・カミングだ。スタローンはビビりまくるカミングを連れて、闇夜のドライブとシャレこんだ。弟が味わった恐怖を、おまえにも味あわせてやる。

 道路脇の森にカミングを連れ込んだスタローン、必死に命乞いのカミングの声など知らぬげに、その頭に拳銃を突きつけた。

 助けて〜ボクはわかんないまま無理やり仲間にされたんだよ〜殺すなんて思わなかったんだよ〜。

 情けない声出してチビりそうに怯えるカミング。そんな声なんか無視して引き金を非情に引くスライ! …でも、弾丸は全部それていた。なぜ、どうして? 唖然とするカミングにスタローンはボツリと言ったのだ。

 おまえには、俺がもらえなかったものをやる、セカンド・チャンスをな。

 そう。今こそスタローンは、情け容赦ないやり方ばかりではないと悟るのだ。彼の中で、何かが変わろうとしていた。人間誰しもやり直せるはずだ、その根っこから腐りきってさえいなければ…。それはそのまま自分に対しての祈りのような感情でもあったはずだ。

 恐怖に凍り付いたカミングを置いて、スタローンは次の標的に向かった。その男こそ煮ても焼いても食えない、改心の余地などからっきしない、文字どおり腐り切った男なのだった。

 

主人公とともに再起を賭けたスタローン

 考えてみれば、あの大スターのシルベスター・スタローンが絶頂だった頃って、たぶん「ロッキー4」とか「ランボー/怒りの脱出」とかあたり。それから長期低迷が続いていたっていうのは周知の事実なんだろうね。途中「クリフハンガー」なんてヒットもあったけど、全体見渡してみると至って冴えない印象が強い。出世作にしてヒットシリーズの「ロッキー」もその「5」までつくって遺産を食いつぶした観があるし、「デイライト」なんて作品的には凄くよかったのに、もうスタローン映画なんてお呼びでないとばかりに不発に終わった。ついこの前には「コップランド」で一歩下がってロバート・デニーロなどクセ者役者と共演し、「普通の人」を演じていたがいかんせん地味だった。これ傍でとやかく言うより、当のスタローンが一番アセっていたんだろうね。

 で、今回はいつもの熱情型・激情型キャラ=一本気・正義感キャラを払拭して、コワモテでクールでワル。どうしても口元が情けないからヒゲを生やしてカバー。優しげな目も必要に応じてはサングラスで隠すという、まず「形から入る」作戦に出た。さぁ、これが凶と出るか吉と出るか?

 今回のスタローンの変身は、かなり見る側の僕らにも彼の覚悟のほどを感じさせたよね。特に僕が注目したのは彼のヒゲだった。実は昔、一度だけ彼がヒゲづらで出演したアクション映画があったからだ。誰も注目してないし忘れ去られた作品なんだけど、スタローンが新境地を開拓したサスペンス・アクションの佳作…そのタイトルを「ナイトホークス」と言う。

 スタローンの役どころは変装が得意のニューヨーク市警の刑事。彼とヨーロッパから潜入してきた大物国際テロリストとの戦いを描いた作品で、その硬派でイキのいいアクション描写、映画音楽初挑戦キース・エマーソンのシャープな音楽、テロリストに扮したルトガー・ハウアーのこれがハリウッド・デビューの鮮烈な悪役ぶり…と、結構見どころ満載で何でこれがみんなの記憶に残ってないのか理解出来ないほどの佳作なのだ。だが何よりこのアクション映画をビシッとシメてるのが、シルベスター・スタローンの従来イメージを覆えしたカッコよさ。この時のスライは何とメタルフレームの眼鏡に口ヒゲ顎ヒゲ。スタローンと言うと誰もが思い起こす、どで〜んと図体でかくてニブそうでトロ〜ンとした感じではなく、キビキビとして鋭くエッジのきいた雰囲気だったのだ。

 だから、長い低迷期を乗り越えて再びヒゲを生やしたスタローンに、僕は思わずただならぬものを感じて注目したのだ。果たしてその予感は当たっているか。

 ただ、監督のスティーブン・ケイって、「死にたいほどの夜」ってキアヌ・リーブスがグチグチとネチっこくイヤな男を演じた何ともかったるい、見てて「死にたいほど」ダルくなる映画を撮った男なんで、ちょっとイヤ〜な予感もした。で、映画始まってしばらくは、どうやらこの悪いほうの予感が当たったと思いたくなるアンバランスさなのだ。

 この映画、ボンクラのケイ監督は何とかスタイリッシュでグラフィックでカッチョイくてオシャレなアクション映画を撮ろうと、ああでもないこうでもないと模索している。だが、スタローンって人の個性がどうしてもそんなコジャレた雰囲気やシャープさモダンさに合わないんだね。だって、愚直で通してきた人じゃないか。スタイリッシュほど程遠いものはないよ。コマ落としみたいな技法やらカメラを傾けた構図とか、いろいろやらかしてはいるんだけど、全部単なる思いつきの域を出ずに肝心のスタローンともかみ合ってないから悲しい。

 でも、その場違いな雰囲気なところで場違いな事をやろうとしてるスタローンが、今回実は意外にいいんだよ。考えてみれば役どころそのものが、場違いなところで場違いなことをやろうとしてる男。しかも元々彼がいた安住の地も、彼のいられる場所じゃなくなっていく。って言うか、こっちワルの暮らしの方こそ本来の彼じゃなかったはず。元々居心地悪かったわけ。だから、彼はもう戻れなくなるんだね。平気でワルで割り切っていられる自分に。

 本来が愚直キャラのスタローン、無理してクールな顔して悪党稼業。でも、それを無理して抑えて抑えてやってるから、彼が故郷に帰ってスジを通そうとするたび彼本来の「善人」が少しづつ開放されていくような快感があるわけ。ハッキリ言ってこうした効果を狙った演出でもキャスティングでもないと思うけど、偶然思いもかけぬ結果が出たんだね。

 だから野良犬どおし肩を寄せ合っているようなスタローンとリー・クックのやりとりが心暖まる。これって貧しくって要領悪いけど心優しい「ロッキー」がエイドリアンを口説いてた時と同じじゃないか。あの時はボンクラ若僧、今は歳をとって少しは経験も積んで冷静に接してはいるが、そのショボくも暖かい人当たりに何ら変わりはない。それを、コワモテでクールなアクション映画に持ち込んだ違和感がかえって面白いのだ。

 だから、アラン・カミングにもとどめを差さず逃がしてやる。こんなの珍しいんじゃないの? でも 愚直さを取り戻して一回りでかくなったスタローンならやる。映画は道を誤った一人の男の目覚めと贖罪、そして人生再建物語へ…。そして、スタローンのキャラは西洋ヤクザ映画的キャラへと変貌していく。僕も好きなんだよね、こうした西洋ヤクザ映画。一番よかったのはブライアン・デパーマ監督、アル・パチーノ主演の「カリートの道」かな。そうそう、いわゆるバカな男の浪速節映画と言い直してもよい。

 キャストはこんなB級アクション的なお話にも関わらず豪華メンバーがズラリ。中でもスライが唯一気を許す姪役のレイチェル・リー・クックに注目。「シーズ・オール・ザット」見た時、ネクラ少女役なのにスクール水着をはみ出さんばかりのボリュームで唖然。この娘絶対に近い将来ズベ公演るな思ってたら案の定(笑)。でも、今回はまた一回りポテッとしてムチムチ。余計にエッチな感じで歓迎だけど、こりゃあこの娘太るだろうな。あとは、お約束のマイケル・ケイン旦那。実はこの映画、かつてのイギリス映画「狙撃者」のリメイクらしく、その時の主演のケインがシャレで呼ばれたというわけ。だけど「サイダーハウス・ルール」で2つめのオスカーを獲得、演技派としての地歩を固めつつあるはずの時に、またひょっこりとこんなセコいヤクザの親分演じて情けない顔見せているのがいかにも彼らしい。

 ただ、こうもいわゆる「西洋ヤクザ映画」ものの定石を踏襲していると、最期に主人公が非業の死を遂げたりして暗〜くなる終わり方するのでは?と気が気でなくなった。それはそれでいいじゃないかって? いや、少なくてもこの映画はそれじゃ困るんだよな。

 この映画のラストは、それまでの映画のムードとガラリと変わってる。雨がシトシト冷たく降っていたり、空がどんより曇っていたりしていた画面づくりと対照的に、スカッと抜けるような晴れた日。場所はスライの弟が葬られた墓地。父親の墓参りに来たリー・クックのもとに、すべてを片付けたスライがやってくる。ところがそのスライの外見も激変。例のヒゲを剃り落としていつものお人好しスタローン顔に戻し、テラテラなヤクザスーツを脱ぎ捨て真っ白いワイシャツに身を包むというサワヤカ・ルックじゃないか。俺なんか墓地に伊藤ハム持ってくるんじゃないかと思ったほどのサワヤカさ(笑)。

 明らかにアッケラカンと再出発を誓って車で走り去るスタローンに、一瞬、あれ?ベガスでのボスとのモメ事はどうなるの?などと懸念が頭をよぎったりするが、スライは全く自分の再出発疑ってないし、映画も明らかにそうつくっているはずだ。

 聞くところによると、マイケル・ケイン主演オリジナル版の「狙撃者」は、救いのないアンハッピーエンディングだという。先ほど「西洋ヤクザ映画」の一例として挙げた「カリートの道」のパチーノもお約束の死で終わる。だから、この映画も定石通りいったらスライの死で終わるはずだよね。

 そこで僕は思ったんだよ。実際にこの作品、当初はスライの死で終わっていたんじゃないか?って。それがスニークプレビューか何かしたら「暗い」って評判悪くて、あわてて撮り直したんじゃないか? だからそれまでの場面とガラリ雰囲気違う。おそらく前のクランクアップ後にスタローンが髭そっちゃったんだろう。だから、服装から容貌からガラリ変えたんだろう。そんな苦肉の策だったのが、結構ピッタリ状況にハマちゃったってことじゃないかね。

 すると、映画作家の当初の意向通り出来てないかもしれないということで、この映画はダメと決め付ける人いるかもしれないね。だけどディレクターズ・カットの方がいつも良いとは限らないんだよ。

 本当に途中で当初決まっていたエンディングを撮り直したかどうかは分からないが、仮にそうであったとしても、僕はこっちの方がいいと思うんだよ。姪のレイチェル・リー・クックを「まだまだやり直せる」と励まし、小悪党のパソコン成金アラン・カミングは「セカンド・チャンスをやる」と見逃した。そんなこんなで人生やり直せると自分でも信じ始めた元・唯物論者のスタローンは、だからここで空しく死んではいけないんだ。伊藤ハム持ってきそうなほどサワヤカで明るく、明日に向かって去って行かなきゃいけないんだよ。

 だってウッカリ道を踏み外しそうになった姪やちょっとスケベ根性出したパソコン屋に、それぞれやり直しの機会あるならば、心ならずもベガスのワルになってしまっていたこの映画の主人公にも…いや、それだけじゃない。長きにわたって低迷を余儀なくされた崖っぷちの大スター=シルベスター・スタローン自身にだって、同じように再起のチャンスがあっていい

 出直せる可能性は、きっと誰にもあるはずだから。

 

 

 

 

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