「13デイズ」

  Thirteen Days

 (2001/01/08)


 日本のみなさん、あけましておめでとうございます。新世紀の幕開け、みなさまいかがお過ごしでしょうか? 昨年の正月は札幌からお届けしましたが、この2001年の正月、私は今、ワシントンDCのホワイトハウス前に立っています。

 ところでみなさん、激動の20世紀にここホワイトハウスで、人類の命運を握った暗闘が深く静かに行われていたことをご存じでしょうか? 現在、日本で公開中の映画「13デイズ」は、1962年に起きたキューバ危機を描いた作品です。21世紀を迎えた今、この映画を見ながらその知られざる秘話を振り返ってみるのも一興でしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よいこのみなさんは

ここから先は読んじゃダメ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1962年10月16日の朝、大統領特別補佐官ケネス・オドネル=ケビン・コスナーは、寝起きのベッドで嫁さんともう一戦交えようと、ご自慢のミサイルを実戦配備したところ。ところが子供のジャマが入って、いきりたつ下半身の思惑をよそに開戦は回避されてしまった。でも、ズボンの中でミサイルは発射準備に入ったまま。

 悶々とした思いでホワイトハウスに出勤してみると、彼の仕える合衆国大統領ジョン・F・ケネディ=ブルース・グリーンウッド、その弟の司法長官ロバート・ケネディ=スティーブン・カルプともども、熱くなった下半身が縮み上がる報告を受けたからたまらない。

 アメリカのお膝元キューバに、ソ連軍がミサイル配備しているとの偵察機からの報告だ。

 時は米ソ冷戦時代。両陣営がピカピカ黒光りするぶっといミサイルおっ立てて、俺のがデカい、いや俺のだと意地の張り合い突っ張り合い。そこにこんな報告飛び込んでくれば、当然ここホワイトハウスでもキューバを空爆しろといきり立つのは仕方ないところ。でも、そんなナマでやってデキちゃったらどうするとか病気が恐いとかシーツ汚れちゃうとかもっともな考え方する理性の持ち主だっている。わがケネディ兄弟とお友達のオドネルも、そこは現実的に考えた。

 ところが軍部の連中ときたら、やっぱり今朝嫁さんとの一戦ジャマされた奴ばかりだったのか、妙にヤリたがって困る。ロバート・ケネディ=カルプは国家安全保障緊急執行委員会、略称バイアグラじゃなかったエクスコムを召集して話し合うが、何だかここの男どももたまっちゃってヤリたがりばかり。困ったタレ目ロバートは、何かいいアイディアない?と国防長官ロバート・マクナマラ=ディラン・ベイカーに泣きついた。すると「ハピネス」では少年愛に暴走したベイカーも今回は少し冷静になっていて、「海上封鎖はいかがでしょう?」との妙案が出た。

 オタマジャクシみたいに必死に尾を振ってキューバに行こうとするソ連船がウジャウジャのカリブ海に、米海軍が極薄ゴムみたいにブロックして水際で抑える。これでソ連から譲歩案を引き出そうというハラだ。それなら日本製にいいのがありますぜ。使用感ゼロ。バカ、分厚くブロックして使用感ありすぎぐらいじゃなきゃイッちゃうだろ!

 ソ連外相グロムイコに聞いても、キューバミサイルの件はすっとぼけ。スティーブンソン米国国連大使はトルコの米軍ミサイル撤去と引き替えでソ連と交渉しようと主張する。トルコ?今はその名前使っちゃダメ…って、アノ事で頭がいっぱいのやりたがりの男たちには話が通じない(笑)。やっと意味が通じても、そんな譲歩案出すような弱腰じゃダメとみんなに総スカン。あの国連大使はもう年寄りだからフニャフニャで役立たず…と白い目で見られ思わずションボリ、セガレもうなだれる。

 そんな中、軍部はいざという時の空爆準備のためと称して、再度偵察機をキューバ上空に飛ばすことになった。しかし、こいつはヤリたがり軍部のワナだ。キューバ側からちょっとでもチョッカイ出されたら、それを口実に一気に戦争おっ始めるつもりなのがアリアリ。あわてたオドネル=コスナーは、偵察機のパイロットにすがりついて頼んだ。「頼む、ナニかあってもなかったことにしてくれ。みんなお酒のせいなんだ」「わかったわ。後で告白ヌードとか週刊誌に載せないから安心して」 偵察機のパイロットはキューバでやりたい放題やられても、ぐっとこらえて口をつぐんだ。大人だねぇ。

 国連ではアメリカが一方的に発表した海上封鎖をめぐって、ソ連大使はじめ東側がこぞってアメリカを攻撃だ。「許せないわ、このセクハラオヤジ」「サイテ〜」

 そこに登場のスティーブンソン米国大使、あいつじゃナニも役に立つまいとみんなにバカにされていたが、いざとなったらそこは老練のテクニック。薬や道具も総動員で、ソ連大使を責めたてた。「オラオラ、どうして欲しいんだ?ほら?コレ何て言うんだよ、言ってみな。え?よく聞こえねえぞ」「あぁんもう、ナニを言わせるの?アメリカのイジワルゥ…」

 しかしソ連も海千山千の大年増。水面下でKGBのエージェントがケネディに妥協案を持ちかけてきた。「キューバを侵攻しなければ、ミサイルどかしてア・ゲ・ル…」 追いかけてフルシチョフからの電文も届いて、ホワイトハウスでもホッと一息といったところ。

 ところがところが、今度はトルコのミサイルも撤去しろとの2度目の電文が入って、ケネディたちはソ連の真意が見えなくなった。手切金で手を打つと言ってたのが、次にマンション買えって言ってくるタチの悪い愛人みたいな連中だぜ、こいつら。

 さぁ、ケネディ兄弟もオドネルも、どうするどうする?

 

 何とこれ、若干フィクションも交えてはいるようだけど、ほとんど実話とは驚いた。週刊実話じゃないよ(笑)。僕もキューバ危機当時には、ほんのガキだからまるっきり知らないことばかり。ホントにこんなヤバいことがあったんだねぇ。

 交渉途中に根回し不足のために原子力委員会が水爆実験やっちゃったり、海上封鎖の時もソ連船とハチ合わせ寸前の一触即発までいったり、とにかく平和裏に事が収まったのが逆に奇跡なほどヤバかったわけ。これは本当の意味で究極のサスペンスだね。だから、ある意味で誰かヒーローになって劇的にカタをつけるなんて余地がない

 その代わり、この映画ではテーブルの下の交渉というか思惑というか、ポーカーゲームみたいな心理戦こそが本当に面白い。面白いと言って不謹慎なら恐ろしい。ケネディ一派が団結し、何とかギリギリの綱渡りで危機また危機を乗り越えていく様子が手に汗握るのだ。

 じゃあドラマ要素皆無でロジカルな面白さだけなのかって? 違う違う。実話で固めてギチギチに秒刻みで進行するストーリーの中、チョロっとこぼれるような人間的エピソードが、普通のフィクションドラマ以上に印象に残るのだ。緊張で苛立ちカチンカチンになっている大統領ケネディを、執務室でリラックスさせるオドネルのエピソードはとっても味わい深い。最初はロバートの友達として兄貴への賞賛ばかり聞かされていたオドネル。どうせ金持ちボンボンの大したことない奴だろうとタカをくくっていたJFKに実際会ってみて、その人間の大きさに惚れたという話など、平時に聞いたらシラけかねないところだが、こんな非常時だからこそ心にしみる。彼ら3人の結びつきの深さなど、途中緊張のあまりにさまざまな仲違いを挟んでのものだけに、深く共感できるのだ。

 フルシチョフの非公式な譲歩案を携えてきたKGBエージェントを信じるか否かの決断をケネディが下す段では、まずオドネルがCIAのファイルからこのエージェントの略歴を調べ上げ、フルシチョフとのつながりがどんなものか確かめる。どうやらフルシチョフとこのエージェントは、軍隊で一緒に戦ったことがあるらしい事が分かり、だからこの男を信用できると思うところなんか面白い。フルシチョフは一番信頼できる友=戦友を送ってきたんだ…ってとこが判断基準だなんて、ほほぉ…こうやって信憑性を確かめるのかと感心させられるよりも、その決断の人間的なところに興味がわく。だけど、人間なんて誰でもこうやって人を判断していくもんだよな。

 こんな「13デイズ」、何とあのオレ様スター、ハリウッドの清原ことケビン・コスナーの新作というのが面白い。おまけに今回製作まで買って出ているんだからそのノリようがうかがえるけど、今回はケネディ兄弟プラス彼という役どころ。オドネルが前面に出て解決するわけじゃないんだよね。そりゃ実話だから当然そうなるのは分かるけど、近年の彼の主演作考えるとその変身ぶりには驚かされる。「ダンス・ウィズ・ウルブス」の大成功がよくなかったのか、製作・監督までタッチして文字通りのワンマンショー。それで現場ではトラブル続きで、作品的にも「ボディガード」「ウォーターワールド」「ポストマン」と不発が相次いだ。それでさすがにマズいと気づいたのか。

 そう言えば前作「ラブ・オブ・ザ・ゲーム」ではコスナー得意の野球映画に立ち返って、久しぶりにいいとこ見せてたね。あれも編集ではちょっとモメたらしいけど、結局監督のプランのままになったとか。そもそも監督まで手を出してからは一言多かったコスナーが、とにもかくにもあんな個性派サム・ライミ演出に身をゆだねてみようと思ったこと自体が事件だったかも。

 そして今度はまたまたコスナー作品では定評ある政治を題材にしたサスペンスだ。題材も「JFK」を彷彿とさせるもの。しかも監督は「追いつめられて」でホームランをかっ飛ばしたロジャー・ドナルドソンだ。その中でコスナーは、いつもの人類を救うヒーローぶりをぐっと抑えて、主役の中でもケネディ兄弟に華を譲った三番手として渋く演じてる。これがいいんだよ、久々にコスナーいい味出してる。髪を短く刈り上げ、古きよきアメリカ市民演じたら、なぜかこの人いつもすごくいいんだよね。

 最終的に何と役者としては全然格下の役者さんが演じてるジョン・F・ケネディが一番カッコ良く見えてくるとこも、コスナーなかなかスマートじゃないか。その後にケネディ兄弟を襲う悲劇まで見え隠れして、実際の物語以上のドラマがにじみ出てくるあたりもたまらない。あれじゃ、絶対軍部の連中がケネディを暗殺したに決まってるって気になっちゃうけどね。でも、それを主張するにもこれだけさりげなくなられたら文句ないね。このへんもう少しオリバー・ストーンは見習ったほうがいい。自説を無理やり観客に押しつけるのはやめてよね。

 

 さて、いかがでしたか「13デイズ」? 緊迫した大人のラブゲームをご堪能していただけましたか? 国際政治も一皮ムケば下半身の話ということが、お分かりいただけましたでしょうか(笑)。ぜひみなさんも2001年姫始めを穏やかにイタしていただきたいと切に思う次第です。

 それでは今回はこのへんで。千葉県東金道路沿いラブホテル「ホワイトハウス」前から、「DAY FOR NIGHT」の映画館主・Fがお届けしました。

 

 

 

 

 to : Review 2001

 

 to : Classics Index

  

 to : HOME